雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや作成時の注意点を解説!
更新日: 2024.10.18
公開日: 2023.6.1
OHSUGI
企業が従業員を雇うときには、雇用契約書を取り交わすのが一般的です。雇用契約書には、労働者が従業員として会社に労務を提供する旨や、労働に対してどのような報酬が払われるかなど、双方にとって重要な事柄が多く盛り込まれています。
一方で、「雇用契約は書面で残さなければならない」という法的な決まりはなく口約束でも取り交わすことができます。
しかし、何も書面に残さないまま口約束してしまうと、トラブルが起きた際に「言った」「言ってない」という水掛け論が起こるリスクがあるので注意が必要です。
本記事では、雇用契約書に記載する項目や作成方法、作成時の注意点などについて解説します。
目次
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従業員を雇い入れる際は、雇用(労働)契約を締結し、労働条件通知書を交付する必要がありますが、法規定に沿って正しく進めなくてはなりません。
当サイトでは、雇用契約の手順や労働条件通知書に必要な項目などをまとめた資料「雇用契約手続きマニュアル」を無料で配布しておりますので、「雇用契約のルールをいつでも確認できるようにしたい」「適切に雇用契約の対応を進めたい」という方は、是非こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
2024年4月に改正された「労働条件明示ルール」についても解説しており、変更点を確認したい方にもおすすめです。
1. 雇用契約書とは?
雇用契約書とは、雇用する側である企業や経営者と、雇用される側である労働者の間で締結する契約書です。雇用契約書を交わすことで、雇用に関する約束ごとに双方が合意したとみなされます。
ただし、雇用契約書の作成は、法的に義務づけられているわけではありません。
雇用契約自体は民法で取り扱われる契約で、「諾成契約(だくせいけいやく)」というものに該当します。諾成契約は、当事者双方の合意があれば、口頭でも契約が成立する契約です。そのため、「雇用契約書の作成義務はない」と言えるのです。
しかし、雇用契約書を締結しないまま雇用すると、契約成立を証明するものが残りません。つまり、企業と従業員でトラブルになった時の解決手段がない状態になってしまいます。
また、法令上では、雇用契約を締結する場合、雇用者は従業員に対して一定の労働条件を明示する義務があります。そのため、例え法的義務はないとしても、労働条件を記載した雇用契約書を作成して締結することが望ましいのです。
とはいえ、業種や時期によっては、短期間で多くの労働者を雇う必要が出てくることもあるかもしれません。このような場合は、雇い入れ時の負担を軽減するために、雇用契約書の取り交わしを省略することも可能です。雇用契約を口頭で結ぶ場合の注意点をまとめた記事もありますので、あわせてご一読ください。
関連記事:雇用契約とは?法的な位置付けと雇用契約書を作成すべき理由を解説
関連記事:雇用契約は口頭でも成立する?口約束を破った場合も解説
1-1. 雇用契約書の内容は契約締結後に変更できる?
結論から述べると、労使の双方の合意があれば変更は可能です。
就業規則を変更することにより、労働契約の内容を変更する場合には、変更後の就業規則を労働者に周知させ、不利益の程度、条件変更の必要性、内容の相当性、組合との交渉などの事情に照らして合理的なもの場合には認められます。
詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:雇用契約の条件は途中変更できる?契約期間内に変更する方法をご紹介
1-2. 雇用契約書がないのは違法?
