年次有給休暇の基本をわかりやすく解説!付与日数・取得要件・実務上の注意点とは
更新日: 2026.8.31 公開日: 2020.4.13 jinjer Blog 編集部

年次有給休暇とは、一定期間働いた労働者に与えられる給与が発生する休暇のことです。
年次有給休暇には詳細なルールがあり、適切に運用するには基本的な知識の理解が欠かせません。本記事では、付与の要件や基準日、付与日数など有給休暇に関する基礎知識を網羅的に解説しますのでぜひ最後までご覧ください。
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1. 年次有給休暇とは


この章では、年次有給休暇の定義や目的など、基本的な内容をわかりやすく解説します。
1-1. 定義と目的
年次有給休暇とは、給与が発生する休暇です。労働者が心身の疲労を回復し、ゆとりある生活が送れることを目的としています。有給や有休、年休などと称されますが、いずれも「年次有給休暇」と同じ意味です。
年次有給休暇は、労働者に認められた労働基準法上の権利のため、企業は、労働者が取得する時季を指定した場合、原則として取得を認めなければなりません。これを「時季指定権」といいます。
例外として、事業の正常な運営が妨げられると認められる場合には取得時季の変更命令が可能ですが、行使できるケースは限られ、厳格に判断されます。これは「時季変更権」といいます。
年次有給休暇と区別がつきにくいのが、休日との違いです。言葉が似ていますが、休暇と休日には次の違いがあります。
- 休暇:労働の義務が免除された日
- 休日:元々労働の義務がない日
休暇は、労働の義務の存在が前提です。休暇の取得により、本来存在していた労働の義務をなくす効果があります。
一方、休日には元々労働の義務が存在せず、労働者には働く義務がありません。そのため不就労でも懲戒処分を科したり評価を下げたりはできません。
2. 年次有給休暇の付与要件と付与日数


年次有給休暇が発生する要件は、労働基準法で定められています。付与要件と日数を確認しましょう。
2-1. 付与要件
初めて年次有給休暇が付与される要件は次の2つです。
- 雇入れから継続して6ヵ月間継続勤務していること
- 全労働日の8割以上出勤していること
産前産後休業や育児や介護による休業の場合、実際に出勤していなくても出勤とみなされ、欠勤などは出勤日とみなされません。ただし、企業独自のルールで私傷病の休職なども一定期間は出勤とみなされる場合があるので、事前に就業規則を確認しておきましょう。
2-2. 付与日数
年次有給休暇の付与日数は次のとおりです。
| 週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 継続勤務年数 | ||||||||
| 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 | ||||
| 付与日数 | 5日以上 | 217日以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 | |
| 4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 | ||
| 3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | ||
| 2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | ||
| 1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 | ||
通常の労働者であれば、全労働日の8割以上出勤していれば雇入れ日から6ヵ月経過後に「10日」年次有給休暇が付与され、その後、1年ごとに勤続年数に応じて有給休暇の日数が増えていきます。
また、パートアルバイトなどの週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の場合、所定労働日数によって付与される年次有給休暇の日数が変わるので付与日数を間違えないよう注意しましょう。
3. 年次有給休暇の取得単位

年次有給休暇は1日単位での取得が原則です。ただし、1日単位でなくとも、半日単位や時間単位での取得も可能です。この章では、有給休暇の取得単位のルールを解説します。
3-1. 1日単位での取得
年次有給休暇は1日単位での取得が原則です。労働基準法で定められた労働者の権利のため、たとえ就業規則に定めがなかった場合でも、原則取得させなければなりません。
