同一労働同一賃金とは?法改正の背景・目的や不合理な待遇差の禁止についてわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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同一労働同一賃金とは?法改正の背景・目的や不合理な待遇差の禁止についてわかりやすく解説

同じ給与を表す図

同一労働同一賃金とは、正社員(通常の労働者)と非正規雇用労働者との間の、不合理な待遇差を禁止する制度です。「同じ仕事なら必ず同じ賃金を支払う制度」と誤解されがちですが、実際はそのような単純な制度ではなく、雇用形態の違いだけを理由に不合理な待遇差を設けないための制度を指します。

ただし、職務の内容や責任、配置転換の範囲などに違いがあれば、その違いに応じた待遇差を設けることは認められており、判断が難しい部分も多いです。

本記事では、同一労働同一賃金の仕組みや導入背景、2026年10月1日に施行されるガイドラインなどの改正、不合理な待遇差とならないための実務上のポイントをわかりやすく解説します。

労務リスクに備える。 「同一労働同一賃金」対応の再点検を

意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。

◆押さえておくべき法的ポイント

  • 「均衡待遇」と「均等待遇」の判断基準
  • 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
  • 万が一の紛争解決手続き「行政ADR」の概要

最新の法令に対応した盤石な体制を構築するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金は、正社員と非正規雇用労働者の間に待遇差がある場合に、その差が職務の内容や責任の程度、人材活用の仕組みなどの違いで説明できるかを問い、雇用形態の違いだけを理由とした不合理な待遇差を禁止する制度です。一方で、違いに応じた合理的な待遇差までは否定されていません。

はじめに、同一労働同一賃金の対象者、対象企業や2026年10月1日に改正される内容を解説します。

1-1. 対象者はパートタイム・有期雇用労働者・派遣労働者

同一労働同一賃金の対象となるのは、次の3つの雇用形態の労働者です。

  • パートタイム労働者:1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される通常の労働者より短い労働者
  • 有期雇用労働者:事業主と期間の定めのある労働契約を結んでいる労働者
  • 派遣労働者:派遣元と労働契約を結び、派遣先の指揮命令を受けて働く労働者

パート・アルバイト・契約社員・嘱託・準社員といった社内での名称にかかわらず、所定労働時間と契約期間の実態で判断されます。定年後再雇用の嘱託社員も、有期契約であれば対象です。

比較の相手となるのは、原則として同一企業に雇用される正社員であり、企業の枠を越えて他社の労働者と比較する制度ではありません。

1-2. 法改正を経て、大企業・中小企業ともに適用済み

同一労働同一賃金は、働き方改革関連法によるパートタイム・有期雇用労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)と労働者派遣法の改正により整備されました。現在は、すべての企業に適用がされています。

対象

根拠となる法律

適用開始日

大企業

パートタイム・有期雇用労働法

2020年4月1日

中小企業

パートタイム・有期雇用労働法

2021年4月1日

派遣労働者

労働者派遣法

2020年4月1日(企業規模を問わない)

関連記事:同一労働同一賃金で中小企業が受ける影響や対応しない場合のリスクを解説

1-3. 2026年10月1日から施行規則・告示・ガイドライン等が改正

制度の施行から5年が経過したことを踏まえ、厚生労働省は2025年2月から労働政策審議会の同一労働同一賃金部会で制度の見直しを議論してきました。2025年12月の部会報告を経て、2026年4月28日に改正省令・告示が公布され、同年10月1日から施行・適用されます。主な改正内容は次の3つです。

  1. 雇入れ時の労働条件明示事項の追加(省令):非正規雇用労働者を雇い入れるとき(契約更新時を含む)の明示事項に、「正社員との待遇差の内容・理由などの説明を求めることができる旨」が追加されます。
  2. 同一労働同一賃金ガイドラインの改正(告示):近年の最高裁判決の考え方を反映し、退職手当・家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇・無事故手当・褒賞といった、これまで記載のなかった待遇の考え方が追加されました。賞与や病気休職の記載も充実し、定年後再雇用者の待遇に関する考え方も明確化されています。
  3. 雇用管理指針の改正(告示):正社員転換制度の有無や転換実績など、処遇改善の取り組み状況の明示・公表が望ましいことなどが示されました。

参考:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省

2. 同一労働同一賃金の根拠法と4つのポイント

プラスのブロックを積み上げる様子

同一労働同一賃金の根拠法は、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法です。制度の柱は「均衡待遇」「均等待遇」「説明義務」「行政ADR」の4つで、待遇差そのものへの規制と、説明・紛争解決の仕組みがセットで整備されています。ここでは、4つのポイントを順に解説します。

