人事評価とは?制度概要や評価基準・実施する目的や課題、導入方法を解説
更新日: 2025.3.10
公開日: 2022.4.24
jinjer Blog 編集部
人事評価とは企業が従業員の貢献度や成果を評価することで、給与や役職、その他人事管理をするうえで判断基準となるものです。
従業員の報酬や待遇を決定するための手法として人事評価を導入する企業は多いです。人事評価のシステムをうまく取り入れれば従業員の成長を促すことができ、企業全体の利益にもつながっていきます。
ただし、せっかく人事評価を導入しても、活用方法に失敗すればモチベーション低下やトラブルを招くおそれがあるので注意しましょう。
本記事では、人事評価とはどのようなものか、その内容や評価方法について詳しく解説します。人事評価を導入することで得られるメリットやデメリットについてもあわせて確認しましょう。
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人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人事評価とは?
人事評価とは、企業が従業員の働きぶりや貢献度、成果や意欲などを総合的に評価することをいいます。評価の内容は従業員の報酬や待遇に反映されるのが一般的です。
人事評価をおこなう時期は企業によって異なりますが、一年ごとあるいは半年ごとに評価を実施する企業が多く、短い企業では四半期ごとに人事評価を実施することもあります。
1-1. 知っておくべき人事評価の5原則
人事評価において、制度を設計する際、評価をする際、次の5原則を意識することが大切です。
- 公正な評価
- 評価基準の明確化
- 評価基準の理解
- 評価基準の遵守
- 評価責任の自覚
正しく制度を構築するためにも人事評価における原則を詳しく見ていきましょう。
公正な評価
人事評価は公正におこなわることが原則です。例えば特定の従業員にだけ有利になるもしくは不利になるような評価は、公正さに欠けます。
公正な評価をおこなうには、どのような基準で評価が下されたのかが明確になっている必要があります。
人事評価基準の明確化
評価基準の明確化は、公正な評価を下すうえで欠かせません。評価対象や評価の尺度などを明確にしておきましょう。例えば、部署や職種ごとにどのような業務を担っているのかを洗い出して、各部署、職種に応じた評価項目を作成しましょう。
人事評価基準の理解
評価基準の理解とは評価基準を従業員が理解している状態です。評価基準を定めたとしても、評価される対象である従業員が理解していなければ、公正な評価とはいえません。明確にした評価基準を従業員に伝えましょう。
人事評価基準の遵守
評価基準を明確にして、従業員が理解している状態であっても、評価者が基準を遵守していなければ意味がありません。評価者が基準を守らずに、独自の観点や私情によって評価を歪めてしまっては公正な評価は下せません。
評価責任の自覚
人事評価は従業員の給与やモチベーションに大きく関係する要素です。人事評価が低いといった理由で従業員が納得いかないと、やる気をなくす可能性があります。さらに深刻なケースで会社を辞めることも考えられるでしょう。人事評価は従業員のその後を左右しかねないため、評価者は責任と自覚をもって評価を下す必要があります。
1-2. 人事考課との違いとは
人事考課も人事評価と同じように、従業員を評価する制度の一つです。どちらも「従業員を評価する」という点では共通していますが、人事考課は給与や昇進などを判断するための評価を指すことが多いのに対し、人事評価は能力開発や育成、人材配置などもっと広い範囲での判断をおこなう目的で使われます。
人事評価が広義の意味、人事考課が狭義の意味と捉えると分かりやすいでしょう。
2. 人事評価を構成する3つの制度
人事評価の方法や基準とする評価ポイントは企業によって異なります。しかし、多くの企業で人事評価を構成する要素は共通しています。この構成要素とは、等級制度と評価制度、報酬制度という3つの要素に分けられています。
人事評価を導入する際には、この3つのポイントに分類して評価基準を策定していくのがおすすめです。詳しく見ていきましょう。
関連記事:人事評価を作成する際の評価基準についての考え方
関連記事:人事評価制度で重要な3つの基準の評価項目について解説
2-1. 等級制度とは
等級制度とは、従業員の役割に応じて目標や指針を分類する手法です。従業員の職務や立場を踏まえた上で、どのような仕事を期待するのか、どのようなスキルを発揮できるのかといったポイントを評価していきます。
