年次有給休暇の基本をわかりやすく解説!付与日数や取得時期も紹介 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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年次有給休暇の基本をわかりやすく解説!付与日数や取得時期も紹介

白いカレンダー背景に飛行機、スーツケース、傘

年次有給休暇とは、労働者の心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される、給料が減額されない休暇です。企業は、労働者から請求された時季に、原則として休みを与えなくてはならず、日本全体で有給取得率の向上が推進されています。

有給取得率の改善を目標として、年10日以上の有給が付与されている従業員は、年5日以上の取得確保が義務化されました。

適切な日数を付与し、定められた期間内に有給を取得させるためにも、有給休暇の基本的な知識は人事担当者に必須です。

今回は、付与の要件や基準日、付与日数など有給休暇に関する基礎知識を網羅的に解説していきます。

関連記事:【図解付き】有給休暇付与日数の正しい計算方法をわかりやすく解説

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1. 年次有給休暇とは

休日の概念

年次有給休暇は、従業員の心身のリフレッシュを目的に有給で休暇を与える制度です。

この章では、年次有給休暇の定義や目的など基本的な内容をわかりやすく解説します。

1-1. 定義と制度の目的

年次有給休暇とは、従業員が休んでも給料が減額されない休暇のことを指します。
労働基準法で認められた正当な権利であり、従業員が心身の疲労回復、ゆとりある生活を送れるようにすることを目的としています。

また、有給、有休、年休などと略しますが、いずれも「年次有給休暇」と同じ意味で使われている言葉です。

1-2. 年5日の取得義務

働き方改革関連法の施行により、2019年4月から「年10日以上の有給休暇を与えている従業員には、5日以上の有給を取得させる必要がある」とされ、年次有給休暇の取得が義務化されました。

日本では、従業員が繁忙期や同僚への配慮を優先するあまり、有給休暇を取得しにくい状況が長年続いていました。その結果、法律で認められた有給休暇の取得率が低いという課題があり、これを改善するために取得義務化が導入されました。

年10日以上の有給休暇を付与している従業員には、有給休暇を付与してから1年以内に5日以上の有給休暇を取得させなければならないため、しっかりと管理をする必要があります。なお、有給付与日数が9日以下の従業員には、この義務は発生しません。

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2. 有給休暇の発生要件と付与のタイミング

従業員のメリットの概念

年次有給休暇、いわゆる有給は、条件を満たしたすべての労働者に対して与えられます。条件や付与するタイミングには決まりがあるため、確認しておきましょう。

2-1. 雇い入れから継続して6ヵ月間継続勤務+出勤率8割以上

年次有給休暇が発生するためには、次の2つの条件を満たす必要があります。

  • 雇い入れの日から6ヵ月継続勤務していること
  • その期間の全労働日の8割以上出勤していること

この条件をクリアすれば、正社員に限らず、パートやアルバイトを含むすべての労働者に有給休暇が付与されます。

出勤率は以下の式で算出します。

出勤率=出勤日数÷全労働日×100

  • 全労働日:就業規則で定められた所定休日を除き、労働義務がある日
    ただし、以下の日数を除きます。

    • 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
    • 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日
    • 休日労働させた日
    • 就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日
  • 出勤日数:その全労働日のうち、実際に出勤した日
    ただし、以下の日数は出勤したものとして取り扱います。

    • 業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日
    • 産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日
    • 育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日
    • 年次有給休暇を取得した日

ポイントは、月ごとの出勤率ではなく、算定期間全体での出勤率が8割以上かどうかで判断するという点です。

また、出勤率が8割未満である従業員への有給付与を禁止されているわけではないため、病気療養等のやむを得ない事情を考慮して有給休暇を付与しても問題ありません。上長や経営陣と相談して付与ルールを検討しましょう。

出勤率が8割未満だった場合でも、それまでに付与された有給休暇が消えるわけではありません。新たな有給休暇が発生しないだけで、時効により消滅していない残日数は有効です。

