厚生年金保険料とは?標準報酬月額の決め方から給与計算の方法を解説

毎月の給与計算業務において、複雑で専門的な知識が求められるのが「厚生年金保険料」の算出です。
保険料の基礎となる「標準報酬月額」には、年に一度の「定時決定」だけでなく、昇給や降給に伴う「随時改定」など、細かく間違いやすいルールが数多く存在します。
もし、これらを正しく理解せずに計算を誤ってしまうと、従業員が将来受け取る年金額に影響を与えてしまうだけでなく、年金事務所の調査で指摘を受け、追徴課税や延滞金が発生するリスクがあります。
本記事では、給与・労務担当者に向けて、厚生年金保険料の基本的な仕組みから、複雑な標準報酬月額の決定プロセス、給与・賞与それぞれの具体的な計算ステップ、そして見落としがちな注意点まで、網羅的にわかりやすく解説します。
目次
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
当サイトでは、社会保険4種類の概要や計算方法から、ミス低減と効率化が期待できる方法までを解説した資料を、無料で配布しております。
「保険料率変更の対応を自動化したい」「保険料の計算が合っているか不安」「給与計算をミスする不安から解放されたい」という担当の方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 厚生年金保険料とは


厚生年金保険料とは、会社員や公務員が加入する公的年金制度「厚生年金保険」を運用するために、従業員と会社が支払う保険料のことです。
この「厚生年金保険」は、日本の公的年金制度の「2階建て」とよばれる構造の2階部分にあたります。
- 1階部分:日本国内に住む20歳から60歳までのすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」
- 2階部分:会社員や公務員が、1階部分に上乗せして加入する「厚生年金保険」
1-1. 厚生年金の種類
厚生年金保険料(2階部分)を支払うことで、従業員は将来、国民年金のみに加入している自営業者などよりも手厚い給付を受け取ることができます。
具体的には、次の3つの場面で、国民年金からの「基礎年金」に、厚生年金からの「厚生年金」が上乗せして支給されます。
- 老齢給付(老後): 老齢基礎年金 + 老齢厚生年金
- 障害給付(病気・ケガ): 障害基礎年金 + 障害厚生年金
- 遺族給付(死亡時): 遺族基礎年金 + 遺族厚生年金
※厚生年金には、障害等級3級や子のいない配偶者のように、基礎年金(1階)の支給対象とならない場合でも、2階部分が独自に支給される給付制度があります。
1-2. 厚生年金への加入条件
日本の公的年金制度では、すべての国民を職業などによって3つの「被保険者の区分」に分類しています。
- 第1号被保険者:自営業者、フリーランス、学生、無職の人など。1階部分の「国民年金」のみに加入
- 第2号被保険者:会社員、公務員など。1階部分の「国民年金」と2階部分の「厚生年金」の両方に加入
- 第3号被保険者:第2号被保険者(会社員など)に扶養されている配偶者(専業主婦・主夫など)
厚生年金保険料の計算対象となるのは、この「第2号被保険者」です。
法人事業所や、常時5人以上の従業員がいる個人の事業所は、法律上、厚生年金の「適用事業所」となり、そこで働く従業員(正社員や、一定条件を満たすパート・アルバイト)は第2号被保険者として厚生年金に加入する義務があります。
正社員や役員は原則として全員が加入します。パート・アルバイトであっても、まずは所定労働時間および所定労働日数が正社員の4分の3以上となる場合は、加入対象です。
さらに、上記の「4分の3基準」を満たさない場合でも、次の4つの条件をすべて満たす短時間労働者は、厚生年金(社会保険)の加入対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 月額賃金が88,000円以上であること(※1)
- 学生ではないこと(※夜間や休学中の学生は除く)
- 勤務先の従業員数(厚生年金被保険者数)が51人以上であること(※2)
※1 月額賃金88,000円(年収換算で約106万円)には、残業代、賞与、通勤手当などは含まれません。
※2 この従業員数要件は段階的に適用拡大されており、2025年現在は「51人以上」の事業所が対象となっています。
参考:社会保険適用拡大 対象となる事業所・従業員について|厚生労働省
関連記事:社会保険の加入条件をやさしく解説|短時間労働や例外パターン、よくある質問も紹介
1-3. 厚生年金と国民年金の違い
「1. 厚生年金保険料とは」章で解説した通り、日本の公的年金は「2階建て」構造になっています。会社員(厚生年金加入者)は「1階+2階」の両方に加入し、自営業者などは「1階のみ」に加入します。この構造の違いが、保険料の仕組みに直結しています。
まず、公的年金の加入者は、この加入内容によって次の3つの区分に分けられます。
加入区分ごとの違い
|
加入者の区分 |
主な対象 |
加入する年金 |
|
第1号被保険者 |
自営業者、学生など |
国民年金 (1階のみ) |
|
第2号被保険者 |
会社員、公務員 |
国民年金 (1階) + 厚生年金 (2階) |
|
第3号被保険者 |
第2号の扶養配偶者 |
国民年金 (1階のみ) |
保険料の支払い方の違い
この「加入する年金」の違いによって、保険料の支払い方(負担方法)が次のように大きく異なります。
|
加入者の区分 |
主な対象 |
保険料の支払い方 |
|
第1号被保険者 |
自営業者、学生など |
1階部分の「国民年金保険料」(毎月定額)を、全額自分で納付します。 |
|
第2号被保険者 |
会社員、公務員 |
1階・2階部分を合わせた保険料を「厚生年金保険料」としてまとめて納付し、かつ会社と従業員で半分ずつ負担(労使折半)します。 |
|
第3号被保険者 |
第2号の扶養配偶者 |
1階部分に加入していますが、個別に保険料を納付する必要はありません。(配偶者が加入する厚生年金制度が負担するため) |
つまり、給与から天引きされる「厚生年金保険料」は、「1階部分の国民年金保険料も含まれており、かつ会社が半分を負担してくれている」ものであることが国民年金との違いです。
関連記事:社会保険とは?企業や従業員の加入条件や手続き方法、適用拡大など注意点を解説
2. 標準報酬月額の決め方


