年末調整しないことによる罰則内容を詳しく紹介
更新日: 2025.9.17 公開日: 2021.9.27 jinjer Blog 編集部

従業員へ賃金を支払う以上、雇用主は必ず年末調整を実施しなければなりません。年末調整は従業員の納税に深く関わるため、正しく実施されていない場合には雇用主に罰則が科せられることもあります。
この記事では年末調整をしないことによる会社側の罰則について詳しく解説します。人為的ミスで年末調整が正しくおこなわれなかった場合も罰則の対象となることがあるので、経営者の方は十分注意しましょう。
令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「アルバイトやパート、退職者に年末調整は必要?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、令和7年分の年末調整に必要な書類から対象者、計算の流れまで、年末調整に関する基本的な業務を図解でわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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1. 従業員の年末調整をしないと罰則がある


年末調整を故意におこなわなかった雇用主は罰則が科せられます。従業員の所得税を納めることは雇用主の義務です。対象者となる従業員には必ず年末調整を実施し、適切に所得税を徴収しなければなりません。
1-1. 雇用主には従業員の所得税を納める義務がある
会社は従業員に支払う賃金から所得税を源泉徴収し、従業員に代わって国に納めています。これは雇用主に課せられた義務です。
しかし、源泉徴収額は「従業員の賃金が1年間変動しない」という前提で概算されます。所得控除等が考慮される本来の所得税とは金額の乖離があるため、年末調整によって差額を精算しなければならないのです。
また、年末調整には、事業者単位で納税を取りまとめることでスムーズに税金を徴収するという国の目的もあります。仮に全ての労働者が個別で確定申告をおこなった場合、税務署が申告を処理しきれなくなるためです。
関連記事:年末調整とは?確定申告との違いや必要書類、計算の流れをわかりやすく解説
1-2. 年末調整の対象者(パートやアルバイトも含まれる)
年末調整の対象者は、原則として年末まで勤務していて「扶養控除等申告書」を会社に提出しているすべての従業員です。雇用形態は関係なく、学生バイトやパートタイマーなども対象者に含まれます。なお、年の途中で退職した人でも、死亡退職や著しい心身の障害による退職などに該当する場合、年末調整が必要になるケースもあるので注意しましょう。
関連記事:年末調整の対象者とは?必要な書類や確定申告との関係も解説
1-3. 年末調整を正しくおこなわないと罰則がある
雇用主が従業員の年末調整をしなかった場合、その会社は従業員の正しい所得税を納税していないことになります。税金の納付は国民の義務です。自らの利益のため故意に年末調整を実施しなかった雇用主には、拘禁刑や罰金といった法的な罰則が科されます。
また、人為的なミスで手続きに不備があった場合も、適切に対応しなければ脱税と判断されてしまう恐れがあります。「税務署への書類提出を忘れていた」「計算を間違えてしまい納税額が少なかった」という場合も、罰則が科せられる可能性がゼロではありません。年末調整は計画的かつ正確に実施しましょう。
年末調整の業務を適切におこなわないことによる影響範囲は大きいです。抜け漏れのない対応をするために、年末調整の必要書類や提出期限を理解しておきましょう。当サイトでは、年末調整の流れや必要書類の書き方が理解できる資料を無料で配布しています。年末調整業務を抜け漏れなくおこないたい方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、年末調整のミスや漏れの防止にお役立てください。
2. 年末調整をしないことによる会社(雇用主)の罰則を解説