2-2. 基準日は入社6ヵ月後

従業員に年次有給休暇の権利が発生するタイミングは「基準日」とよばれ、労働基準法では雇い入れ日から6ヵ月間継続勤務した日を基準日としています。

例えば、4月1日入社の場合、6ヵ月経過後の10月1日に有給休暇が付与されます。

「管理を楽にしたい」「入社時に付与したい」などの理由から基準日を変更する場合、就業規則の変更と全従業員への周知、労働基準監督署への届出といった手続きが必要になります。

年次有給休暇は、法律で定められた基準日より前倒しで付与も可能です。例えば、入社時に一括で付与する、全従業員一斉に年度初めなど特定の日を付与日とするケースが考えられます。

このように基準日を統一する運用を「斉一的取扱い(せいいつてきとりあつかい)」と呼びます。斉一的取り扱いをする場合は、労働者に不利益とならないよう注意が必要です。

最初の基準日を起点に、原則として1年ごとに有給休暇が付与されます。

2回目以降の付与日を本来の応当日(入社日基準)に戻すことも可能です。

基準日を前倒しした場合でも、有給休暇の付与日数が10日に達した日から、年5日の有給休暇取得義務が発生します。管理の際はこの点に注意する必要があります。

当サイトでは、労働基準法に照らし合わせた正しい有給付与ルールについてまとめた資料を無料で配布しておりますので、自社の有給休暇の付与ルールが法律的に問題ないか確認したい方はこちらからダウンロードページをご覧ください。

3. 有給付与日数の計算方法

カレンダーと時計のイラスト

年次有給休暇を付与する日数は所定労働日数もしくは所定労働時間、継続勤務年数によって異なります。有給休暇の付与日数について確認していきましょう。

関連記事:有給休暇の付与日数の考え方・仕組みをわかりやすく解説

3-1. 正社員の場合

従業員には、雇い入れ日から6ヵ月継続勤務した時点で10日の有給休暇が付与されます。

年次有給休暇の日数は、6ヵ月継続勤務すると10日付与され、その後は雇入れ日(入社日)からの継続勤務年数に応じて、毎年段階的に付与日数が増加していきます。

【勤続年数ごとに付与される有給休暇の日数】

継続勤務年数 6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

勤続6年6ヵ月を越えると、毎年20日ずつ有給休暇が付与されていきます。

ただし、表のルールは、あくまでも労働基準法で定められたものです。労働基準法は、働くうえで最低限守っておくべきルールなので、これより多くの有給休暇を付与することや、付与するタイミングを前倒すことに問題はありません。

3-2. パート・アルバイトは比例付与

労働基準法第39条では、業種や雇用形態を問わず、一定の要件を満たしたすべての労働者が有給休暇付与の対象とされています。

ただし、次の両方の条件に該当する短時間労働者の場合、「比例付与」と呼ばれる方法で有給が付与されます。

  • 週の所定労働時間が30時間未満
  • 週の所定労働日数が4日以下、所定労働日数が週以外で定められている場合は年間の所定労働日数が216日以下

比例付与とは、フルタイム勤務の従業員に比べて所定労働日数が少ない労働者に対し、労働日数に応じて有給休暇を付与する仕組みです。

日数の計算方法は、通常の付与日数(例:10日)に対して、「付与日数=通常の日数×週の所定労働日数÷5.2」という計算式で求めます。ここで出てくる「5.2」は、厚生労働省令で定められている「1週間の平均所定労働日数」です。

有給休暇の比例付与日数

なお、比例付与の対象であっても、付与された有給休暇が10日以上の場合は年5日の取得義務の対象になるため、忘れずに管理しましょう。

関連記事:パート・アルバイトにも有給休暇はある!付与日数や発生条件について解説

4. 有給休暇の給与計算方法

お金の写真

年次有給休暇を取得した日にも、賃金支払いの義務が発生します。給与計算の方法を確認しましょう。

有給休暇の給与計算には、次の3つの方法があります。

  • 通常の賃金で計算する
  • 直近3ヵ月分の平均賃金をもとに計算する
  • 標準報酬月額を用いて計算する

アルバイトやパートの場合は、その日に働く予定だった所定労働時間をもとに計算します。時間単位や半日単位で取得する場合の計算方法も、この章で確認しておきましょう。

なお、有給休暇時の給与計算の方法は、就業規則で定めておく必要があり、従業員ごとや状況に応じて変更はできません。給与制度や雇用形態に合った方法をあらかじめ定めておきましょう。

