給与計算の基礎知識をおさえよう!仕組みや給与計算のやり方を解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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給与計算の基礎知識をおさえよう!仕組みや給与計算のやり方を解説

デスクで電卓とPCを操作する女性

給与計算は、従業員に支給する給与の計算業務です。正確さが要求される人事労務・経理業務の中でも特に重要な業務といえます。

給与計算を間違えてしまうと、従業員との信頼関係が崩れるだけでなく、法令違反となり罰則を受ける可能性もあります。そのため、給与計算業務の基礎知識を身に付けることが大切です。

この記事では、初心者でもミスなく毎月の給与計算を進められるように、全体の流れや注意点を解説します。また、計算を間違えてしまった際の対応方法も紹介しているので、参考にしてください。

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1. 給与計算の基本と全体の流れ

チェックボックスと虫眼鏡

給与計算とは、従業員に給与を支払うために、総支給額や控除額、差引支給額(手取額)までを確定させる一連の業務のことです。

総支給額の計算には、残業や遅刻早退などの勤怠情報や雇用契約内容、就業規則の情報が必要です。また、実際の差引支給額(手取額)を求めるための控除額の計算には、所得税、住民税、社会保険料などを計算する必要があります。

本章では、給与計算の基礎的な知識を解説していきます。

1-1. 給与計算の基礎的な仕組み

給与計算は、まず総支給額を計算し、そこから控除額を差し引きます。複雑に思える給与計算業務ですが、考え方は非常にシンプルです。

給与計算の基本的な計算式

【総支給額】-【控除額】=【差引支給額】

  • 総支給額:基本給に残業代などの各種手当をプラスした金額のこと。額面とよばれる。
  • 控除額:給与から差し引く税金や社会保険料のこと。
  • 差引支給額:総支給額から控除額を引き、従業員の銀行口座に振り込む金額のこと。手取り額とよばれるもの。

例えば、総支給額が23万円で控除額が2万円の場合を見てみましょう。手取りとなる差引支給額、つまり実際に従業員に振り込む給与は、次のようになります。

【総支給額:23万円】-【控除額:2万円】=【差引支給額:21万円】

2. 給与計算ステップ1:勤怠情報をまとめ労働時間を集計する

データを探す

出勤簿やタイムカードなどをチェックし、従業員ごとに1ヵ月分の労働時間を集計します。

月給者の場合は、所定労働時間の給与は基本給に含まれていますが、所定労働時間を超えて労働した部分は別途支給する必要があります。また、給与には割増をして払わなければならない「割増賃金(残業代)」があります。次の表で割増率をまとめたのでぜひ参考にしてください。

時間外労働(1日8時間、1週40時間を超えた部分)

1時間あたりの基礎賃金(時給単価)の25%

深夜労働(午後10時から午前5時までの労働時間)

1時間あたりの基礎賃金(時給単価)の25%

休日労働(法定労働日に労働した時間)

1時間あたりの基礎賃金(時給単価)の35%

関連記事:割増賃金とは?種類別の割増率や計算方法・企業が講じるべき対策を解説

「1時間あたりの基礎賃金」の算出方法は法律に定められた具体的な計算式はありません。ただ、「月給 ÷ 1ヵ月あたりの平均所定労働時間」で算出することが一般的です。なお、ここでいう月給には、基本給だけでなく、役職手当や資格手当などの固定給も含まれます。割増賃金の算定に含まれない固定給は次のとおりです。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7.  1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(労働基準法第37条第5項、労働基準法施行規則第21条)

この7つに該当しない固定給はすべて「1時間当たりの基礎賃金」を計算する際の月給に含めます。

なお、労働基準法で定められている休日(法定休日)には、法定労働時間が適用されないため、休日労働と時間外労働の割増率が重複することはありません。

これらの割増率は、労働基準法で定められた最低限のラインです。会社によっては、より高い割増率を適用している場合もあるので、給与計算前に確認しましょう。

3. 給与計算ステップ2:支給額を計算する

電卓で計算する

最初に、従業員情報をもとに総支給額を計算します。

総支給額とは、ベースとなる基本給に時間外手当や役職手当など、各種手当を含めた金額から遅刻早退や欠勤などの勤怠上の控除する部分を引いて計算します。総支給額の具体的な計算方法は次のとおりです。

