36協定とは?基礎知識から残業上限規制や締結・届出、違反リスクまで完全解説
更新日: 2026.2.27 公開日: 2025.9.5 jinjer Blog 編集部

36協定(サブロク協定)は、企業が従業員に時間外労働や休日労働を求める際に必要不可欠な労使協定です。2019年の働き方改革関連法の施行により、残業時間の上限規制が罰則付きで導入され、労務管理はより厳格化されました。
本記事では、36協定の基本的な仕組みから最新の上限規制、特別条項の要件、違反時の罰則まで、人事労務担当者が知っておくべき実務ポイントを詳しく解説します。
目次
毎年対応が必要な36協定の届出。しかし、働き方改革関連法による上限規制の変更や複雑な特別条項など、正確な知識が求められる場面は増え続けています。
36協定届の対応に不安な点がある方は、今のうちに正しい手順と注意点を確認しませんか。
◆この資料でわかること
- 働き方改革関連法による上限規制の変更点
- 罰則を避けるための「特別条項」の正しい知識と運用
- ミスなく進めるための締結・届出の具体的な手順
- 【記入例付き】新しい届出様式の書き方
本資料では、届出作成~提出の流れまで36協定の届出について網羅的に解説しており、毎年発生する煩雑な業務の効率化に役立ちます。ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 36協定(サブロク協定)とは?


36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づき、労使間で締結する時間外労働・休日労働に関する協定のことです。
日本の労働法では原則として1日8時間・週40時間を超えて時間外労働(=残業)させることが禁じられています。しかし業務の都合で法定時間を超えて労働が必要になる場合、事前に36協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出ることで、労働者代表と企業が合意した範囲内で残業や休日出勤が可能となります。
1-1. 労働基準法36条が定める時間外労働のルール
労働基準法36条は、労使協定によって定めた場合に限り、法定労働時間を超える時間外労働(残業)や法定休日の労働を認めるという規定です。ただしこの協定は労働者の合意に基づくもので、労働者側の代表としっかり交渉・同意する必要があります。
なお、36協定は全ての事業所で必ず締結しなければならないものではありません。従業員の労働時間が確実に法定内に収まる場合は締結不要です。
しかし繁忙期など、少しでも残業が発生する場合は36協定を結んでおく必要があります。
関連記事:時間外労働とは?定義や上限規制、割増賃金の計算など原則ルールを解説
1-2. 36協定の特別条項とは
36協定を締結していても、残業時間には原則として上限(月45時間・年360時間)があります。残業時間は限度時間内におさめなくてはならず、これを超えて働かせれば36協定違反となります。
しかし、季節的な繁忙期など「臨時的な特別の事情」によりどうしても限度時間を超える残業が必要となることがあります。その場合は、「特別条項」を付け加えた36協定を結んでおけば、一時的に月45時間・年360時間の枠を超えて残業をさせることができます。
ただし、特別条項を設ける場合でも、後述する法律上の絶対的な上限(年720時間など)を超えることはできません。
関連記事:36協定の特別条項とは?働き方改革関連法との関係や時間外労働の上限に関する注意点
1-3. 36協定なしの時間外労働は違法
有効な36協定を締結・届出していないのに従業員に残業や休日労働をさせた場合、労働基準法第32条違反となります。たとえ本人の合意や残業代の支払いがあっても、協定なしで時間外労働をさせることは法律違反です。
労働基準法違反には刑事罰も定められており、36協定を結ばずに残業させたり、36協定で定めた範囲を超えて残業させたりすると、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
36協定違反が発覚するケースについて、具体例を確認してみましょう。
- 労働基準監督署の定期監督
労働基準監督署は、事業場に対して定期的に監督指導を実施しています。この際に、36協定の締結・届出状況や実際の労働時間の状況が調査され、違反が発覚することがあります。 - 労働者からの申告
労働者が労働基準監督署に対して申告をおこなうことで、違反が発覚するケースも多くあります。特に、残業代の未払いや過重労働に関する申告の際に、36協定の不備が明らかになることが多いです。