雇用契約書は諾成契約に該当するため、口頭でも契約が成立します。そのため、雇用契約書がないという状態もあり得ることから、違法にはなりません。
一方、雇用契約書と似ている書類に「労働条件通知書」というものがあります。労働条件通知書は交付が義務付けられているため、未交付の場合は違法となります。
企業によっては、雇用契約書と労働条件通知書を1通のにまとめた「雇用契約書兼労働条件通知書」を交付している場合があるかもしれません。この場合、「労働条件通知書」の内容も含んでいるため、未交付の場合は違法となってしまうので気を付けましょう。
さらに詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:雇用契約書がないのは違法?考えられる4つのトラブルとその対処法
2. 雇用契約書と労働条件通知書の違いとは
雇用契約書とよく似た書類として、労働条件通知書というものがあります。この2種類の書類は似ているようで厳密には役割が異なります。混同することがないよう、適切に書類を作成する必要があるため、双方の書類の違いを確認しておきましょう。
また、労働条件通知書には必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」と、当てはまる項目があれば通知書への記載もしくは口頭での説明をする必要がある「相対的明示事項」の2種類の項目があります。
企業によっては、2つの書類の内容を合わせて「労働条件通知書兼雇用契約書」という形で書類を交付することもあります。書面の内容をあわせて交付すれば手間がかかりませんし、雇用にあたっての必要な情報を無駄なく伝えることも可能となります。
もし「労働条件通知書兼雇用契約書」を作成する場合は、労働条件通知書に定められた「絶対的明示事項」の記載漏れがないように気を付けましょう。
関連記事:雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?兼用はできる?作成方法も解説
2-1. 記載事項の規定
雇用契約書は、記載する事項について法令等で定められていません。
一方、労働条件通知書には、労働基準法と同法施行規則によって必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」と、当てはまる項目があれば通知書への記載もしくは口頭での説明をする必要がある「相対的明示事項」が定められています。法律で定められている事項が記載されていない場合は違法となるので注意しましょう。
そして、もう一つ注意しなければならないのが、雇用契約書兼労働条件通知書を作成する場合です。雇用契約書は法令による記載事項の定めはありませんが、労働条件通知書には定めがあるので、「雇用契約書兼労働条件通知書」には労働条件通知書と同じく定められている事項を必ず記載してください。
2-2. 作成義務の規定
雇用契約書には、法律上の作成義務がありません。一方、労働条件通知書は、労働基準法と労働基準法施行規則において、作成や労働者に対する書面交付などが義務付けられています。
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
引用元|「労働基準法15条1項」e-gov法令検索
ただし、平成31年4月に明示方法が改正されたため、ファクシミリや電子メール、LINE等のSNSなど、出力して書面が作成できる方法であれば「作成義務を果たしている」と認められます。しかし、雇用者側が勝手にこれらの方法で作成することはできません。これらの方法で作成できるのは、「労働者が希望した場合」に限ります。
つまり、労働者側からの希望がない場合は、書面での作成が必要となるので注意してください。
2-3. 署名捺印の必要性
雇用契約書は、双方が合意したことを証明するために署名捺印が必要ですが、労働条件通知書は必要ないという違いがあります。
労働条件通知書は「企業から労働者へ労働条件を提示する」役割をもった書類ですが、雇用契約書は「企業と労働者の双方が労働条件への合意を確認する」ための書類です。
労働条件通知書はあくまで、企業が労働条件を労働者に告知するためのものです。いわば一方的に交付する書類なので、労働者の署名や押印を求める必要はありません。
一方、雇用契約書は、雇用者と労働者が契約内容に合意しないと締結できないので、合意したことを証明する署名や押印をする必要があるのです。
2-4. 雇用契約書と労働条件通知書は兼用できる
雇用契約書と労働条件通知書は違う役割を持つ書類ですが、ある条件を満たせば労働条件通知書を兼ねることが可能です。
その条件というのは、雇用契約書に「労働条件通知書に記載しなければならない事項」を網羅することです。労働条件通知書に記載しなければならない事項を書いた雇用契約書で労働者と契約を締結すれば、労働条件通知書を交付したのと同じ扱いになります。
ただし、雇用契約書と労働条件通知書を兼用する場合は、原則として「書面」で作成して労働者へ交付する必要があります。
例外として、労働者側が希望した場合に限りメールやSNSなどでの交付も可能ですが、この場合は印刷などで書面として出力できるような形で交付することが労働基準法第5条4項で定められているので注意しましょう。
3. 雇用契約書に記載しなければならない事項
雇用契約書(もしくは兼労働条件通知書)を発行するときには、絶対的記載事項と相対的記載事項と呼ばれる項目を盛り込む必要があります。
