労務管理の基礎知識!意味や目的、必要性、仕事内容を徹底解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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労務管理の基礎知識!意味や目的、必要性、仕事内容を徹底解説

様々な人を管理する

「労務管理」とは、従業員にかかわる職場環境を管理する業務です。具体的には、従業員の勤怠や福利厚生といった労働に関連することを管理したり、健康やハラスメントなどの対策をおこなったりします。

本記事では、労務管理の重要性や具体的な業務内容について詳しく解説していきます。

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1. 労務管理の定義とは

会議する人たち

労務管理とは、従業員の勤怠状況や福利厚生など、労働に関するさまざまな事項を適切に管理することを指します。管理の対象となる具体的な項目には、労働時間や賃金、業務内容など、労働契約に関わる内容が含まれます。

労務管理では労働に関する管理のほか、健康やハラスメントなどの対策もおこないます。つまり、労務管理は従業員が安心して働くための「職場づくり」の仕事でもあるのです。企業の大小問わず、すべての企業に労務管理の業務が必要となります。

1-1. 企業における労務管理の目的・必要性

企業が所有する経営資源には、ヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産などがありますが、人材の採用・管理など「ヒト」に関する業務は、どの企業においてもプライオリティが高いでしょう。なぜなら企業活動の効果は、人材の量・質に大きく影響するからです。

労務管理の主たる目的は、人材の生産性の向上になります。安心して働ける環境や気を遣わずに働ける環境など、労働環境を適切な状態に維持し続けることが業務であるがゆえに、重要な役割だといえるでしょう。

関連記事:労務とは?人事との違いや仕事内容、労務に向いている人や資格について解説

1-2. 労務管理と勤怠管理、人事管理の意味の違い

バックオフィス業務の中でも細かく業務がわかれており、労務管理と勤怠管理、人事管理の違いはよく混同されがちです。端的に説明すると以下の違いがあり、上から順に管理の範囲が狭くなります。

  • 人事管理:人材の処遇を管理
  • 労務管理:労使関係、労働条件を管理
  • 勤怠管理:労働条件の中でも特に、労働時間や休日などの分野を管理

人事管理とは、企業内で人材をより効果的に活用していくために、規則や処遇を定めて適切に運用していくことを指します。人事評価や人材育成、採用・退職の手続きをおこなうことが基本的な業務になります。従業員の処遇も含めた人事に関連する業務の大枠が人事管理だと捉えてよいでしょう。

一方で労務管理は、特に労使の雇用関係と労働条件に特化したものを指します。例えば、労働時間や賃金のほか、休日・休暇や福利厚生、賞与についての取り決め・計算・管理も労務管理に含まれます。福利厚生では、社会保険や雇用保険、労災保険の運用も労務管理の業務です。
そのほか、労働基準法や男女雇用機会均等法などの法律に基づき、労働者が働きやすい環境を整備していくことも重要な業務です。

最後に勤怠管理は、労務管理の中でも特に勤務状況の把握・管理に特化した業務を指します。労務管理の一つに勤怠管理があると考えてよいでしょう。

勤怠管理では、従業員の労働時間や残業時間だけでなく、出勤や欠勤、遅刻や早退なども管理します。また、年次有給休暇の取得状況を管理するのも、勤怠管理に含まれます。労働基準法では賃金台帳や出勤簿の作成が義務付けられており、法令遵守のためにも勤怠管理は不可欠な業務の一つです。

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1-3. 労務管理を担当する人

企業の労務管理を担当する部門は、人事部、労務部(労務課)、総務部などがあります。これらの部門の長は「労務管理全体の責任者」として業務を遂行しますが、労務管理の担当者の設置は法的に義務付けられているわけではありません。しかし、一部の役割、例えば「衛生管理者」は法的に選任が義務づけられています。

衛生管理者は、従業員の危険防止や健康増進、職場の衛生改善を担う役職であり、労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業所においては必須です。これは労務管理の中でも特に重要な役割です。

また、管理監督者についても、労務管理を担当する人に当たります。管理監督者は労働基準法で定義される地位で、経営者と一体的な立場にある者とされています。労働条件の決定に関する権限を持ち、労働時間や休憩、休日の制限を受けない点が特徴です。