- 労働災害の発生
過重労働による労働災害が発生した場合、その原因調査の過程で36協定の状況が精査され、違反が発覚することがあります。 - 社会保険労務士等の指摘
社会保険労務士による労務監査や就業規則の見直しの際に、36協定の不備が指摘されることもあります。
2. 36協定の内容と締結プロセス


36協定に記載する項目は、フォーマットで決められています。内容は企業によって異なるものの、締結するまでのプロセスはほとんど同じです。
ここでは、36協定に記載する内容や締結までの流れを解説します。
関連記事:36協定の協定書とは?書くべき項目や記載例・協定届との違いを解説
2-1. 36協定に記載する事項を確認する
36協定に盛り込むべき主な事項は以下のとおりです。
- 対象となる労働者の範囲
- 時間外労働をおこなう業務の種類
- 1日、1ヵ月、1年あたりの時間外労働の上限
- 休日労働についての定め
- 協定の有効期間
- 労働者代表の氏名
- 使用者(企業)の代表者名
様式には他にもチェックボックスや細かい記載欄がありますが、基本的には「誰に対して」「どの業務で」「どれくらいの残業・休日労働をさせるか」そして「期間はいつからいつまでか」を定めなければなりません。記載に不備があると労基署で受理されない場合もあるので、慎重に記入しましょう。
2-2. 自社の時間外労働の上限を記入する
協定書には残業の上限を1日、1ヵ月、1年のそれぞれについて具体的数値で定めます。月45時間・年360時間が上限値となるため、協定上も「1ヵ月につき45時間、1年につき360時間まで」と定めるのが一般的です。
1日については、法律上の具体的な上限時間は定められていません。ただし、1日は24時間であり、そこから所定労働時間や法定の休憩時間、最低限必要な生活時間(睡眠等)を差し引いた時間が、実務上の限界となります。
休日労働については、「1ヵ月に◯日」といった表記で労働させることができる日数を記入します。
2-3. 特別条項の有無を確認する
特別条項付き36協定を結ぶ場合は、協定書に主に以下の内容を記載します。
- 臨時的に限度時間を超えて労働させることができる事由
- 延長できる時間
- 特別条項を適用できる回数
- 健康及び福祉を確保するための措置
延長できる時間は、残業が多い企業においても月80時間や80時間弱とするケースが多いです。80時間は行政が長時間労働の指標とする数字であり、80時間を超える残業があると労働基準監督署に目をつけられやすい傾向があるためです。
また、法改正により、特別条項を適用する場合には、労働者の健康及び福祉を確保するための措置を協定書に記載することが求められています。新様式の36協定届では、厚生労働省の指針に基づく措置内容を番号で選択し、その具体的な実施内容を記載する欄が設けられています。形式的な記載にとどまらず、実際に運用可能な内容となっているかを確認することが重要です。
2-4. 協定を適用する従業員範囲を記載する
36協定には、その協定が適用される従業員の範囲を記載する欄があります。ここでのポイントは、誰を対象に含め、誰を除外するかを適切に書くことです。
36協定の対象外となる従業員を除き、その事業場で時間外労働・休日労働をおこなう可能性のある労働者は、正社員だけでなく契約社員・パート・アルバイトなどすべて対象に含めます。特定の職種のみ36協定を適用する場合は、業務の種類を限定して記載しましょう。
2-5. 労働者代表を選出し協定を締結する協定締結
36協定を締結するにあたっては、まず従業員側の代表者を選出する必要があります。事業場に労働者の過半数が加入する労働組合がある場合は、その労働組合が代表となります。一方、労働組合がない場合や、あっても過半数に満たない場合には、従業員の過半数を代表する者、いわゆる過半数代表者を選出します。
過半数代表者は、必ず従業員の意思が適切に反映される方法で選ばれなければなりません。投票や挙手、話し合いなど、過半数の支持が確認できる手続きが必要です。会社が一方的に指名した場合や、従業員が選出過程を把握していない場合には、36協定自体が無効と判断されるおそれがあります。また、管理職が過半数代表者となることは、実務上認められていません。
代表者が決定した後は、会社と労働者代表との間で36協定書を作成し、内容に合意したうえで締結します。締結後は、協定内容を正しく反映した届出書を作成し、所轄の労働基準監督署へ提出する流れとなります。
関連記事:36協定の労働者代表とは?役割・選出方法や決め方も紹介!
