アルバイトの試用期間とは?試用期間中の給料や退職などルールを解説
更新日: 2025.8.25 公開日: 2022.9.22 jinjer Blog 編集部

試用期間は、本採用の可否や会社との相性を見極めるためのものです。アルバイトにも試用期間を設けるケースがあり、その目的や意味について理解しておくことが重要です。
本記事では、アルバイトの試用期間のメリットや注意点について解説します。また、試用期間中のアルバイトの給料や退職(辞める)に関するルールについても紹介します。
目次
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
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1. アルバイトの試用期間とは


アルバイトの試用期間というと、正社員の試用期間とは違うイメージを持つ担当者の方もいるかもしれません。しかし、試用であっても「雇用」することに変わりはないので、「試用期間」に関しての正しい認識を持っておく必要があります。
ここでは、試用期間の概要について解説していきます。
1-1. 試用期間とはどんな期間?
試用期間とは、その人材が会社や現場にマッチしているか、業務に支障がないかを見極めるための期間です。アルバイトであっても正社員であっても、本採用の前に設けることができます。また、試用期間中も雇用契約が結ばれていることには変わりなく、他のアルバイトスタッフと同様に給料を支払う必要があります。
また、試用期間と研修期間は混同されがちですが、試用期間の目的はあくまでも応募者の適正を見極めることにあり、研修期間は正式に採用された新人を教育するのが目的です。そのため、試用期間が終わった後に研修期間に入るケースもあります。
関連記事:試用期間とは?目的や通常の雇用期間との違い・本採用前の退職について解説
1-2. 試用期間の長さ
試用期間を設ける場合は、明確な期限を決めなければなりません。試用期間の長さは法律で決められておらず、企業が自由に設定できるので、必要だと思われる期間を設定しましょう。
正社員の場合は6ヵ月を設定する企業もありますが、アルバイトの場合は3ヵ月程度が一般的です。期限の設定が自由であっても、長すぎる試用期間はおすすめできません。なお、試用期間は、以下の要件を満たしていれば延長ができます。
- 就業規則に試用期間の延長を記載している
- 延長することの合理的な理由がある
- 本人の合意を得ている
試用期間の延長について就業規則に記載するだけでなく、雇用条件を説明する際に延長の可能性があることを伝えておくと、トラブルを回避できます。
関連記事:試用期間は6ヶ月がベスト?最適な期間と決め方を徹底解説
2. アルバイトに試用期間を設けるメリット


アルバイトに試用期間を設けると、アルバイト側は労働条件を確認できますし、企業側には人間性や業務とのマッチングを確認できるというメリットがあります。ここでは、これらのメリットについて具体的に解説をしていきます。
2-1. 労働条件を確認できる
労働条件については、原則として書面(または電子的手段)で明示され、労働契約の締結時に確認をおこないます。しかし、実際にその労働条件が守られているかどうかは、働いてみなければ判断しにくいこともあります。
アルバイトに試用期間を導入すると、労働者は業務を経験しながら、労働条件が提示された内容と一致しているかどうかを実際に確認できます。また、試用期間中にアルバイトから労働条件に関する希望や改善提案があった場合には、労使間で話し合い、条件の見直しを検討することも可能です。アルバイトにとって働きやすい環境を整備できれば、ミスマッチや早期離職のリスクを減らすことにもつながります。
関連記事:試用期間は雇用契約書に記載すべき?書き方のポイントを紹介
2-2. 人間性を確認できる
アルバイトを採用する際には面接を実施するのが一般的ですが、短時間の面接だけでは応募者の業務適性や職場での行動特性までを十分に把握することは困難です。実際に働いてもらう中で、面接時には見えなかった課題や強みが明らかになるケースも少なくありません。
また、実際の勤務を通じて、協調性や指示の理解度、コミュニケーションの傾向などを把握でき、本人に合った教育方針を立てやすくなるでしょう。個々の特性に応じた支援をおこなうことで、スムーズな職場定着やパフォーマンス向上につながるため、試用期間は企業にとっても応募者にとっても有意義な仕組みといえます。
2-3. 業務内容に適しているか確認できる
試用期間には、実際の仕事環境と応募者の職場イメージとのミスマッチを防ぐという重要な役割もあります。求人情報では業務内容や勤務時間などが記載されていますが、職場の雰囲気や具体的な業務の進め方までは伝わりにくいのが実情でしょう。
応募者が実際にアルバイトとして働いてみた結果、「思っていた働き方と違った」と感じ、不満や不安が生じることもあります。そのような状態で本採用に進んでしまうと、早期退職につながるリスクも否定できません。とくに、研修を実施し、教育に時間と労力をかけた後で離職されると、採用や育成にかけたコストが無駄になってしまいます。
試用期間を設けることで、企業側はアルバイトの適性を見極められるだけでなく、応募者自身も実際の業務や職場環境を体感し、このまま仕事を継続するかどうかを冷静に判断することが可能です。このように、試用期間は双方にとってリスクを軽減し、納得感のある雇用につながる有効な手段といえるでしょう。
3.アルバイトの試用期間中の給料について