人事評価制度を導入する際には、等級の定義を明示して従業員に目的意識をもたせることが大切です。等級が明示されていれば、従業員は指針に応じて確実にステップアップしていくことができます。
2-2. 評価制度とは
評価制度とは企業の指針を明示した上で、従業員の行動や成果を評価していくことをいいます。個人のスキルや業績、成果などの目標に加えて、企業の行動指針に沿っているか、十分な成長につなげられたかといった点も評価していきます。
評価制度では、達成できたことと達成できなかったこと、今後の目標や指針に分けて従業員へのフィードバックをおこなうのが最適です。
職種ごとに人事評価シートを作成することも適切に評価するための良い方法のひとつでしょう。人事評価シートを作ることで、目標達成ができたかできなかったかが可視化されるため、従業員も人事評価に納得しやすいといったメリットもあります。
関連記事:人事評価シートを上手に活用した人事評価制度の運用管理が基本
関連記事:人事評価シートの具体例「技術職」のチェックポイント
2-3. 報酬制度とは
報酬制度とは、評価をもとにどのような報酬が得られるのかを明示する手法です。報酬というのは給与やインセンティブのことを指しますが、ときには待遇の改善や学習機会の提供といった報酬を提供することもあります。
従業員の働きに対してどのような報酬が与えられるのかを明示することは、従業員に明確な目標や目的意識を持たせることにつながります。
3. 人事評価の基本となる3つの評価基準
人事評価は従業員の能力と業績、情意の3種類に分類して評価していくのが適切です。これら3つの評価基準を統合的に考慮することで、より客観的かつ公正な評価が実現でき、従業員が自分の強みや改善点を理解する手助けにもなります。まずはこの3つの評価基準について正しく理解していきましょう。
3-1. 能力評価
能力とは業務上必要となるスキルや知識のことを指します。従業員が持ち合わせている能力が業務でどの程度発揮されたのかを適切に評価することが大切です。
特に能力評価では、コミュニケーション能力、問題解決能力、企画力など、具体的なスキルが重要視されます。評価者はこれらのスキルが実際の業務にどれだけ貢献しているかを見極める必要があります。
また、能力評価は従業員の成長を促す指標でもあります。従業員は、自らの強みや改善点を理解し、キャリアプランを考える際の基盤となるため、定期的な評価が求められるでしょう。
3-2. 業績評価
業績とは従業員が目標をどの程度達成できたか、どんな成果を出せたのかといった評価ポイントです。業績評価は定量的な指標を用いることが多く、売上高や契約件数、達成されたプロジェクトの数など具体的な数値によって評価されます。
このような評価は、従業員の貢献度を明確に示すための重要な要素であり、組織全体の業績向上にも寄与します。業績を評価する際には、短期的な成果だけでなく、長期的な視点からも見ることが求められます。このため、実績のみに依存するのではなく、業績達成に至るプロセスやチームとの連携も考慮に入れた評価が重要です。
3-3. 情意評価
情意とは従業員の意欲や責任感、勤務態度といったポイントです。情意は数値化が難しいため、仕事に対する姿勢を細かく見極めて評価する必要があります。
評価者の主観が影響することが多いですが、評価基準やフィードバックのプロセスを明確にすることで、より公正な判断を促進することができます。
しかし、能力、業績、情意の3種類を実際にどのような要素や項目で評価するのかわからず、人事評価制度の作成が進まないといったケースも多く見受けられます。
そのため、当サイトでは人事評価制度を作成する際の評価項目の策定手順や、各項目の評価基準の決め方について解説したガイドブックを作成しました。こちらから無料でダウンロードして頂けますので、自社にあった人事評価制度を作りたいとお考えの方は、是非お役立てください。
4. 人事評価を導入する目的
適切な人事評価には、企業の体制をよりよくする大きな効果があります。
人事評価は従業員の昇給や昇進、異動配置、スキルの向上など多くのポイントに影響を与えるため、従業員の不満が出ないように客観的な評価をしていかなければなりません。
ここからは、多くの企業が人事評価制度をどのような目的で運用しているのか、制度の具体的な用途をご紹介いたします。
関連記事:人事評価は「目的の明確化」が重要!仕事の生産性やパフォーマンスがアップ
4-1. 企業の方向性を従業員に明示するため
人事評価制度は企業の目標や理念と連携させて運用できます。人事評価をする際に組織の目標を明示すれば、従業員がそれぞれの業務においてどのように貢献できるのかを考え、目標や目的意識を持って日々の業務に取り組めるようになっていきます。