関連記事:有給休暇取得日の賃金計算方法と正しく計算するための注意点を解説

4-1. 通常の賃金で計算する場合

有給休暇の給与計算で、最も一般的に使われる方法です。計算方法もシンプルでわかりやすいのが特徴です。

次の計算式で求めます。

基本給÷1ヶ月の所定労働日数

例:月給が25万円で、1か月の所定労働日数が20日の場合
25万円 ÷ 20日 = 12,500円

つまり、有給休暇を1日取得すると、12,500円が企業から支払われます。

なお、この計算方法を用いる場合、年次有給休暇を取得した日や時間を通常の出勤をしたものとして扱えば事足ります。そのため、上記の計算を都度おこなう必要はないとされています。実務ではこの運用方法を採用している場合がほとんどでしょう。

4-2. 直近3ヵ月分の平均給与で計算する場合

有給休暇の給与を「平均賃金」で支払う方法は、労働基準法第12条で定められています。これは、直近3ヵ月の賃金をもとに1日あたりの平均額を求め、その金額で有給休暇を計算するという考え方です。

次の計算式で求めます。

①原則的な方法:「過去3ヵ月間の賃金総額 ÷ 総暦日数(休日を含む)」→ 直近3ヵ月間の1日あたりの平均的な賃金

この式で算出した額が低い場合は、次の方法で計算した額を基準とします。

➁例外的な方法(最低保証額):「過去3ヵ月間の賃金総額 ÷ 労働日数 × 60%」

この2つの方法でそれぞれ計算をし、高い方の金額を支払う必要があります。

例:月給25万円、3ヵ月間の総暦日日数92日、労働日数60日(20日×3か月)の場合
3ヵ月間の賃金総額:25万円 × 3か月 = 75万円

①原則的な方法:75万円 ÷ 92日 = 8,152.17円(1銭未満切り捨て)
➁例外的な方法(最低保証額):75万円 ÷ 60日 × 60% = 7,500円

「8,152.17円」と「7,500円」を比較し、高い方の8,152.17円が平均賃金になります。なお、実際に給与を計算する場合は1円未満の端数を四捨五入します。

この計算方法では、給与体系が月給制・日給制・時給制のいずれであっても同じ計算式が適用されます。ただし、直近3ヵ月に長期休暇を取得していた従業員の場合は、平均額が下がり有給の支給額も少なくなってしまいます。

また、計算式が複雑で誤りが生じやすいため、給与計算システムを利用して自動算出するのがおすすめです。

通常の賃金で計算する場合と比べ、支給額が低くなりやすく不明瞭だと受け取られる場合もあるので、就業規則に計算方法を定め、従業員にも周知しておくことが大切です。

4-3.標準報酬月額を用いて計算する場合

健康保険法に基づく標準報酬日額を支払う方法です。

すでに社会保険料の算定時に標準報酬月額が設定されているため、計算自体はシンプルでわかりやすいのが特徴です。

次の計算式で求めます。

標準報酬月額 ÷ 30

ただし、この方法で有給取得日の賃金を算出する場合は、事前に書面による労使協定を締結し、就業規則にも定めが必要です。

社会保険の対象外の従業員には標準報酬月額が設定されていないため、別途、相当額を算定する必要があります。

さらに、標準報酬月額には上限があるため、高給与の従業員にとっては実際の給与額より少なく算出されるケースがあり、納得感を得にくい可能性もあります。

4-4.アルバイト・パートの計算方法

アルバイトやパートの場合も、有給休暇の給与計算方法は正社員と同じく3つの計算方法のうち、就業規則で定めた方法を用いなければなりません。就業規則で通常の賃金を支払うとしている場合の例は次のとおりです。

