労働基準法第37条とは?割増賃金の計算方法や適用除外をわかりやすく解説
更新日: 2026.3.30 公開日: 2021.10.4 jinjer Blog 編集部

労働基準法第37条は、時間外労働・休日労働・深夜労働に対して割増賃金の支払いを義務付ける非常に重要な規定です。運用を誤ると、未払い賃金の発生や罰則適用といったリスクにつながるおそれがあります。
本記事では、労働基準法第37条が適用される具体的なケースをはじめ、割増率の基本や割増賃金計算における端数処理の考え方をわかりやすく解説します。あわせて、管理監督者に対する労働基準法第37条の適用除外についても紹介します。
そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
関連記事:労働基準法とは?法律の要点や人事が必ず押さえたい基本をわかりやすく解説
目次
人事担当者であれば、労働基準法の知識は必須です。しかし、その内容は多岐にわたり、複雑なため、全てを正確に把握するのは簡単ではありません。
◆労働基準法のポイント
- 労働時間:36協定で定める残業の上限時間は?
- 年次有給休暇:年5日の取得義務の対象者は?
- 賃金:守るべき「賃金支払いの5原則」とは?
- 就業規則:作成・変更時に必要な手続きは?
- 40年ぶりの大改正:人事担当者が押さえておきたい項目は?
これらの疑問に一つでも不安を感じた方へ。
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1. 労働基準法第37条とは


まずは労働基準法第37条がどのような内容なのか、条文や違反した場合の罰則などを確認していきましょう。
1-1. 割増賃金について定めた条文
労働基準法第37条は、労働者の法定時間外労働における割増賃金について定めた条文です。次にその一部を引用します。
使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
「従業員が法定労働時間を超えて労働した場合や、法定休日に労働した場合などに、企業は賃金を割増して支払わなければならない」といった内容を定めたものになっています。
ここでいう割増賃金がいくらになるのか、計算方法と併せて「3. 労働基準法第37条に基づく割増賃金の計算方法」にて解説しています。
1-2. そもそも割増賃金とは
労働基準法第37条は、労働者が「法定労働時間を超えて労働した場合(時間外労働)」「法定休日に労働した場合(休日労働)」「深夜時間帯に労働した場合(深夜労働)」それぞれで、経営者に対して通常よりも多い賃金の支払いを義務付けるものです。これを「割増賃金」と言い、いわゆる「残業手当」「休日手当」「深夜手当」が該当します。
本来、経営者は法令で定められた規定を遵守し、労働者に過度な負担を与えぬようその労働を管理しなければなりません。やむを得ず法定外の残業や休日出勤など負担の大きい労働を課した場合は、割増賃金によって補償するという考え方です。
1-3. 労働基準法第37条に違反した場合の罰則
法定労働時間を超えて働かせたり、法定休日や深夜帯に労働させたりしたにも関わらず、割増賃金を支払わなかった場合、労働基準法第37条違反になります。労働基準監督署の調査などで違反が確認されると、まず是正指導や是正勧告がおこなわれます。
それでも改善が見られない場合には、労働基準法第119条に基づき、「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」という刑事罰が課されるおそれもあるでしょう。
さらに、労働基準法に違反した企業は、厚生労働省のホームページで企業名や違反内容が公表される可能性もあります。こうした公表は企業イメージを大きく損ない、経営への悪影響につながりかねません。
割増賃金の対象となる労働をおこなわせた場合には、必ず適切に割増賃金を支払うことが重要です。
2. 労働基準法第37条が適用される3つのケース