関連記事:36協定届の押印・署名が廃止に!その背景や企業の対応を紹介
関連記事:従業員1人しかいない場合、36協定の代表者の選出方法は?【人事労務FAQ】
3. 36協定の届出先・届出方法と更新手続き


36協定は締結しただけでは効力が発生せず、労基署への届出をもって有効になります。提出先の考え方、有効期間と更新の実務、電子申請のポイントを順に解説します。
関連記事:36協定の届出とは?作成の方法や変更点など基本ポイントを解説
3-1. 協定の有効期間
36協定には有効期間を定めますが、一般的に1年間として毎年更新するケースがほとんどです。労働基準法上、有効期間に明文の上限はありませんが、行政通達では「1年を超える期間は適当でない」とされています。
有効期間を過ぎると協定は失効するため、更新が必要です。このとき、労働基準監督署に提出が遅れないよう余裕を持って締結や送信手続きを進めましょう。もし有効期間満了後に更新の提出が遅れると、受理されるまでの間の残業は違法状態となってしまうため注意が必要です。
関連記事:36協定の提出期限とは?いつまでに更新が必要?提出忘れの罰則も紹介
3-2. 電子申請による届出
近年、行政手続きのオンライン化が進み、36協定の届出も電子申請が可能となっています。36協定は、電子申請に限り「本社一括届出」ができるメリットがあります。
複数事業所を有する企業にとって、36協定の手続きは大きな負担となっていましたが、2021年3月31日から「本社一括届出」の要件が緩和されたことで、同一の協定内容であれば複数事業所の協定をまとめて本社から届出がしやすくなりました。
ただし、電子申請増加に伴い不備が増えているという報道もあり、提出の際はパンフレットを参考によく確認の上提出することが必要です。
参考:労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について|厚生労働省
関連記事:36協定届の提出方法とは?電子申請のやり方や注意点まで分かりやすく解説
関連記事:36協定の本社一括届出が法改正による要件緩和で可能に!電子申請する方法を解説
4. 36協定における残業時間上限の判断基準


2019年の法改正で、36協定があっても超えてはいけない「罰則付きの上限」が明確になりました。法改正がおこなわれる前にも上限はあったものの、罰則がないことで「上限」に対する意識が薄かった担当者の方も多いかもしれません。そのため、「上限」の判断基準がわからない方もいるのではないでしょうか。
ここでは、残業時間の上限に関する判断基準を解説します。
残業時間の上限について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
関連記事:時間外労働の上限規制とは?違反する具体例や超えないための対策ポイントを解説
4-1. 原則の上限(月45時間・年360時間)の考え方
36協定で定められる時間外労働の限度時間は、改正法施行後は原則として月45時間・年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合であって対象期間が3か月超は月42時間・年320時間)です。臨時の特別な事情がない通常時の残業はここまでが上限となります。
休日労働(法定休日出勤)については、この45時間・360時間にはカウントされない別枠扱いです。しかし、特別条項による延長時には休日労働も含めた総労働時間に制限が設けられています。
※1年単位の変形労働時間制を採用している場合などは、上限時間が異なる場合があります
4-2. 特別条項を使えるケースと使えないケース
特別条項付き36協定は、あくまで「臨時的かつ特別な事情」がある場合に限って認められる制度です。労働基準法では、業務量の一時的な増加や突発的なトラブル対応など、通常の業務運営では想定できない事態への対応が該当するとされています。例えば、納期が集中した一時的な繁忙、突発的なシステム障害への対応、大規模なクレーム処理などが特別条項を使えるケースです。
一方で、慢性的な人手不足や恒常的に発生する業務量の多さを理由に特別条項を使用することは認められていません。毎年同じ時期に発生する繁忙期や、通常業務として想定される業務負荷は「臨時的」とは言えず、特別条項の濫用と判断される可能性があります。
このように、特別条項を運用する際は、その必要性と一時性を客観的に説明できる体制を整えることが重要です。
4-3. 休日労働・複数月平均の見落としポイント
特別条項付き36協定を結んだ場合でも、改正法によって厳しい絶対的上限が設定されました。
- 年間720時間以内
- 複数月平均80時間以内(2~6ヵ月平均が全て1⽉当たり80時間以内。休日労働含む)