2-1. 不合理な待遇差の禁止(均衡待遇)

パートタイム・有期雇用労働法第8条は、正社員と非正規雇用労働者との間について、待遇ごとに不合理な相違を設けることを禁止しています。不合理かどうかは、3つの要素を考慮し、その待遇の性質・目的に照らして適切か判断されます。

  • 職務の内容(業務の内容と責任の程度)
  • 職務の内容・配置の変更の範囲
  • その他の事情

これが「均衡待遇」とよばれる考え方です。

賃金の総額ではなく、基本給・賞与・手当・福利厚生といった個々の待遇ごとに不合理かどうかが判断されます。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)第8条、第9条|e-Gov法令検索
参考:同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)|厚生労働省

関連記事:同一労働同一賃金で交通費はどうなる?判例や課税について解説

2-2. 差別的取扱いの禁止(均等待遇)

パートタイム・有期雇用労働法第9条は、①職務の内容が正社員と同一であり、②職務の内容・配置の変更の範囲が、雇用関係の全期間を通じて正社員と同一と見込まれる非正規雇用労働者を「正社員と同視すべき短時間・有期雇用労働者」と位置付けています。

この場合、基本給や賞与をはじめとするすべての待遇について、非正規雇用労働者であることを理由とした差別的取扱いが禁止されます。これが「均等待遇」です。

均衡待遇が「違いに応じたバランスの取れた待遇」を求めるのに対し、均等待遇は「同じ取扱い」を求める、より強い規制といえます。

2-3. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

パートタイム・有期雇用労働法第14条は、事業主に説明義務を課しています。

  • 雇入れ時:不合理な待遇差の禁止、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、正社員転換の推進措置など、雇用管理上講ずる措置の内容を説明する(第14条第1項)
  • 求めがあったとき:正社員との待遇差の内容・理由や、待遇の決定にあたり考慮した事項を説明する(第14条第2項)

説明を求めたことを理由とする解雇や減給などの不利益取扱いも禁止です(第14条第3項)。この説明義務は2020年の法改正で強化されたもので、さらに2026年10月1日からは、説明を求めることができる旨を雇入れ時に文書での明示が義務付けられます。

関連記事:同一労働同一賃金の説明義務はどう強化された?注意点や説明方法も解説

2-4. 裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

待遇差をめぐる労使間の紛争を、裁判によらずに解決する仕組みとして、行政ADR(裁判外紛争解決手続)が整備されています。具体的には、都道府県労働局長による紛争解決援助(同法第24条)と、調停会議による調停(第25条)の2つで、いずれも無料・非公開で利用可能です。

2020年の法改正により、均衡待遇や待遇差の内容・理由に関する説明も行政ADRの対象に追加されました。労働者にとって利用のハードルが低い制度であるため、企業としては「紛争になってから考える」のではなく、日頃から説明できる状態を整えておくことが大切です。

参考:雇用形態に関わらない公正な待遇の確保|厚生労働省

当サイトでは、同一労働同一賃金に関して企業が対応するべきポイントを、図を用いながら解説した資料を無料で配布しております。法律を遵守するための手順を視覚的にわかりやすくまとめているので、自社の対応に不安がある方は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」をダウンロードしてぜひご覧ください。

3. 同一労働同一賃金で確認すべき待遇項目

法律について議論する様子

同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)は、待遇ごとに原則となる考え方と具体例を示しています。ここでは7つの項目に分けて、点検すべきポイントを解説します。

参考:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

3-1. 基本給

基本給を能力・経験、業績・成果、勤続年数などに応じて支給している場合、その要素が同一なら同一の支給とし、相違があれば相違に応じた支給とします。

「将来の役割への期待が異なるため」といった主観的・抽象的な理由だけでは、基本給の差の説明として不十分です。自社の基本給が何に応じて決まっているのかを明確にし、客観的・具体的な実態にもとづいて説明できる状態を整えましょう。

3-2. 賞与

賞与を企業の業績などへの貢献に応じて支給している場合、同一の貢献には同一の賞与を、貢献に一定の違いがあれば違いに応じた賞与を支給する必要があります。「正社員には一律に支給し、非正規雇用労働者には支給しない」という取扱いは、ガイドラインで問題となる例として示されています。

反対に、支給の性質・目的が正社員に固有のものであり、職務の内容や配置変更の範囲の違いから客観的に説明できる場合には、支給に差を設けることが直ちに不合理となるわけではありません。ただし、人材確保・定着といった目的だけを理由とする説明では不十分とされるため、注意が必要です。

