雇用契約とは?法的な位置付けと締結する際のポイントを解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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雇用契約とは?法的な位置付けと締結する際のポイントを解説

契約書

労働者が使用者(企業)の労働に従事し、使用者がその労働に対して報酬の支払いを約束する契約を「雇用契約」と言います。
雇用契約を締結した労働者は、各保険や休暇の要件を満たした場合に、労働保険や社会保険の加入や有給休暇の取得など、労働法上の保護を受けることができます。
今回は、そもそも雇用契約とは何か、雇用契約はどのようにすれば成立するのか、必要な書類、雇用契約を結ぶ際のポイントについて解説していきます。

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雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。

◆押さえておくべきポイント

  • 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
  • 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
  • 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
  • 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策

いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 雇用契約とは

書類と虫眼鏡

雇用契約とは、民法623条により定義されている「当事者の一方が相手方に対して労働に従事し、相手方がその労働に対して報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」契約です。

具体的には、当事者である一方(労働者)が相手方に使用されて労働に従事し、使用者である相手方は、その労働に対する賃金を支払う約束をする契約のことです。

1-1. 雇用契約は「労働者を保護する」ためのもの

労働基準法では、雇用契約が認められた「労働者」に対し、労働条件に関する最低基準の保護を与えることを義務付けています。また、「労働者」は、各保険や休暇の要件を満たした場合に、以下のような労働法上の保護を受けることができます。

①「労働保険(雇用保険、労働災害保険)」や「社会保険(厚生年金、健康保険)」の加入(※)(労災保険は原則としてすべての労働者に適用されます)

②年次有給休暇の取得(※)

③長時間労働の抑制

④雇用条件の不利益変更の禁止(使用者の一方的な都合による、労働者にとって不利益な雇用条件の変更は原則禁止)

⑤解雇権濫用法理(使用者の一方的な都合よる契約関係の解消はできない)

※は一定の労働条件・付与要件を満たした場合に発生するもの

これらの保護は、正社員や契約社員だけではなく、アルバイトやパートの立場であっても同様です。特に不合理な待遇差は、パートタイム・有期雇用労働法により禁止されています。

また、労働基準法は雇用契約や就業規則などよりも優先されます。

たとえば、「③年次有給休暇の取得」に関しては、労働基準法第39条によって一定の要件を満たした場合に必ず発生するため、雇用契約書に「有給休暇はありません」と記載しても、法律上は無効となります。

参考:労働基準法第三十九条|e-Gov

関連記事:アルバイト採用でも雇用契約書は必要?書き方の基本や注意点

1-2. 「業務委託契約(請負契約・委任契約)」との違い

民法上の役務型契約には、雇用契約のほか、「請負契約」「委任契約(準委任契約)」のような、いわゆる「業務委託契約」とよばれるものがあります。これらと雇用契約との違いとしては、雇用契約が「労働者」として労働法上の保護を受けられるのに対し、請負契約や委任契約(準委任契約)を結んで働く人は「事業主」扱いとなるため「労働者」としての保護を受けられないことにあります。

「請負契約」とは
請負契約とは、発注者に依頼された仕事の完成や、成果物を納めることを目的とした契約のことです。受託者には、依頼された仕事を完成させる義務(瑕疵担保義務)が発生し、完成した仕事や成果物を納品して、はじめて報酬が支払われます。発注者の意に沿った結果や成果が得られないと、報酬を請求できません。ただし、2020年4月の民法改正により、不可抗力等で成果物が滅失・毀損した場合は、原則として報酬を請求できることになりました。

関連記事:雇用契約と請負契約の違いとは?それぞれの内容・注意点を解説

「委任契約(準委任契約)」とは
準委任契約とは、発注者が依頼した一定の業務について、その処理の過程に報酬が発生する契約です。仕事の完成義務はありません。仕事の過程ではなく結果や成果を求められる請負契約に対し、準委任契約は事務処理を目的とした契約です。発注者の意に沿っていない結果であっても、報酬の請求が可能です。