労働基準法第37条が適用されるのは次の3つのケースです。
- 時間外労働(法定労働時間を超える労働)
- 休日労働(法定休日の労働)
- 深夜労働(22時~翌5時の労働)
それぞれについて詳しく紹介します。
2-1. 時間外労働(法定労働時間を超える労働)
時間外労働とは、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えておこなわれる労働を指します。法定労働時間を超えて労働させた場合、通常賃金の25%以上を上乗せした割増賃金を支払う必要があります。
さらに、1ヵ月の時間外労働が60時間を超えた場合には、その超過分について、通常賃金の50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。この月60時間超の割増率引上げは、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。
なお、時間外労働をおこなわせるためには、あらかじめ労使間でいわゆる36協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届出をしていることが前提となります。36協定が締結・届出されていない状態で時間外労働をおこなわせることは、原則として違法となるので注意しましょう。
関連記事:時間外労働とは?定義や上限規制、割増賃金の計算など原則ルールを解説
2-2. 休日労働(法定休日の労働)
休日労働とは、労働基準法で定められている法定休日(週1日または4週4日)におこなわれる労働を指します。法定休日に労働させた場合、35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
なお、法定休日における労働については、1日8時間や週40時間を超えた場合であっても、時間外労働には該当せず、すべて休日労働として扱われます。例えば、法定休日に10時間労働した場合は、10時間分すべてが休日労働となり、その時間数に基づいて割増賃金を計算します。
また、休日労働をおこなわせる場合も、時間外労働と同様に36協定の締結・届出が必要です。法定休日に労働が発生する可能性がある場合は、あらかじめ36協定を整備しておきましょう。
関連記事:休日手当とは?休日出勤の割増率の種類や正しい割増賃金の計算方法を解説
2-3. 深夜労働(22時~翌5時の労働)
深夜労働とは、原則として午後10時から午前5時までの時間帯におこなわれる労働を指します。この深夜帯に労働させた場合、通常の賃金に対して25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
3章、4章で詳しく解説しますが、深夜労働は時間外労働や休日労働と重なることがあります。この場合、それぞれの割増率を足し合わせて割増賃金を計算しなければならないので注意が必要です。
3. 労働基準法第37条に基づく割増賃金の計算方法


割増賃金の金額は次の式で算出します。
割増賃金 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 時間外労働(休日労働、深夜労働)の時間数
計算式そのものは決して難しいものではありません。しかし、計算の間違いは労働者の賃金に直接影響するため、正確性が求められます。
3-1. 1時間あたりの基礎賃金を計算する
まずは該当する労働者の「1時間あたりの基礎賃金」を算出します。算出方法は次の通りです。
1時間当たりの基礎賃金 = その月の所定賃金額 ÷ 月平均所定労働時間
なお、基礎賃金を算出する際は、次の7項目に限り割増賃金の算定基礎から除外できます。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時で支払われた賃金
- 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
これらは、労働の対価としての性質が弱く、生活補助的な性格を有するものとして、算定基礎からの除外が認められているものです。原則として、これらに該当しない手当を算定基礎から除外することは認められていません。
ただし、通勤手当や住宅手当などであっても、支給額や支給条件が労働者の個別事情と無関係で、全労働者に一律で支給されている場合には、生活補助的手当とはいえず、基礎賃金の算定基礎に算入しなければならない点に注意が必要です。
関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など労働基準法の規定から基本を解説
3-2. 対象となる割増率を確認する
割増賃金の計算に用いられる割増率の一覧は次の表のとおりです。
|
区分 |
割増率 |
|
時間外労働(月60時間以下) |
25%以上 |
|
時間外労働(月60時間超) |
50%以上 |
|
休日労働 |
35%以上 |
|
深夜労働 |
25%以上 |
|
時間外労働(月60時間以下)+深夜労働 |
50%以上 |
|
時間外労働(月60時間超)+深夜労働 |
75%以上 |
|
休日労働+深夜労働 |
60%以上 |
例えば、深夜時間帯に法定外残業(月60時間以下)を3時間おこなった場合、この3時間には時間外労働(25%以上)と深夜労働(25%以上)の割増率を足し合わせて50%以上の割増率を適用して割増賃金を計算する必要があります。
3-3. 【ポイント】割増賃金は一定の場合に限り端数処理が認められる
1時間あたりの基礎賃金や割増賃金を算出する際には、円未満の端数が生じることがあります。その場合、50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げる端数処理をおこなうことが可能です。
また、1ヵ月分の時間外労働・休日労働・深夜労働それぞれの割増賃金の合計額に1円未満の端数が生じた場合についても、同様の端数処理が認められています。
ただし注意が必要なのは、1日単位や1週間単位で端数処理をおこなうことは認められていない点です。例えば、1日ごとの時間外労働の割増賃金を計算し、その都度円未満を切り捨てると、「賃金全額払いの原則」に反し、違法と判断されるおそれがあります。
認められている方法以外で賃金に小数点以下が生じる場合には、原則として切り上げるなど、労働者に不利とならない取り扱いとしましょう。
参考:Q10 残業手当の端数処理は、どのようにしたらよいですか。|厚生労働省
関連記事:給与計算で迷わない端数処理のポイント|小数点以下の計算ルールも解説
4. 労働基準法第37条の適用で判断に迷いやすいケース