「管理監督者」と「管理職」は異なり、管理監督者として認められるためには、重要な職務内容や権限を持ち、労働時間の規制を超えて活動せざるを得ない必要があります。単なる役職名としての「管理職」では、この権限は認められません。また、管理監督者には残業代が支給されない特例もありますが、それは自らの裁量で経営判断をおこなえる権限を有する場合に限ります。

なお、労働基準法上の管理監督者と認められる場合でも、深夜労働の割増賃金は支払わなければならないので注意しましょう。

関連記事:労働基準法第41条第2号に規定された管理監督者について詳しく解説

2. 労務管理の基本的な仕事内容

PC作業しながらメモを取る人

次に、労務管理における具体的な仕事内容を解説します。労務管理のイメージがより明確になるはずなので、ぜひ参考にしてみてください。

2-1. 法定三帳簿の作成

労務管理の基本項目となる「法定三帳簿」を作成します。法定三帳簿は「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つに分類されています。作成だけでなく、紛失しないように厳重に保管するのも労務管理の仕事です。いずれも記載項目と保存期間が法令で決められているため注意しましょう。

関連記事:勤怠管理は何をチェックするべき?用意すべき法定三帳簿とは?

労働者名簿

労働者名簿は、従業員一人ひとりの情報をまとめたものです。
氏名や生年月日、住所、性別など、従業員の情報を詳しくまとめています。
この労働者名簿の保存期間は5年(当面の間は3年)であり、退職・解雇・死亡の日が起算日として設定されています。

▼労働者名簿についてより詳しく知りたい方はこちら
労働基準法第109条規定の労働者名簿の正しい取り扱い方や保存について

賃金台帳

賃金台帳は、従業員一人ひとりの賃金の支払い状況をまとめたものです。
氏名、性別、賃金の計算期間、労働時間数、基本給や手当等の種類と額、控除項目と額といった項目をまとめます。
賃金台帳の保存期間も5年(当面の間は3年)であり、起算日は原則「最後の賃金について記入した日」となります。

▼賃金台帳についてより詳しく知りたい方はこちら
賃金台帳とは?記載事項や作成方法、給与明細との違い・代用できるかを解説

出勤簿

出勤簿は、従業員の出勤状況を記録したものです。
具体的には、タイムカード等の記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、労働日数、労働時間などがあげられます。
保存期間は5年(当面の間は3年)であり、原則最後の出勤日が起算日となります。

▼出勤簿についてより詳しく知りたい方はこちら
出勤簿とは?役割や必要項目、自作する際の注意点を解説

2-2. 労働契約として雇用契約書の作成

労務管理では「労働条件通知書」の作成もおこないます。
労働条件通知書は、企業と従業員が労働条件をもとに契約を結んだ証明となる書類で、労働基準法により発行が義務付けられています。
労働条件通知書は、新卒入社または契約社員の雇用時、契約社員の労働契約更改時期に作成します。

なお、雇用契約書が労働条件通知書を兼ねる場合には、以下の項目を含める必要があります。

  • 労働契約の期間
  • 就業する場所
  • 従事する業務内容
  • 始業・終業時間
  • 交代制のルール
  • 所定労働時間を超える労働の有無
  • 休憩時間・休日・休暇
  • 賃金の決定・計算・支払方法・締切日・支払日
  • 昇給に関する事項
  • 退職に関する規定

パートタイム労働者については、下記の4項目も追加で明示する必要があります。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口の担当者の部署・役職・氏名

なお、2024年4月から労働条件明示ルールが変更されているので、明示事項について改めて確認するようにしましょう。

▼雇用契約についてより詳しく知りたい方はこちら

【2024年4月】労働条件明示のルール改正の内容は?企業の対応や注意点を解説
雇用契約とは?法的な位置付けと雇用契約書を作成すべき理由を解説
パートタイマーの雇用契約書を発行する際に確認すべき4つのポイント