ただし、休暇に関する事項は就業規則の絶対的記載事項(必ず定めなければいけない事項)です。年次有給休暇に関する定めが就業規則にない場合、法令違反として是正指導等の対象となる可能性があるため、必ず整備しておきましょう。
3-2. 半日単位での取得
年次有給休暇は、1日単位で取得することが原則ですが、就業規則などに定めることで、半日単位での取得も可能です。
半日の具体的な区切り方は法律で定められていないため、企業が所定労働時間や休憩時間を踏まえて設定できます。例えば、勤務時間が9時から18時まで、休憩時間が12時から13時までの場合、次のような区切り方が考えられます。
| 午前と午後で分ける方法 | 時間を等分する方法 | |
| 午前休 | 9:00〜12:00 | 9:00〜14:00(休憩時間を含む) |
| 午後休 | 13:00〜18:00 | 14:00〜18:00 |
就業規則には、半日単位の区切り方を明確に定めておきましょう。
3-3. 時間単位での取得
時間単位の年次有給休暇とは、年次有給休暇のうち5日を上限に時間単位で取得できる制度です。有給休暇をより柔軟に取得しやすくする目的で導入されています。
時間単位年休は半日単位の年次有給休暇とは異なり、規則に定めるだけでは不十分です。次の項目について労使協定を締結したうえで、就業規則に定めなければなりません。
- 時間単位年休の対象となる労働者の範囲
- 時間単位年休として取得できる日数(5日以内)
- 時間単位年休1日分に相当する時間数
- 1時間以外の時間を単位とする場合、その時間数
2025年5月の規制改革推進会議の答申では、時間単位年休の上限を、例えば年次有給休暇の付与日数の50%程度まで緩和することなどを労働政策審議会で検討し、結論を得る方針が示されました。
上限が緩和されれば、育児や介護、通院など、労働者の個別事情に応じた柔軟な休暇取得がしやすくなり、仕事と生活の両立につながることが期待されています。ただし、現時点では制度改正は決定しておらず、時間単位年休の上限は引き続き年5日です。
さらに、中小企業を対象とする、「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」では、時間単位年休制度と所定の特別休暇を1つ以上新たに導入することが、成果目標の一つとされています。働き方改革推進支援助成金を活用できれば、制度導入のハードルを下げつつ、労働者の休暇取得促進も支援できるでしょう。
3-4. 半日単位と時間単位の違い
半日単位と時間単位の年次有給休暇は別ものです。1日の所定労働時間が8時間、つまり半休を取った場合には4時間休めるとしても、半休1回が4時間休に該当するわけではありません。
例として、有給休暇の残日数が15.5日と6時間の労働者が、半休や時間給を取得した場合で解説します。半休を取得した場合、4時間休を取得した場合の残日数はそれぞれ次のとおりです。
| 取得 | 計算方法 | 休暇の残日数 |
| 半休 | 0.5日を引く | 15.0日と6時間 |
| 4時間休 | 4時間を引く | 15.5日と2時間 |
半日年休は日数単位で、時間単位年休は時間数単位で処理します。そのため、半日年休を時間単位年休4時間として扱ったり、4時間の時間単位年休を半日年休0.5日として扱うのではなく、実際に取得した制度の単位で管理しましょう。半休と時間休の制度の両方が制度化されている企業は、別々の管理が必要です。
4. 有給休暇取得時の給与計算の方法

年次有給休暇を取得した日にも、給与の支払いの義務が発生します。この章では、有給休暇を取得した際の給与の計算方法を解説します。
関連記事:有給休暇の賃金計算方法とは?3つの計算方法と事例、注意点を解説
関連記事:労働基準法の大改正はどうなる?2026年最新動向と主要論点、企業が今すべき対応とは【社労士が解説】
4-1. 通常の賃金で計算する方法
通常の賃金を用いる方法は、有給休暇の給与計算で、最も一般的な方法です。
通常の賃金による計算方法の場合、正社員など月給で賃金が支払われている従業員であれば、年次有給休暇を取得した日や時間を通常の出勤をしたものとして扱えば事足ります。そのため、有給休暇を取得した分の給与を計算する必要はありません。実務ではこの運用方法を採用している企業がほとんどでしょう。
ただし、時給で賃金が計算されるパートアルバイトなどは、有給休暇を出勤したものとみなして給与計算が必要です。なお、従業員ごとに1日あたり所定労働時間が異なっている場合が多いため、あらかじめ、雇用契約書等で所定労働時間を定めておきましょう。具体的な計算方法は次のとおりです。
- 時給:1,200円
- 所定労働時間:1日5時間
- 有給休暇取得日数:2日の場合
1,200円 × 5時間×2日=12,000円となります。