- 単月100時間未満(休日労働含む)
- 月45時間超は年間6ヵ月まで(45時間超の月が年7ヵ月以上あってはならない)
この枠のうち1つでも超えれば違法となります。
特別条項付き36協定を締結する場合、協定書に定める延長範囲として上限内で具体的な時間数を設定しましょう。
休日労働(法定休日の労働)は、残業とは別枠で扱われます。36協定でも残業と休日労働は区別して定める必要があり、休日労働をさせる場合も、協定でその旨を規定しなければなりません。
また、改正法後は過重労働防止のため、特別条項の上限規制のうち「月100時間未満」「複数月平均80時間以内」に休日労働時間も含めて計算することとなりました。これにより、休日労働が多い場合は残業時間を抑えないと上限を超えてしまうため注意が必要です。
関連記事:日曜日の労働は36協定の残業にカウントされますか?【人事労務FAQ】
5. 36協定の対象外となるケース


36協定は、すべての職種に適用されるわけではありません。一部の職種や労働制度については、そもそも労働時間の規制対象外となっており、36協定の適用から除外されます。
また、裁量労働制等で特殊な労働時間管理がおこなわれる場合の扱いについても、注意が必要です。36協定を作成する際には、誰がその対象になるかを正しく理解しておきましょう。
5-1. 管理監督者
労働基準法第41条は、企業経営上、使用者と一体的な立場にある者として「管理監督者」を定義し、これに該当する労働者については労働時間や休憩、休日に関する規定を適用除外としています。そのため、管理監督者は36協定の対象には含めません。
ただし、企業内で「管理職」と呼ばれている人が必ずしも法上の管理監督者とは限らない点に注意が必要です。
労基法上の管理監督者と認められるには、経営方針決定に関与したり人事権を持つなど経営者と一体的な立場であること、一般の労働者とは違った待遇(賃金や裁量の付与)があること等、厳格な基準があります。
関連記事:労働基準法第41条第2号に規定された管理監督者について詳しく解説
5-2. 高度プロフェッショナル制度の対象者
高度プロフェッショナル制度(高プロ)は、年収要件(おおむね年収1,075万円以上)を満たし、かつ特定の専門業務につく従業員について、本人の同意のもとで労働時間規制や割増賃金の支払い義務を適用除外とする制度です。
高度プロフェッショナル制度適用者には、労基法上の労働時間・休憩・休日および深夜の割増賃金の規定が一切適用されません。36協定の締結・届出も不要となります。
ただし、高度プロフェッショナル制度を導入・運用する際には、本人の同意取得と労使委員会の決議など煩雑な手続きが求められます。対象従業員の人事管理は慎重におこないましょう。
5-3. 裁量労働制・事業場外みなし労働時間制
裁量労働制や事業場外みなし労働時間制では、実際の労働時間ではなく労使協定で定めた時間を働いたものとみなします。そのため、基本的に36協定で残業時間を定める必要はありません。
ただし、所定休日に出勤させる場合など、みなし労働時間の対象外となる働き方をさせたときは時間外労働となります。例えば、みなし労働時間として設定した時間が法定労働時間(週40時間)を超える場合には、36協定の締結が必要となります。これがない状態で法定労働時間を超える運用をすると違反になるため注意が必要です。
関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説
5-4. 研究開発職
新技術・新商品等の研究開発業務に従事する労働者については、時間外労働の上限規制(月45時間、年360時間、および特別条項の上限)の適用から除外されています。ただし、月100時間未満(休日労働含む)の要件は適用されませんが、健康確保措置として面接指導等の実施が義務付けられている点に注意が必要です。
5-5. 36協定の対象範囲を定める際の注意点
36協定を締結する際は、その協定が適用される労働者の範囲を正確かつ具体的に定めることが重要です。対象範囲の設定が曖昧である場合、協定の効力が及ばない労働者に時間外労働や休日労働をおこなわせてしまい、労働基準法第32条違反と判断されるおそれがあります。
36協定の対象となるのは、法定労働時間を超えて労働させる可能性のある労働者です。正社員に限らず、契約社員やアルバイト・パートタイム労働者など、雇用形態にかかわらず対象に含める必要があります。一方で、管理監督者や、労働時間規制が適用されない裁量労働制の対象者は、制度上は36協定の適用対象外となりますが、ここを誤認しているケースが少なくありません。
