労務管理の基礎知識!意味や目的・仕事内容、勤怠管理・人事管理との違いを徹底解説
「労務管理」とは、従業員にかかわる職場環境を管理する業務です。具体的には、従業員の勤怠や福利厚生といった労働に関連することを管理したり、健康やハラスメントなどの対策を行ったりします。
本記事では、労務管理の重要性や具体的な業務内容について詳しく解説していきます。
基礎業務を効率化できる方法を解説!
はじめて労務管理を担当する方や、経験の浅い担当者の方であれば、「労務管理とは具体的になにから初めていいかのかわからない・・」とお困りの方も多いでしょう。
さらに労務管理業務の中で生まれる課題として「組織拡大にともない、従業員情報を管理できておらず困っている」
「人事情報をアナログ管理しているため、工数がかかって大変…」
「人事管理を電子化したいがどう進めていけば良いかわからない」 このようなお困りごとをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは「理想的な従業員情報の管理」という資料を無料配布しております。
最終的にどのような従業員管理が良いのかという理想形の解説から、従業員管理の方法を電子化した時の実際のイメージまでわかりやすく解説しています。
人事担当者にとっては大変参考になる資料となっておりますのでぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 労務管理の定義とは
労務管理とは、従業員の勤怠や福利厚生といった労働に関連することの管理を意味しています。管理している具体的な項目は、労働期間や労働の対価、業務内容というような契約内容になります。
労務管理は労働に関する管理のほか、健康やハラスメントなどの対策も行います。つまり、労務管理は従業員が安心して働くための「職場づくり」の仕事でもあるのです。企業の大小問わず、すべての企業に労務管理の業務が必要となります。
1-1. 企業における労務管理の目的
企業が所有する経営資源には、ヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産などがありますが、人材の採用・管理など「ヒト」に関する業務は、どの企業においてもプライオリティが高いでしょう。なぜなら企業活動の効果は、人材の量・質に大きく影響するからです。
労務管理の主たる目的は、人材の生産性の向上になります。安心して働ける環境や気を遣わずに働ける環境など、労働環境を適切な状態に維持し続けることが業務であるがゆえに、重要な役割だといえるでしょう。
関連記事:労務とは?人事との違いや業務内容、労務に向いている人などを解説
1-2. 労務管理と勤怠管理、人事管理の意味の違い
バックオフィス業務の中でも細かく業務がわかれており、労務管理と勤怠管理、人事管理の違いはよく混同されがちです。端的に説明すると以下の違いがあり、上から順に管理の範囲が狭くなります。
- 人事管理:人材の処遇を管理
- 労務管理:労使関係、労働条件を管理
- 勤怠管理:労働条件の中でも特に、労働時間や休日などの分野を管理
人事管理とは、企業内で人材をより効果的に活用していくために、規則や処遇を定めて適切に運用していくことを指します。人事評価や人材育成、採用・退職の手続きを行うことが基本的な業務になります。従業員の処遇も含めた人事に関連する業務の大枠が人事管理だと捉えてよいでしょう。
一方で労務管理は、特に労使の雇用関係と労働条件に特化したものを指します。例えば、労働時間や賃金のほか、休日・休暇や福利厚生、賞与についての取り決め・計算・管理も労務管理に含まれます。福利厚生では、社会保険や雇用保険、労災保険の運用も労務管理の業務です。
そのほか、労働基準法や男女雇用機会均等法などの法律に基づき、労働者が働きやすい環境を整備していくことも重要な業務です。
最後に勤怠管理は、労務管理の中でも特に勤務状況の把握・管理に特化した業務を指します。労務管理の一つに勤怠管理があると考えてよいでしょう。
勤怠管理では、従業員の労働時間や残業時間だけでなく、出勤や欠勤、遅刻や早退なども管理します。また、年次有給休暇の取得状況を管理するのも勤怠管理の一つです。労働基準法第108条で、事業主は事業場ごとに賃金台帳を作成して運用するよう定められています。
