論旨退職とは?実行する際の流れや注意点を解説
更新日: 2024.11.15
公開日: 2024.10.26
OHSUGI
「諭旨退職とは?」
「諭旨退職を実行する流れは?」
「諭旨退職を実行する際の注意点を知りたい」
上記のような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
諭旨退職とは、就業規則に違反した従業員に対して企業側から退職を勧告し、退職届の提出を求める懲戒処分です。
正しい手続きをおこなわなければ、懲戒権の濫用とみなされて、従業員から訴えられる可能性があります。諭旨退職の対象となる行為を把握したうえで、懲戒処分の手続きを段階的におこなわなければなりません。
本記事では、諭旨退職に関する基礎知識と実行する際の流れについて解説します。また、諭旨退職を実行する際の注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 論旨退職とは
諭旨退職とは、就業規則に反した従業員に対して、企業側から退職を勧告する懲戒処分のことです。
退職を勧告された従業員は、自ら退職届を企業側に提出します。公務員の場合は「諭旨免職」と表現されますが、言葉の意味は同じです。
諭旨退職は、就業規則に記載される懲戒処分の中で二番目に重い処分とされています。以下の記事に就業規則に記載する懲戒処分の種類についてまとめているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:労働契約法15条に定められた「懲戒」の対象者と無効にする権利について解説
2. 論旨退職と懲戒解雇・自己都合退職の違い
諭旨退職と懲戒解雇・自己都合退職の違いは、退職の理由と種類です。それぞれの違いについて、以下の表にまとめました。
退職の理由 | 退職の種類 | |
諭旨退職 | 企業側から退職を勧告されたことで、自主的に退職する | 自己都合 |
懲戒解雇 | 企業側から一方的に退職させる | 会社都合 |
自己都合退職 | 転職や結婚など個人的な都合で、自主的に退職する | 自己都合 |
3. 論旨退職に伴う退職金や有給休暇の取り扱い
諭旨退職に伴う退職金は、企業の退職金規定に記載されている内容に基づいて判断されます。退職金規定は企業によって異なりますが、一部支給もしくは不支給のケースが多いです。
また、諭旨退職に伴う有給休暇は、従業員の退職日まで取得できます。従業員が退職日まで有給申請をした場合は、有給の残日数を確認したうえで申請処理をおこなってください。
4. 論旨退職の対象となる行為
諭旨退職の対象となる行為は以下のとおりです。
- 企業の社会的信用を損なうような不正行為(横領、情報漏洩、誹謗中傷など)
- 社外での違反行為(窃盗、飲酒運転、薬物使用など)
- 就業規則に反する行為(経歴詐称、度重なる無断欠勤、ハラスメントなど)
故意に企業機密情報を漏洩したり、誹謗中傷をSNSに書き込みしたりする行為は、企業の社会的信用を損なう悪質な行為です。よって、諭旨退職の対象となる可能性があります。
また、窃盗・飲酒運転・薬物使用などの法秩序に違反する行為も、諭旨退職の処分を下す可能性が高いです。
加えて、就業規則に記載されている違反行為をおこなった場合も、諭旨退職の判断となる場合があります。どのような行為が諭旨退職に当てはまるのか、就業規則を定めることが必要です。
5. 論旨退職を実行する際の流れ
諭旨退職を実行する際の流れは以下のとおりです。
- 就業規則の内容を確認する
- 諭旨退職に該当するエビデンスを集める
- 従業員と協議する場を設ける
- エビデンスや聴取内容をふまえて処分を検討する
- 従業員に対し諭旨退職を通達する
それぞれの流れについて詳しく解説します。
5-1. 就業規則の内容を確認する
諭旨退職の処分を下す前に、就業規則に記載された内容を確認しましょう。確認する内容は以下のとおりです。
- 就業規則に諭旨退職の処分について記載されている
- 従業員の行為が諭旨退職処分に当てはまる
もし就業規則に諭旨退職に関する記載がなければ、別の懲戒処分に当てはまるか確認してください。
5-2. 論旨退職に該当するエビデンスを集める
就業規則の内容を確認できたら、諭旨退職に該当するエビデンスを集めましょう。諭旨退職が適切だと判断されるためには、従業員が不正行為や規則違反をおこなったエビデンスが欠かせません。
エビデンスとして提示できる具体例は以下のとおりです。
- メールやSNSでのメッセージ
- SNSに投稿した内容
- 写真や動画
- タイムカードや出退勤記録
