変形労働制でも残業代は出さないとダメ!残業時間の計算ルールも解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

変形労働制でも残業代は出さないとダメ!残業時間の計算ルールも解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

変形労働制でも残業代は出さないとダメ!残業時間の計算ルールも解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

変形労働制でも残業代は出さないとダメ!残業時間の計算ルールも解説

時計と男性

変形労働時間制(変形労働制)とは、一定の期間(1ヵ月や1年など)を平均して原則週40時間を超えない範囲で、日々の労働時間を柔軟に設定できる制度です。繁忙期の勤務時間を長くし、その分を閑散期に短く調整すれば、トータルでの労働時間の偏りをなくし、残業代の削減につなげることが可能です。

しかし、変形労働制を導入しても、条件次第では残業代を支払う必要があります。変形労働制は労働時間を柔軟に調整できる制度ですが、「残業代が不要になる」といった誤解を招く事も少なくありません。

本記事では、変形労働制の基本的な仕組みや、残業時間・残業代の計算方法、運用時に注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。

関連記事:働き方改革による残業規制の最新情報!2024年問題についても業種ごとに解説

残業管理や残業代の計算、 正しく対応できていますか?

残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。

当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 変形労働時間制(変形労働制)でも残業代は発生する

貯金箱とコイン

「変形労働時間制なら残業代が発生しないのでは?」という疑問を持つ方もいるかも知れませんが、それは誤りです。変形労働時間制はあくまで特定期間内で労働時間を調整できる制度に過ぎず、残業代を免除する制度ではありません。ただし、残業代・割増賃金の計算方法は、通常の働き方と異なるので注意が必要です。

ここでは、変形労働時間制の基本的な残業代・割増賃金の考え方や計算方法について紹介します。

1-1. 所定労働時間を超えない場合は残業代が生じない

変形労働時間制では、各日の所定労働時間があらかじめ定められており、通常の働き方と同様、所定労働時間を超えない範囲内で勤務している限り残業代は生じません。

通常の働き方では、所定労働時間は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えない範囲で設定されます。しかし、変形労働制の場合、「1日10時間」「週50時間」のように一時的に法定労働時間を超えて所定労働時間を設定することも可能です。

例えば、1日10時間と所定労働時間を設定したのであれば、1日の実労働時間が10時間を超えなければ残業代は発生しないことになります。

関連記事:法定内残業と法定外残業の違いは?具体例を交えて解説

関連記事:月の所定労働時間|平均の出し方や残業時間の上限について詳しく解説

1-2. 変形労働時間制でも残業の割増率は同じ

労働時間の図

変形労働時間制の場合も、所定労働時間を超えると残業代が発生します。また、所定労働時間を超えて、さらに法定労働時間を超えている場合は、時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。

例えば、1日の所定労働時間を6時間と定めたのであれば、1日の実労働時間が6時間を超えると残業代が生じます。ただし、1日8時間を超えない場合、法定労働時間を超えないため、割増賃金の支給は不要で、その時間分の賃金を上乗せして支払えば問題ありません(※週の法定労働時間は考慮していません)。

一方、1日の所定労働時間を6時間と定めた日に、1日8時間を超えて労働があった場合、所定労働時間および法定労働時間を超えるので、時間外労働の割増賃金の支払いが必要です。

このように、変形労働時間制では所定労働時間および法定労働時間という二つの基準で残業該当時間を判断する点がポイントです。なお、割増賃金の計算方法は、通常の労働契約と同様で次のとおりです。

割増賃金 = 残業時間 × 1時間あたりの賃金 × 割増率

また、割増率は通常の場合と変わらず表のとおりです。

【残業にかかる割増率】

対象条件 割増率
時間外労働 25%以上
深夜労働 25%以上
休日労働 35%以上
1ヵ月の時間外労働が60時間を超えた分 50%以上
深夜残業 50%以上
深夜時間の休日労働 60%以上
1ヵ月の時間外労働が60時間を超え、深夜労働があった時間 75%以上

なお、残業に関する法律と適切な管理方法を社内で確認したい方は「法律に対応した残業管理実現BOOK」をご覧ください。

関連記事:残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説

関連記事:残業手当とは?割増率や計算方法、残業代の未払い発生時の対応を解説

2. そもそも変形労働時間制とは?