例:時給1,500円で6時間勤務の場合
1,500円 × 6時間 = 9,000円

この場合、有給休暇を1日取得すると 9,000円 が支払われます。

4-5.半日・時間単位で取得する際の注意点

有給休暇は、企業の制度によっては半日休(午前休や午後休)や時間単位での取得が可能な場合があります。

このように1日に満たない有給休暇を取得する場合でも、基本的な給与計算方法は変わりません。企業で定めている計算方法に基づき、日割り、もしくは時間割りで金額を算出します。

  • 半日単位の場合:1日分の有給休暇を取得した場合に支払われる額を半分にして支払います。
  • 時間単位の場合:1日分の有給休暇を取得した場合に支払われる額を所定労働時間で割り、取得した時間数に応じて支払います。

なお、半日休や時間休を取得した日に残業をした場合、必ずしも割増賃金(残業代)が発生するわけではありません。

労働基準法上の残業とは「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて働いた場合」を指します。そのため、午前中に半休を取得し、終業時刻を過ぎて勤務したとしても、実際の労働時間が8時間を超えていなければ割増賃金の支払い義務はありません。

ただし、勤務した時間分の通常の賃金は必ず支払う必要があります。

5. 有給休暇の取得パターン

オフィスでスマホを操作する男性

2019年4月から年5日分の有給休暇を従業員に取得させることが義務化されています。年次有給休暇を取得させる方法には、労働者が申し出て取得する申告制、労使協定で計画的に付与する計画年休、企業が確実に取得させるパターンの計3つがあります。それぞれについて確認していきましょう。

5-1. 労働者が申し出て取得するパターン(申請制)

有給休暇の取得は労働者の権利なので、従業員が年次有給休暇の取得を希望するタイミングで申請し、取得してもらう方法が最も一般的です。

「何日前から取得できる」「何日前までに申請する必要がある」といった具体的なルールは法律上は定められていないため、各企業が就業規則や社内ルールで定める必要があります。

申請方法も、申請書を提出する、勤怠管理システムに登録する、メールやチャットで上司に報告するなど、企業ごとに異なります。

事前に申請し、承認を得たうえで休暇を取得するのが一般的です。しかし、急な病気や、やむを得ない事情の場合には、事後申請を認めるケースもあります。いずれの場合も、企業のルールに従うことが重要です。

年次有給休暇は、原則として労働者が請求した時季に与えなければなりません。しかし、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者は従業員の希望とは異なる時季に休暇を変更するよう命令できます。これを「時季変更権」と呼びます(労働基準法第39条第5項但し書き)。

ただし、単に忙しい時期だからという漠然とした理由だけで取得を拒否することは認められません。また、有給休暇自体を付与しないということはできません。

関連記事:有給休暇の事前申請は義務化可能?有給申請は何日前まで?ルールも紹介

5-2. 労使協定で計画的に付与するパターン(計画年休)

計画年休とは、労使の合意により有給休暇を取得する日を決定し、計画的に取得させる制度です。

計画年休は、従業員の有給休暇全日数から5日間を除いた日数分指定できます。

また、全社・全従業員一斉取得ではなく、部署単位での取得なども可能です。業務状況などに応じて柔軟な設定が可能です。

なお、計画年休で有給休暇を取得させる場合には、労使協定の締結と就業規則への定めが必要になります。

関連記事:労働基準法で義務化された有給休暇消化を従業員に促す3つの方法

5-3. 企業が確実に取得させるパターン(年5日取得義務)

2019年4月の労働基準法改正により、企業は年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年5日以上の有給休暇を取得させる必要があります。

