有給休暇の労働基準法における定義|付与日数や取得義務化など法律を基に解説
更新日: 2025.10.6 公開日: 2020.4.16 jinjer Blog 編集部

年次有給休暇は労働基準法第39条で定められており、有給休暇の付与条件や付与日数の決め方については法律の規定に従う必要があります。
また、2019年4月に施行された働き方改革関連法により、有給休暇の年5日取得義務が新たに導入され、労務管理や人事管理の現場では、より適切かつ厳密な管理が求められています。
この記事では、労働基準法に基づく有給休暇の基本的な定義に加え、現場でトラブルになりやすい「時季変更権」や「計画的付与」について、関連する法律条文を引用しながらわかりやすく解説します。
関連記事:【図解付き】有給休暇の付与日数とその計算方法とは?金額の計算方法も紹介
目次
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1. 有給休暇に関する法律は「労働基準法39条」に定められている

年次有給休暇(有給休暇)とは、労働基準法に基づき一定期間継続して勤務した労働者が、心身のリフレッシュや生活のゆとりを目的として、有給で取得できる休暇のことです。この有給休暇については労働基準法第39条に規定されており、同条では第1項から第10項までにわたり付与の条件や付与日数の計算方法、取得手続きなどが詳しく定められています。
また、時間単位での取得や、使用者が5日を超える部分の取得日を決める「計画的付与」など、特殊なケースについても明確な規定を設けています。ただし、これらの制度を導入するには、労使協定の締結が必要です。
有給休暇に関する法令や運用ルールは細かく定められているため、人事・労務担当者は労働基準法第39条の内容を正確に把握し、適切な管理をおこなうことが求められます。もしテキストではなく、表などがあった方が理解しやすいという方は、当サイトで「3分でわかる有給徹底解説BOOK」という、有給管理の基礎知識から管理方法、法改正の内容までをまとめた資料を無料で配布しておりますので、こちらからダウンロードページをご確認ください。
関連記事:年次有給休暇とは?をわかりやすく解説!付与日数や取得時期も紹介
2. 改正労働基準法によって年5日の有給休暇取得が義務化

2019年4月に働き方改革関連法案が施行され、年に10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、有給休暇が付与される基準日から1年以内に合計5日分の休暇を取得させることが義務化されました。これは、管理監督者や有期雇用労働者(契約社員やパート・アルバイトなど)も対象となります。
また、有給休暇の取得義務化にともない、有給休暇を年10日以上取得したすべての従業員に有給休暇管理簿を作成し、年に5日以上取得できているかを管理することも義務付けられました。有給休暇管理簿は作成した後、一定の起算日から5年間(当面の間は経過措置により3年間)の保管も義務付けられています。
有給休暇を従業員が取得していない場合、取得義務のある5日に関しては、企業が取得日を指定して従業員に取得させなければなりません。例えば、有給休暇の基準日が4月1日である場合、翌年の4月1日までに合計5日の有給休暇を取得させる必要があります。
この場合、使用者は5日分の有給休暇の取得時季を指定できますが、あらかじめ労働者の希望を聴取したうえで、双方の合意をもとに時季を定める必要があります。また、使用者による時季指定をおこなう場合は、就業規則に時季指定をする労働者の範囲と方法を明記しなければなりません。
なお、自主的に5日分の有給休暇を消化している労働者に対しては、時季指定をする必要はなく、時季指定することもできないので注意しましょう。このように、約10年ぶりの労働基準法改正によって有給休暇に関する規定も変更されたため、人事・労務管理の現場では新しい法令に準拠した管理体制が求められています。
【労働基準法第39条7項】
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
関連記事:有給休暇年5日の取得義務化とは?企業がおこなうべき対応を解説
3. 有給休暇に関する法律に違反した場合の罰則


年次有給休暇は労働基準法で定められた労働者の権利であるため、正しく付与・取得させなかった場合は法律違反となり罰則が科される可能性があります。
例えば「年5日の有給休暇を取得させなかった場合」と「就業規則に記載せず時季指定による有給取得をさせた場合」に30万円以下の罰金、「労働者が請求する時季に有給取得をさせなかった場合」に6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処されます。
上記の罰則は違反した従業員1人の違反ごとに処分が科されるので、違反した従業員が10人いた場合、企業は最大300万円の罰金を支払わなければなりません。これだけでも大きな損失になりますが、罰金や拘禁刑以上に社会的信用を損なうリスクがとても大きいことも認識しておきましょう。
4. 有給休暇の取得を促進する方法