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1-3. 労務管理を担当する人
企業の労務管理を担当する部門は、人事部、労務部(労務課)、総務部などがあります。これらの部門の長は「労務管理全体の責任者」として業務を遂行しますが、労務管理の担当者の設置は法的に義務付けられているわけではありません。しかし、一部の役割、例えば「衛生管理者」は法的に選任が義務づけられています。
衛生管理者は、従業員の危険防止や健康増進、職場の衛生改善を担う役職であり、労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業所においては必須です。これは労務管理の中でも特に重要な役割です。
また、管理監督者についても、労務管理を担当する人に当たります。管理監督者は労働基準法で定義される地位で、経営者と一体的な立場にある者とされています。労働条件の決定に関する権限を持ち、労働時間や休憩、休日の制限を受けない点が特徴です。「管理監督者」と「管理職」は異なり、管理監督者として認められるためには、重要な職務内容や権限を持ち、労働時間の規制を超えて活動せざるを得ない必要があります。単なる役職名としての「管理職」では、この権限は認められません。また、管理監督者には残業代が支給されない特例もありますが、それは自らの裁量で経営判断を行える権限を有する場合に限ります。
2. 労務管理の基本的な仕事内容
次に、労務管理が行う具体的な仕事内容を解説します。労務管理のイメージがより明確になるはずですのでぜひ参考にしましょう。
2-1. 法定三帳簿の作成
労務管理の基本項目となる「法定三帳簿」を作成します。法定三帳簿は「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つに分類されています。作成だけでなく、紛失しないように厳重に保管するのも労務管理の仕事です。いずれも記載項目と保存期間が法令で決められているため注意しましょう。
関連記事:勤怠管理は何をチェックするべき?用意すべき法定三帳簿とは?
労働者名簿
労働者名簿は、従業員1人ひとりの情報をまとめたものです。
氏名や生年月日、住所、性別など、従業員の情報を詳しくまとめています。
この労働者名簿の保存期間は3年であり、退職・解雇・死亡の日が起算日として設定されています。
▼労働者名簿についてより詳しく知りたい方はこちら
労働基準法第109条規定の労働者名簿の正しい取り扱い方
賃金台帳
賃金台帳は、従業員1人ひとりの賃金の支払い状況をまとめたものです。
氏名、性別、賃金の計算期間、労働時間数、基本給や手当等の種類と額、控除項目と額といった項目をまとめます。
賃金台帳の保存期間も3年であり、起算日は「最後の賃金について記入した日」となります。
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賃金台帳とは?基本的な作成方法と知っておきたい法的ルール
出勤簿
出勤簿は、従業員の出勤状況を記録したものです。
具体的には、タイムカード等の記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、労働日数、労働時間などがあげられます。
保存期間は3年であり、最後の出勤日が起算日となります。
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出勤簿の役割とは?効率的に管理する方法を詳しく紹介
2-2. 労働契約として雇用契約書の作成
労務管理は「労働条件通知書」の作成も行います。
労働条件通知書は、企業と従業員が労働条件をもとに契約を結んだ証明となる書類です。
労働条件通知書は、新卒入社または契約社員の雇用時、契約社員の労働契約更改時期に作成します。
なお、雇用契約書が労働条件通知書を兼ねる場合には、以下の項目をいれる必要があります。
- 労働契約の期間
- 就業する場所
- 従事する業務内容
- 始業・終業時間
- 交代制のルール
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間・休日・休暇
- 賃金の決定・計算・支払方法・締切日・支払日
- 昇給に関する事項
- 退職に関する規定