この対象には、正社員だけでなく、年10日以上の有給休暇が付与されるのであればパート・アルバイト、管理監督者、有期契約社員も含まれます。

年5日分の有給休暇は、有給休暇が付与された日(基準日)から1年以内に取得する必要があります。

義務を怠ると罰則の対象となるため、企業は取得状況を適切に管理し、計画的に休暇を消化させることが重要です。

もし、従業員自身に任せたままにしておくと、5日分の有給休暇を取得できない従業員や、取得を忘れてしまう従業員が出てくる可能性があります。こうした場合、企業は時季を指定して取得させることができます(時季指定義務)。

ただし、時季を指定する際には、必ず従業員の希望を確認し、可能な限り希望に沿った形で休暇を付与する必要があります。

なお、従業員がすでに年5日分の有給休暇を取得している場合は、残りの日数について企業が時季を指定して休ませることはできません。

6. 時間単位年休と半日年休

時計に赤でマークされる3時間

年次有給休暇は「日」単位での取得が原則ですが、労使協定を締結することで、年5日の範囲内で時間単位で取得も可能です。この制度を「時間単位年休」と呼びます。

時間単位年休の上限について2025年度中にも制度見直しが予定されているともいわれており、その動向を正しく把握し、仕組みについて理解しておくことが重要です。

6-1. 時間単位年休の仕組み

時間単位の年次有給休暇とは、年次有給休暇のうち5日を上限に時間単位で取得できる制度です。仕事と生活の両立を図り、有給休暇を取得しやすくする目的で導入されています。

時間単位年休を導入する場合は、次の項目について労使協定を締結し、就業規則に定める必要があります。

  • 時間単位年休の対象となる労働者の範囲
  • 時間単位年休として取得できる日数
  • 1日の時間単位年休における時間数
  • 1時間以外の時間を単位とする場合、その時間数

導入企業はまだ少なく、全体の約2割程度で、大企業ほど導入率が高い傾向にあります。

2024年12月の政府中間答申では、時間単位年休の上限を年次有給休暇付与日数の50%程度まで緩和する案が検討されました。

これが実現すると、育児や介護、通院など個別の事情に応じた柔軟な休暇取得がしやすくなり、従業員のワークライフバランスの改善にもつながると期待されています。現在、正式な決定はされていませんが、2025年度中には結論が出る見込みです。

さらに、中小企業向けには、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の助成対象として、時間単位年休を新たに導入することが含まれています。この助成金を活用することで、制度導入のハードルを下げつつ、従業員の休暇取得促進を支援することが可能です。

6-2. 半日年休との違い

年次有給休暇は、半日単位での取得も可能ですが、半日年休と時間単位年休は併用して取得することも可能です。

例えば、1日の有給休暇として6時間の取得を希望する場合、半日年休(4時間分)と時間単位年休(2時間分)を組み合わせることも、時間単位年休6時間とすることもできます。どちらを選ぶかは従業員の自由です。