【総支給額】=【基本給】+【各種手当】-【欠勤控除等】

基本給は年齢や勤続年数、経験などを考慮し、定められます。一方、手当の種類は「固定」と「変動」の2つに分かれています。

  • 固定手当(通勤手当、役職手当、資格手当、住宅手当など)
  • 変動手当(残業手当、深夜手当、休日出勤手当など)

関連記事:労働基準法第37条における割増賃金規定の正しい計算方法
関連記事:役職手当とは?役職別の相場・金額の決め方をわかりやすく解説

4. 給与計算ステップ3:控除額を計算する

計算する男性

次に支給額から差し引きする控除額を計算していきましょう。控除する項目は、大きく分けて3つあります。

  1. 社会保険料
  2. 税金
  3. その他

この章では、それぞれの詳細および計算方法を解説します。

4-1. 社会保険料を計算する

社会保険とは「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の総称を指します。労災保険料や雇用保険料も広義の意味で社会保険に含められることもありますが、給与計算業務ではこの3つを社会保険と呼ぶことが一般的です。

社会保険料は、次の計算式で求められます。 

【各保険料】=【標準報酬月額】×【保険料率】

標準報酬月額とは、保険料計算のための基準金額のことです。毎月の報酬を区切りの良い幅(等級)で区分して決定されます。毎年4月から6月に支払った給与平均額から等級を決定する定時決定をおこない、9月分の給与から反映します。

保険料率は、次のとおりです。

  • 健康保険・介護保険:毎年3月分(4月納付分)から変更
  • 厚生年金保険:18.3%(2017年9月より固定)

社会保険料は、労使折半で負担します。そのため従業員の給与から控除する額は、算出した保険料の半分です。ただし、社会保険料に上乗せで徴収される子ども子育て拠出金は全額会社負担のため計算に注意しましょう。

なお、介護保険の加入対象は、40歳以上の従業員です。対象者は、健康保険料に介護保険料も上乗せされるので忘れないようにしましょう。

関連記事:社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説

社会保険料の計算方法について「具体的なイメージがつかない」と不安をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

正しい給与計算をするために社会保険料の計算方法を知りたい方は、こちらから無料配布している「社会保険料の給与計算マニュアル」をダウンロードしてご活用ください。

4-2. 雇用保険料を計算する

雇用保険料は、従業員と事業主の双方で負担しているため、総支給額から従業員負担分の雇用保険料を控除します。雇用保険料の計算式は次のとおりです。

【雇用保険料】=【総支給額】×【保険料率】

雇用保険料率は厚生労働省から毎年発表されており、業種や年度によって異なります。最新の雇用保険料率を反映させて、正しく雇用保険料の控除をおこないましょう。

参考:雇用保険料率について|厚生労働省

関連記事:【最新版】65歳以上の雇用保険料の改正内容とは?給与計算ルールについても解説

4-3. 住民税と所得税を計算する

保険料のほかに、源泉徴収する「住民税」と「所得税」の計算も必要です。

住民税の計算方法

住民税は、原則として従業員の給与から天引きします。このように、給与から天引きし、会社がまとめて住民税を支払う方法を「特別徴収」といいます。住民税の金額は、毎年、各自治体から送付される「住民税通知決定書」を参照して反映しましょう。

所得税の計算方法

毎月の給与から控除すべき所得税(源泉所得税)額は、源泉徴収税額表を基に計算します。課税対象額の計算式は次のとおりです。

【課税対象額】=【総支給額】-【非課税対象の諸手当】-【社会保険料/雇用保険料】

源泉徴収税額表は毎年国税庁から公表されており、令和7年分の源泉徴収税額表は、次のページから確認できます。扶養家族の有無によって、源泉所得税額が変わりますので注意しましょう。

参考:令和7年分 源泉徴収税額表|国税庁

関連記事:給与計算における所得税の計算方法とは?源泉徴収の仕組みも解説
関連記事:給与計算における住民税とは|住民税の計算・納付・注意点について解説

4-4. その他控除を計算する

保険料や税金以外にも、社員会費や昼食代など、企業が独自に設定し給与から控除できます。ただし、賃金の控除に関する協定を労働者と会社の間で合意された条件に基づいて結ぶことが条件です。

例えば、次のような事例が考えられます。

  • 社食を提供し、一定額を控除する
  • 社員寮を用意し、寮費を控除する
  • 持株会の拠出額を控除する

5. 給与計算ステップ4:差引支給額を計算する

電卓で計算する男性

ここまでの手順で「総支給額」と「控除額」が決まりました。あとは、総支給額から各種の控除額を差し引くことで、手取額である「差引支給額」を計算します。計算式は次のとおりです。

【差引支給額(手取り)】=【総支給額】-【各種控除額】

関連記事:給与計算業務の流れ|月間と年間のスケジュールも紹介!