パートタイム労働者については、下記の4項目も追加で明示する必要があります。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口の担当者の部署・役職・氏名
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雇用契約とは?法的な位置付けと雇用契約書を作成すべき理由を解説
パートタイマーの雇用契約書を発行する際に確認すべき4つのポイント
2-3. 就業規則の作成
常時10人以上の従業員を雇用する場合、労働基準法の規定に基づいた「就業規制」を作成しなければなりません。
作成後は所轄の労働基準監督署長へ提出する必要があり、就業規則を変更する際にも同じように届け出を行います。
就業規則に記載する内容には、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」の2つがあるため、記載漏れがないように確認しながら作成しましょう。
▼就業規則についてより詳しく知りたい方はこちら
労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務
2-4. 社会保険や雇用保険の加入手続き
新入社員の「社会保険」や「雇用保険」の加入手続きも労務管理の業務です。
社会保険は所轄の年金事務所、または加入している健康保険組合で資格取得手続きを実施します。
また、雇用保険に関しては所轄のハローワークでの手続きとなります。
提出書類については以下をご確認ください。
- 厚生年金保険:厚生年金保険被保険者資格取得届(添付書類は原則必要なし)
- 健康保険:健康保険被保険者資格取得届(添付書類は原則必要なし)
- 雇用保険:雇用保険被保険者資格取得届
▼社会保険の届出について詳しく知りたい方はこちら
社会保険資格取得届とは?提出が必要な事業所や手続きの流れについて
2-5. 勤怠管理
従業員の勤務状況を記録する「勤怠管理」も行います。
具体的な記録内容としては、始業や終業時刻、時間外労働時間数、休日労働時間数、早退などがあげられます。
▼そもそも勤怠管理とは?といった方はこちら
勤怠とは?管理方法や管理項目など人事が知っておきたい基礎知識を解説!
2-6. 給与計算
労務管理の基本的な仕事内容の一つとして、給与計算は非常に重要です。給与計算ではまず、労働契約や就業規則に基づき、従業員ごとの給与や各種手当、賞与を算定します。また、勤怠のデータをもとに正確な給与額を導き出す必要があります。さらに、社会保険料や雇用保険料とその控除額、税金なども正確に計算することが求められます。特に従業員数が増えたり、雇用形態が多様化すると、計算は複雑化し、業務量も増大します。これらの給与計算のスムーズな運用のためには、経営者や人事担当者が労務管理の基本知識や具体的な業務内容について十分理解し、適切な資格や知識を身につけることが重要です。
2-7. 従業員の安全衛生管理や職場環境改善
労働安全衛生法によって、従業員の健康管理である「安全衛生管理」が義務付けられています。
具体的な安全衛生管理は、事業場における安全衛生を確保するための措置、従業員における健康の保持増進を図る対策などです。
社内の職場環境を整えるためにも、従業員の健康管理も労務管理として行います。
2-8. 福利厚生の整備
労務管理の基本的な仕事内容として、福利厚生の整備は重要な役割を果たします。福利厚生とは、給与や賞与とは別に従業員とその家族に提供する報酬です。健康保険や雇用保険などの社会保険は法定福利と呼ばれ、企業が保険料を負担します。一方、法定外福利は企業独自の福利厚生を指し、例えば社宅の提供、通勤手当、社員食堂の運営、育児支援、資格取得のサポートなどがあります。これらの福利厚生の整備・管理は、労務管理の一環として重要であり、人事担当者にとって具体的かつ詳細な知識が求められます。適切な福利厚生の提供は、従業員満足度の向上や企業の魅力を高める効果があります。このため、経営者や人事担当者は福利厚生の最新トレンドや法令の改定に敏感であり、常に最新情報を収集し対応することが求められます。
2-9. ハラスメント対策
「パワーハラスメント対策」が2020年4月から法制化されたため、労務管理の業務として必要な措置を行うことが義務となります。