年末調整を適切におこなわなかった雇用主には以下のような罰則が科せられる恐れがあります。
- 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
- 10年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金(併科も可)
- 不納付加算税と延滞税
それぞれの罰則が適用されるケースについて解説します。
2-1.「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が適用されるケース
「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が科せられるのは以下のケースです。
- 年末調整を実施せず、従業員から適切な所得税を徴収していなかった
- 年末調整書類に嘘の記載や記録をし、税務署の承認を受けていた
なお、これらの行為は所得税法第242条に抵触します。
2-2.「10年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金」が適用されるケース
以下のケースでは「10年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(もしくはその両方)」が科せられる可能性があります。
- 従業員から源泉徴収した所得税を税務署に納付しなかった
このケースは所得税法第240条に抵触し、拘禁刑と罰金両方が科せられる場合もあります。
2-3. 不納付加算税や延滞税が課税されるケース
年末調整を実施しない場合、従業員の源泉所得税が正しく精算されず、納付不足が生じる可能性があります。不足があれば、その分を追加で納付する必要があり、通常は不納付加算税と延滞税が科されます。
これらのペナルティは、必ずしも故意によるものでなくても、提出漏れや計算誤りといった小さなミスから発生することがあります。年末調整は、期限内に正確な計算と書類提出をおこなうことが、余計な税負担や罰則を避けるために重要です。
関連記事:不納付加算税とは?課される要件や計算方法、免除されるケースを解説
関連記事:加算税とは?延滞税の違いや種類と税率、端数計算について詳しく解説!
2-4. 多く支払った所得税の還付が受けられず従業員トラブルにつながるケース
毎月の給与から源泉徴収される所得税には、生命保険料控除や地震保険料控除などがすべては反映されていないため、実際の納税額より多く徴収されていることがよくあります。しかし、年末調整をしないと本来納めるべき税額が確定しないので、納め過ぎた税金の還付をおこなうことができません。
この場合、従業員自ら確定申告をして還付を受けなければならず、時間や手間がかかります。特に会社側のミスで本来年末調整で処理できるのに確定申告が必要となった場合、従業員の不満や会社への信頼低下につながり、トラブルに発展する恐れもあります。そのため、年末調整は期限内に正確に実施することが重要です。
関連記事:年末調整を忘れた場合に発生する問題と対処法をわかりやすく解説
3. 年末調整の期限遅れも罰則の対象になる


年末調整を正しくおこなっていたとしても、書類の提出や所得税の納付が遅れてしまった場合も罰則の対象となるケースがあります。ここでは年末調整のスケジュールや各種の期限、手続きが遅れてしまった場合の罰則を解説します。
3-1. 年末調整の所得税納付期限と書類提出期限
年末調整の手続きには以下の2つの期限があります。
- 源泉所得税の納付(年末調整後、翌年1月10日)
- 法定調書・住民税関連の書類提出(年末調整後、翌年1月31日)
年末調整で確定した所得税の税務署への納付期限は翌年1月10日です。ただし、納期限の特例を受けている場合の納付期限は翌年1月20日です。なお、源泉所得税の納付に用いる「所得税徴収高計算書」には、年末調整で確定した所得税の過不足を記入する必要があります。
また、年末調整に伴う各種書類の提出期限は翌年1月31日です。期日までに「法定調書合計票」「支払調書」「源泉徴収票」を税務署に、「給与支払い報告書」を各従業員の居住する自治体宛てに提出します。加えて、翌年1月31日までに「源泉徴収票」を従業員へ交付する義務もあるので注意しましょう。
参考:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁
関連記事:年末調整の納付書とは?書き方や提出方法を詳しく紹介
3-2. 年末調整の基本的なスケジュール
一般的な年末調整のスケジュールは次の通りです。
【11月下旬】
- 従業員に年末調整必要書類の記入を依頼
- 従業員から年末調整必要書類や各種証明書を回収
【12月】
- 年末調整の計算
- 従業員への所得税過不足の還付・追加徴収
【翌年1月】
- 源泉所得税の納付(1月10日期日)
- 年末調整関連書類の作成・提出(1月31日期日)
関連記事:【従業員向け】年末調整はいつまでにおこなう?期限と提出書類の種類を紹介
3-3. 従業員の提出遅れに法的罰則はない
従業員に記入を依頼する年末調整必要書類(扶養控除等申告書や保険料控除申告書など)や各種証明書は、11月下旬~12上旬に提出期日を設けて回収します。
この提出期日は会社の都合で定めるものです。従業員の提出が遅れたとしても、社内での書類作成が1月31日までに終われば法的に問題はありません。しかし、社内の処理が滞る可能性があるため、余裕を持って作業ができるよう早めに提出期日を設定しましょう。
なお、1月31日までに書類を提出しなかった従業員は、年末調整をおこなうことができません。その場合は個人で確定申告をおこなうことになります。
▼遅れないように必要書類を集めるコツはこちら
年末調整の必要書類一覧|記載する内容や書類の入手方法を徹底解説
3-4. 税務署や自治体への書類提出が遅れる場合は罰則を受ける可能性もある
処理の遅れ等で必要書類の提出が遅れるとしても、すぐに罰則を受けることはありません。事前に管轄の税務署や自治体に連絡し、提出が遅れる旨を申し入れておけば、大きな問題にはならないでしょう。
しかし、提出が大幅に遅れると話は別です。正しく年末調整を実施していないとみなされ、最悪の場合は10年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が適用される可能性があります。
また、従業員の納税も完了していないことになるので、各従業員が個別に確定申告をおこなわなければなりません。期日厳守が原則ですが、万が一遅れるとしても事前に提出先に連絡し、早めの対応を心掛けましょう。
3-5. 期日までに所得税を納税しなかった場合は資産の差し押さえもある
納付期日を過ぎても所得税が納税されなかった場合、最悪のケースでは資産の差し押さえまで発展することも考えられます。
そこまで至らなかったとしても、税金の滞納には延滞税が掛かり、1日ごとに金額が加算されてしまいます。会社の信用にも関わるので、期日までに間違いなく納税するようにしましょう。
4. 年末調整をしなくても罰則がない従業員の例