試用期間中もアルバイトに対して正しく給料を支払う必要があります。ここでは、アルバイトの試用期間中の給料ルールについて詳しく紹介します。
3-1. 試用期間中の給料なしは違法
アルバイトが試用期間中であっても、労働者であることに変わりありません。そのため、正社員や他のアルバイトスタッフと同様に、賃金に関する法律が適用されます。
例えば、アルバイトの試用期間を2ヵ月と定め、その2ヵ月分の給料をまとめて支払うような対応は、労働基準法第24条で定められた「賃金は毎月1回以上支払うこと」という原則に違反します。
試用期間中であっても、給料は毎月きちんと支払わなければなりません。労働基準法を正しく理解し、アルバイトに対しても適切な賃金の支払いをおこないましょう。
関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について
3-2. 最低賃金を下回る金額の設定には注意が必要
試用期間中のアルバイトであっても、原則として最低賃金を下回る賃金を設定することはできません。最低賃金は都道府県ごとに定められており、毎年見直されるため、常に最新の水準を確認し、適切に反映させる必要があります。
なお、最低賃金法第7条により、試用期間中の者に対しては都道府県労働局長の許可を得ることで、最大で最低賃金の20%を給料から減額できます。ただし「最低賃金の減額特例」を適用する場合、その期間は必要最小限度とされ、行政運用上は6ヵ月以内が目安とされています。
関連記事:労働基準法に基づく最低賃金とは?その基準や違反への罰則を解説
3-3. 残業代や割増賃金の支払いも不可欠
試用期間中のアルバイトが残業をおこなった場合、残業代の支給が必要です。次のような労働には、割増賃金の支払いも必要です。
- 月60時間以内の時間外労働(法定労働時間を超える労働):割増率25%以上
- 月60時間超えの時間外労働:割増率50%以上
- 休日労働(法定休日の労働):割増率35%以上
- 深夜労働(深夜帯22時~5時の労働):割増率25%以上
正しく割増賃金を支払わない場合は労働基準法違反となり、労働者から未払い賃金や遅延損害金を請求される可能性があるほか、労働基準監督署からの是正勧告を受けることもあるので気を付けましょう。
関連記事:試用期間の給料設定や給与計算についてわかりやすく解説
4. アルバイトの試用期間中の退職(辞める場合)について