厚生年金保険料の計算のもととなるのが「標準報酬月額」です。
標準報酬月額とは、従業員が受け取る月々の給与(基本給、手当、残業代などを含んだ税引前の総額)を、一定の幅(「88,000円」から「650,000円」まで)で区切りの良い等級に当てはめた金額のことです。 この等級に保険料率をかけることで、毎月の保険料が算出されます。
関連記事:標準報酬月額とは?調べ方や社会保険料の算出方法について解説
標準報酬月額は、一度決まった後に固定されるわけではなく、主に次の5つのタイミングで見直され、決定・改定されます。
2-1. 資格取得時の決定
従業員が入社し、厚生年金の被保険者資格を取得した時点で決定する方法です。
- 決定方法:採用時に決定した基本給や諸手当など、今後1ヵ月間に固定的に支払われるであろう給与額(報酬月額)を「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」により届け出ます。この金額を「標準報酬月額等級表」にあてはめて、最初の標準報酬月額が決定されます。
- 適用期間:原則として、決定された年の8月まで適用されます。ただし、6月1日〜12月31日に入社した場合は、翌年の8月まで適用されます。
関連記事:社会保険資格取得届とは?提出が必要なケースや提出先、添付書類について解説
2-2. 定時決定
実務上、最も基本となる手続きで、年に1回全従業員の標準報酬月額を見直すものです。「算定(さんてい)」ともよばれます。
- 決定方法:その年の4月・5月・6月の3ヵ月間に支払われた給与の平均額を算出し、これを「標準報酬月額等級表」に当てはめて、新しい標準報酬月額を決定します。
- 適用期間:原則として、その年の9月から翌年の8月までの1年間、この新しい標準報酬月額が使用されます。
関連記事:社会保険料の定時決定とは?算定基礎届や提出時期、随時改定との違いを解説
2-3. 随時改定
定時決定で決まった標準報酬月額は1年間使われるのが原則ですが、年の途中で昇給や降給により給与額が大幅に変動した場合は、実態とかけ離れてしまいます。その際、実態に合わせて標準報酬月額を見直すのが「随時改定」です。実務では随時改定ではなく「月額変更」「月変(げっぺん)」ともよばれます。
- 改定条件:次の3つの条件をすべて満たした場合にのみ対象となります。
- 昇給・降給などで、固定的賃金(基本給、役職手当、家族手当など)に変動があった。
- 変動後の3ヵ月間(例:4月に昇給した場合、4月・5月・6月)に支払われた給与の平均額が、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じた。
- 3ヵ月とも支払基礎日数が17日以上ある。
- 適用期間:変動後の給与が支払われた月から数えて、4ヵ月目から新しい標準報酬月額が適用されます。(例:4月昇給→7月改定)
関連記事:社会保険の随時改定とは?標準報酬月額を改定する条件やタイミング、手続き方法を解説
2-4. 育児休業等終了時の改定
育児・介護休業法に基づく育児休業を終了し、職場に復帰した際に、標準報酬月額を見直す特例です。
育休復帰後は、時短勤務などで給与額が下がることが多くあります。しかし、給与が下がっても「2-3. 随時改定」章の条件(2等級以上の差)に該当しない場合、高い保険料のままになってしまう不利益を避けるための制度です。
- 改定条件:
-
- 育休を終了し、復帰したこと。
- 3歳未満の子を養育していること。
- 復帰後3ヵ月間の給与平均額が、休業前の標準報酬月額と比べて1等級でも差があること。※随時改定と違い、2等級以上である必要はありません。
- 適用期間:復帰した日(育休終了日の翌日)が属する月以後3ヵ月間の給与平均に基づき、その翌月(4ヵ月目)から新しい標準報酬月額が適用されます。
関連記事:育児休業等終了時報酬月額変更届とは?提出方法やデメリットをわかりやすく紹介
2-5. 保険者決定
上記の4つの方法(資格取得時、定時決定、随時改定、育休後改定)で算出した標準報酬月額が、実際の従業員の給与実態と著しくかけ離れている場合に、保険者である日本年金機構がおこなうものです。
主に次の3つに該当したときに、日本年金機構が調査をおこない、実態に即した標準報酬月額を決定・変更します。
- 資格取得時決定における算定方法及び定時決定における算定方法による算定が困難なとき
- 資格取得時の算定額が著しく不当であるとき、定時決定の算定額が著しく不当であるとき
- 随時改定の算定額が著しく不当であるとき
参考:保険者決定|日本年金機構
3. 厚生年金保険料の保険料率