なので、時給1,200円で1日あたり所定労働時間が5時間の従業員が2日有給休暇を取得した場合、有給休暇取得分として12,000円の支払いが必要となります。
4-2. 直近3ヵ月分の平均給与(平均賃金)で計算する方法
2つ目は有給休暇の給与を「平均賃金」で支払う方法です。平均賃金とは、直近3ヵ月の賃金をもとに算出した1日あたりの平均額を指します。1日分の平均賃金が、年次有給休暇1日分の賃金に該当します。
計算式は次のとおりで、2つの方法で計算し、高い方の金額を支払う必要があります。
①原則的な方法:「過去3ヵ月間の賃金総額 ÷ 総暦日数(休日を含む)」→ 直近3ヵ月間の1日あたりの平均的な賃金
➁日給制・時給制・出来高払制の最低保障額:「過去3ヵ月間の賃金総額 ÷ 労働日数 × 60%」
平均賃金を用いる方法では、原則①が適用されますが、賃金形態が日給・時給・出来払制のときは②の計算式で最低保障額を算出しどちらか高い方が適用されます。
平均賃金方式では、算定期間中に欠勤や遅刻・早退による賃金控除があると、年次有給休暇を取得した日の支給額が低くなる場合があります。
通常の賃金で計算する場合と比べ、支給額が低くなりやすく不明瞭だと受け取られる可能性もあるので、平均賃金で計算する場合は十分に労働者に説明しましょう。
4-3. 標準報酬月額を用いて計算する方法
3つ目の方法は、健康保険法に基づく標準報酬日額を支払う方法です。
標準報酬日額は、次の計算式で求めます。
標準報酬月額 ÷ 30
なお、算出した金額に5円未満の端数がある場合は切り捨て、5円以上10円未満の端数がある場合は10円に切り上げます。
標準報酬月額とは、社会保険の保険料や傷病手当金などの支給額の基準となる、毎月の報酬額を基準に算出される50段階に分けられた数値です。健康保険の被保険者であれば、入社や毎年の算定基礎届の作成の際に標準報酬月額が算出されているため、計算自体はシンプルです。
ただし、標準報酬日額で有給取得日の賃金を算出する場合は、事前に書面による労使協定を締結し、就業規則にも定めが必要です。
さらに、標準報酬月額には上限があり、給与の額が高い労働者にとっては実際の給与額より少なく算出されるケースがあり、納得感を得にくい可能性もあります。デメリットがほかの方法より多く、標準報酬日額を用いる方法は採用しにくい計算方法です。
関連記事:標準報酬月額とは?調べ方や社会保険料の算出方法について解説
4-4. アルバイト・パートの計算方法
アルバイトやパートの場合も、有給休暇の給与計算方法は正社員と変わりません。3つの計算方法のうち、就業規則で定めた方法で計算します。就業規則で通常の賃金を支払うと定められている場合の計算方法は、次のとおりです。
- 例:時給1,500円で年次有給休暇を取得した日の所定労働時間が6時間の場合
- 1,500円 × 6時間 = 9,000円
この場合、有給休暇を1日取得すると 9,000円 が支払われます。
4-5. 半日・時間単位で取得する際の注意点
有給休暇は、企業の制度によっては半日休や時間単位での取得も可能です。1日に満たない有給休暇を取得する場合でも、基本的な給与計算方法は変わりません。企業で定めている計算方法に基づき、日割り、もしくは時間割りで金額を算出します。
- 半日単位の場合:1日分の有給休暇を取得した場合に支払われる額の半額を支払う
- 時間単位の場合:1日分の有給休暇を取得した場合に支払われる額を所定労働時間で割り、取得した時間数に応じて支払う
なお、半日休や時間休を取得した日に残業をした場合、必ずしも割増賃金(残業代)が発生するわけではありません。
労働基準法上の残業とは「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて働いた場合」を指します。午前中に半休を取得し、終業時刻を過ぎて勤務しても、実際の労働時間が8時間を超えていなければ、割増賃金の支払い義務はありません。ただし、所定労働時間を超えて実際に勤務した時間については、通常の賃金を支払わなければなりません。また、深夜労働に該当する場合などは、それぞれの規定に応じた割増賃金が必要です。
5. 年次有給休暇の年5日の取得義務


働き方改革関連法の施行により、2019年4月から「年10日以上の有給休暇を与えている労働者には、5日以上の有給を取得させる必要がある」と定められ、年次有給休暇の取得が義務化されました。
対象となる労働者が年5日以上の年次有給休暇を取得できるよう、人事担当者には取得日数の管理が求められます。この章では、年5日の取得義務の概要や取得させるための取り組みを解説します。
関連記事:有給休暇5日の取得義務化とは?時間単位の扱いから対応方法や罰則まで解説
5-1. どのように年5日有給休暇を取得させるか?
