月60時間超残業の割増賃金率引き上げは中小企業も対象に!計算方法を解説
更新日: 2026.2.27 公開日: 2021.9.1 jinjer Blog 編集部

働き方改革の推進に伴い、残業削減に取り組む企業が増えています。残業を抑えることは、従業員の良好な労働環境を維持するだけでなく、人件費の削減にもつながり、企業の経営改善にも有効です。
とくに、月60時間を超える時間外労働が発生した場合には、法定の割増賃金率が25%から50%以上へ引き上げられるため、企業にとっては大きな負担となります。このルールは、大企業だけでなく中小企業にも適用されており、すべての企業が対応を求められます。
本記事では、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金の計算方法、企業が直面するリスク、そして残業削減に向けた具体的な取り組みについて解説します。
目次
従業員の多様な働き方が進む中、割増賃金の計算はますます複雑化しています。しかし割増賃金の計算ミスは、未払い賃金の請求といった経営リスクに直結するため、労務担当者は注意が必要です。
そこで、当サイトではこれらの疑問を解決する資料を無料配布しており、複雑な割増率をケース別に図解しているほか 、深夜労働・時間外労働との組み合わせなど、複雑なパターンを図解で分かりやすく解説 しています。
実例を用いた計算方法も紹介しており 、これ一つで正確な割増賃金計算をマスターできます。参考にしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 【中小企業も対象】2023年4月から60時間超残業の割増賃金率が50%以上に変更

2023年4月1日から、中小企業に対しても、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が25%以上から50%以上へ引き上げられました。これにより、現在はすべての企業で、月60時間を超過する時間外労働に対して最低50%の割増率が適用されます。
ここでは、法改正の内容や、割増賃金の対象者の注意点について解説します。
1-1. そもそも時間外労働とは?月60時間の計算方法も紹介
時間外労働とは、労働基準法第32条で定められた法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働くことです。
例えば、1日の所定労働時間が「9時~18時(実働8時間・休憩1時間)」の場合、19時まで勤務すれば1時間の時間外労働となります。
一方、所定労働時間が「9時~17時(実働7時間・休憩1時間)」の場合、9時~18時までの勤務は法定労働時間内に収まるため、割増賃金は発生せず、通常の時間単価分のみ支給されます。
1ヵ月の集計期間(例:起算日は毎月1日)で時間外労働が累計60時間を超えた場合、超過分の賃金は割増率50%以上で支払わなければなりません。ただし、次のような時間は、時間外労働に含めないので注意が必要です。
- 休憩時間(労働時間に含まれません)
- 法定休日に出勤した場合の勤務時間(時間外労働ではなく「休日労働」として扱います)
- みなし労働時間制に基づく勤務時間(事前に定めたみなし労働時間に対して賃金が支払われるため、原則として時間外労働には含まれません)
また、管理監督者は労働時間の規定が適用されないので、時間外労働の割増賃金を支払う義務はありません。
参考:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省
関連記事:残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説
1-2. 猶予期間が満了し中小企業にも割増賃金率50%以上が適用
2019年4月の法改正では、1ヵ月の時間外労働が60時間を超えた場合の割増賃金率が50%以上に引き上げられました。中小企業(※)には経過措置として猶予期間が設けられていましたが、2023年3月31日で終了し、2023年4月1日からは大企業・中小企業問わずすべての企業に同様の割増率が適用されています。
一方、時間外労働が月60時間以内の場合は、これまで通り25%以上の割増率です。割増率が2倍になることで人件費の負担が増すため、企業は労働時間の管理に一層注意を払う必要があります。また、法改正により割増賃金の計算が複雑化しているので、正確な勤怠管理と賃金計算が不可欠です。