また、それに伴いセクシュアルハラスメントなどの対策も強化されました。
ハラスメント対策については事前に確認しておくことをおすすめします。
2-10. 退職手続き
「退職手続き」も労務管理の業務であり、社会保険や雇用保険の資格喪失届の提出、労働者名簿の更新、退職手当の支給といった内容が含まれます。
従業員の退職後も書類のやり取りが必要となるため、労務管理の担当者は退職者の連絡先を必ず把握しましょう。
▼退職手続きについてより詳しく知りたい方はこちら
労働基準法における退職の定義と手続き方法を分かりやすく解説
2-11. 休職・異動手続き
育児休業や傷病休職、介護休職などの「休職・異動手続き」も労務管理における業務の1つです。休職に伴う保険給付の申請や、傷病手当金の請求といった場合でも必要となります。
一方で、異動手続きに関しては、住所変更や社会保険料の報酬月額変更届を提出する場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
このように労務管理では勤怠管理や雇用契約、入退社手続きなどにやるべき業務は多岐にわたります。
これらに関わるすべての人事データをジンジャーに集約し、「1つのデータベース」で管理することで、各システムでの情報の登録や変更の手間を削減することが可能です。
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3. 労務管理の担当者として備えておくべき必要知識や資格
労務管理の業務は、以前まで莫大な労務知識を把握する必要がありましたが、人材マネジメントシステムや労務管理システムの普及により、現代の労務管理業務には高度に専門的なスキルは求められなくなりました。
代わりに労務管理に従事する者には、経営者に近い視座で、物事を見通す視点を持つことが重要となっています。具体的に見ていきましょう。
3-1. 労務管理において備えておくべき知識や資質
労務管理において備えておくべき知識や資質としては、いかに人件費を抑え、利益を増やすか。どのように従業員のモチベーションアップを図るか。どのような原因で労働に関する課題が起き、どのような打ち手を講じるかと、長期的な視点を持つことが重要視されます。その上で必要になる知識や資質のポイントを紹介します。
法改正や法令に関する知識
労務管理において、法改正や法令に関する知識は極めて重要です。例えば、労働基準法、労働契約法、最低賃金法をはじめとする各種法律は、企業の労務管理業務の土台を形成しています。特に2024年にも法改正や新法の制定が予想されるため、企業の経営者や人事担当者はこれに敏感である必要があります。各法律の内容をしっかりと理解し、適切な対応を取ることで、労働条件や労働環境を整え、従業員との信頼関係を築くことが可能です。労働安全衛生法や育児・介護休業法なども随時改正されることがあり、その都度、従業員の働きやすさを確保するための対策が求められます。
労働状況の把握や業務改善における責任感
企業の経営者や人事担当者が労務管理を効果的に行うためには、まず労働状況の把握が不可欠です。労働者の視点を尊重し、安全と健康の確保を重視しながら、長時間労働の抑制や多様な人材(女性・高齢者・障害者)の活躍推進に努めることが求められます。具体的には、労働時間の厳格な管理やリモートワークの効果的な導入などが挙げられます。また、働き方の多様化や雇用の国際化に対応するためには、柔軟な思考と継続的な学習が必要です。労務管理の基本知識に加え、ITリテラシーを兼ね備えた人材が活躍できる場を提供することが、これからのビジネス成功の鍵となります。
3-2. 労務管理において持っておくと良い資格
労務管理を担当する上でもっておくと尚よい資格は、
- 労務管理士
- 社会保険労務士
- 衛生管理者 です。
客観的評価を頂けるため知識に自信を持たせたい方にはおすすめですので、詳しく内容を紹介します。
労務管理士
労務管理士は「労務管理」の業務遂行能力を認定する民間資格であり、企業の経営者や人事担当者にとって非常に有用です。この資格は一般社団法人日本人材育成協会と一般社団法人日本経営管理協会が運営しています。取得することで関連法規や実務に関する専門的知識を有していることを証明できます。労務管理士の資格は、公開認定講座や通信講座など多様な学びの方法が提供されており、特にWeb資格認定講座での合格が目指されます。この資格を持つことで、労務管理の基本知識だけでなく、具体的な業務内容やそのための専門的な知識も身につけることができ、企業の労務管理体制の向上に大いに役立つでしょう。