毎月の厚生年金保険料を計算するために使用する「保険料率」は、現在「18.3%」です。
この保険料率は、2004年から段階的に引き上げられてきましたが、2017年9月を最後に引き上げが終了し、現在は18.3%で固定されています。
厚生年金保険料は「労使折半」であるため、18.3%の保険料を従業員(被保険者)と会社(事業主)が半分ずつ負担します。
- 従業員(被保険者)負担分: 9.15%
- 会社(事業主)負担分: 9.15%
毎月の給与計算では、この従業員負担分の「9.15%」を従業員の給与から控除します。
なお、健康保険料率は、協会けんぽ(都道府県ごと)や各健康保険組合(組合ごと)などで料率が異なりますが、厚生年金保険料率(18.3%)は全国一律です。
ただし、厚生年金基金に加入している事業所では、免除保険料率が適用されるため、この保険料率が異なる場合があります。
関連記事:社会保険料の会社負担割合は?金額の計算方法と注意点を解説
4. 給与の厚生年金保険料の計算方法


毎月の給与計算で従業員から控除する厚生年金保険料は、「2. 標準報酬月額の決め方」章で解説した「標準報酬月額」に基づいて算出します。
給与計算の実務では、担当者が計算式(標準報酬月額×9.15%)で都度計算はおこないません。
一般的には、日本年金機構が発行する「厚生年金保険料額表」を参照し、正確な保険料額を控除します。この保険料額表には、標準報酬月額の等級ごとに、従業員が負担すべき「被保険者負担額」が、あらかじめ計算され一覧で記載されています。
この表から該当する金額を見つけます。
標準報酬月額が300,000円のAさんを例に、確認の手順を解説します。
- 標準報酬月額が300,000円のAさんの例
-
- 「厚生年金保険料額表」の「標準報酬月額」の欄から「300,000円」(第18等級)の行を探します。
- その行の「被保険者負担額」(9.15%の欄)に記載されている金額を確認します。
- 表に記載されている「27,450円」が、Aさんの給与から控除すべき保険料額です。
なぜ「27,450円」になるかというと、保険料額表が次の計算式に基づいているためです。
標準報酬月額300,000円×9.15%(従業員負担分)=27,450円
このように、保険料額表は、計算の手間と端数処理のミスを防ぐための「計算結果一覧表」の役割を果たしています。
5. 賞与の厚生年金保険料の計算方法


賞与(ボーナス)も、毎月の給与と同様に厚生年金保険料が徴収されます。ただし、毎月の給与が「標準報酬月額」を使うのに対し、賞与は「標準賞与額」という異なるルールで計算します。
5-1. 標準賞与額を計算する
「標準賞与額」とは、税引前の賞与総額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額のことです。
例えば、 賞与総額が 543,600円 の場合、1,000円未満の端数の600円を切り捨て、標準賞与額は、543,000円となります。
なお、標準賞与額には上限が定められており、厚生年金保険の場合、支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき150万円が上限です。賞与が200万円支給されても、標準賞与額は150万円として計算されます。
関連記事:標準賞与額の意味や保険料を計算する方法を詳しく紹介
5-2. 厚生年金保険料額を計算する
標準賞与額が特定できたら、その金額に直接、保険料率をかけて計算します。給与と異なり、保険料額表は使いません。