- 雇用契約書
- 改善指導をおこなった記録
- 従業員に関係する上司や同僚からの聴取
上記以外にも、諭旨退職のエビデンスになると考えられるものは確保してください。
5-3. 従業員と協議する場を設ける
諭旨退職の処分を実行する前に、従業員と協議する場を設けましょう。従業員との話し合いの場を設けなかった場合、不当に解雇されたと訴えられる可能性があるためです。
従業員から不当解雇を訴えられた場合、諭旨退職の無効や損害賠償の請求に発展する場合もあります。従業員と話し合う場を設けたうえで、再度社内で調査が必要であれば対応してください。
5-4. エビデンスや聴取内容をふまえて処分を検討する
エビデンスや従業員に聴取した内容をふまえて、諭旨退職が適切であるかを検討しましょう。事実と異なる証言がないか、改善指導したうえで態度の改善が見られないかなども精査したうえで判断することが大切です。
諭旨退職などの懲戒処分は、懲戒委員会や人事権のある社長や人事部長などが決定します。懲戒処分を下す際は労働契約法第15条に基づき、以下の基準を満たしているか判断してください。
- 客観的に合理的な理由であるか
- 社会通念上相当であるか
5-5. 従業員に対し論旨退職を通達する
諭旨退職が適切であると判断した場合は、従業員に対して諭旨退職を通達しましょう。諭旨退職の通達には、懲戒処分通知書を作成し交付するのが一般的とされています。
懲戒処分通知書に記載する項目は以下のとおりです。
- 従業員の氏名
- 企業名
- 懲戒処分の日程
- 懲戒処分の種類
- 懲戒処分の根拠となる就業規則や条例
- 懲戒処分の理由(不正行為、就業規則違反など)
- 退職届の提出期日
なお、退職届を提出しない場合に懲戒解雇へ移行する予定があれば、その旨も懲戒処分通知書に記載する必要があります。
6. 論旨退職を実行する際の2つの注意点
諭旨退職を実行する際の注意点は以下の2つです。
- 従業員に対し改善指導をおこなう
- 段階的に懲戒処分を引き上げる
それぞれの注意点について詳しく解説します。
6-1. 従業員に対し改善指導をおこなう
諭旨退職を実行する前に、従業員に対して改善指導をおこないましょう。改善指導をおこなわずに懲戒処分を実行した場合、従業員から不当解雇であると訴えられる可能性があります。
従業員に対する改善指導の具体例は以下のとおりです。
- 改善指導書を作成して改善点を提示する
- 従業員の行動が改善できているかチェックする
- 定期的に面談をおこなう
従業員と面談をおこなう際は、1on1やフィードバックの手法を用いることで、適切なアドバイスやフォローアップが可能です。以下の記事に1on1やフィードバックの手法についてまとめているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:フィードバックの意味とは?適切なタイミングやコツをわかりやすく解説
関連記事:1on1とは?目的や人事面談・フィードバックとの違いをわかりやすく解説
6-2. 段階的に懲戒処分を引き上げる
諭旨退職の対象となる行為が発覚した場合でも、段階的に懲戒処分を引き上げましょう。戒告や譴責(けんせき)などをおこなわずに、いきなり諭旨退職を実行した場合、懲戒権の濫用とみなされる可能性があるためです。
例えば人為的なミスによる情報漏洩の場合、諭旨退職は合理的ではないと判断される場合があります。戒告・譴責(けんせき)・減給などから段階的に懲戒処分を引き上げるのが望ましいです。
従業員に譴責(けんせき)の懲戒処分を下す場合は、始末書の提出を求めるのが一般的とされています。以下の記事に始末書に記載する項目や構成要素などをまとめているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:始末書とは? 例文付きのひな形・フォーマットの書き方を紹介!提出時の注意点まで
7. 論旨退職の正しい知識を身につけて適切に実行しよう
諭旨退職とは、就業規則や法律に違反した従業員に対して、企業側から退職を勧告する懲戒処分のことです。
諭旨退職に伴う有給休暇は、従業員の退職日まで取得できます。ただし、退職金は企業の退職金規定に基づいて判断されるため、一部支給される場合も多いです。
諭旨退職を実行する際は、従業員に対して改善指導をおこなったうえで、段階的に懲戒処分を引き上げましょう。従業員から不当解雇であると訴えられないために、諭旨退職の正しい知識を身につけて適切に実行してください。
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