半日年休と時間単位年休には制度の根拠や運用上の違いがあります。

<導入方法>

  • 時間単位年休:就業規則の定めのほか、労使協定の締結が必要。
  • 半日年休:企業の就業規則で定めれば導入可能。

<取得単位>

  • 時間単位年休:基本的には1時間単位で柔軟に取得可能。
  • 半日年休:1日の所定労働時間の半分など、固定された単位で取得する。

<取得上限>

  • 時間単位年休:年間取得上限は年5日。
  • 半日年休:上限の定めはなし。

<使用者による時季指定>

  • 時間単位年休:時季指定は不可。
  • 半日年休:使用者による時季指定でも付与可能。

このように、半日年休と時間単位年休は取得の柔軟性や制度の運用方法に違いがあります。併用する場合は、従業員の希望や就業規則に沿って適切に運用することが重要です。

関連記事:時間単位の有給休暇とは?制度内容や導入方法を解説

7. 有給休暇管理の注意点

注意のイメージ

ここまでは有給休暇の付与や取得に関するルールを解説してきましたが、この他にも有給休暇を管理する際の決まりごとや注意点があります。ひとつずつ確認していきましょう。

7-1. 管理帳簿の作成と5年間(当面の間3年間)保存義務

労働基準法施行規則第24条の7により、年次有給休暇管理簿の作成・保存が義務付けられています。

年次有給休暇の管理帳簿とは、従業員の年次有給休暇の取得状況を記録・管理するための帳簿です。有給休暇を付与した日数、基準日、取得時季などを労働者ごとに記載します。

管理簿の記載例とフォーマットは、厚生労働省のホームページで公開されているものを参考にするとよいでしょう。

年次有給休暇管理簿は、有給休暇を実際に付与した期間中およびその期間の満了後3年間保存しなければなりません。なお、2020年4月1日に施行された改正労働基準法により、保存期間は5年に延長されましたが、経過措置として当面は3年間の保存でも認められています。

また、管理簿を作成・保管していなかった場合、直ちに罰則が科されるわけではありません。しかし、有給休暇の適切な管理を怠っていると判断される可能性があり、企業側に不利となる場合があります。さらに、従業員に年5日の有給休暇を取得させていないとみなされた場合には、労働基準法違反として罰則の対象になることもあるため、確実な作成と保存が求められます。

関連記事:年次有給休暇管理簿の作成が義務化!作成方法と保管期間を解説

7-2. 時季変更権の行使条件

時季変更権とは、労働者が指定した有給休暇の取得時季を、事業運営に支障が出る場合に限り、使用者が変更できる権利を指します(労働基準法第39条第5項ただし書)。

関連する労働者・使用者の権利と義務で、時季指定義務があります。時季指定義務とは、年間10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、使用者が5日以上を時季指定して与えなければならない義務です(労基法39条第7項)。

時季変更権における「事業運営に支障が出る」とは、具体的に次の例のような場合です。

時季変更権が認められる具体例

  • 代替人員を確保できない場合
  • 同じ時期に複数の労働者から有給取得希望があり、業務に支障が出る場合
  • 本人が担当しなければ遂行できない業務がある場合
  • 長期にわたる有給休暇の取得で業務が停滞する場合

ただし、退職後の期間や企業倒産後など、変更先が有給を取得できない時季の場合は時季変更権を行使できません。

また、単に繁忙期だからといった曖昧な理由は認められないため、行使する際は理由を明確にし、従業員へ説明する必要があります。

さらに注意すべき点として、時季変更権を正当な理由なく行使し、有給休暇の取得を認めない場合、使用者は6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される可能性があります。

また、要件を満たした場合には労働者は変更に従う必要があり、従わなければ欠勤扱いや懲戒処分となる場合もあります。

トラブルを防ぐためには、就業規則や社内ルールで明確に取り扱いを定め、従業員へ周知することが重要です。

関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説

7-3. 有給休暇の有効期限

年次有給休暇は、付与日から2年間で時効により消滅します(労働基準法第115条)。

与えられた有給休暇を使い切れなかった場合、余った有給休暇の日数を翌年に繰り越しが可能です。繰り越された有給休暇は、付与日が古いものから順に消化されていきます。

入社時期次第で年休付与日が異なる場合などは、従業員によって年休が消滅する時期も分けて管理する必要があるため注意しましょう。

関連記事:【図解】有給休暇の繰越とは?上限やルール、計算方法をわかりやすく解説
関連記事:有給休暇は消滅する?時効や未消化分の取り扱いの注意点

7-4. 基準日変更のルール

企業の中には、有給休暇の管理を簡略化するため、入社日にかかわらず基準日を統一している企業もあるでしょう。

基準日の変更自体は問題ありませんが、変更する際は必ず本来の基準日よりも前倒して有給休暇を付与しなくてはなりません。

また、前倒しで付与した有給休暇の付与日数が10日以上になった時点から、年間5日間の消化義務が生じます。

例えば、2025年4月1日に入社した従業員へ2025年10月1日に1回目の付与をおこなった後、次回の付与から基準日をそろえる場合は、本来2回目を付与する基準日である2026年10月1日よりも前に有給休暇を付与しなくてはなりません。