計算式(従業員負担額)
従業員負担額=標準賞与額×9.15%(※保険料率18.3%の半分、料率は給与と同じ)
賞与総額543,600円が支給されたBさんの場合を例に計算します。
- 賞与総額543,600円が支給されたBさんの例
-
- 標準賞与額の決定:543,600円の1,000円未満を切り捨て、標準賞与額は543,000円
- 保険料の計算(賞与控除額):543,000円×9.15% = 49,684.5円
- 端数処理・控除額決定:計算結果に円未満の端数(0.5円)が生じた場合、切り捨てとします。この例では、49,684円を賞与から控除します。(※)
※従業員負担分を切り捨てた結果、保険料総額(543,000円×18.3% = 99,369円)との差額を調整するため、会社負担分は切り上げ(49,685円)となります。
関連記事:社会保険料は賞与(ボーナス)から控除される?保険料の計算方法や注意点を解説
6. 厚生年金保険料の支払い期限と納付方法


給与や賞与から控除した厚生年金保険料は、会社負担分とあわせて、国(日本年金機構)に納付しなければなりません。本章では、支払期限と納付方法を解説します。
6-1. 厚生年金保険料の支払い期限
納付の期限は、「徴収した月の翌月末日(末日が土日祝の場合は翌営業日)」です。例えば、12月分の給与(12月25日支給)から控除した保険料の納付期限は1月末日となります。
納付の際に注意が必要なのは、「何月分の保険料か」という点です。社会保険料は、原則として「月末に在籍していること」でその月の保険料が発生し、翌月の給与で控除・納付します。翌月徴収の場合の実務の流れは次の通りです。
- 11月30日時点で在籍している従業員の11月分の保険料が確定する。
- 翌月12月25日に支給する給与から、11月分の保険料を控除する。
- 控除した保険料(従業員負担分)と会社負担分をあわせて、翌月1月末日までに納付する。
※会社によっては、当月徴収(11月分保険料を11月給与から控除)を採用している場合もありますが、翌月末の納付期限は同じです。
6-2. 厚生年金保険料の3つの納付方法
厚生年金保険料を納付する方法は次の3つです。
- 口座振替
指定した金融機関の口座から、納付期限日(翌月末日)に自動で引き落とされる方法です。納付の手間や納付漏れが防げるため、最も一般的な方法です。
事前に「健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」を、管轄の年金事務所または金融機関に提出する必要があります。 手続き完了まで1~2ヵ月ほど時間がかかるため、それまでは納付書での納付となります。
- 納付書による納付
日本年金機構から送付される「納付書(領収済通知書)」を使用して、金融機関の窓口やコンビニエンスストア、またはPay-easy(ペイジー)を利用して納付する方法です。
口座振替の手続きをしていない事業所に、毎月20日頃に自動的に送付されます。口座振替の手続きが完了するまでの間や、残高不足で振替ができなかった場合にも、この納付書が使用されます。
- 電子納付
Pay-easy(ペイジー)に対応したインターネットバンキングやモバイルバンキングを利用して、電子的に納付する方法です。
事前の申し込みは不要ですが、納付の都度「納付書」に記載されている収納機関番号、納付番号などの情報が必要となります。
関連記事:社会保険料の納付方法は?仕組みや納付期限・滞納時のリスクもまとめて解説
7. 厚生年金保険料を計算する際の注意点