6. 給与計算ステップ5:給与の振込と社会保険と税金の納付

貯金箱とコイン

差引支給額が確定したら、実際に従業員に給与を支給しましょう。また、社会保険や税金の納付も毎月の給与計算業務の一環です。

6-1. 給与明細を発行し給与を支給する

給与の支給金額が確定したら毎月の給与支払い日に従業員に給与を支払います。銀行口座への振り込みが一般的ですが、手渡しでの支給も可能です。

給与明細書も忘れずに作成しましょう。労働基準法では給与明細書の提供について定められていませんが、所得税法において従業員に給与明細書を渡す義務が規定されているため、必ず作成して渡す必要があります。

また、会社で管理する賃金台帳に必要な情報を記録しましょう。賃金台帳は、最後に書き込んだ日から原則5年間(当面の間は3年間)の保管が、労働基準法で義務づけられています。

関連記事:賃金台帳とは?記載事項や作成方法、給与明細との違い・代用できるかを解説

6-2. 社会保険料や税金を納付する

給与の支払いが完了したら、社会保険料や所得税、住民税を納付します。

社会保険料は、日本年金機構や健康保険組合などから送付される「保険料納付書」に基づき、月末までに納付をおこないます。また、給与から源泉徴収した所得税は翌月10日までに税務署へ、住民税も同じく翌月10日までに各自治体へ納付しましょう。

なお、社会保険料の中でも労働保険料(雇用保険と労災保険)は、年に1回まとめての納付となりますので毎月の給与計算業務ではおこないません。

以上で、月の給与計算業務は終了です。

関連記事:【最新版】65歳以上の雇用保険料の改正内容とは?給与計算ルールについても解説

7. パート・アルバイトの給与計算の方法

電卓で計算する

月給制が中心の正社員に対し、パートやアルバイト従業員は時給で働いていることが多く、計算方法が異なります。また、手当の有無や金額にも差があることも多いため、正しい計算方法を知っておきましょう。本章では、パート・アルバイトの給与計算方法を解説します。

7-1. 給与形態の違いで計算方法が異なる

給与形態が時給の場合は、1ヵ月分の給与がまとめて基本給として支払われていた月給と違い、次のように「労働時間×時給金額」で給与を計算する必要があります。

(例)時給1,300円の従業員が通常労働を70時間した場合
【時給1,300円】×【労働時間70時間】=支給額91,000円

さらに、時間外労働や休日労働があった場合は、基本給に各種手当を加算して総支給額を算出します。月給制と比べて、パート・アルバイト従業員は勤務時間や日数の変動により毎月の支給額が変わりやすく細かい計算が多くなるので、十分に注意して給与計算をおこないましょう。

また、パート・アルバイト従業員でも年収や労働時間によっては、社会保険や雇用保険への加入義務があります。加入義務が発生する従業員の給与計算では、保険料の控除も忘れないようにしてください。

関連記事:社会保険の加入手続きや必要書類、加入対象の従業員の範囲もあわせて解説

7-2. パート・アルバイト就業規則に則って計算をする

就業規則を正社員とパート・アルバイト従業員で分けている場合は、パート・アルバイト従業員用の就業規則に則って給与計算しなければなりません。

就業規則が異なると、給与計算方法が正社員と違うことがあるため、パート・アルバイト用のルールに則って計算しているか必ず確認しましょう。

8. 給与計算の7つの注意点

注意のイメージ

給与計算は毎月発生する定型的な業務であり、経験を積むことでスムーズに対応できるようになります。しかし、従業員の生活に直結する重要な業務であるため、ミスが発生しないよう細心の注意が必要です。

誤った対応をしてしまうと、従業員とのトラブルや信頼関係の悪化につながる可能性もあるので、十分に注意しましょう。本章では、給与計算において注意すべきポイントを解説します。

8-1. 賃金支払いの5原則を遵守する

給与には、計算方法だけでなく、支払方法にもルールがあります。特に、労働基準法第24条で定められている5つの原則(賃金支払いの5原則)を遵守することが大切です。

  • 全額払いの原則:給与は全額支払う必要がある
  • 通貨払いの原則:給与は通貨(現金)で支払わなければならない
  • 直接払いの原則:給与は直接労働者本人に支払う必要がある
  • 毎月1回以上払いの原則:給与は毎月1回以上支払わなければならない
  • 一定期日払いの原則:給与は期日を定めて支払われる必要がある