労働基準法第37条では、一定の労働について通常の賃金に割増賃金の支払いを義務付けています。ただし、労働の種類や状況によって判断が難しいケースも少なくありません。ここでは、代表的なケースごとに整理します。
4-1. 所定労働時間を超える労働があった場合
所定労働時間とは、就業規則や労働契約であらかじめ定められた労働時間のことをいいます。所定労働時間を超えて働いた場合であっても、法定労働時間(1日8時間、週40時間)以内であれば、時間外労働には該当せず、割増賃金を支払う必要はありません。
例えば、1日の所定労働時間を6時間と定めている企業で、ある日の実労働時間が8時間だったとします(※週の労働時間は考慮しないものとします)。この場合、所定労働時間を2時間超えていますが、法定労働時間以内であるため、割増賃金は発生しません。
一方、1日の労働時間が9時間となった場合は、法定労働時間を1時間超過するので、その1時間分については割増賃金の支給が必要となります。なお、所定労働時間を超えた時間については、割増賃金が不要な場合であっても、通常の賃金(1時間あたりの賃金)を支払う必要がある点に注意しましょう。
関連記事:労働時間とは?定義や範囲、上限ルールを労働基準法の視点から解説
4-2. 所定休日に出勤があった場合
休日労働に該当するのは、あくまでも法定休日における労働です。そのため、所定休日の労働は、原則として通常の労働日と同じ扱いになります。
例えば、所定休日に出勤した結果、1日8時間または週40時間の法定労働時間を超えた場合には、その超えた時間について時間外労働の割増賃金を支払わなければなりません。
労働基準法では、法定休日を付与することが義務付けられています。フルタイム(1日8時間労働)を基本とする企業が、休日を週1日のみとした場合、週40時間を超える労働が発生し、その分について常に時間外労働として割増賃金の支払いが必要となってしまいます。
このような割増賃金の発生を抑え、労働時間管理をおこないやすくするため、法定休日とは別に企業が独自に定める所定休日を設け、週休2日制とする運用が一般的に定着してきました。
現行法上、法定休日を特定する義務まではありませんが、一般的な週休2日制の企業では、日曜日を法定休日、土曜日を所定休日とするケースが多く見られます。
関連記事:労働基準法に定められた休日とは?そのルールを分かりやすく解説
4-3. 法定休日に出勤する代わりに振替休日や代休を取得する場合
休日出勤が発生する前に、あらかじめ休日と労働日を入れ替える制度を「振替休日」といいます。これに対し、休日出勤が発生した後に、代わりとして労働日を休みにする制度を「代休」といいます。
法定休日について、出勤前に「振替休日」を設定した場合、その日は通常の労働日として扱われるため、休日労働に対する割増賃金の支払いは不要です。ただし、法定労働時間を超えて働いた場合には、時間外労働に対する割増賃金の支払いが必要となります。
一方、法定休日に出勤した後で「代休」を取得する場合は、法定休日に労働した事実が残るので、休日労働の割増賃金を支払わなければなりません。
このように、振替休日と代休のどちらを適用するかによって、労働基準法第37条に基づく割増賃金の計算方法は大きく異なります。そのため、制度の使い分けや運用ルールを明確にしておくことが重要です。
関連記事:振替休日(振休)と代休の違いは?定義をわかりやすく解説!
4-4. 割増対象となる労働が重なった場合(例:時間外労働と深夜労働など)
「時間外労働と深夜労働」「休日労働と深夜労働」のように、複数の割増賃金の要件が同時に成立する場合には、それぞれの割増率を合算して割増賃金を支払う必要があります(労働基準法施行規則20条)。
例えば、月60時間を超える時間外労働が深夜時間帯におこなわれた場合、時間外労働に対する割増率(50%以上)と深夜労働に対する割増率(25%以上)を合算し、75%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
なお、法定休日におこなわれた労働はすべて「休日労働」として扱われるので、時間外労働と休日労働が同時に成立することはありません。
4-5. ダブルワーク・副業をしている場合
ダブルワークや副業などにより、労働者が複数の事業者に雇用されて働く場合、労働基準法第38条に基づき、労働時間は事業場を超えて通算されます。
例えば、A社で週25時間、B社で週20時間の労働をしている場合、各社単独では週40時間の法定労働時間を超えていませんが、通算すると週45時間となり、法定労働時間を超過します。この超過部分については、時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。
具体的には、労働者の本業・副業それぞれの所定労働時間を通算し、その合計が法定労働時間を超えるかどうかを確認します。その結果、法定労働時間を超える場合には、原則として後から労働契約を締結した事業者が、超過部分について時間外労働の割増賃金を支払わなければなりません。
一方で、所定外労働時間については、実際に所定外労働がおこなわれた順に通算されます。そのため、先に労働契約を締結した事業者において所定外労働がおこなわれ、その結果として法定労働時間を超える場合には、当該事業者に割増賃金の支払い義務が生じるケースもあります。
なお、事業者が通算による労働時間管理や割増賃金の支払い義務を負う範囲は、労働者からの申告などにより把握し得る労働時間が前提となる点にも留意が必要です。
関連記事:本業と副業で可能な労働時間とは?通算ルールや割増賃金の注意点を解説
4-6. 【労基法第37条の適用除外】管理監督者が深夜労働をおこなった場合
管理監督者については、「労働時間」「休憩」「休日」に関する規定が適用されません(労働基準法第41条)。その結果、労働基準法第37条に定められている時間外労働および休日労働に対する割増賃金の支払い義務も適用除外となります。
したがって、適法に管理監督者に該当する場合には、法定労働時間を超えて労働した場合や、法定休日に労働した場合であっても、時間外労働および休日労働に対する割増賃金を支払う義務はありません。
一方で、労働基準法第37条における深夜労働に対する割増賃金の規定は、管理監督者であっても適用除外とはなりません。そのため、管理監督者が深夜時間帯に労働した場合には、深夜労働に対する割増賃金を支払う必要があります。
関連記事:労働基準法第41条第2号に規定された管理監督者について詳しく解説
5. 労働基準法第37条を遵守するための注意点