また、企業が期待する人物像を明らかにしておくのも重要なポイントです。企業がどのような働きを望んでいるのかを明示すれば、目指すべき姿や行動指針に沿って業務に取り組むことができます。
4-2. 従業員の成果や働きぶりを適切に評価するため
人事評価では、従業員の日々の働きや成果、意欲などを総合的に評価することになります。適切な評価をおこなえる制度が整っていれば、従業員のモチベーション向上につなげることができます。
ただし、公平でない人事評価制度を導入すると従業員は正しく評価されていないと感じてしまうことがあります。従業員の不満の元となってしまうことがないよう、人事評価導入の際には適切な評価基準を設けることが肝心です。
4-3. 昇給や昇格の判断を適切におこなうため
人事評価の内容を参考にすれば、従業員の報酬額や待遇を適切に査定することが可能となります。従業員にとって昇給や昇格はモチベーションに直結する重要な要素です。この部分の評価があいまいだと、従業員は不満や不信感を募らせてしまうことになるので注意したいものです。
明確な人事評価の基準を設けていれば、昇給や昇格の判断がしやすくなり、従業員の納得感も高まります。
4-4. 人事評価を元に人材を最適な部門に配置するため
人事評価の内容は、従業員の異動配置について考える際の重要な参考資料にもなります。営業やマーケティングなど特定の部署に配置した従業員が、キャリアを重ねスキルアップする中で別の部署に向いていると判断されるケースは少なくありません。
人材の良さを見極めずに配置をおこなった場合、人材を活かしきれず企業の成長が滞ってしまうことがあります。適材適所に人員を配置するためには、従業員の特性を客観的に判断できる人事評価を参考にするのがよいでしょう。
4-5. 人事評価を人材育成や教育に活用するため
人事評価において目標を設定することには、人材育成や従業員教育につながるという良さもあります。人事評価をおこなう際には従業員のキャリアアップを見越した運用を心がけたいものです。
以上のような目的を理解した上で、適切に人事評価をすることが重要です。また、人事評価をする際には、書き方ひとつで従業員の捉え方が大きく異なります。従業員のモチベーションアップにつながるよう、担当者は公正かつ適切な評価を心がけましょう。
関連記事:人事評価の書き方一つで同じ人物でもガラリと変わる!
5. 企業が人事評価制度を導入するメリット
企業が人事評価制度を導入することで得られるメリットは数多くあります。特に、生産性の向上や従業員のモチベーションのアップが見込める点は大きなメリットです。
適切に人事評価制度を運用すれば社内の雰囲気がよくなる効果も見込めるでしょう。本章では、人事評価制度のメリットを具体的に紹介します。
5-1. 生産性の向上につながる
人事評価では、従業員の能力や成果に応じて報酬や待遇を決定します。これは従業員の側から考えれば、自身の頑張りに応じてそれに見合った給与や立場を得られるということになるのです。
人事評価を理由に、従業員が積極的に仕事に取り組めるようになる例は多いものです。また、人事評価をすることで従業員の企業理念や目標への理解もつながります。個々の仕事の生産性がアップすれば、企業全体の業績アップも見込めるでしょう。
5-2. 人材育成や従業員の成長につながる
人事評価制度には個々のスキルや能力、潜在的な才能を見極められるという良さもあります。
従業員にはそれぞれ個性や向き不向きがあります。多様な人材がもつそれぞれ能力を発揮してもらうためには、人事評価制度を軸にした人材スキルの管理が必要です。
また、人事評価制度をもとに従業員の今後の課題を洗い出せば、的確な教育や研修による育成をおこなうこともできます。人事評価制度には、従業員の成長をサポートするという側面もあるのです。
5-3. 企業理念や方向性の周知につながる
人事評価制度を導入する際には、あらかじめ従業員に対して企業の理念やビジョン、方針を明示します。具体的な方向性を示すことによって、従業員は企業の考え方を意識しながら日々の業務にあたることができるでしょう。
人事評価制度をきっかけに企業の方向性や理念を理解してもらうことで、従業員が望ましい働きをしてくれる可能性が高まります。従業員の足並みが揃うことは、人事評価制度を取り入れる大きなメリットといえます。
5-4. 社内のコミュニケーション促進につながる
従業員が評価者や上司と十分なコミュニケーションを取れない状態で日々の業務をこなしている職場もあるでしょう。しかし、コミュニケーションが不足していると従業員は相談や報告、提案がしにくくなり、結果的に社内の業務の流れが滞ってしまうケースがあります。