労働基準法や労働契約法は、雇用契約で生まれる労使間の主従関係によって、立場が弱くなりがちな労働者を保護し、労使のパワーバランスを均衡にする役割があります。

一方、完成した仕事に対して報酬が支払われる請負契約や、業務の遂行に対して報酬が支払われる準委任契約は、雇用契約のような「使用者」と「労働者」の主従関係ではなく、対等な立場での「事業者間の契約」であることから、労働法上の保護の対象外となるのです。

関連記事:雇用契約と業務委託契約の違いとは?メリット・デメリットを解説

1-3. 「労働契約」との違い

また、よく「雇用契約」と同じ意味で使用される言葉として「労働契約」があります。

前述したように、雇用契約は民法第623条で定義されている「雇用」に関する契約のことですが、それに対して労働契約は、労働基準法や労働契約法などで用いられている概念となります(法律内で明確な定義はなされていません)。

関連記事:雇用契約の定義や労働契約との違いなど基礎知識を解説

2. 雇用契約が成立する条件

書類とペン

それでは、実際に従業員と雇用契約を結び、成立させるには、どのような対応を取れば良いのでしょうか。必要な書類や対応の流れについて解説します。

2-1. 雇用契約時に必要な書類

労使間で雇用契約を取り交わす際に必要な書類は、以下の2つです。

①雇用契約書

雇用契約書とは、雇用主と労働者が労働条件について互いに合意したことを証明するための書類です。契約書面の最後には、雇用主と労働者双方が署名・捺印をすることになります。

雇用契約書の発行は法律で義務付けられたものではありませんが、労使間のトラブルを回避するためには、双方の理解と合意を確認するための書類として、取り交わしておくのが無難でしょう。

関連記事:雇用契約書がないのは違法?考えられる4つのトラブルとその対処法

②労働条件通知書

労働条件通知書とは、労働基準法第15条により明示が義務付けられた労働契約の期間や、賃金といった労働条件に関連する事項を記載した書類のことです。

労働条件通知書は、労働基準法第15条および労働基準法施行規則第5条のもと労働者に対して必ず交付しなければならない書類です。正社員ではなくアルバイト・パート・派遣社員といった形で雇用する場合でも、必ず作成して交付する必要があります。

参考:労働基準法第十五条|e-Gov

関連記事:労働条件通知書と雇用契約書の違い|それぞれの役割と発行方法を解説

2-2. 雇用契約を締結する際の手続きの流れ

雇用契約を結ぶ際には、以下の対応手順に従って手続きをおこなうと良いでしょう。

  1. 入社手続きに必要な書類を回収する
  2. 従業員の保険・税金に関係する手続きをおこなう
  3. 法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)を準備する
  4. パソコンや制服といった業務に必要な備品を準備し貸与する

雇用契約を結ぶ場合、雇用者側にはさまざまな手続きが求められます。そのため、手続きをマニュアル化したり、クラウドサービスを活用したりすることで、いかに簡単に・効率的に処理できるようにすることができるかが重要です。

関連記事:雇用契約を締結する際の必要書類や手続きの流れを詳しく紹介

3. 雇用契約書は交付することが望ましい

書類を渡す男性

ここまで、雇用契約とは何か、そして、雇用契約を結ぶ際の具体的な流れについて記載する中で、雇用契約時には「雇用契約書」と「労働条件通知書」が必要となることを説明しました。

ここで、誤解を恐れずに申し上げると、雇用契約自体は、民法上「諾成契約」であるため、必ずしも書面締結しなくてはいけないものではありません。

3-1. 雇用契約書は口頭でも違法ではない

雇用契約書に記載する内容は、口頭で伝えても法律上は問題ありません。正社員として雇用契約を結ぶ際は「雇用契約書」を残すことが一般的ですが、雇用期間や勤務時間が短いアルバイトやパートを採用する際は、お互いの意思があれば口頭でも成立するため、雇用契約書を交付しないケースもあります。(前述のように、労働条件通知書は必ず交付する必要があります。)