この章では、どのように義務化されている有給休暇を労働者に取得させるか。有給休暇の取得パターンを3つ紹介します。
【1】労働者の申出による取得する方法(申請制)
1つ目のパターンは、労働者が年次有給休暇の取得を申し出て、取得してもらう方法です。有給休暇は本来、労働者が自分の希望で自由に利用できるため、最も原則的なパターンといえるでしょう。
申し出の期限や方法は法律上定められていないため、各企業が就業規則や社内ルールで定めましょう。
有給休暇は事前に申請し、承認を得たうえで取得する運用が一般的です。しかし、急な病気や、やむを得ない事情の場合には、事後申請を認めるケースもあります。事後申請の場合の手続きも、就業規則にあらかじめ定めておきましょう。
関連記事:有給休暇の事前申請は義務化可能?有給申請は何日前まで?ルールも紹介
【2】労使協定に基づき計画的に付与する方法(計画年休)
2つ目のパターンは計画年休です。計画年休とは、労使の合意で有給休暇を取得する日を決めておく制度です。労働者の有給休暇全日数から5日間を除いた日数だけ設定できます。
計画年休は、全社・全従業員一斉取得ではなく、個人単位や部署単位での取得も可能です。業務状況などに応じて柔軟に設定しましょう。なお、計画年休で有給休暇を取得させる場合、労使協定の締結と就業規則への定めが必要です。
関連記事:労働基準法で義務化された有給休暇消化を従業員に促す3つの方法
【3】企業が時季を指定して取得させる方法
3つ目のパターンが、企業による時季指定です。2019年4月の労働基準法改正により、企業は年10日以上の有給休暇が付与される労働者に、年5日以上の有給休暇を取得させなければなりません。
年5日の取得義務は正社員だけでなく、年10日以上の有給休暇が付与されるのであればパート・アルバイトや管理監督者、有期契約社員なども対象です。
対象となる労働者は原則として、有給休暇が付与された日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得しなければなりません。労働者が休暇の取得を申し出ない場合、企業が取得する時季を指定して有給休暇を取得させなければなりません。
時季を指定する場合、必ず労働者の希望を確認し、可能な限り希望に沿った形での休暇付与が必要です。
なお、時季を指定できるのは、労働者の有給休暇取得日数が5日未満の場合に限ります。労働者がすでに年5日分の有給休暇を取得している場合は、残りの年次有給休暇に対して時季指定権の行使はできません。
5-2. 年次有給休暇の時季指定の手続き方法
使用者による時季指定権は年5日の取得を確実にするため、法律により使用者に認められた権利です。行使するには次の手順を踏みます。
- 就業規則に年5日の取得義務と時季指定権に関する定めを設ける
- 時季指定の対象となる労働者から、取得時季の意見を聴取する
- 2の意見を尊重したうえで、企業が年次有給休暇の時季を指定する
年次有給休暇は労働者が自由に利用できるのが原則です。時季指定の場合も一方的に取得日を強制できるわけではなく、指定の前に労働者の意見を聴き、尊重するよう努めましょう。
5-3. 年5日の取得義務を果たすための取り組み
年5日の取得義務を果たすためには、企業側からの働きかけが重要です。企業でできる工夫を3点紹介します。
【1】計画的付与の利用
計画的付与とは、労使間の協定にもとづいて年次有給休暇を取得する日を定める方法です。事業場全体で一斉に取得させる以外に事業所単位や部・課などの組織単位、個人単位でも定められます。
ただし、計画的付与の対象にできるのは、付与された有給休暇のうち5日を超える部分に限られます。
【2】有給休暇取得推進期間の設定
有給休暇の取得を推進する期間を設けるのも有効です。ゴールデンウィークや夏季、企業の閑散期など、長期休暇が取得しやすいシーズンを有給休暇取得推進期間に設定して、まとまった休暇を取得するよう促しましょう。
推進期間を上手に機能させるには、企業として積極的に取り組んでいる姿勢を示すことが重要です。一斉メールで案内する、掲示物を用意するなど、労働者へのアナウンスを重視しましょう。
【3】有給休暇を取得しやすい環境づくり
有給休暇が取得しやすい雰囲気や仕組みづくりも欠かせません。労働者が休暇を取得しない理由として「周囲に迷惑がかかると感じる」「後で多忙になる」などが挙げられています。