また、コミュニケーション不足によって十分な信頼関係が構築できない例も少なくありません。
人事評価の際には評価者から従業員に対し、評価面談の実施などで適切なフィードバックやコミュニケーションをとる機会を設けましょう。人事評価のフィードバックは、従業員は働きや成果が認められていると感じ、企業や評価者への信頼感を高めることができます。
関連記事:成功例から学ぶ人事評価制度と採用した評価制度の事例
6. 企業の人事評価の制度の設計・運用で抱えやすい課題
人事評価には業績の向上やコミュニケーション促進といった多くのメリットがある一方、注意しなければならない点もあります。
特に、評価者や上司の業務が増加してしまう点は人事評価導入の大きな問題点です。また、人事評価の取り入れ方を間違えると社内のモチベーション低下を招くこともあります。
ここからは、人事評価導入の課題や注意点を確認していきましょう。
6-1. 人事評価の設計や運用に工数がかかる
評価基準や処遇を定めたり、従業員に説明をしたり、評価者に研修を実施したりなど、人事評価の導入にあっては多くの工数が必要です。さらに、従業員の目標の進捗確認や評価、フィードバックなど、人事評価を開始したあとも運用に多くの工数が取られます。
人事評価に割くリソースが足りないようであれば、ツールやシステムの活用も視野に入れて制度設計を検討した方が良いでしょう。
6-2. 人事評価の設計に問題があると機能しない
人事評価は、評価制度、等級制度、報酬制度の3つの制度によって構成されていますが、この3つの内いずれかに問題があると、上手く機能しなくなる恐れが生じます。人事評価に対して従業員から不満が噴出している場合は、この3つの制度を見直す必要があるでしょう。
6-3. 評価者によって評価にばらつきがでる
機械と異なり、人間がおこなう評価にはどうしても違いやばらつきが生じがちです。しかし、評価者が変わることで評価に違いが出てしまうと、従業員から不満や不信感を持たれやすくなってしまうでしょう。
評価の公平性を保つためにも、人事評価を実施する前に研修をおこない、客観性のある評価ができるように評価者を訓練しておくことが必要です。
6-4. 評価に見合った待遇が用意されていない
昇給や昇進など、評価に見合った待遇が用意されていなければ、当然ながら従業員のモチベーションは低下してしまうでしょう。このことがきっかけとなり、待遇のよい会社へ転職されてしまう恐れも生じます。
人事評価の設計段階で、評価基準や評価項目だけでなく、待遇についてもよく検討しなければなりません。
6-5. リモートワークに対応しづらい
リモートワークの普及にともない、会社に出勤せず在宅で仕事をする機会が増えています。リモートワークの多い企業の場合、評価者が従業員の勤務態度や働きぶりを直接確認することができないため、評価がしづらいといった問題が生じます。
このため、リモートワークに対応した評価基準や評価項目の見直しが必要です。
6-6. 従業員のやる気・モチベーションが下がる恐れがある
従業員の能力以上に高い目標を設定してしまうと、人事評価で良い評価をなかなか得ることができず、従業員のやる気を下げてしまう恐れがあります。目標設定をする際は、従業員が達成可能な範囲で設定することが大切です。
また、人事評価をする際には、プラスの面を多く取り上げてモチベーションの維持に努めましょう。客観的な視点で評価することも、従業員の不満を防ぐ重要なポイントです。
関連記事:人事評価で考えられる不満とは?訴訟リスクを回避する健全な運用法
関連記事:人事評価の不満で退職が発生すれば企業にとっての大きな損失へ
7. 失敗しない人事評価制度の導入方法・手順
人事評価制度は、企業の人事制度の一要素として扱われます。従業員を単純に評価するだけではなく、評価を元に役職や等級を変更したり、報酬や賞与に反映したりといった連携が必須となるのです。
人事評価には、企業理念を周知したり従業員の昇格や報酬を適切に管理したりといった意味合いがあります。人事評価制度を導入する際にはまず、企業の現状を把握し制度導入の目的を見極めることから始めましょう。
7-1. 人事評価制度の導入目的を明確化する
人事評価を導入する前に、まずは人事評価をおこなう目的を明確にしておくことが重要です。目的が明確に定まっていないと評価軸にズレが生じて、人事評価が全く意味のないものと化す恐れがあります。
自社の経営理念やビジョン、事業戦略などに基づいて、人事評価を導入する目的を明確にしておきましょう。