特に注意が必要なのは、「役職者だから管理監督者」「裁量的に働いているから裁量労働制」といった実態を伴わない判断です。管理監督者に該当するかどうかは、役職名ではなく、経営への関与度や労働時間に関する裁量の有無など、実質的な要件で判断されます。また、裁量労働制も、労使協定や届出をおこない、対象業務に該当していなければ適用できません。
誤って対象外と整理した結果、36協定未締結の時間外労働となるリスクがあるため、対象範囲は制度要件と実態の両面から慎重に確認する必要があります。
6. 36協定における残業時間の正しい計算方法と判断基準


36協定に基づく残業時間の管理では、原則上限と特別条項の適用範囲を明確に区別して考えることが重要です。
労働基準法では、原則として時間外労働は月45時間、年360時間以内に制限されており、これを超えて労働させる場合には特別条項付き36協定が必要となります。ただし、特別条項は恒常的な残業を認める制度ではなく、臨時的かつ特別な事情がある場合に限り適用されます。正しい残業時間の計算方法を理解し、原則と例外を整理したうえで運用することが、協定違反を防ぐための基本となります。
6-1. 6協定でカウントされる「残業時間」の基本ルール
36協定でカウントされる残業時間は、「労働基準法第32条で定める法定労働時間を超えて労働した時間」が基本ルールです。特別条項の有無にかかわらず、この定義自体は変わりません。
これは勘違いしやすいため、所定労働時間を超えていても、法定労働時間内であれば36協定上の「残業時間」には該当しないということを覚えておきましょう。
特別条項は、あくまで原則上限である月45時間・年360時間を超えることを例外的に認める仕組みであり、残業時間の算定方法を拡張するものではありません。
まずは法定労働時間を基準に正確にカウントすることが、特別条項の適否判断の前提となります。
6-2. 月45時間・年360時間はどのように計算するのか
月45時間・年360時間は、36協定における時間外労働の原則的な上限です。特別条項を締結していない場合、この上限を超えることは一切認められません。特別条項を締結している場合であっても、月45時間超の時間外労働は「特別な事情」がある月に限られ、年間を通じて無制限に認められるわけではないので注意してください。
計算にあたっては、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間のみを時間外労働として集計します。例えば、ある月に法定外残業が30時間、別の月に50時間発生した場合、50時間の月は特別条項の適用が前提となります。
この場合でも、30時間と45時間分までは原則枠として年360時間の管理対象となり、45時間を超えた5時間分は特別条項適用分として切り分けて把握する必要があります。
計算する際には、原則上限と特別条項適用分を混同しないよう、徹底した管理が不可欠です。
6-3. 休日労働は残業時間の計算に含まれるのか
法定休日におこなった労働は、時間外労働ではなく休日労働として扱われるため、月45時間・年360時間の時間外労働の上限には含まれません。この点は、特別条項の有無にかかわらず共通の考え方です。
ただし、特別条項付き36協定では、時間外労働と休日労働を合算した上限規制が別途定められており、月100時間未満や複数月平均80時間以内といった制限の判断では休日労働も含めて計算します。
そのため、原則上限の管理と特別条項における総量規制の管理は、分けて整理する必要があります。
6-4. 管理監督者・裁量労働制の残業時間の扱い方
管理監督者は労働時間規制の適用除外とされるため、原則として36協定および特別条項の対象外となります。
ただし、管理監督者に該当しない場合には通常の労働者として扱われ、特別条項の適用可否も含めて残業時間管理が必要です。
裁量労働制の場合は、みなし労働時間を基に法定労働時間超過の有無を判断し、超過が見込まれる場合には36協定が必要となります。特別条項を締結している場合でも、「裁量労働制だから無制限に長時間労働が可能」になるわけではなく、上限規制の考え方は同様に適用される点に注意しましょう。
7. 36協定違反に対する罰則


36協定の違反には罰則があります。罰則の対象は企業だけでなく、実際に指揮命令した現場責任者や人事責任者も対象になりうる点に注意が必要です。また、企業名が公表されることもあるため、報道により採用・取引に響くレピュテーションリスクも意識しなくてはなりません。
7-1. 労基署の調査と是正勧告・指導
労働基準監督署は、企業の労働時間管理について監督調査を実施します。36協定に違反が見つかった場合には、企業に是正勧告を出し、自主的な改善を求めます。これは労働基準法などに違反が確認された際におこなわれる行政指導です。
