働き方改革で残業時間の上限規制や割増率はどう変わった?わかりやすく解説!
働き方改革では残業の仕組み、ルールに大きな改善を行っており、これにより大企業はもちろん、中小企業も含む日本の職場環境が大きく変わっています。残業時間に上限をつくるなど長時間労働によるさまざまな問題の改善を目指しており、従業員に過度な残業を課すことはできなくなりました。
今回は、従来の残業規制と働き方改革以降の36協定の変更点や、新たに残業規制に設けられた罰則について解説します。
この記事を読まれている方は、「法改正によって定められた残業時間の上限規制を確認しておきたい」という方が多いでしょう。
そのような方のため、いつでも残業時間の上限規制を確認でき、上限規制を超えないための残業管理方法も紹介した資料を無料で配布しております。
法律は一度読んだだけではなかなか頭に入りにくいものですが、この資料を手元に置いておけば、「残業の上限時間ってどうなっていたっけ?」という時にすぐ確認することができます。
働き方改革による法改正に則った勤怠管理をしたい方は、ぜひ「【2021年法改正】残業管理の法律と効率的な管理方法徹底解説ガイド」をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 改正前の36協定と問題点
働き方改革とは労働についての様々な法改正を目指す改革です。働き方改革でも目玉となったのが残業時間の上限規制です。まずは、変更となった36協定とは何なのか、また、改正に至った原因をわかりやすくご紹介します。
1-1. 36協定(サブロク)とは
36協定とは、時間外労働(残業)と休日労働に関して労使間で締結する協定のことです。使用者が労働者に「1日8時間、週40時間」の法定労働時間を超えて時間外労働と法定休日に労働をさせる場合には、必ず締結して労働基準監督署長に届け出をしなくてはなりません。
36協定を締結することにより使用者は労働者に残業を命じることができますが、原則として認められている残業時間は月45時間、年360時間までとされています。
【関連記事】36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
1-2. 36協定の特別条項は「残業させ放題」な法の抜け道だった
改正前の36協定の最も大きな問題点は「特別条項」で法律で上限を定めていなかったので、過重労働が発生していたことです。
先に解説した通り、36協定は残業できる時間を月45時間、年360時間までと定めていますが、「特別条項付き36協定」を結ぶと、残業時間の上限規制はなくなり、任意で上限時間を決めることができました。
そのため、過度な長時間労働によって心身の健康を損なった労働者や、過労死に追い込まれてしまう労働者が続出し、大きな社会問題となっていました。
また、これまでの36協定には、違反しても行政指導や厚生労働大臣による告示などがあるのみで罰則規定がなく、この点も問題視されていました。
働き方改革による残業の上限規制は、過度な長時間労働を防止し、労働者の健康を守るためにおこなわれることになったのです。
2. 働き方改革による残業規制の変更点
働き方改革によって「残業時間の上限規制」と「罰則規定」が新たに設けられました。以下では、従来のルールと比較しながら変更点を解説します。
2-1. 残業時間の上限規制
過度な仕事により心や体の健康を損なってしまう労働者が続出していることを受け、働き方改革ではこれまで無制限だった残業時間に、超えてはならない明確な上限を設けています。
具体的には、特別条項付き36協定を結んで月45時間を超える残業を課したとしても、以下の規定を超えて働かせることはできません。
- 1ヵ月の時間外労働は100時間未満
- 2~6ヵ月間の時間外労働の平均は80時間以下
- 年間の時間外労働の合計は720時間以下
- 月45時間を超えて時間外労働をさせられるのは年に6回まで
注意点としては、休日労働も含めた時間を時間外労働にカウントすることです。残業だけで月100時間を超えた場合は当然アウトですが、残業が月80時間でも休日労働と合わせて100時間を超える場合は違法です。(月100時間、複数月平均80時間に限る)
ここまでで残業時間の上限は理解していただけたと思います。また上記の説明や図の中で、「時間外労働」や「休日労働」、「法定労働時間」など様々な言葉が出ましたが、残業時間がどの時間を指すのか正しく理解はしていますでしょうか。そもそも正しく理解していなければ管理はできません。そこで当サイトでは、残業時間の定義から残業の上限規制までを理解していただける資料を無料で配布しております。自社の残業管理が正しく行えているか不安な方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
2-2. 残業規制を違反した場合の罰則が設けられた
従来は法的な罰則はありませんでしたが、この点も改善されています。罰則の内容は、法律の上限を破って従業員に過度な残業を課すと、6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金計に処されるというものです。
このように働き方改革後は、残業に対するルール、罰則が厳しくなっています。企業側は従業員に残業を課すことに慎重にならざるをえないので、職場環境が改善されることが期待されます。
【関連記事】働き方改革による残業規制の最新情報!上限時間や違反した際の罰則を解説
2-3. 管理職(管理監督者)には適用されない
残業時間の上限規制はすべての従業員に適用されるわけではありません。管理職(管理監督者)には適用されません。管理職(管理監督者)の場合、残業時間の上限が規制されないことに加えて、割増賃金支払いの義務も適用されないことになっています。
このような仕組みを悪用して「名ばかり管理職」を設け、残業代を支払わないケースもあります。しかし、管理監督者は役職名で判断されるわけではありません。管理監督者かどうかは実態に基づいて判断されるため、一般の従業員と業務内容な待遇が変わらない場合は管理職としては認められません。
3. 残業代の割増率が変更されている
残業時間の上限規制が始まったことで、残業代や深夜労働、休日出勤の割増率も変化しました。残業代の割増率は次のとおり変更されています。