有給休暇を正しく取得させないことは、労働基準法違反にあたり、企業にとって重大なリスクとなります。ここでは、労働基準法違反を防ぐために、従業員の有給休暇取得を促進する具体的な方法について詳しく説明します。
4-1. 有給取得推奨日を設ける
有給休暇は基本的に従業員が希望した日に取得させなければなりません。しかし、現実には「繁忙期が続く」「慢性的な人手不足がある」「業務の属人化が進んでいる」といった理由から、従業員が「休みにくい」と感じてしまう職場も少なくありません。このような環境下では、たとえ制度として有給が取得できる状態であっても、業務への影響を懸念して取得をためらってしまうケースが見られます。
そこで、有効な対策の一つとして、「有給取得奨励日(推奨日)」を事前に設定・周知しておくことが挙げられます。例えば、土日と祝日にはさまれた平日や、比較的業務が落ち着いている時期を「有給取得推奨日」として会社があらかじめ指定し、社内カレンダーや勤怠システム上で共有しておけば、従業員は予定を立てやすくなるでしょう。また、部署内やチーム内での計画的なタスク調整もおこないやすくなり、業務への影響を最小限に抑えられる点も企業にとってはメリットです。
4-2. 役職者の率先取得と意識改革を進める
管理職などの役職者が積極的に有給休暇を取得し、そのうえで業務が円滑に進んでいる様子を示すことで、「有給を取ってもよい」「自分も取得しよう」という安心感が職場全体に広がるでしょう。結果として、休暇を取りやすい風土が醸成され、有給取得率の向上につながります。
また、労働基準法に基づく年次有給休暇のルールを従業員に正しく説明し、「年5日以上の取得義務」や「有効期限(時効)」といった制度の仕組みを理解してもらうことが重要です。計画的な取得・消化を促進するためにも、社内研修やセミナーを通じて、意識改革と制度の周知徹底を図りましょう。
4-3. 有給の取得状況を可視化する
有給休暇の取得状況をデータで把握し、グラフや表などで可視化すれば、取得率の低い部署や個人を早期に発見し、対策を講じることが可能です。勤怠管理システムを導入すれば、有給の付与日数と取得日数をリアルタイムで一元管理できます。
勤怠管理システムの自動アラート機能を使用し、有給未取得の従業員に自動で警告を出し、有給取得を促進することも可能です。また、有給休暇の申請・承認プロセスもすべてシステム上で完結できるので、従業員・管理者双方の事務負担を軽減し、よりスムーズな運用が実現されます。
関連記事:労働基準法で義務化された有給休暇消化を従業員に促す3つの方法
5. 有給休暇の労働基準法上の定義と付与に関するルール