3-3. 退職手当

退職手当も、労務の対価の後払い、功労報償などの性質・目的が非正規雇用労働者にも当てはまる場合は、職務内容等の相違に応じた均衡のとれた支給を検討します。支給しない場合は、基本給を高くするなどの代替措置を含め、待遇体系全体で説明できるかを確認してください。

3-4. 各種手当

各種手当は、待遇差が不合理と判断されやすい代表的な項目です。ガイドラインでは、同じ支給要件を満たす場合の主な考え方を例示しています。

  • 役職手当(役職の内容に対して支給するもの):同一の役職には同一の支給をおこない、役職の内容に相違があれば、その相違に応じて支給する
  • 特殊作業手当・特殊勤務手当:同一の危険度・作業環境、同一の勤務形態であれば同一の支給をおこなう
  • 精皆勤手当や時間外・深夜・休日労働の割増率:業務内容が同一なら同一の支給・同一の割増率とする
  • 通勤手当・出張旅費、食事手当、単身赴任手当、地域手当:支給目的と要件が同一の場合、同一の支給をおこなう

3-5. 福利厚生

福利厚生では、食堂・休憩室・更衣室といった福利厚生施設の利用機会を、非正規雇用労働者にも与えなければなりません(パートタイム・有期雇用労働法第12条)。転勤の有無などの要件が同一であれば、転勤者用社宅の利用機会の差も問題になる可能性があります。

慶弔休暇や、健康診断に伴う勤務免除・受診時間の有給保障についても、雇用形態を問わず働く環境を支えるものとして、不合理な待遇差がないか押さえておきましょう。

3-6. 休暇・休職・褒賞

休暇や休職も、非正規雇用労働者に同様の付与が求められます。ただし、完全に同じ制度である必要まではなく、例えば短時間労働者に所定労働時間に比例した日数を付与するなどの取扱いは認められています。禁止されるのはあくまで雇用形態だけを理由とした差であり、勤務実態に応じた調整まで否定されるものではありません。

改正では夏季・冬季休暇や褒賞に関する考え方も新たに追加されたため、「正社員だけの慣行」として残っている休暇や表彰制度がないか、この機会に洗い出しておきましょう。

3-7. 教育訓練

教育訓練のうち、現在の職務の遂行に必要な能力を付与するために実施するものも、同一労働同一賃金の対象です。

同一労働同一賃金というと賃金にばかり目が向きがちですが、不合理な待遇差の解消は、教育訓練やキャリア形成の機会にも及びます。非正規雇用労働者のスキルアップは生産性や定着率の向上にもつながるため、前向きに取り組みたい項目です。

4. 同一労働同一賃金の仕組みを導入・実現するまでの流れ

構造

実際に同一労働同一賃金を実現するためには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは、同一労働同一賃金の仕組みを導入・実現するまでの流れについて紹介します。

4-1. 対象者と比較対象労働者を確認する

まず、自社で働く労働者の雇用形態を洗い出し、パートタイム労働者・有期雇用労働者に該当する人を特定します。呼び方ではなく、所定労働時間と契約期間の実態で判断しましょう。

あわせて、比較対象となる正社員の整理も必要です。総合職・一般職・限定正社員など複数の雇用管理区分がある場合には、そのすべての正社員との間で不合理と評価される差を解消する必要があります。

4-2. 待遇差を一覧化する

次に、基本給・賞与・退職金・各種手当・福利厚生・教育訓練といった待遇ごとに、正社員との差の有無を一覧化します。このとき、それぞれの待遇を「何のために支給・実施しているのか」という性質・目的もあわせて整理しておくと、後の説明準備が進めやすくなります。

厚生労働省の「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」や、Web上で利用できる「パートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツール」を活用すると、抜け漏れを防げます。

参考:パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために|厚生労働省

4-3. 待遇の違いがある理由を明確にする

整理した待遇の違いについて、それぞれにどのような理由があるのかを明らかにしましょう。例えば、正社員に支給している各種手当を洗い出し、短時間労働者や有期雇用労働者との支給有無や内容の違いを一つひとつ確認し、抜け漏れなく整理します。

待遇に差がある場合は、業務内容や責任の程度、職務の成果、転勤の有無、勤続年数、勤務日数・時間数といった要素に基づき、合理的な説明ができるかを検討する必要があります。説明できる待遇差は、労働者から求めがあった際にすぐ対応できるよう、比較表や説明文書のひな形として整備しておきましょう。どうしても説明できない待遇差は、是正すべき課題として次のステップへ引き継ぎます。

関連記事:同一労働同一賃金で業務における責任の程度はどう変化する?