2-3. 就業規則の作成

常時10人以上の従業員を雇用する場合、労働基準法の規定に基づいた「就業規則」を作成しなければなりません。
作成後は所轄の労働基準監督署長へ提出する必要があり、就業規則を変更する際にも同じように届出をおこないます。

就業規則に記載する内容には、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」の2つがあるため、記載漏れがないように確認しながら作成しましょう。

▼就業規則についてより詳しく知りたい方はこちら
労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務

2-4. 社会保険や雇用保険の加入手続き

新入社員の「社会保険」や「雇用保険」の加入手続きも労務管理の業務です。
社会保険は所轄の年金事務所、または加入している健康保険組合で資格取得手続きを実施します。

また、雇用保険に関しては所轄のハローワークでの手続きとなります。
提出書類については以下をご確認ください。

  • 厚生年金保険:厚生年金保険被保険者資格取得届(添付書類は原則必要なし)
  • 健康保険:健康保険被保険者資格取得届(添付書類は原則必要なし)
  • 雇用保険:雇用保険被保険者資格取得届

▼社会保険の届出について詳しく知りたい方はこちら
社会保険資格取得届とは?提出が必要なケースや提出先、添付書類について解説

2-5. 勤怠管理

従業員の勤務状況を記録する「勤怠管理」もおこないます。
具体的な記録内容としては、始業や終業時刻、時間外労働時間数、休日労働時間数、早退などがあげられます。

▼そもそも勤怠管理とは?といった方はこちら

勤怠管理とは?意味や目的・必要性など基礎知識から人事総務向けの注意点

2-6. 給与計算

労務管理の基本的な仕事内容の一つとして、給与計算は非常に重要です。給与計算ではまず、労働契約や就業規則に基づき、従業員ごとの給与や各種手当、賞与を算定します。また、勤怠のデータをもとに正確な給与額を導き出す必要があります。

さらに、社会保険料や雇用保険料とその控除額、税金なども正確に計算することが求められます。特に従業員数が増えたり、雇用形態が多様化したりすると、計算は複雑化し、業務量も増大します。これらの給与計算のスムーズな運用のためには、経営者や人事担当者が労務管理の基本知識や具体的な業務内容について十分理解し、適切な資格や知識を身につけることが重要です。

関連記事:【図解】給与計算ガイド!例を用いて給与計算のやり方を徹底解説!

2-7. 従業員の安全衛生管理や職場環境改善

労働安全衛生法によって、従業員の健康管理である「安全衛生管理」が義務付けられています。
具体的な安全衛生管理は、事業場における安全衛生を確保するための措置、従業員における健康の保持増進を図る対策などです。
社内の職場環境を整えるためにも、従業員の健康管理も労務管理としておこないます。

2-8. 福利厚生の整備

労務管理の基本的な仕事内容として、福利厚生の整備は重要な役割を果たします。福利厚生とは、給与や賞与とは別に従業員とその家族に提供する報酬です。健康保険や雇用保険などの社会保険は法定福利とよばれ、法律で定められた福利厚生です。一方、法定外福利は企業独自の福利厚生を指し、例えば社宅の提供、通勤手当、社員食堂の運営、育児支援、資格取得のサポートなどがあります。

これらの福利厚生の整備・管理は、労務管理の一環として重要であり、人事担当者にとって具体的かつ詳細な知識が求められます。適切な福利厚生の提供は、従業員の満足度や企業の魅力を高める効果があります。このため、経営者や人事担当者は福利厚生の最新トレンドや法令の改定に敏感であり、常に最新情報を収集し対応することが求められます。

関連記事:福利厚生とは?メリットやデメリットを簡単に解説

2-9. ハラスメント対策

「パワーハラスメント対策」が2020年4月から法制化されたため、労務管理の業務として必要な措置をおこなうことが義務となります。

また、それに伴いセクシュアルハラスメントなどの対策も強化されました。法的責任や社会的制裁、業績悪化などのリスクを防止するためにも、ハラスメント対策については事前に確認しておくことをおすすめします。

