休職中の従業員の社会保険料はどうなる?払えない際の対処法・注意点を解説
更新日: 2025.2.21
公開日: 2025.2.21
OHSUGI
「休職中の従業員は社会保険料を支払う?」
「休職中に社会保険料が支払えない従業員の対処法は?」
休職中の従業員における社会保険料の取り扱いは、企業と従業員の双方にとって重要な課題です。休職中であっても社会保険料の支払い義務は継続するため、徴収方法や免除条件、対応策について適切に理解しておかなければなりません。
本記事では、休職中の社会保険料の支払い義務や金額、社会保険料が免除になるケースを解説します。休職中の従業員が社会保険料を払えない場合の対処法や注意点も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
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1. 休職している従業員も社会保険料の支払い義務が発生する
休職中の従業員であっても、社会保険料の支払い義務は継続します。休職中でも雇用契約が存続しており、社会保険の被保険者資格が維持されるためです。
休職中の従業員に給与を支払っている場合は、従業員負担分を給与から控除できます。しかし、休職中の従業員に給与を支払っていない場合は天引きができないため、就業規則で徴収方法を定めておくことが大切です。
なお、健康保険法第161条や厚生年金保険法第82条では、被保険者分と自己負担分を納付する義務が事業者に課されています。休職中の従業員負担分の納付を怠ると事業主が責任を負う点に注意が必要です。
2. 休職している従業員の社会保険料の金額
休職中でも従業員は社会保険の被保険者資格を維持するため、健康保険料や厚生年金保険料は休職前と同じ金額が発生します。給与額ではなく「標準報酬月額」を基準に計算し、給与が停止されても金額に変動しないためです。
標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険、介護保険など社会保険料の計算を実施する際に用いられる仕組みのことを指します。毎年7月に、4〜6月に支払われた給与の平均額をもとに割り出されるのが特徴です。
なお、従業員が傷病手当金を受給している場合も、社会保険料の免除はありません。傷病手当金自体は非課税所得であるため所得税や住民税は発生しませんが、社会保険料の支払い義務が継続する点に注意が必要です。
3. 休職中の従業員の社会保険料が免除になるケース
休職中の従業員の社会保険料が免除になるケースは、以下のとおりです。
- 産前産後休業(産休)
- 育児休業
事前に免除になるケースを把握して、スムーズに手続きを進められるよう準備しておきましょう。
3-1. 産前産後休業(産休)
産休期間中は、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。
産前産後休業(以下、産休)中の社会保険料免除は、平成26年4月1日から導入された制度です。出産による従業員と事業主双方の負担を軽減することを目的に導入されました。
産前産後の保険料免除の対象期間は、産休の開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月までです。7月6日に産休を開始して10月11日に終了した場合は、7月分から9月分までの社会保険料が免除されます。
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き|日本年金機構
3-2. 育児休業
育児休業中は、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。育児・介護休業法にもとづき、満3歳未満の子どもを養育するために取得する育児休業期間中に適用される仕組みです。
育児休業の開始日が含まれる月から、終了日の翌日が含まれる月の前月までの保険料が免除されます。10月31日に復帰した場合は、復帰翌日(11月1日)が属する月(11月)の前月である10月までが保険料免除期間です。
また、1ヵ月間に14日以上の育児休業を取得しているなら、育児休業が1ヵ月で終了した場合も保険料を免除できます。例えば、12月10日から1月10日まで育児休業を取得した場合は、12月の保険料が免除の対象です。
育児休業は自動的に適用されるわけではありません。免除を受けるためには、事業主が日本年金機構に「育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。
参考:育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき|日本年金機構
参考:令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました|日本年金機構
4. 休職中の従業員に社会保険料を徴収する方法3選
休職中の従業員に社会保険料を徴収する方法は、主に以下の3つです。
- 毎月一定額を徴収する
- 従業員の傷病手当金から支払う
- 復職後の賞与で相殺する
4-1. 毎月一定額を徴収する
休職中の従業員に社会保険料を徴収する方法の代表例に、毎月一定額を徴収することが挙げられます。