しかし、雇用契約書の中で雇用条件や行動規範をあらかじめ明示することで、従業員の意識向上につなげる事例もあるようです。特に周知しておきたい重要な項目があれば、雇用契約書にあらかじめ記載し、署名・捺印時などに読み合せることで、周知徹底させることもできるでしょう。

3-2. 雇用契約書と労働条件通知書は兼用可能

法律遵守とトラブル防止の観点からは、労働条件通知書と雇用契約書の2種類の書類を作ることが望ましいです。この2つの書類はまとめることが可能で、実際に労働条件通知書兼雇用契約書として締結している企業も多くあります。

当サイトでは、このような労働条件通知書兼雇用契約書のサンプルがほしいという方向けに、社労士が監修した労働条件通知書のフォーマットを配布しています。

2024年4月に労働条件の明示ルールが変更された点も反映した最新のフォーマットで、雇用契約書として兼用することもできる雛形です。「これから作る雇用契約書の土台にしたい」「労働条件通知書を更新する際の参考にしたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。

関連記事:雇用契約は口頭でも有効なのか?口頭で契約する際に注意すべき2つのリスク

3-3. 雇用契約書を交付しない場合のリスク

雇用契約書を交付しなかった場合は、トラブルの防止ができず、発生時に解決につながる証拠の提示もできなくなります。

労使間でトラブルになることがある

雇用契約書がない場合に起きやすい問題は、求人情報に掲載されていた情報と、実際の労働条件が異なるというものです。

求人情報に掲載されている情報は概要である場合や、情報が古いままであることがあります。そのため、実際の労働条件との間に乖離が発生し、「聞いていなかった」となることがあるのです。

雇用契約書を交付していれば、従業員はその内容を確認し、合意したことになります。求人情報と内容が異なっていても、実際の労働条件を通知して契約をしていれば問題ないため、雇用契約書があればこの問題は防止しやすくなります。

トラブル発生時の証拠がない

雇用主から一方的に交付される労働条件通知書だけでは、労働者の合意を物理的に確認することができません。

そのため、労働条件通知書しか発行していない場合に労使間でトラブルがあると、「労働条件通知書を受け取ったが合意していない」「書面の内容を理解できなかった」などと主張され、労働者や労働組合から告発される可能性もあります。

つまり、雇用契約書を作成すべき理由は、あらかじめ労使間でのトラブルを避けるためです。労働者の理解と合意を得たという証拠を残しておくために、たとえアルバイトやパートであっても、雇用契約書はできるだけ取り交わしておくのが無難でしょう。

【関連記事】雇用契約書がないのは違法?考えられる4つのトラブルとその対処法

4. 雇用契約を結ぶ際の4つポイント

4を手で持つ

雇用契約を締結する際は、労働者に雇用条件を十分に理解してもらい、雇用形態による違いや記載すべき内容に注意しなければなりません。とくに重要な4つのポイントを解説していきます。

4-1. 労働者に雇用条件をもれなく明記し理解してもらう

雇用契約書には、雇用条件・労働条件を漏れなく記載しましょう。書き方は簡潔でわかりやすい表現であることが大切です。

  • 労働契約の期間
  • 就業時間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 時間外労働・休憩・休日
  • 賃金・賞与
  • 昇給
  • 退職

これらは雇用契約書に必要な項目の一例です。雇用契約書に記載しなければならない項目に法的なルールはありませんが、労働条件通知書と同様の内容にしておいた方が無難です。

さらに、雇用条件は労働者に十分に説明し、理解してもらうことも重要です。書面の内容を読んでもらうだけでは誤解が生じる可能性もあるため、口頭で説明し、適宜確認や質問を受けながら認識にずれがないかチェックしましょう。