関連記事:ハラスメントの定義は?予防するための対策や研修を解説

2-10. 退職手続き

「退職手続き」も労務管理の業務の一つであり、社会保険や雇用保険の資格喪失届の提出、労働者名簿の更新、退職手当の支給といった内容が含まれます。
従業員の退職後も書類のやり取りが必要となるため、労務管理の担当者は従業員の退職後の連絡先も必ず把握しておきましょう。

▼退職手続きについてより詳しく知りたい方はこちら
労働基準法における退職の定義と手続き方法を分かりやすく解説

2-11. 休職・異動手続き

育児休業や傷病休職、介護休職などの「休職・異動手続き」も労務管理における業務の一つです。休職に伴う保険給付の申請や、傷病手当金の請求についても、会社側の手続きが必要となります。

一方で、異動手続きに関しては、住所変更や社会保険料の報酬月額変更届を提出しなければならない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

2-12. 年末調整と法定調書作成

年の暮れになると、従業員のその年の納めるべき所得税額を確定させるために、労務管理の担当者は、年末調整業務もおこなう必要があります。毎月の勤怠管理や給与計算に加えて、年末調整業務もしなければならないため、担当者の業務負担は大きくなりがちです。

また、年末調整が完了したら、法定調書を作成し、期限までに提出もする必要があります。抜けや漏れを防ぐためにも、年末調整のスケジュールを明確にし、余裕をもって手続きを進めることが大切です。

このように労務管理では勤怠管理や給与計算、入退社手続き、ハラスメント対策など、やるべき業務は多岐にわたります。これらに関わるすべての人事データをジンジャーに集約し、「1つのデータベース」で管理することで、各システムでの情報の登録や変更の手間を削減することが可能です。ジンジャー人事・勤怠・雇用契約など気になるサービスがございましたら、こちらから無料で資料をご覧頂くことが可能なのでご検討ください。

3. 労務管理の担当者として備えておくべき必要知識や資格

ノートを取って浮かび上がる

労務管理の担当者は、勤怠管理や入退社手続きなど、あらゆる業務に携わるため、多岐にわたる知識が求められます。また、近年では、IT技術の発展に伴い、人事管理システムや労務管理システムといったITツールの導入・活用が進んでいます。

このような変化を背景に、現代の労務管理担当者には、従来とは異なる資質も求められるようになっています。ここでは、労務管理の担当者として備えておくべき必要な知識や資格について詳しく紹介します。

3-1. 労務管理において備えておくべき知識や資質

労務管理において求められる知識や資質には、人件費を適正に管理しつつ組織の収益性を高める視点や、従業員のモチベーションを向上させる工夫、そして労働に関する課題の原因を的確に把握し、適切な対応策を講じる力などが挙げられます。これらを踏まえたうえで、短期的な対応だけでなく、長期的な視点をもって人と組織に向き合う姿勢が重視されます。そのうえで必要になる知識や資質のポイントを紹介します。

法改正や法令に関する知識

労務管理において、法改正や法令に関する知識は極めて重要です。例えば、労働基準法、労働契約法、最低賃金法をはじめとする各種法律は、企業の労務管理業務の土台を形成しています。

今後も法改正や新法の制定が予想されるため、企業の経営者や人事担当者はこれに敏感である必要があります。各法律の内容をしっかりと理解し、適切な対応を取ることで、労働条件や労働環境を整え、従業員との信頼関係を築くことが可能です。労働安全衛生法や育児・介護休業法なども随時改正されることがあり、その都度、従業員の働きやすさを確保するための対策が求められます。

関連記事:労働基準法とは?法律の要点や雇用者側の実務上のルールをわかりやすく解説

労働状況の把握や業務改善における責任感

企業の経営者や人事担当者が労務管理を効果的におこなうためには、まず労働状況の把握が不可欠です。労働者の視点を尊重し、安全と健康の確保を重視しながら、長時間労働の抑制や多様な人材(女性・高齢者・障害者)の活躍推進に努めることが求められます。

具体的には、労働時間の厳格な管理やリモートワークの効果的な導入などが挙げられます。また、働き方の多様化や雇用の国際化に対応するためには、柔軟な思考と継続的な学習が必要です。労務管理の基本知識に加え、ITリテラシーを兼ね備えた人材が活躍できる場を提供することが、これからのビジネス成功の鍵となります。