企業側が毎月一定額を徴収する仕組みを整えることで、社会保険料の未納を防止可能です。一括負担による従業員の経済的負担も軽減できるため、長期休職を希望する従業員でも安心して休職できます。
毎月一定額を徴収する際は、企業が毎月請求書を発行し、従業員に対して振込先や支払期日を明確に伝えることが一般的です。従業員との間で支払い方法や期日について事前に合意して文書化することで、不測のトラブルや誤解を防げるでしょう。
就業規則に社会保険料徴収のルールを明記しておくことが大切です。
4-2. 従業員の傷病手当金から支払う
休職中の従業員から社会保険料を徴収する際、傷病手当金を活用する方法もあります。傷病手当金とは、従業員が業務外の病気やケガで働けず給与の支払いが停止された際に、健康保険から支給される給付金のことです。
傷病手当金は給与とは異なる性質を持つため、本来であれば社会保険料を直接控除することはできません。しかし、従業員本人の同意を得た場合は、特例として企業側が傷病手当金を代理受領し、社会保険料を差し引いて支払い可能です。
4-3. 復職後の賞与で相殺する
休職中の従業員から社会保険料を徴収するなら、復職後の賞与で相殺する方法も一つです。休職中に従業員負担分の社会保険料を企業側が立て替えていた場合は、立て替え分を賞与から控除することで清算できます。
賞与は通常の給与よりも高額であるため、一度にまとまった金額を相殺しやすい点がメリットです。未回収リスクを低減できるうえ、従業員の金銭的負担も軽減できます。
ただ、賃金控除には従業員の事前同意が必要です。一方的な控除は法律違反となるため、相殺に関する同意書(相殺合意書や立替金弁済合意書)を用いて必ず従業員の同意を得ましょう。
適切な手続きを踏んで円滑に徴収し、従業員との信頼関係維持を図ることが重要です。
5. 休職中の従業員が社会保険料を払えない場合の対処法
従業員が自身で支払うことが困難な場合は、企業が費用を一時的に立て替える方法が一般的です。
企業が社会保険料を立て替える場合は、従業員負担分と事業主負担分の両方を納付します。立て替えた金額は、復職後に賞与から控除して回収するか、振り込みなどで返済してもらいましょう。
休職期間が長期化したり、従業員が復職せず退職したりする場合は、立て替えた費用の回収が困難になるおそれがあります。トラブルを避けるためにも、あらかじめ就業規則や労使協定で社会保険料の回収方法を定めておくことが大切です。
ただ、長期休職者には、企業側も負担軽減策の検討が求められます。傷病手当金のような公的給付制度を紹介するなど、従業員と企業双方が無理なく対応できる仕組みを整えることが重要です。
6. 休職している従業員の社会保険料を会社が立て替える際の3つの注意点
休職している従業員の社会保険料を会社が立て替える際の注意点は、以下の3つです。
- 給与・賞与・退職金で相殺するなら相殺合意をとる
- 休職願や復職願に立替金の返済に関する内容を記載する
- 賃金控除の労使協定を結ぶ
6-1. 給与・賞与・退職金で相殺するなら相殺合意をとる
休職中の従業員に対する社会保険料の立て替え分を給与や賞与、退職金で相殺する場合は、必ず相殺合意をとりましょう。
労働基準法第24条では、賃金支払いは基本的に全額払いであることが定められています。相殺をする場合は、労働者が自由意思に基づいて相殺に同意し、合理的な理由によって裏づけられる場合のみ可能です。
合意は書面でおこない、労使協定にも休職中の社会保険料の取り扱いについて明確に定めておきましょう。
6-2. 休職願や復職願に立替金の返済に関する内容を記載する
休職中の従業員に代わって会社が社会保険料を立て替える際は、休職願や復職願に立替金の返済に関する内容を記載することも大切です。
休職願や復職願に記載することで、従業員は自らの負担義務を認識し、会社側も法的根拠を持って回収を進められます。
休職中に発生する社会保険料の労働者負担分を会社が立て替える場合、復職後に返済する義務がある旨を明記するとよいでしょう。
6-3. 賃金控除の労使協定を結ぶ
休職している従業員の社会保険料を会社が立て替える際は、賃金控除の労使協定を結ぶことも大切です。労使協定は、企業と従業員双方の信頼関係を維持するために欠かせません。
労使協定を締結せずに復職後の給与・賞与から社会保険料を控除すると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。控除対象となる費用や控除の具体的な方法を明記し、従業員との合意を得るようにしましょう。
7. 休職中の従業員の社会保険料は適切に徴収しよう
休職中でも、社会保険料の支払い義務は継続します。給与が停止している場合でも標準報酬月額を基準に計算されるため、金額に変動はありません。
従業員が支払い困難な場合は企業側が立て替えることもありますが、立替金の返済については事前に合意を取りましょう。就業規則や労使協定で明確に定めておくことが求められます。
休職中の社会保険料は、従業員との信頼関係を維持しながら適切な対応をおこなうことが重要です。社会保険料の取り扱いについて事前にルールを整備し、トラブル防止に努めましょう。
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
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