月またぎの振替休日に関して正しい処理方法を解説
更新日: 2024.10.9
公開日: 2021.9.6
OHSUGI
振替休日とは、休日と勤務日を入れ替えることを指します。例えば、「今週の土曜日に出勤する代わりに、来週の火曜日を休みにする」といったケースが、振替休日に該当します。
単に休日と勤務日を交換するだけであるため、とくに難しい処理が必要ないと考える人も多いかもしれません。しかし、月をまたいで振替休日をおこなうときは処理方法に注意が必要です。
この記事では、企業が押さえておきたい月またぎの振替休日の処理について解説します。
従業員に休日労働をさせた場合、割増賃金の計算はどのようにおこなうのか、残業扱いになるのかなど、休日労働に対して発生する割増賃金の計算は大変複雑です。
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1. 振替休日の月またぎとは?
そもそも、振替休日の月またぎとはどのようなケースを指すのでしょうか。まずは、「振替休日の月またぎ」の意味や、該当するケースについて見ていきましょう。
1-1. 振替休日の月またぎは「翌月に振替をする」こと
振替休日の月またぎとは、振替によって勤務日が発生した翌月に休日を取得することです。また、月をまたいでいなくても「給与の締日」をまたぐときは、月またぎと同様に考えることが可能です。残業時間が多かった場合、振替休日として相殺するケースもあるでしょう。
例えば、締日が月末の会社で4月15日に振替休日によって出勤し、5月15日に休みをとった場合、月(締日)をまたいで振替休日をおこなったことになります。なお、あらかじめ振り替える日が決まっていれば、労働日より先に休む場合であっても認められます。
振替休日には明確な取得期限が設けられておらず、労働基準法115条に記載がある「賃金その他の請求権の時効」である2年が消滅時効だと考えられています。
そのため、月をまたいで振替休日をおこなっても法的な問題はありません。
1-2. 振替休日は同一賃金支払期間内におこなうことが原則
先述の通り、月をまたいだ振替休日の取得期限には法的な問題はありません。しかし実際は、同一賃金支払期間内で振替をおこなうことが原則だとされています。
その理由は、月またぎで振替休日をおこなってしまうと、給与の精算が煩雑になってしまうためです。また、月をまたいで振替休日をおこなうことは、休日の確保や従業員の健康維持という観点でもあまり望ましいことではありません。
振り替える休日と労働日はなるべく直前や直後に設定しておいたほうが、企業にとっても従業員にとってもメリットが大きいでしょう。
関連記事:振替休日とは?定義や代休との違い、付与のルールを分かりやすく解説
2. 振替休日と代休の違い
振替休日と同じような用語に「代休」があります。振替休日も代休も同じ「休日」ですが、管理上では意味がまったく異なります。
振替休日は、あらかじめ休日と定められていた日が労働日になる代わりに、他の労働日を休日とする「休日の振替」です。一方、代休は急な仕事や残業をしても終わらない業務などをするために、休日に働くことになり、その代わりに振り替えられた日を「休日」とする制度です。
つまり、休日を「労働日」としてほかの日に休みを取る「振替休日」は「休日労働」とはならないので、休日労働に対する割増賃金の支払義務も発生しません。
しかし、休日に働かなければならなくなった場合は、「ほかの日に休みを取っても休日を振り替えたことにはならず、休日労働分の割増賃金を支払う必要がある」というのが両者の違いです。
3. 月またぎの振替休日の給与計算方法
月またぎの振替休日が望ましくないとはいえ、実務上の問題でどうしても休日を取らせることが翌月以降になってしまうケースはあるでしょう。
もしも月をまたいで振替休日をおこなった場合、企業はどのように処理をすればいいのでしょうか。この章では、月またぎの振替休日を処理する手順を説明します。
3-1. まずは休日に勤務した賃金を支払う
当月に休日勤務させて翌月以降に休みを取らせるという、月またぎで振替休日をおこなうときは、まず当月に一旦勤務した分に対する賃金を支払わなくてはいけません。
振替休日ではあとから休日を取らせることになるため、勤務した分の賃金は相殺ができると思われる人も多いでしょう。
しかし、そもそも未取得の休日と実際に働いた分の賃金を相殺することは違法になるため、月またぎの休日振替では相殺ができません。そのため、締日を迎えた時点で一旦給与を支払う必要があるのです。
ただし、月をまたがずに同一賃金支払期間内で振替休日をおこなった場合は、このような特別な処理は必要ありません。月や締日をまたぐときのみ注意しましょう。
3-2. 休日を取得したあとに控除する
賃金支払い後、月をまたいで休日を取得できたときは、その月の給与から休んだ分の賃金を控除します。控除できるのは基本給の部分のみで、そのほかにかかった割増賃金などは控除できません。
振替休日によって割増賃金が生じたときは、正しい金額を控除するように気をつける必要があります。なお、振替休日は「労働日と休日を入れ替えた」だけであるため、たとえ休日に出勤しても休日手当は不要です。