とくに時間外手当、深夜手当、休日手当などの支給条件を正しく把握し、従業員に対して公正な賃金を支払うことが求められます。法令遵守を徹底し、労働環境を整備することが、企業の持続的な成長につながるでしょう。
※中小企業かどうかは、企業ごとに次の「資本金または出資総額」と「常時雇用する従業員数」のいずれかの基準を満たしているかで判断されます。
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業種 |
資本金または出資総額 |
常時雇用する従業員 |
|
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
|
サービス業 |
5,000万円以下 |
100人以下 |
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卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
|
その他の業種 |
3億円以下 |
300人以下 |
参考:2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省
関連記事:時間外労働の割増率とは?計算方法と2023年法改正、よくある疑問と注意点の総まとめ
1-3. 契約社員やアルバイトでも割増賃金は必要
契約社員やアルバイトであっても、労働基準法が適用されるため、割増賃金の支払いが必要です。つまり、契約社員やアルバイトに対しても、月60時間を超える時間外労働に対しては割増率を50%以上に引き上げて割増賃金を支払わなければなりません。
労働基準法は、雇用形態に関係なくすべての労働者に適用される法律です。パート・アルバイト、契約社員、派遣社員もその対象となります。一方、フリーランスや個人事業主のように「労働者」に該当しない場合は、労働基準法の適用外となり、割増賃金の支払い義務はありません。
また、フレックスタイム制や歩合給制を導入している場合でも、実際の労働時間に基づいて法定を超える部分には割増賃金の支払いが必要です。適正な労務管理と法令遵守は、従業員の安心感と働く意欲を高めるだけでなく、企業の信頼性向上にもつながります。
関連記事:パート従業員の残業時間に上限はあるの?気になる法律上のルール
2. 月60時間を超える時間外手当の計算方法

時間外労働に対する割増賃金(時間外手当)は、原則として、次の計算式で算出されます。
時間外手当 = 時間外労働の時間数 × 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率
月60時間を超える時間外労働については、超過分の時間に対して1時間あたりの基礎賃金に割増率50%以上を掛けて計算します。
ただし、月60時間超の時間外手当を算出する際には、夜勤や休日出勤との重複、あるいは代替休暇の取得状況も考慮しなければならないケースがあります。
関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など労働基準法の規定から基本を解説
2-1. 60時間超過の時間外労働と深夜労働が重なった場合
時間外労働は、深夜労働(22時〜翌5時)と重なる場合があります。この場合、深夜割増(25%以上)が加算されます。
つまり、月60時間を超える時間外労働と深夜労働が重なる場合は、時間外手当の割増率(50%以上)と深夜手当の割増率(25%以上)を合算して、75%以上の割増率で計算する必要があります。
2-2. 60時間超過の時間外労働と休日出勤の関係
月60時間を超える時間外労働と休日労働は、同じ時間として重なることはありません。なぜなら、法定休日におこなった労働は、たとえ1日の法定労働時間である8時間を超えて働いた場合であっても、すべて「休日労働」として扱われ、「時間外労働」には含まれないためです。
したがって、法定休日の労働には、月60時間超の時間外労働に対する50%以上の割増率は適用されず、35%以上(深夜労働があれば別途加算)の休日手当の割増率が適用されます。
一方、所定休日(法定外休日)に出勤があった場合、法定労働時間を超えて労働があれば、時間外労働と判断されます。この時間数が月60時間を超えれば、割増率50%以上を適用して時間外手当を計算しなければなりません。また、深夜労働と重なれば、割増率75%以上の適用が必要です。