4-2. パート・アルバイトも雇用契約が必要

雇用契約は正社員だけでよいと勘違いしているケースがあります。しかし、雇用契約は労働者全員と締結するものであり、パート・アルバイトのような所定労働時間が短い労働者に対しても同様です。

パート・アルバイト従業員に対しても、最低賃金や同一労働同一賃金は厳守しなければならないため、雇用契約の内容も関連する法律を遵守した内容にする必要があります。

加えて、雇用期間の制限がある場合はその点も明示しなければなりません。

また、シフト制で勤務時間が定まっていない場合は、勤務時間帯をいくつかのパターンで記載する必要があります。

働き方の違いによる記載内容の違いにも十分に注意しましょう。

【関連記事】パートタイム労働者の雇用契約書で勤務時間を記載するときの注意点とは

4-3. 契約社員は記載事項が異なる

契約社員のような有期雇用契約の場合は、正社員の雇用契約に加えて以下の内容が必要になります。

  • 契約期間
  • 無期転換
  • 正社員登用

これらを明示しなければなりません。

また、有期雇用契約の場合は法律によって契約期間が定められています。上限が3年または5年であり、契約期間を細かく区切りすぎないことがルールとされているため、この部分も守った内容で雇用契約を結ぶようにしましょう。

参考:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール

4-4. 禁止事項を記載しないようにする

労働基準法では、以下の内容を雇用契約に含むことを禁止しています。

  • 労働契約の違反に対して、違約金を支払わせること
  • 違約金の金額をあらかじめ決めておくこと
  • 労働者に金銭を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きさせること
  • 強制的に会社に積み立てをさせること

これらの内容を雇用契約書に記載してはなりません。

記載があった場合や、就業規則で定めている場合でも、法律が優先されるため無効になります。

参考:人を雇うときのルール|厚生労働省

当サイトでは、ここまで解説した雇用契約を結ぶ際の適切な対応を解説した資料を無料で配布しております。この資料一冊で雇用契約マニュアルのように使える資料になっているため、、雇用契約業務に不安のある方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。

関連記事:雇用契約を締結する際に押さえておくべき6つのチェックポイント

5.雇用契約書と労働条件通知書は電子化が可能

PCをたたいている

2019年4月の法改正により、労働条件通知書の電子化は労働者の希望がある場合に限り認められるようになりました。雇用契約書についても、電子契約サービス等を利用することで電子化が可能です。
ただし、雇用契約書を電子化するにあたっては、労働者が希望していることが条件となっています。また、送信する際も、労働者本人のみが閲覧・プリントアウトできる形にしなくてはいけません。
以上の条件を満たしていれば、電子契約システムを使用した雇用契約も可能となります。電子契約システムであれば、雇用契約書の作成から送受信、保管までおこなえるため、雇用契約にかかる工数も大幅に削減することができるでしょう。

6. 雇用契約を適切な形で締結して労使間のトラブルを防ごう

握手する男性

以上のように、労使間でトラブルの無い雇用契約を結ぶためには、雇用契約書を発行して、従業員と取り交わしておくことが大事になります。
雇用契約は諾成契約にあたるため、雇用契約書での書面締結がなくても契約は成立します。しかし、雇用契約書を取り交わしておくことで、労使間で労働条件や契約内容に対する理解、合意があったことを示すことができます。
労使間でトラブルがあった際、重要な証拠にもなるため、雇用契約書は正しく取り交わすようにしましょう。
また雇用契約の際に必須である労働条件通知書は、電子化が可能です。新入社員が多い、従業員の出入りが激しいなどで手続きに手間を感じている方は、システム化することで雇用契約書周りの作業効率を上げることが可能です。システム導入による電子化について気になる方は、以下の関連記事をご覧ください。

関連記事:雇用契約書・労働条件通知書を電子化する方法や課題点とは?
関連記事:雇用契約書に記載すべき内容をイチから分かりやすく解説

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◆押さえておくべきポイント

  • 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
  • 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
  • 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
  • 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策

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