年末調整を適切に実施していない会社は、最悪の場合、法的な罰則を受ける可能性があります。ただし、すべての従業員が年末調整の対象になるわけではありません。
対象外となる従業員については、年末調整をおこなわなくても問題はありません。ここでは、年末調整が不要となる従業員の主な例を紹介します。
4-1. 「給与所得者の扶養控除等(移動)申告書」を提出していない従業員
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を自社に提出していない従業員に対しては年末調整をおこなうことができません。扶養控除等申告書は、その従業員が年末調整をおこなう事業者に提出する書類です。
複数の職場を掛け持ちしているアルバイト社員で該当するケースが多く、既に他社で扶養控除等申告書を提出している場合は年末調整が不要です。
参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁
関連記事:年末調整を2箇所でしてしまったら?ダブルワークの注意点と正しい対処方法を解説
4-2. 年間の給与収入が2,000万円を超えている従業員
年間の給与収入が2,000万円を超えている従業員も年末調整の対象外です。この場合は年末調整ではなく確定申告により所得税を納めることが法的に定められています。
一般社員で該当する従業員は極一部ですが、会社役員クラスの従業員であれば該当するケースも珍しくありません。
4-3. 給与収入160万円以下かつ源泉徴収を受けていない従業員
年末調整とは、その年に給与から源泉徴収された所得税額の合計と、実際に納めるべき所得税額を比較し、その差額を精算する手続きです。給与収入が160万円以下の場合、給与所得控除(65万円)と基礎控除(95万円)の合計が160万円となり、課税所得が生じず所得税は発生しません。なお、令和7年度税制改正により、2025年分から給与所得控除の最低保障額と基礎控除の額が引き上げられているので留意が必要です。
また、その年に一度も源泉徴収されていない場合は、年末調整による還付もありません。よって、課税所得がなく、かつ源泉徴収もない従業員については、年末調整をおこなわなくても税額に影響はありません。ただし、所得税が発生しない場合でも、源泉徴収票の交付や給与支払報告書の提出義務は残るため、事務手続きは必要です。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
関連記事:源泉徴収票の発行の仕方とは?いつどこで発行するかを解説
4-4. 災害減免法が適用されている従業員
大規模災害等で経済的に大きな負担を受けた場合、災害減免法が適用されることがあります。これにより所得税の納税に猶予期間が発生するので、該当する従業員は年末調整を実施しなくても問題ありません。
5. 罰則を受けずに年末調整をスムーズに進める方法