パソコンで作業する人と時計の写真

そもそも変形労働時間制とは、一定期間内において1週間の平均労働時間が法定労働時間の40時間を超えない範囲において、所定労働時間を日ごとや月ごとで自由に調整できる制度です。つまり、週あたりの平均労働時間が40時間以内であれば、1日の労働時間を8時間を超えて設定することも可能です。

これは閑散期と繁忙期がはっきりしている業種に向いている制度で、うまく調整することで残業代削減や過度な長時間労働の防止につながります。一方、労働時間管理や賃金計算が複雑になるデメリットもあるため、導入には十分な検討と準備が必要です。

2-1. 変形労働時間制は「1ヵ月」「1年」「1週間」の種類がある

変形労働時間制では、労働時間を変形させる単位として、多くの会社で「月単位」と「年単位」の2種類が利用されています。

それぞれ、1ヵ月の間、1年の間で計算して週平均が40時間になれば、それぞれの日や週について自由に所定労働時間を設定することができます。

ただし、1年単位の場合には1日10時間、1週52時間が上限時間となります。また、「対象期間が3ヵ月を超える場合、対象期間中に48時間を超える所定労働時間を設定できるのは連続3週まで」といった制限がかかるので注意しましょう。

なお、法定労働時間は1日や週ではなく変形期間で考えます。それぞれの労働時間の上限(法定労働時間)は次のとおりです。

【1ヵ月単位の変形労働時間制の法定労働時間】

  • 28日の月(2月)…月160時間
  • 29日の月(うるう年の2月)…月165.7時間
  • 30日の月(4月・6月・9月・11月)…月171.4時間
  • 31日の月(1月・3月・5月・7月・8月・10月・12月)…月177.1時間

【1年単位の変形労働時間制の法定労働時間】

  • 365日の年…年2085.7時間
  • 366日の年(うるう年)…年2091.4時間

なお、特定の業種(従業員数30人未満の小売業や飲食業など)に限って、1週間単位の変形労働制も導入できます。これは、「1日10時間以内、1週40時間以内」の範囲で、1週間の中で日ごとの繁閑に応じて労働時間を調整できる制度です。

参考:変形労働時間制|厚生労働省

関連記事:変形労働時間制の届出に必要なものや書き方・記入例を解説
関連記事:1年単位の変形労働時間制とは?残業の計算方法や休日の考え方もわかりやすく解説

2-2. 変形労働時間制とフレックスタイム制の違い

変形労働時間制は、企業が繁忙期・閑散期を見越して勤務シフトを設定し、月もしくは年単位で労働時間を調整できる働き方です。一方、フレックスタイム制は、始業・終業時間を従業員が決定できる点が異なります。

残業の扱いも両制度で異なるため注意しましょう。変形労働時間制では前述のとおり、各日の所定労働時間や変形期間内の総労働時間を基準に残業時間を算出します。

一方、フレックスタイム制では清算期間(最長3ヵ月)の実労働時間からその期間の法定労働時間の総枠(清算期間の暦日数÷7×40時間)を差し引いて残業時間を計算します。また、フレックスタイム制の清算期間が1ヵ月を超える場合は、1ヵ月ごとの労働時間が週50時間(平均)を超えた時間も残業扱いとなります。

フレックスタイム制の残業時間の計算方法についてさらに詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。

関連記事:フレックスタイム制で残業代は減る?残業の考え方や計算方法も紹介

関連記事:フレックスタイム制とは?導入手順や企業が知っておくべきメリット・デメリット

2-3. 変形労働時間制と裁量労働制との違い

変形労働時間制は、みなし労働時間をあらかじめ定めておき、実際の労働時間にかかわらず、その時間を働いたものとみなす制度です。会社が具体的な業務指示や時間管理をおこなわず、労働者の裁量に委ねる点が特徴です。

裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」の2種類がありますが、いずれもみなし労働時間制の一種であり、実際に働いた時間数にかかわらず、一定時間働いたものとみなされます。

例えば裁量労働制で1日のみなし労働時間を8時間とした場合には、10時間勤務でも5時間勤務でも8時間働いたとみなされるため、給料は8時間分支払われます。たとえ10時間勤務した日であっても、残業代は支払われないことがポイントです。

ただし例外的に、追加の残業代の支払いが必要となるケースもあります。所定休日に勤務したことにより時間外労働となった場合や、法定休日に勤務した場合、深夜時間帯の労働については裁量労働制であっても割増賃金の支払い義務が発生します。