例えば、年俸制で給与を設定していたとしても、毎月1回以上払いの原則があるので、年俸を12ヵ月で割り、月に1回以上支給するなどの対応が必要です。また、給与は銀行振り込みが当たり前になっていますが、実は直接払いの原則の例外にあたります。そのため、労働者の個別の合意が必要です。

関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について

8-2. 最低賃金など常に法改正をチェックし遵守する

最低賃金は、都道府県ごとに決められています。時給額で決められていますが、月給や日給制の場合でも無視はできません。給与計算をする際は、時給換算をした際に最低賃金を下回っていないか確認しましょう。

最低賃金は例年10月に変更されるため、毎年チェックする必要があります。もし最低賃金を下回っていた場合は、会社が罰せられる可能性や、従業員との信頼関係が失われる可能性があるので、注意が必要です。

最低賃金以外にも給与計算業務に係る法改正事項も、常にチェックしましょう。近年では、定額減税や賃金のデジタル払いの開始など大きな変更点もありました。また、最低賃金と同じく、社会保険料率の改定なども毎年変更されるので、毎年確認が必要です。

関連記事:労働基準法に基づく最低賃金とは?その基準や違反への罰則を解説

8-3. 給与計算に必要な情報が正しいか確認する

従業員が入社してから初めて支給する給与では、基本給、各種手当、社会保険の加入の有無などの基本情報の確認が大切です。また勤怠情報や身上移動(扶養関係の変更等)等の給与に係る情報は、担当者と連携し、迅速に給与に反映させる仕組みを構築しましょう。

8-4. 割増賃金や各種手当、社会保険料を正しく算出する

所定労働時間を超えて働かせる場合、残業代が発生します。また、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働や、法定休日の労働、深夜帯(午後10時から午前5時)の労働には、通常の賃金に加えて、割増賃金も支給しなければなりません。

通勤手当や家族手当、住宅手当、資格手当など、各種手当の計算にも注意が必要です。例えば、通勤手当の場合、電車やバスなどの交通機関を利用するのであれば、月15万円までが非課税となります。ただし、社会保険料や雇用保険料の計算の基礎には、全額含めなければなりません。

このように、手当の種類によって、課税対象かどうか、社会保険料への影響などが異なり、給与計算に大きな影響を与えます。また、従業員によって支給条件・支給額を変えている場合、ミスが起きないよう慎重に計算しましょう。

関連記事:休日手当とは?割増率と割増賃金の計算方法、休日手当が発生しない場合を解説

8-5. 単純な計算ミスや転記ミスに気をつける

給与計算業務において最も多いミスは、計算ミスや転記ミスなどのケアレスミスです。明確に締め切りが決まっており、時間が限られていることが、ケアレスミスが発生しやすい大きな要因となっています。

担当者が正しい知識を身につけるのはもちろんのこと、給与計算業務をおこなう際は2名以上の担当者を置きダブルチェック、トリプルチェックができる体制の構築が望ましいです。

8-6. 労働時間を1分単位で計算する

労働時間は1分単位で計算しなければなりません。前述の賃金支払いの5原則のひとつ「賃金の全額払いの原則」により、労働時間の発生した賃金は全額労働者に支払うこととされています。仮に15分切り捨てなどの処理をしてしまうと、全額払いの原則に反することになり労働基準法違反となります。

たった1分だからといって切り捨てることなく、計算に含めましょう。ただし、従業員が有利になるような切り捨てや切り上げは可能です。

8-7. 小数点以下の端数計算に注意する

給与計算で端数が発生した場合、原則として切り捨てはしてはいけません。1分の労働時間の扱いと同様に、切り捨ては、「賃金の全額払いの原則」に反することになり、労働基準法に違反する可能性があります。ただし、次のような場合には、端数の切り捨ても可能です。

割増賃金に関する端数処理

①1時間当たりの賃⾦額及び割増賃⾦額に1円未満の端数が⽣じた場合
②1ヵ月における時間外労働、休⽇労働、深夜業の各々の割増賃⾦の総額に1円未満の端数が生じた場合

この①または②に該当する場合は、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることができます。従業員の不利益になる端数処理はできません。なお、②の場合は残業手当・深夜手当・休日手当それぞれの合計額に対して適用する点に注意が必要です。

関連記事:給与計算の端数処理で気をつけるべきポイントを徹底解説!