このように、休日に出勤があった場合でも、それが法定休日か所定休日かによって、時間の区分や割増賃金の計算方法が異なるので、正確に区別して管理することが重要です。
関連記事:休日手当とは?休日出勤の割増率の種類や正しい割増賃金の計算方法を解説
2-3. 代替休暇を取得した場合
代替休暇とは、労働基準法に基づき、月の時間外労働が60時間を超えた場合に、その超過分に対する50%の割増賃金の支払いに代えて、休暇を付与することができる制度です。
この制度を導入するには、労使協定の締結が必要です。また、労働者は「代替休暇を取得する」か「割増賃金を受け取る」かを自ら選択できるため、企業側が一方的に代替休暇の取得を強制することはできません。代替休暇として付与できる時間は、次の計算式で算出されます。
(1ヵ月の時間外労働時間数 – 60時間)× 換算率
※換算率(例:25%)は、労使協定に基づき定められ、「代替休暇を取得しなかった場合の割増率(例:50%)」から「代替休暇を取得した場合の割増率(例:25%)」を差し引いて計算をします。
例えば、1ヵ月に72時間の時間外労働があった場合、労働者は3時間(換算率0.25)の代替休暇を取得できます。ただし、この場合、代替休暇を取得したとしても、25%分の割増賃金は必ず支払わなければなりません。つまり、このケースでは、月60時間を超える時間外労働については、「25%分の割増賃金を支払い、残りの25%相当分を代替休暇として付与する」という運用が可能です。
この他にも、2019年の働き方改革による法改正で有給休暇の取得義務化や時間外労働の上限規制などが設けられ、勤怠管理をするうえでは法改正の内容もしっかりと把握しておかなければなりません。当サイトでは法改正の内容とその対応法をまとめた資料を無料で配布しておりますので、法改正の内容があやふやな方は、ぜひこちらから「中小企業必見!働き方改革に対応した勤怠管理対策」をダウンロードしてご確認ください。
3. 月60時間を超える時間外手当の具体的な計算例
ここでは、次のように割増率を定め、時給2,000円の従業員を例に月60時間を超える時間外手当の具体的な計算方法を解説します。
- 月60時間以下の時間外労働:25%
- 月60時間超えの時間外労働:50%
- 深夜労働:25%
- 休日労働:35%
3-1. 月60時間超の時間外労働があった場合
月70時間の時間外労働が生じた場合、次のように時間外手当が計算されます。
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区分 |
時間数 |
割増率 |
賃金 |
|
時間外(月60時間まで) |
60時間 |
25% |
2,000円 × 1.25 × 60 = 150,000円 |
|
時間外(月60時間超え) |
10時間 |
50% |
2,000円 × 1.50 × 10 = 30,000円 |
このケースでは、時間外手当は合計180,000円支払う必要があります。
3-2. 深夜労働と月60時間超の時間外労働が重なった場合
月70時間の時間外労働がすべて深夜帯(22時~翌5時)に生じた場合、次のように時間外手当が計算されます。
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区分 |
時間数 |
割増率 |
賃金 |
|
時間外(月60時間まで) |
60時間 |
50%(※深夜割増加算) |
2,000円 × 1.50 × 60 = 180,000円 |
|
時間外(月60時間超え) |
10時間 |
75%(※深夜割増加算) |
2,000円 × 1.75 × 10 = 35,000円 |
このケースでは、時間外手当(深夜手当を含む)は合計215,000円支払う必要があります。
3-3. 所定休日に月60時間超の時間外労働が生じた場合
所定休日(法定外休日)に法定労働時間を超えた労働は「時間外労働」としてカウントされます。
例えば、所定休日に10時間勤務し、そのうち法定労働時間を2時間超えている場合、かつ月の時間外労働がすでに60時間を超えている場合の賃金の計算方法は次の通りです。
|
区分 |
時間数 |
割増率 |
賃金 |
|
通常勤務 |
8時間 |
– |
2,000円 × 1.00 × 8 = 16,000円 |
|
時間外(月60時間超え) |
2時間 |