3-2. 労務管理において持っておくと良い資格

労務管理に役立つ資格は、さまざまあります。資格の取得を目指すことで、労務管理を担当するうえで役立つ知識が身につけられ、実務にも活かすことが可能です。ここからは、労務管理において持っておくと良い資格について詳しく紹介します。

労務管理士

労務管理士は「労務管理」の業務遂行能力を認定する民間資格であり、企業の経営者や人事担当者にとって非常に有用です。この資格は一般社団法人日本人材育成協会と一般社団法人日本経営管理協会が運営しています。取得することで関連法規や実務に関する専門的知識を有していることを証明できます。

労務管理士の資格は、公開認定講座や通信講座など多様な学びの方法が提供されており、特にWeb資格認定講座での合格が目指されます。この資格を持つことで、労務管理の基本知識だけでなく、具体的な業務内容やそのための専門的な知識も身につけられ、企業の労務管理体制の向上に大いに役立つでしょう。

参考:労務管理士受験方法|一般社団法人日本人材育成協会

社会保険労務士

労務管理において持っておくと良い資格として、社会保険労務士もおすすめです。社会保険労務士は、厳しい受験資格と難易度の高い試験を経て取得できる国家資格です。そのため、高度な専門知識と実務経験が求められます。

この資格を持つことで、行政機関への書類作成代行、労働社会保険関係法令に基づく帳簿や書類の作成を専門的におこなうことが認められます。社会保険労務士は、企業の労務管理において不可欠な存在であり、労働環境の改善やリスクマネジメントに大きく貢献します。経営者や人事担当者にとって、その知識とスキルを持つことは企業の成長と安定運営に直結するため、大いに価値があります。

参考:社会保険労務士試験のご案内|全国社会保険労務士会連合会試験センター

衛生管理者

労務管理において持っておくと良い資格として、衛生管理者も挙げられます。衛生管理者は従業員の健康維持・増進、職場環境の整備、労働環境の改善など、社内の衛生環境を管理する重要な役割を担います。衛生管理者の資格は、労働安全衛生法で選任が義務づけられた国家資格であり、企業の経営において欠かせない存在です。

そのほか、労務管理に関する有益な資格として、ビジネス・キャリア検定試験やマイナンバー実務検定/マイナンバー保護士認定試験もあります。これらの試験は、人事・人材開発・労務管理の職務遂行に必要な知識と実務能力を評価し、マイナンバーの適正な取り扱い方法を習得するための資格です。これらの資格を持つことで、企業内での労務管理業務がより円滑に進むことを期待できます。

参考:第一種・第二種衛生管理者の紹介|公益財団法人安全衛生技術試験協会

4. 労務管理において注意しておくべき問題・課題

?マークの浮かんだ男性

かつて団塊の世代を中心とした時代の労務管理の仕事は、会社を「親」とし、社員である「子」を養うために万全な労働環境を整備することを目的としていましたが、時代の変化にともない転換期を迎えています。

終身雇用制や年功序列制が失われつつあり、リストラや早期退職制など、 すべての「子」は守れないという過酷なビジネス環境の中、その手法および概念自体が大きく変化しつつあり、トラブルも増加しています。

本章では、上記の課題の中でも多くの企業が該当する点を取り上げて詳しく紹介します。

4-1. コンプライアンス(法令順守)

時代の変化に対応する形で、労働基準法をはじめとする「労働法」は繰り返し改正がおこなわれています。2019年に施行された「働き方改革」に伴い、法改正されたのも記憶に新しいでしょう。法令違反とならないように、コンプライアンスを強化するため、法改正に関する情報を定期的に確認することが大切です。

4-2. 多様な働き方への適応

最近では、少子高齢化による人材不足の課題を背景に、多くの企業で働き方改革の取り組みが進められています。例えば「在宅勤務(テレワーク)」「フレックスタイム制」「時短勤務」「副業・兼業」などが挙げられます。

しかし、これまでと同じように労務管理をおこなっていては、これらの働き方の変化に対応できません。多様化する働き方に対応するため、就業規則の見直しや新たな社内規定の策定など、労働環境の最適化が必要になります。