9. 給与計算ミスが発覚したときの対応方法

書類に記入する女性

給与計算は本来ミスが起きてはならない業務ですが、人間が担当する以上、間違いが起きてしまうこともあります。本章では、給与計算ミスが発覚したときの対応方法を詳しく紹介します。

9-1. すぐに謝罪をする

給与計算のミスによって、誤った金額や少ない金額が支給された場合、従業員の生活に直接的な影響を与える可能性があります。このようなミスは、従業員の会社に対する信頼を損ね、不満を生む要因となり、最悪の場合は離職要因のひとつになりかねません。

そのためミスが発覚した場合には、すぐに誠実な謝罪をし、信頼回復に努めることが最優先です。原因の追及や再発防止策はもちろん重要ですが、最初の対応における誠意が、今後の信頼関係を大きく左右します。

関連記事:給与計算ミスに気づいた時のお詫びの方法や注意点を文例とともに解説

9-2. 給与明細を訂正して過不足分を精算する

従業員に謝罪をしたら、必ず同意を得たうえで給与明細を正しく訂正し、過不足分の精算をおこないましょう。もしも本来よりも低く給与を支給していた場合、労働基準法の「賃金全額払いの原則」に抵触する可能性があるため、できる限り当月中に精算を完了さましょう。

一方、本来よりも多く支給していた場合でも、翌月の給与から控除をおこなう際は、必ず本人の同意を得る必要があります。また、給与計算ミスの影響を受けた従業員には、謝罪の意を丁寧に伝えるとともに、必要に応じて金銭的補償などのフォローも検討すると、信頼回復につながるでしょう。

9-3. ミス発生の原因を追究する

給与計算ミスへの対応が一通り終わったら、同じミスを繰り返さないためにも、その原因をしっかりと追究することが大切です。ミスの発生原因は、計算ルールの理解不足や人為的な入力ミス、社内のチェック体制の不備など、さまざまな要因が考えられます。

どの段階で、どのようなミスが起きたのかを具体的に洗い出し、再発防止に向けた改善策の検討が、精度の高い給与計算につながります。

9-4. ミス防止に向けた対策をする

ミスが起きてしまった原因を把握できたら、それに対する対策を検討し、確実に実行に移しましょう。例えば、次のような対策が考えられます。

  • 担当者を2名以上置きダブルチェック、トリプルチェックをする
  • 保険料率の改定を把握するために年間スケジュールを作成する
  • 扶養変更・異動などの入力忘れを防止するためにダブルチェックをする
  • 控除項目の変更忘れを防止するためにチェックリストを活用する
  • 月額変更届の届出忘れを防ぐためにマニュアルを作成する
  • アウトソーシングを活用する

会社の規模が小さく、従業員が数人程度であれば、手計算や表計算ソフトを使ったアナログな給与計算でも対応できるかもしれません。しかし、従業員が10人、20人と増えていくと給与計算業務も複雑になり、時間的負担が大きくなるだけでなくミスが発生するリスクも高まります。必要に応じて給与計算システムの導入やアウトソーシングの活用を検討しつつ、運用面を見直しましょう。

関連記事:給与計算のミスを防止する5つの施策を原因別に解説

10. 給与計算の効率を上げてミスを減らすには

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給与計算の煩雑な業務負担を減らし、正確な計算をするには専門家や専用システムの力を借りる方法が確実です。本章では、多くの会社で取り入れられている方法を3つ紹介します。

10-1. エクセルの自動計算を活用する

エクセルを使った給与計算は、すでにエクセルが導入されていれば追加コストなしで始められるため、手軽に取り組める方法です。導入のハードルが低く、小規模の事業所などでは特に取り入れやすいでしょう。

エクセルで給与計算をする方法には、自分で給与計算用のシートを作成する方法と、インターネットなどで配布されているテンプレートを活用する方法の2つがあります。デザインや関数の使い方などは作成者によって異なりますが、基本的な給与計算機能はおおむね網羅されています。

ただし、エクセルを用いた方法では、他のシステムとの連携が難しいことや、税率や保険料率などの最新法令に自動で対応できないデメリットがあります。そのため、小規模事業所や、できるだけ費用を抑えて業務を効率化したい場合に適した選択肢といえます。