また、みなし労働時間自体が法定の1日8時間・週40時間を超えるよう定められている場合、その超過分は残業代の対象です。

このように裁量労働制は、勤務シフトと実労働時間を厳密に管理して残業代を支払う変形労働制とは、制度趣旨・運用方法が全く異なる制度と理解しておきましょう。

関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説

3. 変形労働時間制における残業時間の計算方法

電卓で計算する

変形労働時間制における残業とはどこからなのか、判断に迷うケースもあるでしょう。

変形労働時間制の残業時間を計算する際は、日ごとや週ごとに設定された変形期間に分けて考えるのが基本です。

労働基準法で認められている変形労働制には、3つのタイプがありますが、それぞれ残業代が発生するケースや計算の方法が異なります。

  • 1ヵ月単位の変形労働時間制
  • 1年単位の変形労働時間制
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制

この章では、各制度の残業時間の計算方法を解説します。

3-1. 1ヵ月単位の変形労働時間制の場合

1ヵ月単位の変形労働時間制では、次の3つの場合に時間外労働(残業時間)が発生します。

  • 1日の所定労働時間を超えた場合
  • 1週間の法定労働時間を超えた場合
  • 設定された変形期間(1ヵ月)の法定労働時間の総枠を超えた場合

これらの合計時間が、1ヵ月における残業時間となります。

なお、ここでいう残業時間とは、時間外労働の割増賃金が発生する時間と定義します。所定労働時間を超えるけれど法定労働時間内に収まる部分(法定内残業)については考慮しないこととしています(1年単位、1週間単位、フレックスタイム制も同様)。

3-1-1. 1日の所定労働時間を超えた場合

8時間以上の所定労働時間を定めている場合、実際の労働が所定労働時間を超えた時間が残業時間です。一方、所定労働時間が8時間未満の場合、8時間を超えて労働した時間分が残業時間となります。

(例)ある1週間について、次の所定労働を定めている場合の残業時間は、表に記載のとおりです。

所定労働時間 10 8 5 8 9
実労働時間 10 8 7 8 10
残業 0 0 0 0 1

まず各労働日について、所定時間を上回った実労働時間をチェックします。所定時間が8時間以下なら法定8時間を基準としてそれを超える分が残業、所定時間が8時間超で設定されている日ならその所定時間を超える分が残業になります。

3-1-2. 1週間の法定労働時間を超えた場合

40時間以上の所定労働時間を定めている場合、実際の労働が所定労働時間を超えたときが残業にあたります。一方、所定労働時間が40時間未満の場合、40時間を超えて労働したときが残業時間です。

なお、「1日ごと」の基準で残業扱いになった時間は除外して計算する点に注意が必要です。また、特別措置対象事業場の場合は「40時間」でなく「44時間」の基準が適用されます。

(例)ある1週間について、先ほどの例を用いると、2時間が週の残業時間となります。

週合計
所定労働時間 10 8 5 8 9 40
実労働時間 10 8 7 8 10 43
時間外労働時間 0 0 0 ※法定内残業のため時間外労働にならない 0 1 43-40=3時間(週の超過分)
3-1=2時間(週の残業)
3-1=2

各週について、週の法定労働時間である40時間の超過状況を確認します。週の所定労働時間があらかじめ40時間を超えて設定されていない場合、その週で40時間を超えた分が残業となります。

一方、週40時間を超えて所定労働時間を設定する週では、その所定時間までは法定内扱いのため所定を超えた分のみ残業時間としてカウントします。

週単位の残業算出では、日単位で既に残業となった時間は除外して集計する点にも注意が必要です。

3-1-3. 設定された変形期間(1ヵ月)の法定労働時間の総枠を超えた場合

実際の労働時間がその月の法定労働時間(暦日数÷7×40時間)の上限を超えた時間数が、残業時間となります。なお、「1日ごと」「1週間ごと」の基準で残業扱いになった時間は除外して計算する必要があります。

(例)暦日数が28日のある1ヵ月について、所定労働時間と実労働時間がこれまでに挙げた例(所定労働時間が40時間、実労働時間が43時間のケース)と4週間とも同じであった場合、1日ごとの残業時間「1時間×4週間=4時間」と1週間ごとの残業時間「2時間×4時間=8時間」を「172時間-160時間=12時間」から差し引くと、変形期間での残業は0時間となります。

【前提】

  • 所定労働時間:40時間/週(1か月で160時間)
  • 実労働時間:43時間/週(1か月で172時間)
  • 毎週「毎金曜日1時間の残業」があったケースと想定