4-3. 従業員が働きやすい環境の構築

近年、ワークライフバランスの重要性が高まりつつあり、結婚や出産、退職といったライフイベントに対する従業員のニーズや求める環境の基準も、以前より高まってきています。また、働き方改革関連法の施行により、労働環境の整備が義務化され、場合によっては企業が罰則の対象となる可能性もあることから、多くの企業で労務管理担当者による対応が進められています。

このような背景もあり、労働環境の整備は国からの支援がおこなわれるほど、社会的にも重要なテーマとされています。詳しくは、厚生労働省の公式ページをご参照ください。

参考:職場環境を整備・改善したい|厚生労働省

4-4. 生産性を意識した業務改善

企業の生産性を高めるためには、労務管理をはじめとした「バックオフィス」「間接部門」の業務効率化が不可欠です。昨今では電子化・ペーパーレス化が進み、従来のように紙で管理し、複数回の承認作業を要するような手間は大幅に削減されつつあります。

これからの労務管理に求められるのは、ただルーティーン業務をこなすのではなく、「どのように効率化・改善できるか」を常に考えながら行動する姿勢でしょう。社内にある課題のうち、どの部分が特に重要かを見極めたうえで、どのように改善すべきかを主体的に考え、実行していく力が今後ますます重視されると考えられます。

4-5. 手続き漏れや計算ミスの防止

労務管理業務は多岐にわたるため、複数の業務を同時並行で進めなければならないことも多いです。特に、給与計算業務では、残業代や割増賃金、社会保険料、税金など、複雑な計算をおこなう必要があり、慎重さが求められます。

そのため、手続き漏れや計算ミスが発生することも少なくありません。このようなミスが発生すると、法令違反となるだけでなく、従業員からの信頼を失う原因にもなりかねません。

労務管理業務におけるミスを防止するためには、業務フローの見直し、ダブルチェック体制の採用、ITツールによる業務の自動化といった対策が重要です。これにより、ミスのリスクを最小限に抑え、業務の効率化を図ることができます。

4-6. 適切な情報管理方法の整備

労務管理における重要な課題の一つは、適切な情報管理方法の整備です。企業の経営者や人事担当者には、従業員の個人情報を正確に保護する責任があります。具体的には、従業員の氏名、住所、給与、個人番号(マイナンバー)などの重要な情報を適切に管理する必要があります。

昨今では、デジタルデータ管理の普及により、情報の外部流出や漏洩が懸念されています。そのため、労務管理を効果的におこなうためには、データベースへのアクセス制限と高度なセキュリティ対策が不可欠です。

まず、情報へのアクセスを厳格に制限することによって、情報の漏洩リスクを大幅に低減させることができます。次に、セキュリティ確保においては、最新の暗号化技術や二段階認証の導入が推奨されます。これにより、第三者による不正アクセスを防ぐことが可能です。さらに、定期的なセキュリティチェックや社内研修も重要です。

これらの対策を通じて、最新のリスクに対応しながら、従業員全体の情報取り扱いに対する意識向上が期待できます。質の高い情報管理を実現するためには、これらの手法を組み合わせて効果的に活用することが求められます。

4-7. ハラスメントへの対策

労務管理における重要な課題の一つは、ハラスメント対策の徹底です。特に、Z世代の社員が増加する中で、彼らの価値観や働き方に合った労働環境を整備することが求められています。また、顧客からの不当な要求や暴言といったカスハラ(顧客ハラスメント)の増加も、企業にとって無視できない問題です。

2020年に施行された「改正労働施策総合推進法」は、パワハラ防止策を企業に義務付け、コンプライアンスの徹底を求める内容となっています。この法規制に対応するためには、ハラスメント対策の方針を明確にし、発生時の迅速かつ適切な対応策を策定することが不可欠です。

さらに、従業員への周知や啓発活動を通じて、安心して報告や相談ができる環境を整備することも重要です。これにより、従業員の心理的安全性を確保し、職場の士気や生産性の向上が期待できます。