法令で記載すべき事項について定めがあるのは、「雇用契約書」には法令による記載事項はありませんが、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる場合は、労働条件通知書に定められている事項を記載しなければなりません。
ここでは、雇用契約書(兼労働条件通知書)に記載すべき絶対的記載事項と相対的記載事項、また労働基準法改正により追加で明示が必要となる項目について解説します。
関連記事:雇用契約書に記載すべき内容や変更方法をわかりやすく解説
3-1. 雇用契約書に記載する絶対的記載事項
雇用契約書に記載する絶対的記載事項は、下記の項目が定められています。
- 労働契約の期間
- 勤務地(就業場所)、仕事内容
- 始業、終業時刻
- 休日、休暇
- 賃金
- 退職、解雇
これらの項目は、それぞれに記載する内容が細かく決まっています。また、パートタイム労働法に定められた項目もあるので、ここでは各項目について詳しく解説していきます。
労働契約の期間
労働契約期間について、まずは期間に定めがあるのか、ないのかを記載します。定めがない場合は無期雇用となりますが、定めがある場合は契約終了年月日や契約更新・自動更新の有無、更新基準、更新上限(契約期間または更新回数の上限)などについて明記しなければなりません。契約期間は、労働契約法第18条第1項で定められている範囲内にする必要があるので注意しましょう。
また、期間の定めの有無に関係なく、雇用契約書には雇用開始日を必ず記載してください。
勤務地・仕事内容
従業員が働く事業所や勤務地は、採用後、実際に就業する場所を記載してください。就業場所と業務内容については雇入れ直後のほかに将来の配置転換などによって変わり得る就業場所や業務の範囲も記載する必要があります。
部署や担当する職種など仕事内容についても、記載する必要があります。勤務地と同じく、部署移動などの予定がある場合は併記することもできますが、義務ではないので記載しなくても大丈夫です。
始業・終業時刻
従業員の勤務時間や勤務交替の時間、休憩時間などについても雇用契約書に盛り込んでおきましょう。残業の有無や時間の定めがある場合にも、雇用契約書で告知しておくとトラブルの回避につながります。
フレックスタイムやシフト制を導入している場合は、コアタイムや交代勤務時間の組み合わせ、適用日などの詳細な条件を明示してください。
休日・休暇
従業員の週休日数や休日の曜日など、休日に関する情報も記載義務があります。「週に◯日」という休日制度を導入している場合は、週や月あたりの休日日数を記載します。1年単位で変形労働時間制を採用している企業は、年間休日を記載しましょう。
休暇に関しては、年次有給休暇の日数や付与条件だけでなく、時間単位の年次有給休暇制度の有無についても明示する必要があるので記載漏れに注意してください。また、代替休暇やリフレッシュ休暇や慶弔休暇などの法定外休暇や代替休暇など、そのほかの休暇制度の有無についても記載します。
賃金
賃金の項目では、給与や報酬の仕組み、基本給と手当の具体的な金額と算出方法、時間外労働に対する割増賃金率の記載が必要です。割増賃金率は、法律で決められているので基準を下回らないようにしてください。法定時間外労働は25%以上、1ヵ月60時間を超える場合は50%以上、法定休日の労働は35%以上、深夜労働は25%以上です。
また、賃金の締め日と支払日、支払方法についても記載してください。
退職や解雇
退職の申し出方法や退職希望日を申し出るときの期限、解雇に至る条件なども前もって書面で告知しておきます。企業は就業規則に必ず退職や解雇についての定めを記載しているため、雇用契約書には「就業規則の定めによる」と簡略な記載をしても問題ありません。
加えて、定年制や継続雇用制度の有無、制度がある場合は年齢の記載も必要となっています。定年年齢は、法律で60歳を下回ってはならないという制限があるので注意してください。
また、2025年4月以降には、「継続雇用制度」の経過措置に基づいた労使協定を締結している会社は、対象者を限定できなくなることを頭に入れておきましょう。
パートタイム労働法に定められた項目
パートやアルバイトなど有期雇用形態で従業員を雇用するときには、パートタイム労働法に定められた項目の記載が必須です。
具体的には、昇給や給与、退職金の有無といった項目を明示しなければなりません。また、雇用管理に関する相談窓口の担当部署名や担当者についても記載しましょう。
▼有期雇用労働者向けに記載しなければならない4項目
- 昇給の有無
- 賞与の有無
- 退職金の有無
- 相談窓口の記載
3-2. 雇用契約書に記載する相対的記載事項
相対的記載事項は、以下のような項目の記載が定められています。
- 退職手当が適用される労働者の範囲、退職手当の計算や支払方法など
- 退職手当を支払う時期
- 臨時に支払われる賞与や各種手当の定め
- 最低賃金額
- 労働者が負担する作業備品や食費
- 安全衛生に関する事項
- 業務時間外の傷病扶助制度や災害補償について
- 休職に関する事項
- 表彰や制裁に関する制度
- 職業訓練制度について
これらの事項は「相対的」となっているので、該当する制度がなければ記載する必要はありません。ただし、項目の中に該当する制度がある場合は明示することが義務付けられているため、漏れがないように自社のルールを確認しておきましょう。