本章では、労働基準法第39条に基づく年次有給休暇の付与要件について、条文を引用しながら解説します。また、有給休暇の付与要件や付与日数の決定方法に加え、就業規則への記載や労使協定の締結を前提とする「半日単位・時間単位での付与」「時季変更権」「計画的付与」といった制度についても取り上げます。
これらは、実務上つまずきやすいポイントであり、適切な運用が求められる分野です。人事・労務の担当者は、正確に理解しておくことが重要です。
5-1. 労働基準法第39条で定められている有給休暇の付与要件
年次有給休暇の付与条件は、労働基準法で明確に定められています。具体的には「雇い入れ日から6ヵ月間継続して勤務し、かつその期間の全労働日の8割以上出勤した労働者」に対して、年10日以上(※パートやアルバイトなどの短時間労働者は例外あり)の年次有給休暇を付与しなければなりません。
また、付与された年次有給休暇は、連続して取得することも、日を分けて分割取得することも可能です。
【労働基準法第39条1項】
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えられなければならない。
引用:労働基準法|e-Gov法令検索
また、条文内で触れられている「雇入れの日」とは、一般的にその会社に入社した日のことです。「全労働日」とは、会社が就業規則で定める所定労働日数のなかで、有給休暇の対象期間の労働日の合計を指します。
「従業員の出勤日数÷全労働日の日数」を計算し、出勤率が8割以上となる場合に有給休暇が付与されます。
関連記事:有給休暇義務化における「基準日」とは?5日間の取得義務についても解説
5-2. 付与日数の定め方
有給休暇の付与日数は、法律で定められた10日分の有給休暇に加えて、雇入れの日(入社日)からの勤続年数に応じて決まります。基本的には最初の付与から1年経過するごとに11日、12日と1日ずつ増加し、勤続年数3年6ヵ月以降は2日ずつ付与日数が加算されていきます。付与される日数は最大20日です。
また、正社員に限らず、週30時間未満のパートタイムで働く従業員も同様に、勤続年数に応じて付与日数が増加していきますが、付与日数が異なります。
パートタイム従業員は労働日数や労働時間が少ないため、週所定労働日数(もしくは年間の所定労働時間)に比例して有給休暇が付与されます。これを「比例付与」といいます。付与日数と勤続年数の関係は以下の表の通りです。
| 週所定労働日数 | *1年間の所定労働日数 | 継続勤務年数 | |||||||
| 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | |||
| 付与日数 | 5日以上 | 217日以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
| 4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 | |
| 3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
| 2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
| 1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 | |
なお、労働基準法では全労働日に占める出勤日数についても次のとおり定めています。
【労働基準法39条2項】
ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。
上記のとおり、勤続年数が有給取得の条件を満たしていても、出勤日数が全労働日の8割未満である従業員の場合、年次有給休暇は与えられません。
関連記事:パート・アルバイトにも有給休暇はある!付与日数や発生条件について解説
5-3. 半日単位・時間単位での付与も条件付きで可能
有給休暇は原則として1日単位で取得してもらう必要があります。しかし、あらかじめ従業員と合意している場合、半日単位・時間単位で取得してもらうことも可能です(時間単位の場合は労使協定の締結が必要)。
例えば、病院に行く従業員が午前休・午後休を取得するために、数時間の休暇を取得して出勤を遅らせる場合があります。ただし、分単位での有給休暇の付与は認められていません。
また、時間単位で取得できる有給休暇の日数は、労働基準法第39条4項で年5日に制限されています。
【労働基準法第39条4項】
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところによる時間を単位として有給休暇を与えることができる。一、時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
二、時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る)
これらの条件を満たしたうえであれば、企業独自のルールとして時間単位の付与や前倒し付与などの運用を設定することも可能です。
5-4. 従業員が望む日付に取得させる必要があるが、時季変更をすることは可能
年次有給休暇は、労働者が希望した日に取得させなければなりません。しかし、繁忙期や一時的な人手不足などで「今休まれては困る」という場合もあるでしょう。労働基準法第39条5項では「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者が時季を変更して有給休暇を取得させることができると規定されています。
【労働基準法第39条5項】
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
なお「事業の正常な運営を妨げる」とは、その従業員の代わりがおらず、休暇をとられると他の従業員の業務にも多大な影響がある状況を指します。
時季変更権は法律上認められた権利ですが、安易に行使すれば従業員の不満や信頼の低下を招く可能性があり、慎重な判断が求められます。このような事態を避けるためにも、日頃から業務の分担やマニュアルの整備、兼任体制の構築などによる、有給休暇を取得しやすい職場環境の整備が重要です。
関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説
5-5. 労使協定の締結により計画的付与制度を導入できる
労働基準法第39条6項に基づき、年次有給休暇のうち5日を超える分については、事前に労使協定を結ぶことで、計画的に割り振ることができます。5日分については、従業員が自由に取得できるよう残しておかなければならないので注意が必要です。
【労働基準法第39条6項】
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
有給休暇の計画的付与制度の仕組みには、以下のようなものがあります。
- 一斉付与方式:同一の日に一斉に有給を与える方法
- 交替制付与方式:部署やチームごとに時期をずらして有給を与える方法
- 個人別付与方式:従業員別に有給を与える方法
それぞれの方式にはメリット・デメリットがあります。自社の事業場や従業員にあわせて、最適な計画的付与制度を導入しましょう。
関連記事:有給休暇の計画的付与制度とは?導入方法や注意点を紹介
5-6. 有給休暇を取得する際の賃金の計算方法
従業員が年次有給休暇を取得した場合、その分の賃金を支払わなければなりません。有給休暇を取得した際の賃金の計算方法は、労働基準法第39条9項で定められています。
【労働基準法第39条9項】
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
有給休暇を取得した場合の賃金計算方法は、基本的に以下の中から定めることになります。
- 所定労働時間働いた場合に支払われるべき賃金
- 労働基準法で定められた平均賃金
- 健康保険法に基づく標準報酬月額の30分の1に相当する金額(※労使協定が必要)
有給休暇の賃金計算方法については、労使間のトラブルを未然に防ぎ、運用の透明性を確保するためにも、就業規則に明記しておくことが重要です。
関連記事:有給休暇取得日の賃金計算方法と正しく計算するための注意点を解説
5-7. 産休や介護休業などは労働したと考えて出勤率を算出する
年次有給休暇の付与要件の一つに、「全労働日の出勤率が8割以上であること」があります。この際「産休・育休中や介護休業中は出勤していないのだから、出勤率の計算には含めない」と考える担当者もいるかもしれません。
しかし、労働基準法第39条10項では次のとおり定めています。
【労働基準法第39条10項】
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。
つまり、労災による休業期間や、育児休業・産前産後休業・介護休業を取得している期間については、「労働した」とみなして出勤率を計算する必要があります。
6. 従業員から寄せられる有給休暇についてよくある3つの質問