4-4. 労働条件通知書・就業規則・賃金規程を見直す

点検の結果と2026年改正の内容を踏まえ、関連する規程類を見直します。労働条件通知書は、2026年10月1日から必要となる新たな明示事項(待遇差の説明を求めることができる旨)を盛り込んだ様式への改訂が必須です。厚生労働省が公表するモデル労働条件通知書を参考にすると、スムーズに対応できます。

就業規則や賃金規程では、手当の支給目的・支給要件を明文化し、不合理な待遇差を生む規定がないかを確認します。なお、待遇差の解消にあたり、労使の合意なく正社員の待遇を引き下げる対応は望ましくないとガイドラインで示されているため、注意してください。ただし、就業規則の変更が労働契約法第10条の合理性を満たす場合は、労働者本人の同意がなくても有効となる可能性があります。

参考:モデル労働条件通知書|厚生労働省

4-5. 不合理な待遇差を改善し、定期点検する

正社員と非正規雇用労働者との間に見られる待遇の違いについて検討した結果、合理性が認められない場合は、速やかに改善をおこなう必要があります。具体的な改善策としては、非正規雇用労働者の待遇を引き上げる、あるいは制度全体を見直し、雇用形態にかかわらず統一的なルールに変えるなどが考えられます。

改善を実施する際には、対象となる労働者に対し、内容や背景を丁寧に説明し、理解と納得を得ながら進めることが重要です。さらに、改善後も定期的に実態を把握し、必要に応じて継続的な見直しをおこなう仕組みを整えることが求められます。

参考:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書|厚生労働省

関連記事:同一労働同一賃金で就業規則の見直しは必要?待遇差の要素や注意点

5. 派遣労働者の同一労働同一賃金

はてなのブロック

派遣労働者は、雇用主である派遣元と、指揮命令をおこなう派遣先が異なるという特殊性があるため、労働者派遣法により独自の仕組みが設けられています。派遣元は「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかで待遇を確保しなければならず、派遣先にも果たすべき役割があります。

ここでは、2つの方式と、派遣先・派遣元が確認すべき事項を解説します。

5-1. 派遣先均等・均衡方式

派遣先均等・均衡方式は、派遣先に雇用される通常の労働者と比較して、派遣労働者の均等・均衡待遇を確保する方式です(労働者派遣法第30条の3)。派遣先が変わるたびに、その派遣先の正社員を基準として待遇を決定します。

この方式では、派遣先が比較対象となる労働者の待遇情報を派遣元に提供することが前提です。派遣先の賃金水準に連動するため公平性は高い一方、派遣先が変わるごとに派遣労働者の待遇が変動しやすいという特徴があります。

5-2. 労使協定方式

労使協定方式は、派遣元が過半数労働組合または過半数代表者と労使協定を結び、その協定にもとづいて待遇を決定する方式です(同法第30条の4)。協定では、派遣労働者の賃金を、同種の業務に同一地域で従事する一般労働者の平均的な賃金(厚生労働省が毎年示す水準)と同等以上とすることなどが要件とされています。

派遣先が変わっても待遇が安定しやすく、実務では多くの派遣元がこの方式を採用しています。ただし、協定の要件を満たしていない場合には原則どおり派遣先均等・均衡方式が適用されるため、派遣元は適正に運用する必要があります。

5-3. 派遣先・派遣元が確認すべき情報と教育訓練・福利厚生施設

派遣先は、労働者派遣契約を結ぶにあたり、比較対象労働者の待遇情報(派遣先均等・均衡方式の場合)や、教育訓練・福利厚生施設に関する情報(労使協定方式の場合)を、あらかじめ派遣元に提供しなければなりません。この情報提供がなければ、派遣契約自体を締結できない仕組みです。

どちらの方式でも、派遣先が自社の労働者に業務遂行上必要な教育訓練を実施している場合、派遣元から求めがあれば、派遣元で実施できる場合などを除き、同種業務の派遣労働者にも訓練を実施するなどの措置を講じなければなりません。

6. 同一労働同一賃金に違反した場合のリスク

ビックリマーク

同一労働同一賃金のルールに違反しても、直ちに刑事罰が科される仕組みにはなっていません。しかし、行政による指導や企業名の公表、労働者からの訴訟など、企業経営に影響するリスクは決して小さくないといえます。