さらに、まだ付与されていない有給休暇を先に取得する前借りについても注意が必要です。法律上、これを認めることは違法ではありませんが、企業が必ず応じなければならないものではなく、あくまで任意となります。また、企業都合で前借りを強制することも認められていません。

実務上は前借りを有給休暇ではなく特別休暇で代替したり、法定外の有給休暇を別途付与したりといった方法で対応した方が無難でしょう。

関連記事: 有給休暇の前借りは違法になる?従業員から依頼された場合の対応方法を解説

7-5. 未消化分の買取は原則不可

従業員が消化しきれなかった有給休暇を企業側が買い取ることは原則できません。年次有給休暇は従業員の心身のリフレッシュを目的としており、買取制度は年休取得を抑制するおそれがあるためです。

ただし例外として、消滅時効が迫っている有給休暇や、退職時(企業都合による退職や休職を経てからの解雇などを含む)に未消化分が残っている場合などは年休取得の抑制につながらないため、買取も可能です。

また、企業が独自に定める有給休暇制度や、法律で定められた最低限の取得日数を超えた部分については、労使双方の合意があれば買い取れます。

ただし、買取はあくまでも例外的な措置です。従業員に、余ったら買い取ってもらえるとの誤解が広まると、取得意識が薄れてしまうおそれがあります。そのため、企業としては、まずは計画的な有給休暇の取得を促すことが重要です。

関連記事: 有給休暇の買い取りは違法?退職時の対応やトラブル事例を解説

8. 有給休暇を正しく付与・取得させなかったときの罰則

罰則

有給休暇については、企業が正しく付与・取得させなければ法律違反となり、罰則が科される可能性があります。

まず、有給休暇を取得したことを理由に、従業員に対して減給や降格、希望を無視した配置転換などの不利益な取り扱いをおこなうことは禁止されています。

また、年5日の有給休暇取得義務に違反した場合、企業には労働基準法第39条第7項および第120条に基づき、30万円以下の罰金が科せられます。この罰則は労働者ごとに成立するため、仮に対象となる従業員が100人いた場合、最大で3,000万円以下の罰金が科される可能性もあります。

労働者が有給休暇の取得を申し出たにもかかわらず、取得を認めなかった場合には、使用者に対して6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

さらに、使用者による時季指定をおこなう場合に、就業規則に記載されていなかった場合も30万円以下の罰金が課されます。

9. 有給管理には勤怠管理システムがおすすめ

システムのイメージ

有給休暇の管理は、法改正や管理対象者の増加に伴い煩雑化しています。紙やエクセルなどアナログ管理では計算ミスや管理漏れのリスクが高く、法律違反につながる可能性もあります。

勤怠管理システムを導入すれば、これらの情報を自動で計算・記録でき、管理者の負担を大幅に軽減できます。また、従業員もシステムを通じて有給休暇の申請や取得状況を簡単に確認できるため、取得しやすい環境を整えることが可能です。システムを活用することで、管理コストの削減と法令遵守の両立が可能となり、従業員の有給休暇取得の促進にもつながります。

関連記事:勤怠管理システムを導入する目的とは?メリット・デメリットも確認

10. 働き方改革を進めるために有給休暇を正しく運用しよう

多様な人が協力するイメージ

年次有給休暇は従業員のリフレッシュを目的に付与される休暇です。働き方改革により、年10日以上の有給休暇を付与している従業員には年5日分の有給休暇を取得させる義務があるため、しっかりと管理していく必要があります。

有給休暇が取得しやすい環境を作ることで、従業員のモチベーション向上や離職率低下にもつながります。

今後の法改正もふまえ、有給休暇について正しく理解し、取得推進をおこないましょう。

関連記事:有給休暇の労働基準法における定義|付与日数や取得義務化など法律を解説
関連記事:有給休暇の義務化で就業規則を変更する場合の注意点と記載例

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毎月の有給休暇の付与計算、取得状況の確認、法改正への対応…。
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jinjer Blog 編集部

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