7-2. 人事評価項目・評価基準を決める
目的が明確になったら、評価項目と評価基準について定めなければなりません。評価項目と評価基準が曖昧だと、何をもって昇格・降格するのか従業員に示すことができないでしょう。逆に、評価基準があることで、従業員のモチベーションにつながることもあります。
まずは大枠を決め、その後報酬アップなどのシミュレーションを経て細かい評価基準を決めていきます。評価基準は、企業の計画や目標に合わせて細かく設定することが大切です。評価を分かりやすくするために、評価項目ごとに5段階評価を取り入れている企業もあります。
関連記事:人事評価の項目はサンプルやテンプレートを見て自社オリジナルにしよう
関連記事:人事評価で悩む5段階評価の割合の考え方の注意点
7-3. 評価手法や処遇を整備する
評価基準や評価項目を定めるだけでなく、同時に評価手法や処遇の整備も進めていきます。評価手法に関しては、前述で触れた「能力」「業績」「情意」を使うのが一般的な方法です。また、評価者に対して事前研修を実施し、客観的な評価ができるように指導もおこないます。
処遇に関しては、評価の等級やランクに応じて報酬やインセンティブをどう反映させるのか、決めておく必要があります。処遇を反映させた賃金テーブルなどを用意しておきましょう。
7-4. 従業員への説明・改善をおこなう
評価項目や基準を定めても、従業員が知らなければ意味がありません。従業員に制度を周知することで、トラブルなくスムーズに制度の導入を進めることができます。
周知する方法は、書面による通知のほか、説明会を実施するのもおすすめです。説明会をおこなうことで、従業員も質疑の場をもてるので、人事評価への理解が深まりやすくなるでしょう。
ここまで準備が整えば、あとは人事評価制度を運用していく流れとなります。運用していく中で問題点が見つかれば、原因を追究し改善を重ねていきます。この際、評価者側だけでなく被評価者側からの意見も汲み取ることが重要です。
関連記事:人事評価はどうやって導入する?具体的な方法や流れについて解説
関連記事:人事評価制度の運用に欠かせない「人事評価マニュアル」の作成方法や注意点
7-5. 人事面談をおこない的確な評価コメントを伝える
人事評価制度がスタートしたら、一定期間で評価を締め従業員へフィードバックする時間を設けましょう。人事評価コメントを伝える手段のひとつとして、人事評価面談をおこなうのが主流です。
面談を設けることで、人事評価をする側もされる側もお互いが人事評価に対して納得できるという効果があります。面談の内容によっては従業員の仕事への取り組み方も変わったり、モチベーション向上に繋がるケースもあります。
またその際には評価者から従業員に対してのコメントを記載するのが一般的です。従業員の現在の状況を客観的に示し、達成した内容や改善点を意識してもらうためには、評価コメントが必要でしょう。
一方で人事評価コメントの内容によっては、従業員からの反感を買ったり仕事への意欲を大きく損ねてしまったりするリスクも考えられるので注意しましょう。
人事評価コメントがマイナス面の指摘に終始すると、従業員のモチベーションは下がってしまいます。コメントではまず実績や業績に触れ、どんな努力や工夫があったのかに関して具体的に言及します。ポジティブな面に触れることで従業員の意欲は高まりやすくなります。また、上司に普段の仕事を見てもらえているという意識を持たせることもできます。
マイナス面に触れる際には、結びの文章で激励するなど、ネガティブな印象を与えないよう配慮することが肝心です。
関連記事:評価者や上司が行う人事評価のコメントは公平性や具体性が重要
関連記事:職種別・職業別の人事評価に対するコメントの例文をご紹介
8. 押さえておくべき人事評価の手法
ここまで人事評価の制度概要や目的、メリット、課題から導入方法まで説明してきましたが、この人事評価にはそもそもさまざまな手法が存在しており、それぞれの企業や組織に応じた最適な方法を選択することが重要です。
ここでは、効果的な人事評価手法として主流なものや最新の注目手法について解説します。これにより、従業員の成長を促し、組織のビジョンに沿った評価を行うための参考にしましょう。
8-1. 効果的な人事評価として主流な手法
効果的な人事評価の手法には、目標管理制度(MBO)、コンピテンシー評価、360度評価などがあります。これらの手法は、従業員の業績や能力を多角的に評価し、成長を促すための手段として広く活用されています。それぞれの手法には特徴があり、企業のニーズに合わせて選択することで、評価制度の質を向上させることが期待できます。