6-1. 直ちに刑事罰が科される制度ではない

パートタイム・有期雇用労働法には、均衡待遇(第8条)や均等待遇(第9条)の違反そのものに対する刑事罰の規定はありません。ただし、雇入れ時の文書明示義務(第6条第1項)に違反した場合には、労働者1人につき10万円以下の過料が科される可能性があります(第31条)。行政からの報告の求めに応じない場合や虚偽の報告をした場合も、20万円以下の過料の対象です(第30条)。

過料は刑事罰ではなく行政上の制裁ですが、「罰則が軽いから対応しなくてもよい」というものではありません。違反状態を放置すると、次に見る行政対応や民事上のリスクへ発展するおそれがあります。

関連記事:同一労働同一賃金の問題点と日本・海外との考え方の違いを解説!法改正の影響とは?

6-2. 報告徴収・助言・指導・勧告の対象になり得る

同一労働同一賃金のルールに問題があると判断された場合、行政から助言・指導や勧告がおこなわれ、是正を求められる可能性があります。

例えば、不合理な待遇差が疑われる場合や、労働者に対して待遇差の内容や理由について十分な説明がなされていない場合には、制度の見直しや改善を求められかねません。

勧告を受けてもなお従わない場合には、企業名公表の対象となり得ます。企業名の公表は、採用活動や取引先からの信頼に直結するダメージです。

6-3. 訴訟や労務トラブルにつながる可能性がある

不合理な待遇差は、訴訟において無効と判断され、損害賠償として差額相当分の支払いを命じられる可能性があります。訴訟に至れば、金銭的な負担だけでなく、対応工数の増大や企業イメージの低下といった影響も避けられません。

過去の裁判例の考え方は2026年10月施行の改正ガイドラインに反映されていますので、現行の制度がガイドラインの考え方と整合しているかを確認をおすすめします。

関連記事:同一労働同一賃金における60歳以上の定年後再雇用の扱いとは

6-4. 抜け道を探すより、待遇差の理由を説明できる状態にする

同一労働同一賃金への対応として、職務を形式的に切り分けて差を正当化する、正社員の待遇を引き下げてそろえる、契約更新を打ち切るといった「抜け道」的な手法が語られることがあります。しかし、ガイドラインは職務の内容などを分離した場合でも不合理な待遇差の解消は必要としており、労使の合意なく正社員の待遇を引き下げることも望ましくないと明示しています。合理的な期待がある契約の雇止めは、労働契約法により無効と判断されかねません。

抜け道を探す対応は、労働者の不信感と紛争リスクを高めるだけで、根本的な解決にはなりません。説明できる待遇体系づくりにこそ、時間と労力を投じましょう。

関連記事:同一労働同一賃金の抜け道を探すのは危険?リスクや対応ポイントをわかりやすく解説

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正社員の待遇引下げはガイドライン上「望ましくない対応」とされていますが、法律上当然に無効になるわけではありません。実際に、社会福祉法人恩賜財団済生会事件では、正規職員だけに支給されていた扶養手当・住宅手当を廃止または縮小し、正規職員と非正規職員の双方を対象とする子ども手当、保育手当、住宅補助手当などへ組み替えた給与規程の変更について、合理性が認められました。

ただし、裁判例が認めたのは、変更の必要性と目的が明確で、不利益の程度が少なく、経過措置や十分な説明・交渉がおこなわれていたためです。実施する場合には、労働契約法第9条・第10条の不利益変更のルールに沿って、慎重に判断することが必要です。

参考:不合理な待遇差に関する裁判所における判断|厚生労働省

解説:社会保険労務士

7. 同一労働同一賃金の理念を理解し、待遇差を点検しよう

天秤に乗ったコイン

同一労働同一賃金は、雇用形態の違いだけを理由とした不合理な待遇差をなくし、どのような働き方を選んでも納得できる処遇を実現するための制度です。均衡待遇・均等待遇・説明義務・行政ADRという4つの柱で構成されています。

2026年10月1日からは、雇入れ時の明示事項の追加やガイドラインの改正が施行され、待遇差への説明責任はこれまで以上に重くなります。基本給から賞与、各種手当、福利厚生、休暇、教育訓練まで、待遇ごとに差の有無と理由を点検し、労働条件通知書や就業規則・賃金規程の見直しを計画的に進めてください。待遇差を説明できる状態を整えることは、法令遵守にとどまらず、労働者の納得感と人材の確保・定着にもつながる投資といえるでしょう。

労務リスクに備える。 「同一労働同一賃金」対応の再点検を

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企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。

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