条件 | 割増率 |
時間外労働 | 25%以上 |
深夜労働 | 25%以上 |
休日出勤 | 35%以上 |
1ヵ月の時間外労働が60時間を超えた場合 | 50%以上 |
深夜残業 | 50%以上 |
深夜時間の休日出勤 | 60%以上 |
1ヵ月の時間外労働が60時間を超え、深夜労働が発生した場合 | 75%以上 |
上記のように通常の残業であれば25%以上の割増賃金が発生します。さらに1ヵ月の時間外労働が60時間を超えている状況での残業は割増賃金率は50%以上です。割増賃金が最大になるのは1ヵ月の時間外労働が60時間を超え、深夜労働が発生した場合です。この場合、75%以上の割増賃金を支払う必要があります。
4. 建設業などは2024年4月から適用
上限規制の適用が2024年4月からになるのは、「医師」「建設事業」「自動車運転の業務」「鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業」です。ただし、自動車運転の業務については上限時間が通常とは異なるため、注意が必要です。
建設事業に関しては、災害時に復旧・復興を担うため、災害時のみ月100時間未満、2~6ヵ月平均が80時間以内の規制が適用されません。
自動車運転の業務に関しては、特別条項を結ぶと年間の残業時間の上限が960時間となります。さらに、月100時間未満、2~6ヵ月平均が80時間以内の規制は適用されず、残業時間の上限である45時間を超えられるのは年に6回までという規制も適用されません。
また、医師の残業時間の上限規制は以下の通りに定められています。
- A水準
(臨時的に長時間労働が必要な場合の原則的な水準)960時間 - 連携B水準
地域医療の確保のため、派遣先の労働時間を通算すると長時間労働となるため1,860時間 (各院では960時間) - B水準
地域医療の確保のため
1,860時間 - C-1水準
臨床研修・専攻医の研修のため
1,860時間 - C-2水準
高度な技能の修得のため
1,860時間
【関連記事】建設業の労働時間の上限規制は2024年4月から!改正ポイントを解説
4-1. 運送業の2024年問題とは
2024年4月から残業時間の上限が規制される運送業界では「2024年問題」という言葉が叫ばれています。運送業の2024年問題とは、残業時間の上限規制によって労働時間が短くなり、輸送能力が低下し物が運べなくなる問題です。特にお中元やお歳暮などを配送する繁忙期は、配送が間に合わない可能性があります。2024年問題は残業時間の上限規制だけが原因ではありません。ドライバーが減ったことも原因のひとつです。
このような問題に対して運送業は勤怠管理システムによる適切な勤怠管理だけでなく、労働環境・条件を改善してドライバーを確保することが大切です。
5. 働き方改革の残業規制に対して企業が注意したいこと
働き方改革による残業時間の規制に対応するには、36協定を見直したり勤怠管理をより厳密におこなう以外にも、気を付けておきたいポイントがあります。ここでは、残業規制に対して企業が注意しておきたいことを3つご紹介いたします。
5-1. 「残業代が減るから残業したい」社員への対処
働き方改革で残業時間を削減したいのに、やたらと残業したがる社員や勝手に残業をする部下はいませんか?
もしかすると、「残業代を稼ぎたいから」残業をしているかもしれません。中には「残業代がないと、生活ができない」という従業員がいることも。不必要な残業をしたがる従業員がいる場合は、要注意です。
この問題を解決するには、給与のベースアップをおこなう、残業をしない人へ賞与を出す、福利厚生を手厚くするなど残業させない代わりに、何かしらの形で残業代を従業員へ還元させる仕組みづくりが必要です。
5-2. 規制だけしても、業務効率化できなければ残業は減らない
残業時間を削減する際に陥りがちなのが、この問題です。社内で残業時間に上限を設け厳しく規制しても、そもそもの業務量や業務効率に見直しをおこなわなければ、持ち帰り仕事でサービス残業が横行するなど、さらなる問題に発展してしまう可能性があります。
残業時間の削減を目指す場合は、社内での残業はどのような理由によって発生しているのかをしっかりと調査するようにしましょう。業務量が多すぎる、業務をするのに無駄な工数が発生しているなどの場合は、業務配分の見直しや業務を効率化することが肝要です。
【関連記事】残業削減対策の具体的な方法と期待できる効果について解説
5-3. 「気づいたら残業の上限時間を超過していた」紙ベースでの勤怠管理
タイムカードや出勤簿で勤怠管理をしている場合、「残業時間は集計してみるまで分からない」という課題があります。「集計してみたら上限時間を超過していた」「先月の残業時間が多かったので、今月は調整しなければいけないけど、今どれくらい残業しているのか分かりにくい」といった問題が発生してしまうこともあるかもしれません。
タイムカードや出勤簿など紙ベースでの管理で発生する「知らずに法律に抵触してしまう」リスクを避けるためには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
勤怠管理システムではリアルタイムで残業時間が分かるため、月中で残業の多い従業員にアラートを出すことができ、「気づいたら残業時間が超過していた」という問題を解決することができます。
また、システムであれば「各店舗にタイムカードがあり、月末に集めるまで各従業員の勤務時間は分からない」という問題が発生せず、本社や本部の人事担当者が各拠点にいる従業員の労働時間を常に把握することができます。
6. 働き方改革で職場環境はより良いものになる
従来の法律では、特別条項を締結することで、従業員は際限なく残業をおこなうことができました。しかし、働き方改革の施行後は特別条項を締結した場合であっても、残業時間に上限があり、従業員に過度な残業を課すことはできなくなりました。
これにより現場で働く従業員を取り巻く環境は改善され、これを機に社内環境を見直されてみるのはいかがでしょうか。
【関連記事】残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
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