管理職などの上司から率先して取得したり、不在の場合の引き継ぎ体制を整えておいたりすると、労働者も休暇を取得しやすくなります。企業の文化や風土にも関係するため一朝一夕での改善は困難ですが、長期的な視点で取り組みましょう。
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6. 年次有給休暇管理の注意点


年次有給休暇は労働基準法で定められた権利であるため、運用や管理にあたって詳細なルールが定められています。適切に管理・運用できるよう、注意点を確認しましょう。
6-1. 年次有給休暇管理簿の作成と5年間(当分の間3年間)の保存義務
労働基準法施行規則第24条の7により、年次有給休暇管理簿の作成・保存が義務付けられています。
年次有給休暇管理簿とは、労働者の年次有給休暇の取得状況を記録・管理するための帳簿です。有給休暇を付与した日数や基準日、取得時季などを労働者ごとに記載します。
管理簿の記載例とフォーマットは、厚生労働省のホームページで公開されているものを参考にするとよいでしょう。
年次有給休暇管理簿は、有給休暇を実際に付与した期間中およびその期間の満了後5年保存する必要があります。ただし経過措置として当分の間3年の保管となっています。
年次有給休暇管理簿を作成・保管していなかった場合でも、直ちに罰則が科されるわけではありません。しかし、適切な管理ができていなければ、労務トラブルに発展する可能性が高いです。不要なトラブルを未然に防ぐためにも、年次有給休暇を適切に管理して運用しましょう。
参考:年次有給休暇の管理台帳(計画的付与・時間単位年休・年5日の時季指定に対応)|福井労働局
関連記事:年次有給休暇管理簿の作成が義務化!作成方法と保管期間を解説
6-2. 時季変更権の行使条件
「時季変更権」とは、労働者が指定した有給休暇の取得時季を、事業運営に支障が出る場合に限り、企業が変更できる権利です。「事業運営に支障が出る」場合とは、次のようなケースを指します。
【時季変更権が認められる具体例】
- 事業所の規模
- 業務内容
- 当該従業員の担当する職務内容、性質
- 職務の繁閑
- 代替要員確保の難しさ
- 有給休暇を同時季に指定した従業員の人数
- これまでの労働慣行
単に繁忙期だからといった曖昧な理由は認められないため、「時季変更権」を行使する際は明確な理由を労働者に説明しましょう。退職後の期間や企業の倒産後など、労働義務がない時季への変更はできません。
時季変更権を正当な理由なく行使し、有給休暇の取得を認めなかった場合、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される可能性があります。トラブルを防ぐためにも、就業規則や社内ルールで明確に取り扱いを定め、労働者へ周知しましょう。
関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説
6-3. 年次有給休暇の繰越時の注意点
労働基準法第115条により年次有給休暇は、付与日から2年で時効により消滅します。有給休暇を年度内に使い切れなかった場合、残った有給休暇を翌年に繰り越せます。
入社のタイミングによって有給休暇の付与日が異なる場合などは、労働者によって時効も個別に管理する必要があるため注意しましょう。
関連記事:【図解】有給休暇の繰越とは?上限やルール、計算方法をわかりやすく解説
関連記事:有給休暇は消滅する?時効や未消化分の取り扱いの注意点
6-4. 基準日を統一する場合の注意点
年次有給休暇の基準日とは、有給休暇の付与日のことです。有給休暇の管理を簡略化するため、入社日にかかわらず基準日を統一している企業もあるでしょう。
基準日の変更自体は問題ありませんが、変更する際は必ず法律で定められた基準日よりも前倒ししなくてはなりません。後ろ倒しにした場合、労働基準法の基準を満たさず法律違反となります。
例えば、2025年4月1日に入社した労働者へ2025年10月1日に1回目の付与をおこなった後、次回の付与から基準日をそろえる場合は、本来2回目を付与する基準日である2026年10月1日よりも前に有給休暇を付与しなくてはなりません。
年5日間の有給休暇取得義務は、前倒しで付与した有給休暇の付与日数が10日以上になった時点から発生します。
まだ付与されていない有給休暇の取得を認める「有給休暇の前借り」も注意が必要です。法律上、前借り自体は違法ではありませんが、取得日数の管理が煩雑になります。企業都合での前借りの強制も認められていません。