50% |
2,000円 × 1.50 × 2 = 6,000円 |
この場合、通常賃金16,000円と時間外手当6,000円を合計し、22,000円が支給されます。
一方、これが法定休日の勤務であった場合、全時間が休日労働として扱われ、休日手当として27,000円(2,000円 × 1.35 × 10時間)の支給が必要です。
関連記事:休日手当の計算方法とは?休日出勤した場合の割増賃金や間違えやすいポイントを解説
3-4. 代替休暇を取得した場合
月60時間を超える時間外労働については、割増率50%のうち25%分を「代替休暇」として付与できます。つまり、60時間超の時間外労働1時間につき、0.25時間分の代替休暇を付与できる仕組みです。
例えば、月60時間を超える時間外労働が12時間発生した場合、代替休暇として付与できる時間は3時間となります。この3時間分の代替休暇をすべて付与した場合、50%の割増のうち25%分は休暇に置き換えられるので、賃金として支払うのは残りの25%分のみとなります。このときの時間外手当は次のとおりです。
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区分 |
時間数 |
割増率 |
賃金 |
|
時間外(月60時間まで) |
60時間 |
25% |
2,000円 × 1.25 × 60 = 150,000円 |
|
時間外(月60時間超え) |
12時間 |
25%(50%のうち25%を休暇で代替) |
2,000円 × 1.25 × 12 = 30,000円 |
この場合、60時間超の時間外労働については、25%分(6,000円相当)が3時間の代替休暇として付与され、残りの25%分のみが時間外手当として支払われます。したがって、時間外手当の支給額は180,000円となります。
4. 月60時間超えの割増賃金の支払いに関連するリスク

月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられたことで、企業には新たなコスト負担や法的リスクが生じています。ここでは、この法改正により発生しうる主なリスクについて詳しく解説します。
4-1. 人件費が圧迫する
月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が25%以上から50%以上へと引き上げられたことで、1ヵ月の時間外労働が60時間を超えた場合、従来よりも高い賃金を支払わなければなりません。
その結果、長時間労働が常態化している職場では人件費が大幅に増加し、企業の収益を圧迫するリスクが高まります。とくに中小企業にとっては、限られた予算や利益構造への影響が大きく、経営の安定性に直結する課題となりえます。
4-2. 正しく勤怠管理しなければ未払い賃金を請求されるリスクがある
時間外労働が適切に記録・管理されていない場合、本来支払うべき割増賃金が未払いとなり、従業員から遡って請求されるリスクがあります。
とくに、月60時間を超えた部分に対して50%以上の割増率が適用されていなかった場合には、労働トラブルや訴訟に発展するおそれもあります。そのため、正確な勤怠管理と給与計算がより重要になります。
関連記事:労働時間を1分単位で計算する原則はいつから?労働時間の把握の義務化を解説
4-3. 法令違反により労働基準監督署から是正勧告を受ける
適正な割増賃金の支払いがおこなわれていない場合、労働基準監督署の調査により是正勧告を受ける可能性があります。
是正勧告を受けた企業は、速やかに違反を是正しなければならず、改善措置や従業員への未払い分の精算などの対応が必要です。これにより、企業の信頼性や社会的評価が損なわれるリスクも生じます。
4-4. 労働基準法に基づき罰金や拘禁刑の罰則が課せられる
労働基準監督署の是正勧告に従わず、指摘された労働基準法違反の状態が是正されないまま継続した場合、その違反について送検され、企業や経営者が刑事責任を問われる可能性があります。
例えば、月60時間を超える時間外労働に対して法定の50%以上の割増賃金を支払わなかった場合は、労働基準法第37条違反となり、同法第119条により「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が課されるおそれがあります。
関連記事:従業員の労働時間の上限超過で企業が受ける罰則とその悪影響とは?