社会保険労務士
労務管理において持っておくと良い資格として、社会保険労務士がおすすめです。社会保険労務士は、厳しい受験資格と難易度の高い試験を経て取得できる国家資格です。そのため、高度な専門知識と実務経験が求められます。この資格を持つことで、行政機関への書類作成代行や、労働社会保険関係法令に基づく帳簿や書類の作成を専門的に行うことが認められます。社会保険労務士は、企業の労務管理において不可欠な存在であり、労働環境の改善やリスクマネジメントに大きく貢献します。経営者や人事担当者にとって、その知識とスキルを持つことは企業の成長と安定運営に直結するため、大いに価値があります。
衛生管理者
労務管理において持っておくと良い資格として「衛生管理者」が挙げられます。これは従業員の健康維持・増進、職場環境の整備、労働環境の改善など、社内の衛生環境を管理する重要な役割を担います。衛生管理者の資格は、労働安全衛生法で選任が義務づけられた国家資格であり、企業の経営者や人事担当者にとって欠かせない存在です。
さらに、労務管理に関する他の有益な資格として、ビジネス・キャリア検定試験やマイナンバー実務検定/マイナンバー保護士認定試験もあります。これらの試験は、人事・人材開発・労務管理の職務遂行に必要な知識と実務能力を評価し、マイナンバーの適正な取り扱い方法を習得するための資格です。これらの資格を持つことで、企業内での労務管理業務がより円滑に進むことを期待できます。
4. 労務管理において注意しておくべき課題
かつて団塊の世代を中心とした時代の労務管理の仕事は、会社を“親”とし、社員である“子”を養うために万全な労働環境を整備することを目的としていましたが、時代の変化にともない転換期を迎えています。
終身雇用制や年功序列制が失われつつあり、リストラや早期退職制など、 すべての”子”は守れないという過酷なビジネス環境の中、その手法および概念自体が大きく変化しつつあり、トラブルも増加しています。
本章では、上記の課題の中でも多くの企業が該当するものを4点取り上げて解説します。
4-1. コンプライアンス(法令順守)
時代の変化に対応する形で、労働基準法をはじめとする「労働法」が改正されます。2019年に施行された「働き方改革」に伴い、法改正されたのも記憶に新しいでしょう。法令違反とならないように、法改正に関する情報を定期的に確認するとよいでしょう。そうすることで、コンプライアンスにつながります。
4-2. 多様な働き方への適応
「働き方改革」が進んでいる近年、新型コロナウイルスの感染拡大も相まって「在宅勤務」や「ワーケーション」「副業・兼業」など、人々の働き方が多様化に拍車がかかりました。
これまでと同じように労務管理を行っていては、これらの働き方の変化に対応できません。多様化する働き方に対応するため、「就業規則の見直し」や「新たな社内規定の策定」など、労働環境の最適化が必要になります。
4-3. 従業員が働きやすい環境の構築
ワークライフバランスが重要視されつつあり、結婚時や出産時、退職時のことなど、従業員が求める最低基準もあがりつつあると言えます。また、働き方改革関連法案により、労働環境を整備しなければ罰則対象になりかねないとのことで、多くの企業の労務管理の担当者が取り組みのさなかにあると思います。
労働環境の整備は国から支援されるほど重要視されています。詳細は厚生労働省のページにありますので、以下のリンクからご確認ください。
参考記事:厚生労働省「職場環境を整備・改善したい」
4-4. 生産性を意識した業務改善
企業の生産性を高めるためには、労務管理をはじめとする「バックオフィス」「間接部門」の業務を効率化させる必要があるとされています。今では電子化が進み、以前のような紙で管理し、何度も承認作業が必要というような手間は減らすことができていると感じます。
今後労務管理に求められるのは、毎日同じように作業を行うのではなく、「どうしたら労務管理業務を効率化できるか」を常に考えることです。社内の課題でどの部分が特に重要か、どのように改善させる必要があるのかを主体性を以って取り組むことが求められるでしょう。