年末調整を正しくおこなわなかった場合、法令に基づき拘禁刑や罰金などの罰則が科せられる恐れがあります。しかし、年末調整は煩雑な手続きが多いため、どうしてもミスが起こりやすいものです。従業員数も多くなると年末調整の書類を回収するだけでも多くの時間を要し、結果として年末調整の提出期限に間に合わないという事態が起きてしまいがちです。
こうしたトラブルを防ぐには、繁忙期を見据えた事前の準備と計画的な進行管理が欠かせません。ここからは、年末調整をスムーズに進めるための具体的な方法について解説します。
5-1. 年末調整の社内フローを明確化する
年末調整は、必要書類の配布・回収、内容確認、所得税の計算、源泉徴収票の作成・提出など、複数の工程で構成されます。業務の流れを時系列で整理し、各工程の担当者と期限を明確にしておくと、抜け漏れや遅延を防止できます。
また、従業員の記入漏れや証明書の添付忘れ、担当者による計算ミスは発生しやすいため、スケジュールには必ず余裕を持たせ、修正や再確認に対応できる期間を確保することが重要です。
関連記事:年末調整はいつ提出?時期や期限、申告書の種類をくわしく解説
5-2. 年末調整の対象者へ周知を徹底する
年末調整を円滑に進めるには、従業員の協力が欠かせません。必要書類や提出期限は、早期に案内し、さらに複数回周知すれば提出漏れを防ぎやすくなります。
社内掲示板やメール、勤怠システムなど複数の手段を併用してリマインドをおこないましょう。また、記入例やマニュアルを配布すれば、記入ミスや証明書添付漏れを減らせるため、差し戻しや再提出による業務遅延を防ぐことができます。
5-3. 年末調整をシステムで電子化する
年末調整を紙で運用している場合、書類の配布・回収・転記などに多くの時間と手間がかかります。クラウド型の年末調整システムを導入すれば、従業員がオンラインで申告書を作成・提出でき、入力データが自動集計されるため、回収漏れや計算ミスを大幅に減らせます。さらに、保険料や控除額の自動計算、証明書画像のアップロード、自動チェック機能などを活用すれば、確認作業の効率化や計算業務の時間短縮が可能です。
また、ペーパーレス化によって差し戻しもシステム上で完結でき、紙書類の回収や再配布が不要になります。これにより、年末調整全体の作業工数を大幅に削減できるため、業務負担が課題となっている会社は導入を検討する価値があります。実際、近年では工数削減を目的にシステムを活用する会社が増えています。
当サイトでは、書類回収から年調過不足金の計算まで工数を削減できる具体的な方法を解説した無料動画も公開しています。「年末調整をもっと楽にしたいが、何から始めればよいかわからない」という方は、まずこの動画をご覧ください。
6. 万が一年末調整にミス・遅れが発生したらどうする?
年末調整書類に誤りや遅れが発生した場合は、まず翌年1月31日の「法定調書」や「給与支払報告書」の提出期限までに修正・再調整が可能かを検討します。間に合わない場合は、速やかに管轄税務署へ相談し、状況を説明しましょう。事前相談により指導や罰則の軽減を受けられる可能性があります。
また、年末調整ができなかった従業員には、確定申告により税額を精算してもらうよう案内します。加えて同じ問題を防ぐため、提出書類の回収期限の前倒しや、複数人によるチェック体制を整えるなど、再発防止策を講じることが重要です。
7. 年末調整は法令を遵守し期日内に手続きを済ませよう


会社による従業員の源泉徴収や年末調整は、国が効率的に所得税を徴収するための仕組みでもあります。雇用主は責任を持って自社の従業員の所得税を徴収し国へ収める義務があり、義務を果たさない雇用主にはペナルティが課されるケースもあるので注意が必要です。
罰則を受けないためにも、年末調整は法令を遵守し期日内に手続きを終えることが求められます。特に年末調整に慣れていないスタートアップ会社は、事前にスケジュールを立て、必要な人員を配置して手続きに臨みましょう。



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