5. 60時間超残業における割増賃金率の法改正で企業がおこなうべき対応

割増賃金率の変更に合わせて、企業がおこなうべき対応はいくつかあります。労使間のトラブル防止や残業時間の削減ができるように、可能な範囲で対応していきましょう。
5-1. 就業規則の見直しと周知
給与規程については、評価基準をはじめ、社内制度全体を見直すことが重要です。とくに残業時間の取り扱いや社内規程については、重点的に確認する必要があります。
現行のルールに問題がないかどうかを判断する際には、厚生労働省のモデルケースを参考にするとよいでしょう。就業規則を変更する場合には、労働基準監督署への届出が必要となります。また、変更内容については従業員に対して十分に周知をおこなうことも大切です。
【就業規則の記載例(一部)】
1ヵ月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は次のとおりとする。1ヵ月の起算日は毎月1日とする。
- 時間外労働45時間以下:25%
- 時間外労働45時間超~60時間以下:35%
- 時間外労働60時間超:50%
なお、月60時間を超える時間外労働に対する割増率50%は法律で定められた最低基準です。就業規則で定める場合、これを上回る割増率を設定することも可能です。
5-2. 残業時間の可視化
月60時間を超える時間外労働を発生させないためには、従業員一人ひとりの残業時間を正確に把握することが不可欠です。そのため、勤怠管理システムの導入などにより、労働時間を客観的かつリアルタイムで管理できる体制を整えることが重要となります。
労働基準法では、原則として1日8時間・週40時間を超える労働(法定労働時間)を禁止しており、これを超えて労働させるには、いわゆる「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
36協定を締結した場合でも、時間外労働には上限が設けられており、原則として「月45時間・年360時間」を超えることはできません。ただし、臨時的かつ特別な事情がある場合に限り、特別条項付き36協定を締結することで、次のすべての条件を満たす範囲で上限を超える時間外労働が認められます。
- 時間外労働の合計は年間720時間以内
- 時間外労働・休日労働の合計は月100時間未満
- 時間外労働・休日労働の合計平均は2~6ヵ月のすべてで月80時間以内
- 月45時間を超過した時間外労働は年間6ヵ月まで
このように、36協定を締結していても時間外労働には厳格な上限があり、月の途中であってもこれを超えた時点で違法となります。そのため、給与計算のためだけでなく、法令遵守の観点からも、日々の労働時間を正確に把握し、超過を未然に防ぐ仕組みを構築することが大切です。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
5-3. 残業削減に向けた業務効率化
残業は少ないほど従業員の負担が軽減され、企業側も人件費を抑えることができます。月60時間を超える時間外労働は、従業員と企業の双方にとって大きなデメリットとなるので、残業時間の削減につながる業務の効率化を早急に進める必要があります。
そのためには、業務マニュアルの整備や、新しいツール・作業環境の導入を通じて、業務をより効率的に進められる体制を構築することが重要です。また、残業の状況を適切に管理するための新たな評価制度を導入し、従業員の時間管理に対する意識を高めることも有効です。
このような取り組みにより、働き方改革に沿った企業文化の醸成や法令遵守の推進が期待でき、従業員がより良い職場環境で働けるようになります。結果として、企業全体の生産性向上にもつながり、持続可能な成長の実現に寄与します。
5-4. 代替休暇制度の導入
代替休暇制度を導入すれば、従業員にとっては十分な休養を確保でき、企業にとっても割増賃金の一部を休暇に振り替えることで人件費の負担を抑えられるなど、双方にメリットがあります。
代替休暇を適用するためには、あらかじめ労使協定を締結しておくことが不可欠です。労使協定では、次の事項を定める必要があります。
- 代替休暇の時間数の算定方法
- 代替休暇の付与単位
- 代替休暇を付与できる期間
- 代替休暇の取得方法および割増賃金の支払日
代替休暇は、労働者の十分な休息を確保する観点から、原則として1日または半日といったまとまった単位で付与します。また、労使協定で定めておけば、端数として生じた時間について、年次有給休暇などを組み合わせて代替休暇として付与することも可能です。
さらに、代替休暇を扶養できる期間について、長時間労働がおこなわれた月に近接した時期に休息を与えることが望ましいとされており、時間外労働が60時間を超えた月の末日の翌日から2ヵ月以内とする必要があります。