実務では、前借りよりも別の特別休暇で代替する、法定外の有給休暇を別途付与するなどの対応を検討しましょう。
関連記事:有給休暇の前借りは違法になる?従業員から依頼された場合の対応方法を解説
6-5. 年次有給休暇の未消化分の買取は原則不可
未消化の有給休暇の買取は原則できません。年次有給休暇は労働者の心身のリフレッシュを目的としており、買取制度は有給休暇取得を抑制するおそれがあるためです。
ただし例外として、次のようなケースでは買取も認められます。
- 時効により消滅した有給休暇
- 退職時に未消化分が残っている場合
- 法律を上回る日数部分
- 企業独自の休暇制度
ただし、買取はあくまでも例外的な措置です。労働者に、余ったら買い取ってもらえるという誤解が広まると、取得意識が薄れるおそれがあります。買取は原則としておこなわず、計画的に有給休暇を取得するよう促しましょう
関連記事:有給休暇の買い取りは違法?認められる例外と実務対応、トラブル事例を解説
7. 年次有給休暇に関するよくある質問

この章では、年次有給休暇に関するよくある質問をご紹介します。
7-1. 退職予定者の有給休暇取得は拒否できる?
退職予定者であっても、本人が有給休暇の取得を申し出た場合、原則として拒否はできません。
とはいえ、退職者が退職日までまとめて有給を消化すると業務に支障がでるケースもあります。労働者が有給をため込み過ぎないよう、在職期間中にこまめに有給を消化できるような管理運用を心がけましょう。
7-2. 月の取得日数を制限できる?
有給休暇の月の取得日数は原則として制限できません。年次有給休暇は労働者に認められた権利のため、原則として自由に利用させる必要があります。「取得できる日数は1ヵ月で5日まで」など、就業規則に上限を定めるのは無効となります。
ただし、突然長期の休暇を取得されると、事業の運営に支障が出る場合もあるでしょう。その場合には「時季変更権」を行使して、会社は別の時季に取得するよう求めることができます。ただし、一方的に権利を行使すると労務トラブルにつながるおそれがあるため、事業への影響や代替要員の確保などを個別に検討し、労働者とできるだけ早めに業務や取得時季を調整するように努めましょう。
7-3. 有給休暇の取得理由を確認しても良い?
有給休暇の取得理由を確認すること自体は違法ではありません。ただし、取得理由によって有給休暇の取得を拒否したり、業務に支障がないのに時季変更権を行使したりなどの対応は違法となるリスクがあります。
労働者側にも取得理由を伝える義務はないため、企業側は特別休暇を取得できるかどうかの確認程度にとどめましょう。
7-4. 有給休暇に関する罰則は?
有給休暇は、労働者に正しく付与・取得させなければ法律違反となり、罰則が科される可能性があります。
年10日以上の有給休暇が付与される労働者に、基準日から1年以内に5日取得させなかった場合、労働基準法第39条第7項および第120条に基づき、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、時季変更権の行使が認められないケースにもかかわらず、有給の取得を認めなかった場合には、労働基準法第39条により使用者に対して6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
さらに、使用者による時季指定をおこなう場合に、就業規則に記載されていなかった場合も労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科される可能性があります。
8. 働き方改革を進めるために有給休暇を正しく運用しよう


年次有給休暇は労働者のリフレッシュを目的に付与される休暇です。働き方改革により、企業は、年10日以上の有給休暇を付与している労働者に年5日分の有給休暇を取得させる義務があります。労働者に適切に有給休暇を取得させるためには適切な管理が必要です。
また、有給休暇が取得しやすい職場環境の形成は、労働者のモチベーション向上や離職率低下にもつながります。今後の法改正もふまえ、有給休暇の仕組みを正しく理解し、取得を推進しましょう。
関連記事:有給休暇の労働基準法における定義|付与日数や取得義務化など法律を解説
関連記事:有給休暇の義務化で就業規則を変更する場合の注意点と記載例



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