割増賃金を正しく処理するには、細かいルールを把握して計算を正確におこなう必要があります。正確に割増賃金を支払うために次の点に注意しましょう。
5-1. パート・アルバイトも割増賃金の対象になる
パート・アルバイトであっても、時間外労働・休日労働・深夜労働おこなった場合には、割増賃金を支払う義務があります。「短時間勤務だから」「時給制だから」といった理由で割増賃金を支払わないことは、法律上認められていません。
また、パート・アルバイトとして働く人の中には、複数の企業を掛け持ちして勤務をしているケースも多いでしょう。この場合、労働時間は通算して管理する必要があります。
たとえ先に労働契約を締結した企業であっても、所定外労働が発生し、労働時間を通算した結果、法定労働時間を超えれば、割増賃金の支払いが必要となるケースがあります。
そのため、パート・アルバイトを雇用する際には、他社での就労状況を確認することが重要です。あわせて、他社での労働時間を申告してもらう仕組みを整備することが求められます。
5-2. 労働時間は1分単位で集計する
労働基準法第37条に基づき適正に割増賃金を算定するためには、実際の労働時間を正確に把握・集計することが不可欠です。労働時間は、原則として1分単位で計算しなければなりません。
例えば、労働時間が8時間13分であったにもかかわらず、15分単位で切り捨てて8時間として計算した場合、実際に労働した時間分の賃金が支払われないことになり、賃金全額払いの原則に反し、違法となる可能性があります。
ただし例外として、1ヵ月ごとに集計した時間外労働・休日労働・深夜労働の各時間数について、1時間未満の端数が生じた場合には、行政解釈により、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる端数処理が認められています。
関連記事:労働時間を1分単位で計算する原則はいつから?労働時間の把握の義務化を解説
5-3. 割増賃金の計算に必要な事項は就業規則や雇用契約書に明記する
労働基準法第89条により、賃金の決定および計算方法については、就業規則に必ず記載しなければなりません。また、同法第15条に基づき労働条件を明示する際に交付する労働条件通知書や雇用契約書についても、賃金の決定・計算方法を明示する必要があります。
就業規則に割増賃金の計算方法を明確に定めておくことで、労働条件通知書や雇用契約書では就業規則を参照させる運用が可能となり、労働者との認識の相違を防ぎ、将来的なトラブルの予防につながります。
なお、労働基準法で定められている割増率は最低基準であるため、就業規則に明記すれば、例えば休日労働の割増率を40%とすることも差し支えありません。実際に就業規則を作成または変更する際には、厚生労働省が公表している「モデル就業規則」を参考にするとよいでしょう。
5-4. 労使協定を締結すれば代替休暇制度を導入できる
月60時間を超える時間外労働については、割増賃金の引き上げ分の一部を、代替休暇として付与する制度を導入することが可能です。この代替休暇制度を導入するためには、次の事項を盛り込んだ労使協定を締結する必要があります。
- 代替休暇の時間数の具体的な算定方法
- 代替休暇の付与単位
- 代替休暇を付与できる期間
- 代替休暇の取得日の決定方法および割増賃金の支払日
なお、労使協定を締結し、代替休暇制度を導入した場合でも、実際に制度を利用するかどうかは労働者本人の意思に委ねられ、使用者が取得を強制することはできません。
また、代替休暇制度により休暇として代替できるのは、月60時間を超える時間外労働に対する割増率引き上げ分に限られます。月60時間以下の時間外労働については、通常どおり割増賃金を支払う必要がある点に注意しましょう。
参考:月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません|厚生労働省
関連記事:月60時間超残業の割増賃金率引き上げは中小企業も対象に!計算方法を解説
5-5. 労働時間の証拠になるものを保存する
従業員から割増賃金の未払いを訴えられた場合、その根拠になる証拠が残っているとトラブルを解決しやすいです。
割増賃金については従業員側が勘違いしているケースも考えられるため、必ずしも企業側のミスだとは限りません。本当に割増賃金の未払いが発生しているのか、労働時間の客観的な証拠があれば確認が容易になります。
客観的な証拠とは、タイムカードやICカードによる自己申告ではない勤務時間の記録が該当します。第三者が見ても正確性があると判断できる労働時間の記録があれば、万が一訴訟になったとしても企業側の正当性を明示しやすくなります。
6. 割増賃金を正しく計算するには勤怠管理・給与計算システムの導入がおすすめ