このように、代替休暇制度の導入・運用には細かなルールがあります。あらかじめ法令や厚生労働省の資料を確認し、適正に制度を設計・運用することが重要です。
参考:代替休暇制度を導入するための労使協定を締結する場合のポイント|厚生労働省
5-5. 働き方改革推進支援助成金の活用
割増賃金率の引き上げに伴う法改正へ対応するために、勤怠管理システムを導入したり、人材確保の取り組みを進めたりするには、一定のコストが発生します。このような費用負担を軽減する手段として、「働き方改革推進支援助成金」の活用を検討することをおすすめします。
働き方改革推進支援助成金は、時間外労働の削減など労働環境の改善に取り組む中小企業を対象とした制度です。この助成金を活用すれば、資金的な負担を抑えながら、残業時間削減や業務効率化といった施策を推進することが可能になります。
なお、令和7年度の交付申請受付は令和7年(2025年)11月28日で終了しています。令和8年度についても、働き方改革推進支援助成金の交付が実施される可能性があるので、事前に情報を確認しておくとよいでしょう。
参考:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
参考:令和8年度概算要求の概要(雇用環境・均等局)|厚生労働省
6. 月60時間を超える時間外労働をなくすための対策

そもそも、労働基準法の規定を超える時間外労働をおこなう場合には、労使間で36協定を締結しなければなりません。ただし、36協定を締結している場合でも、無制限に時間外労働が許容されるわけではなく、時間外労働は必要最小限に留めるべきです。
とくに月60時間を超える時間外労働は、従業員・企業双方にとって大きな負担となるため、できる限り削減することが推奨されています。そこで、時間外労働の削減に向けた具体的な取り組みについても確認していきましょう。
ここでは、厚生労働省による中小企業における長時間労働見直し支援事業検討委員会が発表した「運送業・食料品製造業・宿泊業・飲食業・印刷業を例に時間外労働削減の好事例集」を参考にした対策例を紹介します。取り上げているのは、とくに人件費削減の効果が高かったケースです。
6-1. 時間管理に関連した評価制度の導入
なかでも、コスト削減に対する効果的な取り組みとして成果が見られたのが、時間外労働に関する評価項目を人事制度に組み込んだ事例です。例えば、リーダークラスの従業員に対する評価制度において、部下の残業時間に応じて報酬が変動する仕組みを導入したケースがあります。
管理職自身の時間管理意識を高めれば、部下の働き方への関心や介入が促進され、結果として各従業員の業務状況を的確に把握できるようになります。このような取り組みは、より強固なマネジメント体制の構築にもつながると期待されています。
6-2. トップダウンによる残業削減計画の推進
経営陣が主導して、時間外労働の削減に向けたプロジェクトを推進することも、効果的な手段の一つです。とくに高い効果が見られたのが「残業の事前申請制度」の導入です。
あらかじめ上司の許可を得る仕組みを設けることで、業務の見直しや割り振りの調整、あるいは作業の翌日への持ち越しなど、柔軟な対応が可能となります。このような仕組みにより、現場レベルでの無駄な残業を防止するとともに、組織全体での時間管理意識を高めることが期待されます。
関連記事:残業申請制とは?申請ルールの作り方やその例、運用方法も紹介
6-3. 労働時間の是正を目的とした教育の実施
具体的な取り組みの一例として挙げられるのが、従業員のマルチスキル化の推進です。例えば、担当業務をローテーション制にする、あるいは専門資格の取得を広く支援するなど、業務の偏りを解消するための教育やサポートをおこなうことが有効です。
同等のレベルで業務を遂行できる人材が増えることで、チーム内での柔軟な協力体制が築かれ、現場全体の連携強化にもつながります。
関連記事:残業削減のためのアイデア7選!残業の原因を分析して効果的な対策を打とう
6-4. 効果的な勤怠管理システムの導入
勤怠管理システムの導入により、従業員の労働時間を可視化でき、時間外労働の抑制につながります。出退勤や残業時間などのデータは自動で集計され、リアルタイムでの労働時間の把握が可能になります。
また、先進的なシステムでは、従業員ごとの勤務状況を一覧で確認できるダッシュボード機能を備えていることが一般的です。これにより、部門ごとや個人単位での時間外労働の発生状況を常に把握でき、早期対応やマネジメントの最適化にも役立ちます。
7. 月60時間超残業の割増賃金に関連するよくある質問
ここでは、月60時間を超える残業に関してよく寄せられる疑問に回答します。
7-1. 固定残業代制(みなし残業代制)でも割増賃金率50%以上は適用される?