有給休暇については、買取や繰越、短時間勤務者の有給取得など、従業員から管理者へさまざまな質問が寄せられます。ここでは、従業員から寄せられるよくある質問について解説します。
6-1. 有給休暇の買取について
従業員が退職するタイミングで、有給休暇の買取について質問されるかもしれません。原則として、有給休暇の買取は認められていません。しかし、次のようなケースであれば限定的に有給休暇の買取が認められています。
- 法律で定める日数以上の有給休暇
- 消滅する有給休暇
- 退職時に残っている有給休暇
とくに長期間勤務している従業員は最大20日の有給休暇が付与されていることが多く、退職時に買取を希望されるケースも考えられます。
このような場合は、従業員の状況や希望を正確に把握したうえで社内規定に基づき慎重に対応してください。なお、上記に該当しない年次有給休暇の買取は違法となるので注意しましょう。
関連記事:有給休暇の買い取りは違法?退職時の対応やトラブル事例を解説
6-2. 有給休暇の繰り越しについて
従業員に付与された年次有給休暇には、労働基準法第115条により「2年間の時効」が定められています。そのため、付与された有給休暇は2年以内に消化しなければ自動的に消滅してしまいます。ただし、付与された年に使いきれなかった有給休暇については、翌年への繰り越しが可能です。
例えば、入社6ヵ月後に10日の有給休暇が付与され、そのうち6日を当年度中に取得した場合、残りの4日分は翌年度に繰り越して利用できます。なお、有給休暇の付与日数が最大の20日となる従業員の場合、前年度の未消化分を繰り越すことで、最大40日分の有給休暇を保持することが可能です。
関連記事:【図解】有給休暇の繰越とは?上限やルール、計算方法をわかりやすく解説
6-3. 短時間勤務の有給休暇について
育児や介護などの事情により、通常の1日8時間勤務が難しい従業員については「短時間勤務(時短勤務)」として、労働時間を原則として1日6時間程度まで短縮することが認められています。
このような短時間勤務者から「自分にも有給休暇の取得権があるのか」と相談を受けることがあるかもしれません。結論から言えば、短時間勤務であっても「雇用から6ヵ月が経過している、かつ全労働日の8割以上出勤している」の条件を満たしていれば年次有給休暇の付与対象となります。
つまり、短時間勤務であることを理由に有給休暇の付与を拒否することは、労働基準法に違反する行為となります。なお、短時間勤務者の有給付与日数は、週所定労働日数や週所定労働時間によって変わることもあるので注意しましょう。
関連記事:時短勤務者の有給付与について企業が知っておくべきこと
7. 労働基準法の内容に基づいた適切な有給休暇管理を

年次有給休暇は、労働基準法第39条により詳細に規定されており、すべての企業が法令に基づいた適切な運用を求められています。とくに2019年4月に施行された「働き方改革関連法」により、年5日の有給休暇取得が義務化されたことを受けて、人事・労務部門では改正後の法律に即した対応が不可欠です。
このような法的要請に対応するためには、年休管理簿の作成・保管や運用ルールの整備と徹底、勤怠管理システムの導入といった体制づくりが重要です。今後も法令を正しく理解し、組織全体で適切な有給休暇管理を進めていきましょう。



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