3-3. 労働基準法改正により追加で明示が必要となる項目
2024年4月から労働基準法が改正されます。今回の改正では、企業の一方的な雇止めや労働者との雇用契約内容の認識ずれに起因するトラブルを防止する内容も盛り込まれています。
具体的には、労働者との契約締結時や更新時に以下の内容も合わせて明示するよう義務付けられることとなります。
対象者 | 明示のタイミング | 追加される明示事項 |
全ての労働者 | 契約締結・更新時 | 就業場所や業務内容が変更される可能性のある範囲 |
有機雇用契約者 | 契約締結・更新時 | 契約期間や更新回数の上限有無とその理由 |
無期転換申込権が発生する有期雇用契約者 | 契約更新時 | 無期転換申込権の説明と無期転換後の労働条件 |
万が一、明示せずに契約締結や更新をした場合には「明示義務違反」となり、30万円以下の罰金を科される恐れもあるため、注意しましょう。
参考:2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(リーフレット)|厚生労働省
4. 雇用契約書を作成しないリスク
雇用契約書は、雇用形態に関わらず作成しなければならないので、従業員が多い職場ほど担当者の負担は大きくなります。そのため、担当者の業務量によっては、うっかり作成し忘れてしまうこともあるかもしれません。
しかし、雇用契約書を作成しないと次のようなリスクがあります。
- 労使間でトラブルが起きた場合、紛争が長引く可能性がある
- 雇用契約に記載されていることでも無効になる
- 従業員の意志で業務命令を拒否できる
雇用契約書を作成し、契約を締結していないと、契約書に記載している項目を適用することはできません。また、雇用契約の内容に関して、従業員と雇用主の間で意見の相違が生じる可能性もあるので、必ず作成して契約を締結させましょう。
5. 雇用契約書の作成方法
雇用契約書は、フォーマットやシステムなどで作成することができます。しかし、どんな方法で作成するとしても、下記のポイントに注意しなければなりません。
- 絶対的記載事項を網羅して記載する
- 労働時間の制度について明記する
- 職種の変更や人事異動、転勤について明記する
- 試用期間の有無について明記する
ここでは、これらのポイントについて解説していきます。
5-1. 絶対的記載事項を網羅して記載する
絶対的記載事項は、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる場合、必ず網羅して記載してください。また、相対的記載事項に該当する制度がある場合は、「相対的記載事項」も併せて明示しなければなりません。項目が抜けていたり不備があったりすると、従業員とのトラブルになることがあるので注意してください。
雇用契約書を作成した段階で、絶対的記載事項と相対的事項を契約内容と照らし合わせ、不備がないか確認して契約を締結させるという流れを守りましょう。
ただし、「相対的記載事項」に関しては、書面を交付する必要はありません。
5-2. 労働時間の制度について明記する
働き方改革により、従業員の労働時間制度も多様になっています。
企業は、自社にあった労働時間制を適用できますが、フレックスタイム制やみなし労働時間制など通常の労働時間制以外の制度を適用する場合は契約書に必ず明記しなければなりません。他にも、変形労働時間制や裁量労働制、固定残業制などさまざまな種類があるので、記載漏れがないように気を付けましょう。
ただし、法定労働時間を超える労働をさせる場合は、雇用契約書の締結だけでなく、労使協定を締結して労働基準監督署に提出することを忘れないでください。
5-3. 職種の変更や人事異動、転勤について明記する
業種によっては、人事異動や転勤をおこなうこともあるかもしれません。また、適材適所の異動のために職種を変更することもあるでしょう。
このような状況が起こる可能性がある場合は、雇用契約書に職種の変更や人事異動、転勤についても明記しておくことが望ましいです。
就業規則に記載をしていても、雇用契約書に明記されていないと、業務上の命令であっても拒否できることがあるので注意してください。
5-4. 試用期間の有無について明記する
雇用契約書には、試用期間に関しても記載しておくのがおすすめです。
試用期間がない場合は記載しなくてもよいのですが、導入している場合は試用期間を明記しておきましょう。試用期間というのは、本採用をするかどうかを見極める期間ですが、それでも雇用契約は成立しています。
試用期間後の解雇は、本採用後の解雇より要件がゆるくなっているので、試用期間を明示しておくことでゆるい要件を適用できます。
雇用契約書に試用期間を明示する場合は、就業規則に記載している期間の範囲内にしましょう。就業規則の試用期間よりも長く設定してしまうと、解雇要件が適用されない可能性があるため注意してください。
6. 雇用形態別:雇用契約書作成の注意点
雇用契約書を作成する際、雇用形態によって気を付けるべきポイントがあります。
主な雇用形態は下記の4種類になります。
- 正社員
- 試用期間がある正社員
- 派遣社員
- アルバイト/パートタイマー
ここでは、これら4つの雇用形態の注意ポイントについて解説します。
6-1. 正社員の場合