しかし、何らかの事情で予定していた休みを取らせることができなくなった場合、代休とみなされて休日手当が必要になる点に注意しましょう。
代休だと判断されてしまうと、法定休日に従業員を働かせたときは35%以上の割増賃金を支払う必要があります。
このように月またぎの振替休日について考える際には、代休やそれぞれの割増率を一緒に考えなければなりません。当サイトでは、振休・代休の定義や割増賃金の考え方を解説した資料を無料で配布しております。休日出勤時の対応について不安な点がある方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
4. 月またぎの振替休日の注意点
月またぎの振替休日は、一旦賃金を支払ってあとから控除する処理をおこなうことが一般的です。しかし、振替が月をまたいでしまうときは、賃金の処理以外にも注意したいポイントがあります。
最後に、月またぎの振替休日の注意点について見ていきましょう。
4-1. 未取得の賃金で相殺することは違法
一度支払った賃金を控除する手続きは煩雑であるため、正しく処理をおこなっていない企業もあるかもしれません。
しかし前項でも説明したように、月またぎの振替休日をおこなった場合、未取得の休日に対する賃金で労働賃金を相殺することは違法であるため注意しましょう。
労働基準法24条には「賃金の全額払いの原則」が規定されており、労働者の生活を安定させるためにも、期日までの労働対価を全額支払うことが原則として記載されています。例え後で休みを取らせるとしても、未取得である休日で相殺することはこの原則に反するため賃金の支払い義務が生じるのです。
とくに中小企業では、この相殺処理をおこなうケースが多いといわれていますが、相殺は違法行為にあたるため、必ず正しく処理するようにしましょう。
4-2. 割増賃金が必要なケースがある
休日振替は休日と勤務日を入れ替える制度であるため、休日手当が不要です。しかし、そのほかの割増賃金は当然かかってくるため、給与計算の際は注意しましょう。
月またぎの振替休日で気をつけたい割増賃金としては、以下のようなものが挙げられます。
- 労働時間が1日8時間、週40時間を超える場合の割増賃金:25%
月またぎで休日を取らせたとしても、これらの割増賃金は発生し、あとから相殺することはできません。そのため、振替休日で労働時間が増えてしまうときは、割増賃金を正しく計算して支払うことがとても重要です。
また、振替休日と代休を混在しがちな場合が多いですが、割増賃金の考え方は全くもって異なるので計算時には注意が必要です。当サイトでは、振替休日と代休でそれぞれどのように割増賃金が発生するのかまとめた資料を無料で配布しております。その他にも休日・休暇の定義の違いなども解説しておりますので、不安な点がある方はこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
また、振替休日と代休を混在しがちな場合が多いですが、割増賃金の考え方は全くもって異なるので計算時には注意しましょう。
4-3. 法定休日を下回ってはいけない
労働基準法35条には、週に1日もしくは4週に4日の休日を与えることが義務付けられています。
この必須の法定条件である休日を「法定休日」といいますが、たとえ月をまたいで振替休日をおこなうとしても、法定休日を下回る休日を与えることはできません。
つまり、振替休日をおこなう際でも、週に1日もしくは4週に4日以上の休日を与える必要があるのです。法定休日を下回ってしまった場合、振替休日の適用が否認されるだけでなく、従業員の健康を害したりコンプライアンス違反による責任問題を追求される恐れがあります。
そのため、振替休日を実施する場合は、必ず法定休日の要件を満たすようにしましょう。
4-4. 36協定の締結が必要
月またぎの振替休日をおこなうときは、週に40時間の労働時間を超えてしまう可能性が高いため、36協定の締結が必要です。労働基準法では1日8時間、週に40時間以内の労働が義務付けられています。これを超えて労働させたいというときは、労働基準法36条にもとづく労使協定である36協定を締結し、労働基準監督署に届出なくてはいけません。
振替休日は、例え翌月に休みを取っても当月の労働時間が「労働基準法」の上限を超えることになるため、36協定を締結しないと違法になってしまう点に注意しましょう。
関連記事:36協定の届出とは?作成の方法や変更点など基本ポイントを解説
5. 月またぎの振替休日の処理は正確にしよう
月またぎの振替休日をおこなうときは、ひとまず休日に勤務してもらった分の賃金を支払い、休みをとった月に給与から控除する手続きをするのが原則です。月をまたいで未取得分の休日と労働した賃金を相殺することは違法であるため、十分に注意しましょう。
月またぎの振替休日に関しては、法定休日や36協定の締結などでも細かい規定があるので、正確に把握しておく必要があります。管理や賃金の計算が複雑になってしまうので、可能なかぎり同一賃金支払期間内で振替をおこなうほうがよいでしょう。
関連記事:休日と休暇の違いとは?休みの種類や勤怠管理のポイント
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