例えば、36協定を届け出ていないのに残業をさせていたり、協定はあるものの残業時間が上限を超えていたりすると、是正勧告の対象となります。勧告を受けた企業は、指摘事項を速やかに修正し、是正報告書を提出しなければなりません。
7-2. 書類送検となるケース
繰り返し指摘に応じない場合や、指導後も改善が見られない悪質な場合には、次の段階として企業名の公表や書類送検といった厳しい対応に進むことになります。書類送検は刑事手続きの一環であり、企業だけでなく、違反行為に直接関与した経営者や管理責任者が対象となることもあります。
実際に、過去には菓子製造大手企業が従業員に対し違法な時間外労働をさせたとして、法人と管理者が労働基準法違反の疑いで書類送検された事例があります。企業経営者や現場責任者、人事責任者は、自身が刑事責任を問われる可能性も踏まえ、厳格な労働時間管理をおこなうことが求められます。
また昨今、厚労省と各労働局は悪質企業への対応として企業名公表制度を強化しています。2016年には「過労死等ゼロ緊急対策」として、一定の長時間労働の送検事案は積極的に社名を公表する方針が打ち出されました。
公表リストは労働局のWebサイト等に掲載され、誰でも閲覧できるため、企業の信用が傷つくことを理解しておきましょう。
関連記事:36協定に違反したらどうなる?違反時の罰則や対象者、対処法を解説
8. 残業時間の上限超過を防ぐための実務ポイント


残業時間の上限規制を遵守するためには、制度を理解するだけでなく、日常的な運用体制の整備が不可欠です。
人事・労務担当者や管理職が中心となり、労働時間を把握・管理する仕組みを構築することで、36協定違反のリスクを低減できます。ここでは、実務で取り組みやすい基本的な対策を解説します。
7-1. 勤怠システムで労働時間を見える化
管理の基本となるのは、従業員の労働時間を正確に把握することです。出退勤をタイムカードや紙の出勤簿で管理している場合は、データ集計が遅れがちで長時間労働のサインを見逃しかねません。
現在はICカードやPC打刻、スマホ打刻などで正確に勤務時間を記録できるシステムが多数あります。これらを使えば、誰が今月何時間残業しているか一目で把握できます。また、上限時間に近づいた際にアラートを表示する機能が搭載されているシステムを活用すれば、特別条項の発動判断や業務調整を早期におこなうことが可能です。
8-2. 管理職と従業員への教育・周知
残業抑制は職場全体の意識改革が伴います。管理職に対しては、労働時間に関する知識と管理責任をしっかり教育する必要があります。36協定の内容や残業上限、違反時のリスクなどを理解させ、部下に無理な残業をさせないよう指導しましょう。
一方、従業員にも労働時間の自己管理意識を高めてもらうことが大切です。36協定や残業上限について周知し、残業時間に意識を向けることが有効です。
例えば「月◯時間を超えると健康上問題が出やすい」といった知識や、過労死に繋がることなどの教育は不可欠です。無理な長時間労働はパフォーマンスを下げるだけでなく、企業に迷惑をかけるという観点も共有しましょう。
8-3. 長時間労働が発生しそうな場合の対応
どんなに普段から管理していても、繁忙期やトラブル対応で長時間労働が避けられない局面はあります。その際には、事後対応ではなく、事前・途中段階での介入が重要です。
例えば、勤怠システム上で月◯時間を超えた時点で従業員とその上長にアラートメールが飛ぶように設定し、相談のうえ業務量を調整させるといった運用が有効です。
特別条項の適用が必要な場合も、発動要件を満たしているかを確認したうえで、安易な常態化を防ぐ対応が求められます。
8-4. 経営層への報告と改善の働きかけ
恒常的な長時間労働体質となっている場合、改善は現場任せでは限界があります。企業のトップや経営層が本気でコミットしなければ、本質的な改善は進みません。人事担当者や現場管理職は、経営陣に対して労働時間の実態とリスクを定期的に報告し、改善策への理解と支援を求めましょう。
経営と一体となった働き方改革ができれば、36協定違反の防止策は格段に実行力を増します。トップダウンとボトムアップ双方から健全な職場づくりに取り組むことが大切です。
36協定だけでなく、労基法全体の理解を深めたい方はこちらもあわせてご一読ください。
関連記事:労働基準法とは?法律の要点や人事が必ず押さえたい基本をわかりやすく解説
9. 36協定について人事労務担当者からよくある質問(FAQ)


36協定を理解しているとしても、毎日確認するわけではないので、突発的なシーンで運用の判断を迷ってしまうこともあるかもしれません。
ここでは、36協定について人事労務担当者からよくある質問をまとめたので、迷った時の参考にしてください。
9-1. パートやアルバイトにも36協定は必要ですか?