正社員の雇用契約書は、労働時間制の種類に関する記載に注意しましょう。労働時間制には、固定時間労だけでなく変形労働時間やフレックスタイム制など、業種や業態によっていろいろな種類があります。そのため、どの種類の労働時間制になるかを明示する必要があるのです。
また、業務内容の変更や勤務地の異動などの可能性があるか、否かも記載しましょう。「可能性がある」と記載してあれば、変更や異動の際のトラブルを防げます。
正社員は契約期間を設けず、長期間働いてもらうことを前提に雇用する人材です。双方が納得し、より良い関係を築いていけるよう、雇用契約書は万全を期して作成しましょう。
関連記事:正社員の雇用で必須の雇用契約書の作成方法を分かりやすく解説
6-2. 試用期間がある従業員の場合
雇用契約書には、試用期間について記載をしなくてはいけないという義務はありません。
しかし、雇用契約書に試用期間に関する記載をしなかったことで、従業員が試用期間は存在しないと勘違いしてしまい、契約内容が異なるなどと問題に発展してしまう可能性があります。
事前に就業規則を配布しており、就業規則内に試用期間について記載してある場合は、雇用契約書へ試用期間が記載されていなくても問題ありません。しかし、どこにも記載していない場合はトラブルの元となりかねないため、雇用契約書に試用期間について就業規則に記載されているケースが多いです。
関連記事:試用期間は雇用契約書に記載すべき?書き方のポイントを紹介
6-3. 派遣社員の場合
人材派遣の仕組みには、「雇用されている会社と実際に働く会社が異なる」という特徴があります。
まず、派遣スタッフと直接雇用契約を結んでいる「派遣会社」が存在します。そして、この派遣会社と派遣契約を結んでいる「派遣先企業」に対して、そのスタッフが派遣されます。
そのため、人材派遣業を営むうえでスタッフを企業に派遣するときは、以下の3つの契約書を作成する必要があります。
- 労働者派遣基本契約書
- 労働者派遣個別契約書
- 雇用契約書
詳しくは以下の記事をご確認ください。
関連記事:人材派遣の契約書の記載事項とは?印紙の必要性や保管期間も解説
6-4. アルバイト/パートタイマーの場合
アルバイトやパートタイマーのような有期雇用の場合でも、できるだけ雇用契約書を取り交わす方がよいでしょう。
労働条件通知書兼雇用契約書として作成する場合、労働基準法によって定められている必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」の他に、パートタイム労働法により記載が義務付けられている項目が4つあります。
その4つとは以下の通りです。
- 昇給の有無
- 退職手当支給の有無
- 賞与制度の有無
- 相談窓口について
これらの項目で抜けていることがないか、作成の際には十分に確認をしましょう。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:アルバイト採用でも雇用契約書や労働条件通知書は必要?4つの注意点を解説
関連記事:パートタイマーの雇用契約書を発行する際に確認すべき4つのポイント
7. 専用システムで雇用契約書の作成がスムーズに!
雇用契約書は電子化が可能でしたが、労働条件通知書は書面で通知する必要があったため、結果として紙による契約が定着していました。しかし、2019年4月1日より規制が緩和され、労働条件通知書の電子化が解禁になったことで雇用契約のオンライン化が一気に進みました。
電子契約サービスを導入すると、電子契約に必要な「電子データでの契約書の作成」「電子署名機能」「タイムスタンプ機能」の3つの機能が揃います。これらの機能を使えば、PDFなどの電子データにした雇用契約書に双方の電子署名を付与することで、インターネット上で雇用契約を完結させることができます。また、「電子署名」と「タイムスタンプ」という技術を用いているため、改ざんの心配もありません。
さらに、「場所に捉われず契約が結べる」「印刷にかかる費用の節約」「担当者の業務負担の軽減」などのメリットの他、契約書自体の一元管理も可能なので、雇用契約に関する業務の効率化を進めたい場合は導入を検討してみましょう。
ただし、労働条件通知書は従業員が希望した場合、書面で発行しなければなりません。そのため、労働条件通知書を「雇用契約書兼労働条件通知書」で運用している場合は注意してください。
関連記事:雇用契約書・労働条件通知書を電子化する方法や課題点とは?
8. 雇用者と労働者の安心のために雇用契約書を発行しよう
雇用契約書は、法的に交付が義務化されている書類ではありませんが、雇用する側と労働者側の双方で雇用のルールを確認し合うためにも雇用契約書を作成しておくことが望ましいでしょう。
しかし、従業員の入れ替わりが激しかったり、短期雇用者が多かったりすると、雇用契約書の作成が業務負担になることもあるかもしれません。
このような場合は、電子契約サービスを導入することをおすすめします。電子契約サービスであれば、雇用契約が電子上で完結します。リモートによる採用選考が普及してきている昨今、内定後のフローも電子化することでスピーディーかつスムーズに入社手続きを進められるでしょう。
雇用者も労働者も、双方が安心して働けるように、雇用契約書が正確かつスムーズに発行できる仕組みを構築してください。
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