参考:労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止対策義務化)について|厚生労働省

4-8. テレワークやワーケーションへの対応

テレワークやワーケーションへの対応は、現代の労務管理において企業が直面する重要な課題の一つです。オンライン環境下で労務管理を円滑に進めるためには、明確なガイドラインの策定が不可欠です。就業規則の見直しには、交通費や各種手当の新たな取り扱いルール、出退勤の定義の再設定などが含まれます。さらに、労働中のケガや病気が発生した場合の労災認定基準の明確化も求められます。

加えて、テレワーク環境では上司が従業員の勤務状況を把握しにくくなるため、健康管理やストレスマネジメントの強化も重要な課題です。このため、定期的なオンライン面談の実施や、メンタルヘルスケアの体制構築などが有効な施策として挙げられます。このような対策を含む実効性のあるガイドラインを整備することで、企業は柔軟かつ安全に新しい働き方へ対応することが可能となります。

4-9. 副業や兼業制度の整備

副業や兼業制度の整備は、現代の労務管理における重要なテーマの一つです。企業が従業員のエンゲージメント向上やキャリア支援を考慮するうえでは、多様な働き方を推進する姿勢が求められます。また、働き方改革の進展に伴い、多くの企業が副業・兼業を認める方向へと舵を切っています。

このような流れの中で、2020年に改訂された厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、制度設計の参考として有用な資料の一つです。このガイドラインを活用することで、従業員のジョブ満足度を高め、スキルアップを後押しする環境整備が可能になります。企業の経営者や人事担当者は、具体的な制度構築に取り組むことで、生産性の向上と従業員のキャリア形成の両立という相乗効果を期待することができるでしょう。

参考:副業・兼業の促進に関するガイドライン|厚生労働省

5. 労務管理を効率化するならITツールの導入がおすすめ

ITツール

労務管理の課題を解決し、業務を効率化するためには、労務管理システムの導入がおすすめです。ここでは、労務管理システムのメリットと選び方について詳しく紹介します。

5-1. 労務管理システムのメリット

労務管理システムを導入することで、入力や計算などの業務を自動化し、人的ミスを未然に防ぐとともに、業務の効率化が実現できます。また、情報の更新もリアルタイムでおこなえるため、スムーズな情報共有が可能となり、迅速な意思決定にもつながります。

さらに、システムによってはアップデート機能により、最新の法改正に自動で対応できるものもあります。これにより、労務担当者が都度手動で対応する必要がなくなり、業務負担を軽減できるうえ、コンプライアンス違反のリスクも抑えることができます。

ただし、労務管理システムにはさまざまな種類があり、導入・運用には一定のコストがかかる点にも注意が必要です。そのため、自社の業務内容や規模に合ったシステムを見極め、慎重に選定・導入を進めることが重要です。

5-2. 労務管理システムの選び方

労務管理システムを導入する場合、まずは自社の労務管理の課題を洗い出し、「何を改善したいのか」という目的を明確にすることが大切です。その目的に沿って、必要な機能が搭載されているシステムを選びましょう。

また、使いやすさも重要な選定基準です。労務管理担当者のITリテラシーも考慮しながら、誰でも直感的に操作できるシステムを選ぶことで、導入後の運用もスムーズになります。そのほかにも、サポートやセキュリティ、他システムとの連携性も重要な選定ポイントです。複数のツールを比較・検討しながら、自社の業務フローや規模にあった最適な労務管理システムを導入しましょう。

関連記事:労務管理ソフトを導入するメリットや注意点・比較する際の選び方総まとめ

6. 経営者や管理職はとくに労務管理が果たすべき役割を正しく理解しよう

パソコンでひらめく

労務管理は、職場環境の整備や従業員の働きやすさを支える、企業運営において欠かせない重要な業務です。手間や労力のかかる業務ではありますが、的確に対応すれば、企業全体の生産性や収益性の向上にもつながります。本記事の内容を参考に、労務管理の意義や役割をしっかり理解したうえで、日々の業務改善に積極的に取り組んでいきましょう。関連記事:労務管理・人事管理のペーパーレス化とは?メリット・デメリット解説や具体例紹介

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