はい。これは、労働基準法第9条で定義される「労働者」に、パート・アルバイトも含まれるためです。労働基準法が適用される労働者であれば、雇用形態に関わらず、法定労働時間を超えて労働させる可能性がある場合は全員が対象となります。
関連記事:36協定の対象者とは?時間外労働の上限が適用されない業種も解説
9-2. 36協定の有効期間の起算日はいつにすれば良いですか?
36協定の起算日は法律上の明確な指定はなく、企業が任意に設定できますが、企業の事業年度に合わせる(例: 4月1日〜翌年3月31日)のが一般的です。起算日を誤ると、月45時間・年360時間や特別条項の年720時間の管理にズレが生じるため、勤怠管理期間と整合性の取れた設定が重要です。
関連記事:36協定の起算日の決め方や時間外労働の上限について解説
9-3. 労働者代表を誰もやりたがらない場合はどうすれば良いですか?
労働者代表は、労働基準法施行規則第6条の2に基づき、管理監督者でない者の中から、民主的な方法で選出する必要があります。36協定の必要性や労働者代表の役割(労働条件を守るための重要な役割であること)を丁寧に説明し、理解を求めることが第一です。
会社側から一方的に指名することはできないため、挙手や投票など民主的な方法で選出されるよう、働きかける必要があります。
関連記事:36協定の労働者代表とは?役割・選出方法や決め方も紹介!
9-4. 36協定届の様式はどこで入手できますか?
36協定届の様式は、厚生労働省が公開している法定様式を使用します。
様式は、労働基準法第36条および関係通達に基づいて定められており、厚生労働省のウェブサイトから主要様式をダウンロードできます。WordやPDF形式で提供されているため、PCで直接入力して作成することが可能です。
関連記事:36協定の新様式の変更点は?新様式の種類や記入例を解説
9. 36協定を正しく運用し、健全な職場環境を目指そう


36協定は、従業員に残業や休日出勤をさせるための基本ルールです。労働基準法36条に基づくこの協定を正しく結び、法律で定められた上限時間を守ることは企業の義務です。違反すれば法的な罰則だけでなく、企業の信用失墜など深刻な影響を招きます。
36協定の内容や締結プロセスにはさまざまなポイントがあります。ぜひ本記事を参考に、残業上限規制の詳細や協定書に書くべき事項、労働者代表の適正な選出などを踏まえて、自社の36協定を再点検してみてください。
法令遵守の姿勢を示すため、そして従業員が安心して働けるように、36協定を正しく活かして健全な職場環境を実現しましょう。
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関連記事:副業時の36協定の考え方や事前に確認すべきポイント
関連記事:派遣労働者の残業で36協定が必要な理由や注意点



毎年対応が必要な36協定の届出。しかし、働き方改革関連法による上限規制の変更や複雑な特別条項など、正確な知識が求められる場面は増え続けています。
36協定届の対応に不安な点がある方は、今のうちに正しい手順と注意点を確認しませんか。
◆この資料でわかること
- 働き方改革関連法による上限規制の変更点
- 罰則を避けるための「特別条項」の正しい知識と運用
- ミスなく進めるための締結・届出の具体的な手順
- 【記入例付き】新しい届出様式の書き方
本資料では、届出作成~提出の流れまで36協定の届出について網羅的に解説しており、毎年発生する煩雑な業務の効率化に役立ちます。ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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