厚生年金保険料の計算と納付は毎月の重要な業務です。ただ、その計算は複雑で計算ミスや従業員への説明漏れが起きやすい業務でもあります。本章では、計算において特に注意すべき2つのポイントを解説します。
7-1. 厚生年金保険料が免除される場合がある
従業員が次の特定の休業を取得した場合、法律に基づき、従業員負担分・会社負担分ともに厚生年金保険料の納付が免除されます。
- 産前産後休業中の免除
産前産後休業(産前42日、産後56日の範囲内)の期間中は、事業主が年金事務所に「産前産後休業取得者申出書」を提出することで、保険料が免除されます。
関連記事:産休中の社会保険料免除の期間を事例別で解説!出産日がずれた場合の対応方法
- 育児休業中の免除
育児・介護休業法に基づく育児休業(3歳に達するまで)の期間中は、事業主が年金事務所に「育児休業等取得者申出書」を提出することで、保険料が免除されます。
関連記事:育児休業中は社会保険料免除?期間や申請手続きを詳しく解説
これらの免除期間は、保険料を納付していなくても、将来の年金額を計算する上では「保険料を納付した期間」として扱われます。
免除対象者が発生した際には、申請漏れがないよう、また、給与から保険料を誤って控除しないよう管理する必要があります。
関連記事:産休で社会保険が免除される期間や免除される費用についても解説
7-2. 基本給や手当が増えた人は保険料が変わる可能性がある
「2. 標準報酬月額の決め方」章で解説した通り、標準報酬月額は原則として年に1回の「定時決定」で決まるのが原則です。
しかし、年の途中で昇給・昇格により基本給や役職手当などの「固定的賃金」が変動し、給与が大幅に上がった(または下がった)場合、「随時改定」に該当することがあります。
随時改定に該当すると、9月の定時決定のタイミングを待たずに、年の途中から保険料が変更されます。
給与計算担当者は、昇給などがあった従業員が随時改定の対象になるかを経過観察し、保険料の変更漏れがないよう注意しましょう。
8. 厚生年金保険料は正しい知識に基づいて、慎重に計算をおこなおう


本記事では、厚生年金保険料の基本的な仕組みから、計算の基礎となる「標準報酬月額」の決定方法、給与・賞与それぞれの具体的な計算ステップ、そして納付方法や注意点に至るまで、網羅的に解説しました。
厚生年金保険料は、従業員と会社が半分ずつ負担する「労使折半」であり、従業員が将来受け取る年金額にも直結する非常に重要なものです。
給与計算の実務においては、年に1回の「定時決定」だけでなく、昇給に伴う「随時改定」などのルールを正しく理解し、適用漏れを防がなければなりません。 また、毎月の給与計算では「保険料額表」を、賞与計算では「標準賞与額」を用いた計算を、それぞれ正確におこなう必要があります。
計算や手続きを誤ると、従業員の不利益につながるだけでなく、年金事務所の調査で指摘を受け、追徴や延滞金が発生するリスクも生じます。
給与・労務担当者は、厚生年金保険料に関する正しい知識に基づき、法令を遵守し、慎重に計算業務をおこないましょう。



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