関連記事:給与計算をエクセルでおこなう方法とは?4つのメリットと注意点を解説

10-2. アウトソーシング(代行)業者や社労士に依頼する

従業員数が増え、アナログな方法やエクセルのみでの対応が難しくなった場合は、給与計算業務のアウトソーシングの検討も一つの方法です。アウトソーシングの活用によって、運用の負担が大きく軽減され、社内の人的リソースをコア業務に集中させることができます。

また労務・社会保険の専門家である社労士に代行を依頼すれば、法改正への対応も一任できます。

ただし、給与計算業務をアウトソーシングする場合は、従業員情報の漏洩リスクや、自社に給与計算のノウハウが蓄積されにくいといったデメリットもあるため、コスト以外の側面も慎重に検討しましょう。

関連記事:給与計算のアウトソーシング・代行のメリット・デメリットと相場をご紹介

関連記事:社労士に給与計算を依頼するメリットは?相場や税理士との違い・依頼の流れを解説

10-3. 労務管理システムや給与計算システムを導入する

エクセルによる給与計算に限界を感じていて、アウトソーシングを使わずに、業務を効率化させたいのであれば、労務管理システムや給与計算ソフトといったITツールの導入が有用でしょう。

これらのシステムを導入すれば、給与計算業務を自動化し、人的ミスを防止しながら、業務の効率化ができます。また、勤怠管理システムや会計ソフトなどと連携させれば、勤怠の集計から給与の計算・支払までの業務を一元管理できます。次章で説明するシステム選定の方法を参考にしてください。

関連記事:勤怠管理システムと給与計算を連携させるには?選定ポイントを解説 

関連記事:給与計算を自動化するメリット・デメリット、具体的な方法や手順も紹介

11. 給与計算システムの選び方

書類データと虫眼鏡

システム導入には、初期費用や運用費用がかかります。事前に費用対効果も検証したうえで、自社に最適なシステムを導入しなければ、経営上のコストになりかねません。本章では、給与計算システムの選び方の4つの軸を紹介します。

11-1. コストが見合っているか

給与計算システムには、導入時の初期コストや運用コストがかかります。自社の予算に見合った給与計算システムを選ばなければ、十分な費用対効果を得られません。

給与計算システムの導入検討の際は、目的を明確化し、費用対効果を検証して選定することが大切です。どのような給与計算を実現したいのか、自社の規模にあっているか、といった観点から最適なシステムとプランを選択しましょう。

11-2. どのような業務に対応できるか

検討している給与計算システムが、どのような業務に対応しているかを確認しましょう。システムによっては給与計算以外の業務も自動化できる場合があります。

例えば、採用管理やタレントマネジメントなど、人事についての業務を効率化できるシステムがあります。そのため、導入しようとしているシステムが給与計算機能以外に、どのような機能が搭載されているかもチェックすることが大切です。

11-3. 勤怠管理や経費精算など他のシステムと連携できるか

他のシステムと連携できるかどうかも選ぶ軸の1つです。給与計算システムを、勤怠管理システムや会計システム、経費精算システムなどと連携させることで、データ入力・出力などを自動化し、給与計算以外の業務も効率的に進められます。

ただし、システムによって連携できるツールが限定されていることもあります。そのため、自社の既存のシステムと、給与計算システムが連携できるかの確認は欠かせません。

実際に、データベースの一元化によってシステム間のデータ連携作業をゼロにした企業事例もあります。給与計算システム「ジンジャー給与」を導入した企業にはどのようなニーズが合ったのか、課題と解決法を照らし合わせて導入を検討したい方はぜひこちらから事例集を無料ダウンロードしてご覧ください。

11-4. サポート体制は十分か

給与計算システムを導入したあとは、従業員情報の登録などの初期設定が必要です。導入に不安がある場合は、サポート体制が充実しているシステムを選ぶとよいでしょう。

また、予期せぬエラーやトラブルが生じた際に備えて、どのような方法でサポートを受けられるのかも事前にチェックしておくのがおすすめです。

関連記事:給与計算ソフトとは?メリットや選定ポイントを解説

12. 基礎知識を押さえて正しい給与計算をしよう

PC作業する女性

給与計算業務は、従業員の生活を支える給与を計算する非常に重要な業務です。しかし、給与計算には、複雑な計算やルールも多いため、計算ミスをゼロにし続けることは難しいでしょう。

ただ、仕組み化やシステムの導入によって、可能な限り計算ミスを減らすことは可能です。給与計算ミスを極力減らし、安定した給与計算業務を全うするためにも、給与計算の全体の流れや注意点を理解し、業務にあたりましょう。

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