試用期間中のアルバイトから辞めたいと言われることもあるかもしれません。ここでは、アルバイトの試用期間中の退職に関するポイント・注意点や手続きについて詳しく紹介します。
4-1. 労使双方の合意があれば退職が可能
アルバイトが試用期間中であっても、労使双方の合意があれば退職が可能です。試用期間はあくまで労働契約の適性を見極める期間であり、アルバイト側も企業側も互いに契約の継続に同意しない場合は、円滑に契約を終了させることができます。
4-2. 法律に基づく退職のルール
アルバイトが試用期間中に退職する場合、企業側がこれを一方的に拒否することは基本的にできません。退職に関しては憲法や民法、労働基準法でルールが定められているためです。
例えば、アルバイトが期間の定めのない雇用契約(無期雇用)の場合、民法第627条により、退職の申し入れから2週間が経過すれば労働契約は終了します。一方、期間の定めのある雇用契約(有期雇用)の場合、原則として契約期間満了まで雇用関係が続きますが、民法第628条により「やむを得ない事由」がある場合には、直ちに契約を解除することが認められています。
法律に基づく退職ルールを正しく理解し、就業規則や雇用契約書において、アルバイトの試用期間中の退職に関する規定をしっかりと定めましょう。
関連記事:労働基準法における退職の定義と手続き方法を分かりやすく解説
4-3. 解雇をする場合は「不当解雇」に気を付ける
試用期間中のアルバイトを解雇する場合、労働契約法第16条に基づき「客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であること」が必要です。これらの条件を満たさない解雇は、解雇権の濫用として無効とされます。
また、アルバイトが有期雇用契約の場合には、労働契約法第17条により「やむを得ない事由」がなければ契約期間の途中での解雇はできません。そのため、有期雇用の場合は、無期雇用よりも解雇の有効性が厳しく判断される傾向にあります。
試用期間中の解雇を適正におこなうには、就業規則や雇用契約書に解雇事由を具体的に定めておくことが重要です。また、実際に解雇を検討する際は、当該労働者がその条件に該当するかどうかを慎重に確認し、合理的な理由を客観的に説明できるよう準備しておきましょう。
4-4. 試用期間中は14日以内であれば解雇予告が不要
実際に試用期間中のアルバイトを解雇する場合でも、労働基準法第20条に基づき、解雇日の30日以上前に解雇予告をする必要があります。もし解雇予告をしない場合には、不足する日数分の解雇予告手当を支払わなければなりません。
ただし、労働基準法第21条の規定により、雇入れの日から14日以内の試用期間中であれば、解雇予告や解雇予告手当の支払いは不要とされています。なお、試用期間中であっても、解雇予告の適用除外が認められるのは、実態として「試みの使用」といえる場合に限られるため注意が必要です。
4-5. 退職手続きをきちんと実施する
試用期間中にアルバイトが退職した場合、もしくは解雇をした場合も退職手続きが必要です。貸与物がある場合には、退職日(解雇日)までに必ず返却してもらいましょう。また、労働基準法第22条に基づき、労働者から請求があった場合には退職証明書を交付しなければなりません。
試用期間中の給与を精算した後は、所得税法第226条により退職日以後1ヵ月以内に源泉徴収票を交付することも義務付けられています。さらに、健康保険や厚生年金保険、雇用保険に加入している場合には、資格喪失手続きを速やかにおこなう必要があります。手続きが遅れると、失業手当の受給などに影響する可能性があるため注意しましょう。
関連記事:試用期間満了で従業員を解雇するときの手続きをわかりやすく解説
5. アルバイトに試用期間を設けるときの注意点


試用期間の雇用条件は、労働基準法に則っていれば、企業側が自由に決めることができます。しかし、雇用条件の内容に漏れがあると試用期間が無効になってしまいます。また、試用期間であっても社会保険への加入義務があります。
試用期間だからといって対応を怠ってしまうと、トラブルになることもあるので、注意点をしっかりチェックしておきましょう。
5-1. 期間を明記する
試用期間を設ける際は、募集要項や契約書に「期間」を必ず明記しなくてはいけません。期間が記載されていない場合は、試用期間が無効になるので、給料の減額などをおこなうことはできません。
ただし、試用期間の長さについては法的に定められていないため、企業が自由に決定できます。一般的には3ヵ月から6ヵ月程度とされていますが、それ以上の長さに設定することも可能です。
しかし、あまりにも試用期間を長くしてしまうと、労働者が不安に感じたり、応募者が集まらない可能性もあるので、避けた方がよいでしょう。
5-2. 社会保険の加入は必須
試用期間中のアルバイトであっても、条件を満たす場合は社会保険へ加入しなければなりません。試用期間は、あくまで採用後の適性を判断するための期間であり、雇用契約自体は成立しているため、長期雇用を前提とする契約で、所定の要件を満たす場合には、試用期間中から社会保険の加入義務が生じます。
試用期間を「本採用と異なるから社会保険は不要」と誤解していると、法令違反となるリスクがあります。適正な手続きをおこなうためにも、試用期間であっても基本的に本採用と同等の取扱いであると認識することが重要です。
関連記事:試用期間でも社会保険は必要?加入対象や罰則について解説
6. 試用期間の管理は管理システム導入で効率化しよう


アルバイトに試用期間を設けることには、業務への適性を見極めたり、人材ミスマッチを防いだりするなどのメリットがあります。しかし、試用期間の制度について正しく理解しておかないと、「賃金未払い」「社会保険の未加入」など、法令違反となりトラブルに発展する恐れがあります。
また、試用期間終了後に本採用へ移行する場合は、雇用契約の更新や就業条件の再提示など、適切な手続きが必要です。企業によっては、上司や部門長の判断を踏まえて本採用の可否を決めることもあり、人事担当者の業務負担が増えることで、試用期間中の評価やフォローが十分におこなえなくなる可能性もあります。
このような課題を解消するためには、人事業務を可視化・効率化できる管理システムの導入がおすすめです。オンライン上で業務の進捗や評価状況を一元管理できるため、人事担当者の負担を軽減しつつ、正確な適性判断にもつながります。人事の業務量に課題を感じている企業は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。



雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
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