【計算の流れ】

  • 3-1-2章にあるとおり、金曜日に1時間の時間外労働
  • 1日ごとの時間外労働=「1時間×4週間=4時間」
  • 1週間の総労働時間は43時間であり、法定労働時間40時間を3時間超える
  • 週単位で残る時間外労働は、「3時間-1時間」の「2時間」となる
  • よって、1週間ごとの残業時間は「2時間×4時間=8時間」
  • 月間の実労働時間172時間-その月の法定労働時間160時間=12時間
  • 変形労働の残業時間「12時間-(4時間+8時間)=0時間」となる

この時、残業代は12時間分に基礎賃金と割増率1.25をかけた金額を支給することになります。

1週目 2週目 3週目 4週目 月合計
所定労働時間 40 40 40 40 160
実労働時間 43 43 43 43 172
時間外労働時間(1日ごと) 1 1 1 1 12-4-8=0
時間外労働時間(1週ごと) 2 2 2 2

もし変形期間での残業が発生した場合、残業代は以下のように1日ごと・1週間ごとと変形期間内の残業時間で分けて計算し、その合計を支給します。

  • 日ごと、週ごとの残業時間の合計 × 1時間あたりの基礎賃金 × 1.25
  • 変形期間で発生した残業時間 × 1時間あたりの基礎賃金 × 0.25

参考:1か月単位の変形労働時間制|厚生労働省

関連記事:1ヶ月単位の変形労働時間制とは?メリット・導入フローを徹底解説

3-2. 1年単位の変形労働時間制の場合

1ヵ月単位の変形労働制と同様に、「1日ごと」「1週間ごと」「設定された変形期間ごと」で定められた法定労働時間の上限を超えた時間が残業時間となるため、計算方法は同じです。

なお、1年単位の変形労働制には労働時間制限が設けられており、原則「1日10時間」「週52時間まで」とされています。1年単位の変形労働制には、特別措置対象事業場の特例(※)は適用されません。

※商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業に該当し、常時10人未満の労働者を使用する事業場が、法定労働時間を週44時間とすることができる制度

3-2-1. 年間の総労働時間(法定上限)を超えた場合

例えば、1年間(365日)の変形期間では、法定労働時間の総枠は約2085.7時間となり、それを超えて実際に労働した時間があれば割増賃金の支払い対象となります。

対象期間が終了したタイミングで、その年に従業員が実際に働いた時間(所定内労働と時間外労働を合わせた時間)を集計し、法定労働時間の総枠と比較します。

実際の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えている場合、その超えた時間のうち日単位や週単位としてすでに残業時間扱いで計算し、割増賃金を支払っている時間が含まれていれば、その分を差し引きます。

差し引いた残りの時間だけを「年単位の残業時間」として、追加で割増賃金の支払い対象とします。

3-3. 1週間単位の変形労働時間制の場合

1週間単位で調整したい場合は、1週間単位の非定型的変形労働時間制(1週間単位の変形労働制)を採用します。これは、1日の労働時間が10時間以内、週40時間以内という条件のもとであれば、週単位で労働時間が調整できる制度です。

1週間単位の変形労働制では、残業時間は「1日ごと」と「1週間ごと」の2パターンで計算します。計算方法は、1ヵ月単位や1年単位の「1日ごと」・「1週間ごと」と同様です。

なお、1週間単位の変形労働制を導入できる業種は、従業員が30人未満の小規模小売業や旅館、飲食店などに限定されています。

次のページでは、変形労働制を導入している企業における勤怠管理システムの活用方法を解説しています。勤怠管理システムを導入しようか検討されている方や現状の勤怠管理に課題を感じる方はぜひご覧ください。

関連サイト:勤怠管理システムを用いた変形労働時間制の運用|ジンジャー勤怠

4. 変形労働時間制における残業の注意点

注意のイメージ

変形労働時間制は残業の考え方が変則的であるため、残業時間の計算方法や運用に誤解が生じることもよくあります。万が一、計算方法や運用を間違えてしまうと、従業員とのトラブルになる可能性があるので注意が必要です。

ここでは、変形労働制を活用するうえで、知っておきたい注意点について紹介します。

4-1. 残業時間を所定労働時間で相殺することはできない

変形労働時間制は、変形期間の中で所定労働時間を自由に定めることができますが、残業時間と所定労働時間を相殺することはできません。つまり、担当者が所定労働時間を自由に繰り下げたり、繰り上げたりすることもできません。