4-5. 適切な情報管理方法の整備
労務管理において注意すべき課題として、適切な情報管理方法の整備は不可欠です。企業の経営者や人事担当者は、従業員の個人情報を正確に保護する責任があります。具体的には、従業員の氏名、住所、給与、マイナンバーなどを適切に管理する必要があります。特に、昨今のデジタルデータ管理の普及により、情報の外部流出や漏洩が懸念されています。
労務管理を効果的に行うためには、データベースへのアクセス制限と高いセキュリティが求められます。まず、アクセス制限は、情報にアクセスできる人物を厳密に限定することで、情報漏洩リスクを大幅に減少させることができます。次に、セキュリティの確保ですが、最新の暗号化技術や二段階認証などの導入が推奨されます。これにより、第三者による不正アクセスを未然に防ぐことが可能となります。
さらに、定期的なセキュリティチェックと社内研修も重要です。これにより、最新のリスクに対応しつつ、従業員全体で情報の取り扱いに関する意識を高めることができます。質の高い情報管理を実現するためには、これらの具体的な手法を組み合わせて活用することが求められます。
4-6. ハラスメントへの対策
労務管理において注意すべき課題の一つとして、ハラスメントへの対策があります。特にZ世代の社員が増える中、その価値観やあり方に適した労働環境の整備が求められています。カスハラ(顧客ハラスメント)の増加も見過ごせない問題で、顧客からの不当な要求や暴言に対する対策も重要です。
2020年に施行された「改正労働施策総合推進法」は、パワハラ防止対策を義務化し、企業にコンプライアンスの徹底を求めています。この法規制に対応するため、ハラスメント対策・方針の明確化はもちろんのこと、発生時の対応策の立案、従業員への周知・啓発が必要です。また、従業員が安心して報告や相談ができる環境を整えることも不可欠です。これにより、企業は従業員の心理的安全性を確保し、職場の士気向上にも繋げることができます。
参考:労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止対策義務化)について|厚生労働省
4-7. テレワークやワーケーションへの対応
労務管理におけるテレワークやワーケーション対応は企業にとって重要な課題です。まず、オンラインでの労務管理を円滑に行うためには、明確なガイドラインの作成が不可欠です。就業規則の変更には、交通費や諸手当の新たなルール、出退勤の定義見直しが含まれます。これに加え、ケガや病気が発生した際の労災判定基準も明確化する必要があります。
さらに、上司が従業員の勤務状況を把握しづらくなるため、健康管理やストレス管理も問題になります。このための施策として、定期的なオンライン面談やメンタルヘルスケアの仕組みを導入することが重要です。適切なガイドラインを作成し、これらの対応を整えることで、企業は新しい働き方に柔軟に対応できます。
4-8. 副業や兼業制度の整備
労務管理において、副業や兼業制度の整備は重要な課題です。働き方改革が進む現在、多くの企業が副業・兼業を認める方向にシフトしています。企業がエンゲージメントの向上やキャリアのサポートを考慮する際、従業員の多様な働き方を促進することが求められます。このため、2020年に改訂された『副業・兼業の促進に関するガイドライン』(厚生労働省)は重要な参考資料です。ガイドラインに従うことで、従業員のジョブ満足度を高め、スキルアップを促進する環境を整えることが可能です。企業の経営者や人事担当者はこのガイドラインを活用し、具体的な制度の整備を進めることで、企業全体の生産性と労働者のキャリア形成の両立を図ることができます。
5. 経営者や管理職はとくに労務管理が果たすべき役割を正しく理解しよう
労務管理は職場環境を管理する重要な業務であるため、企業が存続するうえで絶対に欠かせません。労務管理の業務は複雑で手間を要しますが、業務の生産性や収益性を大きく飛躍させることが可能です。
ぜひ本記事の内容を参考にし、労務管理の重要性と業務内容を理解して積極的にコミットメントしましょう。
関連記事:労務管理ソフトを導入するときの注意点や選び方を紹介
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