割増賃金を正しく計算するためには、従業員の労働時間を正確に把握し、法定ルールに基づいて自動計算できる仕組みが欠かせません。手作業やExcelでの管理では、時間外労働・深夜労働・休日労働といった複雑な条件を見落としやすく、計算ミスや未払いのリスクが高まります。
こうした課題の解決に有効なのが、勤怠管理システムや給与計算ソフトの導入です。打刻データをもとに労働時間を自動集計し、割増率(時間外25%以上、深夜25%以上、休日35%以上など)を正確に反映した賃金計算が可能になります。
さらに、法改正に応じてシステムがアップデートされるため、常に最新のルールに沿った対応ができる点も大きなメリットです。また、勤怠管理システムと給与計算ソフトを連携させれば、二重入力を防げるだけでなく、担当者の業務負担を大幅に軽減できます。
7. 割増賃金の計算を正確におこなって未払いが発生しないようにしよう


労働基準法第37条は、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金について定めた条文です。割増賃金の算定が適切におこなわれない場合、残業代の未払いなど、労使間のトラブルを招くおそれがあります。
また、本条には罰則も規定されているため、労働者の権利を守るだけでなく、企業や経営者自身を守る観点からも、遵守が不可欠な法律です。労働者一人ひとりの勤務状況を正確に把握し、適正な割増賃金を確実に支給するよう努めましょう。



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