例えば、ある日の所定労働時間が8時間で10時間働いた場合、残業時間は2時間となります。このとき、翌日の所定労働時間から、残業した2時間を差し引いて相殺してはいけません。

同様に、ある日の所定労働時間が8時間のところ6時間しか働かなかった場合、「翌日に所定労働時間よりも2時間多く働いたから前日の不足分を相殺しよう」といった扱いも許されません。

4-2. 変形労働時間制でも時間外労働の上限規制は適用される

変形労働時間制であっても、時間外労働をさせる場合には36協定の締結が必要となり、残業時間にも上限が定められています。変形労働制の残業時間の上限について、1ヵ月単位の場合は通常と同じく「月45時間、年360時間」となり、対象期間が3ヵ月を超える1年単位の場合は「月42時間、年320時間」です。

なお、特別条項を結んだ場合であっても、通常の労働時間制と同じく「月100時間未満、年720時間以内」が残業時間の上限となります。また、上限時間を超えられるのは年に6回まで、2~6ヵ月の平均を月80時間以内におさめなければならない条件も同じです。

上記のように残業の上限時間が整備されたのが2019年の法改正のタイミングであったことはご存じでしょうか。このタイミングで、残業時間の上限規則だけでなく、有給管理の取得義務や高度プロフェッショナル制度の創設など、6つの項目について見直されました。当サイトでは、残業時間の上限規則が法改正前後でどのように変わったのか、図を用いて解説した資料を無料で配布しております。法改正での変更内容に不安な箇所がある方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。

関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!

4-3. 深夜労働・休日労働が発生したら割増賃金を支払う

変形労働時間制を採用する場合、時間外労働のみならず、深夜労働(原則22時~翌5時の労働)や休日労働(法定休日の労働)があった場合も割増賃金の支払いが必要です。

例えば、1ヵ月単位の変形労働制で1日の所定労働時間を12時間などと設定した場合、時間外労働に当てはまらなくとも、労働が深夜帯に及び深夜労働に該当する可能性があります。時間外労働と深夜労働、休日労働と深夜労働は重複すると、それぞれの割増率を合算したうえで、割増賃金を支給する必要があるので注意しましょう。

関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など労働基準法の規定から基本を解説

関連記事:深夜労働は何時から?賃金の計算や深夜労働できない従業員を解説

5. 変形労働時間制を導入する方法

クエスチョンマーク

変形労働時間制を導入する際は、労使協定の締結・届出と就業規則の整備に気を付けなければなりません。

変形労働制を導入する場合、労働者代表と労使協定を締結しなければならないことが定められています。また、労使協定を結んだら所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。

なお、1ヵ月単位の変形労働制の場合、労使協定を締結する代わりに就業規則に制度の内容を定めることで対応も可能です。

就業規則にも変形労働制について記載します。記載する際は、次のような項目を載せましょう。

  • 適用される従業員の範囲
  • 対象期間と起算日
  • 変形労働制の労働日と勤務時間

これらの情報を就業規則に明記しないと、変形労働制が無効とされる可能性があります。

関連記事:変形労働時間制とは?1ヵ月・1年単位の違いや導入方法をわかりやすく解説

6. 変形労働時間制の残業代を正しく計算しよう

電卓で計算する

変形労働時間制は企業にとって有効な働き方ですが、残業代の計算について正確な理解と管理が欠かせません。所定労働時間の設定や労働時間の集計方法を間違えると、本来支払うべき残業代が未払いになる事態にもなりかねません。

実際に、変形労働時間制の運用ミスにより制度が無効と判断され、未払い残業代の精算を余儀なくされるケースもあります。

勤怠管理システムの中には変形労働制の複雑な残業計算を自動算出してくれるものもあります。そうしたツールの導入も検討しながら、従業員の労働時間を正確に把握して未払い残業代の発生を未然に防ぎましょう。

自社の勤務実態に即した制度設計と的確な勤怠管理によって、変形労働制を有効に活用しながら従業員に適正な残業代を支払うように努めましょう。

関連記事:残業の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!

残業管理や残業代の計算、 正しく対応できていますか?

残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。

当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

jinjer Blog 編集部

jinjer Blog 編集部

jinjer Blogはバックオフィス担当者様を支援するため、勤怠管理・給与計算・人事労務管理・経費管理・契約業務・帳票管理などの基本的な業務の進め方から、最新のトレンド情報まで、バックオフィス業務に役立つ情報をお届けします。

勤怠・給与計算のピックアップ

新着記事