目標管理制度(MBO)
目標管理制度(MBO)は、従業員が自ら設定した目標を達成することを重視する人事評価の手法です。この制度では、上司と従業員が合意の上で具体的な目標を設定し、定期的にその進捗を確認します。MBOは、従業員の自己管理能力を高めると共に、企業の戦略と個人の目標を一致させることができる利点があります。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価は、従業員が業務を遂行する上で必要な特定のスキルや能力を評価する手法です。この手法は、職務に求められる能力を明確にし、従業員がその能力をどの程度発揮しているかを測ることに重点を置いています。具体的には、業務遂行における行動や思考パターンを評価し、従業員のパフォーマンス向上に繋げることが目的です。
360度評価
360度評価は、従業員のパフォーマンスを多面的に評価する手法です。この方法では、上司だけでなく同僚や部下、さらには自己評価を通じて、従業員の働きぶりやコミュニケーション能力、チームワークなどを包括的に評価します。これにより、従業員は自分の強みや改善点をより明確に理解し、成長のための具体的なフィードバックを得ることができます。
8-2. 最新の注目されている人事評価の手法
最近注目を集めている人事評価の手法として、バリュー評価やリアルタイムフィードバック、ピアボーナス、OKR(Objectives and Key Results)、ノーレイティングなどがあります。これらの手法は、従業員の成長やエンゲージメント向上を目指し、組織の目標達成に貢献するための革新的なアプローチとして参考になります。
バリュー評価
バリュー評価は、従業員の行動や成果が企業の価値観や文化にどれだけ合致しているかを評価する手法です。このアプローチでは、単に業績だけでなく、従業員が企業のミッションやビジョンに基づいた行動をどの程度実践しているかが重視されます。企業の価値観を職場に根付かせることで、全体のエンゲージメントや業務の質を向上させることを目的としています。
リアルタイムフィードバック
リアルタイムフィードバックは、従業員が業務を遂行する中で即座に得られる評価やコメントのことを指します。この手法は、従業員が自らのパフォーマンスを迅速に理解し、改善点を早期に把握するために重要です。迅速なフィードバックが可能になることで、従業員は継続的に自己成長しやすく、業務の改善にも繋がります。
ピアボーナス
ピアボーナスは、同僚同士が互いに評価し合い、報酬を与える仕組みです。この手法は、チーム内の協力やコミュニケーションを促進し、従業員同士の感謝の気持ちを形にすることを目的としています。ピアボーナスの導入により、職場の良好な人間関係が築かれ、全体的なモチベーションやエンゲージメント向上が期待されます。
OKR
OKR(Objectives and Key Results)は、企業と個人の目標を明確にし、その達成度を測るための手法です。このフレームワークは、目標設定を明示化し、進捗を追跡することで、組織全体の方向性を統一する役割を果たします。OKRは、定期的なレビューとフィードバックを通じて、目指す成果に向けた柔軟な調整を可能にし、従業員のエンゲージメントを高めることにもつながります。
ノーレイティング
ノーレイティングは、従来の評価ランク付けを廃止し、従業員が自己評価や同僚からのフィードバックを通じて成長を促す手法です。このアプローチは、柔軟性を持ち、公平な評価を目指すことが特徴で、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める要因となっています。
9. 会社や従業員にとって効果的な人事評価をおこなおう
人事評価制度とは、能力や業績、情意といった評価項目に分けて従業員を多角的に評価する手法です。的確な人事評価制度を導入すれば、組織の目標達成や人材育成、コミュニケーション促進など多くのメリットを享受できます。
ただし、人事評価制度がうまく機能していない職場では、評価エラーや従業員のモチベーション低下といった問題が起こることがあります。制度を導入する際には評価基準を精査し、ポイントを押さえた効果的な運用を心がけましょう。
関連記事:近年の人事評価制度に見られるトレンドの特徴についての解説
関連記事:人事評価がいらない画期的な評価方法が日本でも注目されている!
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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