固定残業代制(みなし残業代制)であっても、月60時間を超える時間外労働には50%以上の割増率が適用されます。固定残業代は、あらかじめ一定時間分の時間外手当をまとめて支払う制度にすぎず、割増賃金の支払い義務そのものを免除するものではありません。
そのため、実際の時間外労働が固定残業時間を超えた場合には、その超過分について、法定の割増率に基づく残業代を別途支払う必要があります。とくに月60時間を超える時間外労働については、固定残業代に含まれていない限り、50%以上の割増率で追加支給しなければなりません。
また、固定残業時間を設定する際は、36協定で認められている時間外労働の範囲内で設定する必要があります。特別条項のない36協定では月45時間が上限となるので、それを超える固定残業時間を設定すると違法となるリスクがあります。
関連記事:固定残業代の計算方法とは?2種類の計算方法をわかりやすく解説
7-2. ダブルワーク(副業・兼業)をする場合の月60時間超残業の割増賃金の計算方法は?
副業や兼業をしている場合でも、労働時間はすべての勤務先で通算して計算されます。これは労働基準法第38条の「労働時間通算の原則」に基づくものです。例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
- A社:月40時間の時間外労働
- B社:月30時間の時間外労働
この場合、通算すると月70時間の時間外労働となり、60時間を超える10時間分については、50%以上の割増賃金の対象になります。割増賃金の支払い義務は、「労働契約を締結した順序」と「所定外労働が実際におこなわれた順序」の2段階で判断します。
まず、労働者が複数の使用者と労働契約を締結している場合には、各使用者における所定労働時間を通算し、その合計が法定労働時間を超えるかどうかを判定します。この際、所定労働時間の通算により法定労働時間を超えることとなった部分については、後から労働契約を締結した使用者が、その超過部分に対応する割増賃金を支払う義務を負います。
一方、所定外労働については、労働契約の締結順は考慮されず、実際に所定外労働をおこなわせた順序で労働時間を通算します。その結果、通算労働時間が法定労働時間を超えることとなった場合には、その超過を生じさせた使用者が、当該法定労働時間超過部分について割増賃金を支払わなければなりません。
例えば、複数の会社における所定労働時間を通算しても法定労働時間を超えないケースで、A社で40時間の時間外労働をおこない、その後B社で30時間の時間外労働をおこなった場合、月60時間を超える部分に該当する10時間分については、B社が50%以上の割増率で割増賃金を支払う義務を負います。
各企業は、従業員から副業先での労働時間を申告させるなどして、通算労働時間を正確に把握する仕組みを整備することが重要です。自社の労働時間だけを管理している場合、意図せず未払い賃金が発生するリスクがあるので注意しましょう。
参考:副業・兼業における労働時間の通算について(労働時間通算の原則的な方法)|厚生労働省
関連記事:本業と副業で可能な労働時間とは?通算ルールや割増賃金の注意点を解説
8. 時間外労働の割増賃金を正しく支給し、残業時間は可能な限り減らそう

労働基準法における時間外労働の上限は、原則として「月45時間・年間360時間」と定められています。これを超える残業は、基本的に特別な事情がある場合に限り認められていますが、その「特別な事情」とは、あくまで臨時的なものに限られ、例えば決算期の業務や突発的なトラブル対応などが該当します。
とくに月60時間を超える時間外労働は例外的なケースとされており、通常よりも高い割増賃金率が適用されるのはそのためです。企業としては、まずは時間外労働に依存しない労務管理を目指す姿勢が重要だといえます。やむを得ず長時間の残業が発生する場合でも、割増賃金を適切に計算し、正確に支給することが重要です。
関連記事:割増賃金とは?深夜や休日の割増賃金率や計算、副業の取扱などをわかりやすく解説
従業員の多様な働き方が進む中、割増賃金の計算はますます複雑化しています。しかし割増賃金の計算ミスは、未払い賃金の請求といった経営リスクに直結するため、労務担当者は注意が必要です。
そこで、当サイトではこれらの疑問を解決する資料を無料配布しており、複雑な割増率をケース別に図解しているほか 、深夜労働・時間外労働との組み合わせなど、複雑なパターンを図解で分かりやすく解説 しています。
実例を用いた計算方法も紹介しており 、これ一つで正確な割増賃金計算をマスターできます。参考にしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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