【図解】給与計算ガイド!業務の流れやポイントを解説!
更新日: 2026.1.29 公開日: 2020.12.10 jinjer Blog 編集部

人事業務のひとつに「給与計算」があります。給与計算の業務内容は多岐にわたり、慣れるまでに時間がかかる場合もあるでしょう。給与計算業務は、労働基準法や所得税法など法律も多く関係するので、正確な知識を身につけておく必要があります。
この記事では、給与計算の方法や業務フロー、最低限押さえるべき法令の知識、注意ポイントなどを解説します。
目次
初めての給与計算業務、何から手をつければ良いかわからないとお悩みではありませんか?
「複雑な法律や税金の話についていけるだろうか」
「毎月の締め日や支払い日に間に合わせられるか心配」
「計算ミスなく、正確に処理できる自信がない」
そのような不安をお持ちの方に向けて、当サイトでは「給与計算パーフェクトマニュアル」を無料で配布しています。給与計算に必要な法律や税金の基本知識から、給与計算の毎月の流れ、新任担当者が押さえておきたい重要ポイントまで網羅的に解説しました。
この1冊で、正確な給与計算をおこなうための基礎知識を身につけ、業務への不安を解消する第一歩を踏み出せるでしょう。
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1. 給与計算業務とは


給与計算とは、従業員に対する労働の対価である給与を正確に算出し、支給額を確定する業務です。基本給や各種手当、残業代などの総支給額を計算し、所得税や社会保険料などを控除して、最終的な支給額を決定します。
給与計算は、従業員の生活に直結する重要な業務であるためミスが許されません。給与計算業務を担う人は、従業員の権利を守りつつ、企業の法令遵守を確保する役割も果たします。給与計算を正確かつ効率的におこなうには、業務の流れや関連法規を正しく理解しておくことが大切です。ここでは、まず業務の基本となる給与計算の仕組みやスケジュールを解説します。
給与計算の基礎をおさえたい方はこちらの記事もあわせてご確認ください。
関連記事:給与計算の基礎を解説!初心者でもわかる給与の仕組みや計算方法
1-1. 給与計算の基本的な仕組み
給与計算で給与に含まれるものは次の3つに分類できます。
①基本給
②手当(通勤手当、役職手当、資格手当、家族手当、住宅手当など)
③変動的な給与支給額(時間外労働手当・深夜割増手当・休日割増手当)
②の手当は企業によって項目が異なります。また、従業員によっても手当の有無や金額が違うため、給与計算業務を初めて担当する場合は就業規則を必ず確認しましょう。
基本的な給与計算は、次の計算式で表せます。
【総支給額】―【控除額】=【差引支給額(手取り額)】
- 総支給額:基本給に時間外労働手当などの割増賃金や各種手当をプラスした金額。いわゆる額面。
- 控除額:税金と社会保険料。企業によって親睦会費などの特別な項目を設けている場合もある。
- 差引支給額:従業員の銀行口座に振り込まれる金額。手取り額ともよばれる。
1-2. 給与計算業務のスケジュール
給与計算では毎月・毎年のスケジュールが決まっています。毎月のスケジュールは次のとおりです。
| 日 | 業務内容 |
| 10日 |
|
| 勤怠締日 |
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| 勤怠締日~支払数日前 |
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| 支払日 |
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| 末日 |
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年間スケジュールは次のとおりです。
| 月 | 業務内容 |
| 4月 |
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| 5月 |
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| 6月 |
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| 7月 |
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| 8月 | – |
| 9月 |
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| 10月 |
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| 11月 |
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| 12月 |
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| 1月 |
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| 2月 | – |
| 3月 | – |
スケジュールの詳細は関連記事をご覧ください。
関連記事:給与計算業務の流れ(フロー)とは?月間・年間スケジュールも紹介!
2. 給与計算の方法と業務フロー


給与計算業務の大まかな流れ(フロー)は、次のようになっています。
- 従業員の勤怠情報を締め、労働時間を集計する
- 総労働時間から総支給額を計算する
- 各種保険料・税金を計算する
- 総支給額から各種保険料と税金を控除する
- 給与を振り込み、保険料と税金を納付する
人事担当者は全従業員の給与を確定する必要があるため、それぞれの工程をきちんと理解しておくことが大切です。
なお、勤怠情報の管理や労働時間の集計は、人事・総務が担当する場合もあれば、経理が担当する場合もあるでしょう。ここからは、給与計算業務のそれぞれの工程について詳しく紹介します。
2-1. 勤怠の締め・労働時間の集計
給与計算をする前に、まずは従業員の勤怠情報を見て抜け漏れや不審な箇所がないか確認しましょう。必要に応じて従業員や上長に確認をとり、全従業員の全労働日について正しい勤怠情報がそろった時点で、勤怠を締めます。
勤怠を締めた後は、総労働時間や遅刻・早退の時間、欠勤の日数、時間外労働・休日労働・深夜労働の時間など、必要な項目ごとに労働時間を集計します。
勤怠の締めや労働時間の集計方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:勤怠の締め作業の重要性とは?重要性や効率的に管理する方法をご紹介!
関連記事:労働時間を正しい計算の仕方や注意点をわかりやすく解説
2-2. 総支給額の計算
算出した労働時間数を基に、給与の総支給額を計算します。
就業規則で規定されている「基本給」や、就業規則に定められていたり、時間外労働・休日出勤などによって発生したりする「各種手当」、そして対象期間に発生した欠勤や遅刻・早退による「欠勤控除」を基に、総支給額を計算します。
計算式は次のとおりです。
【総支給額】=【基本給】+【各種手当】-【欠勤控除】
各種手当は「固定」と「変動」の2つに分かれています。
- 固定手当:通勤手当、役職手当、資格手当、住宅手当など
- 変動手当:時間外手当、休日出勤手当、深夜手当など
変動手当である時間外手当や休日出勤手当、深夜手当は、それぞれ割増率が決められています。
労働した時間帯や1日の労働時間、1週間の労働時間などで割増率が異なるので、慎重に計算しましょう(詳細な計算方法は後述します)。
2-3. 各種社会保険料の計算
総支給額を算出したら、次は控除する社会保険料の計算をします。
社会保険料は、主に「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」の4つの計算が必要です。
健康保険料、厚生年金料、介護保険料:【標準報酬月額】×【保険料率】
雇用保険料:【雇用保険料】=【総支給額のうち、賃金とみなされる額】×【保険料率】
「健康保険」「厚生年金保険」は、標準報酬月額にそれぞれの保険料率をかけて算出した額を企業と従業員で折半します。健康保険料率は地域や加入している健康組合によって異なるため、必ず加入先が提示している保険料額表を確認しましょう。
「介護保険」は、40歳から64歳までで健康保険に加入している従業員に加入の義務があります。介護保険料も標準報酬月額に保険料率をかけて算出した額を企業と従業員で折半します。健康保険料と同様に、加入先の保険料額表を確認しましょう。
「雇用保険料」はその月の総支給額のうち雇用保険で賃金としてみなされる額に、毎年厚生労働省より発表されている雇用保険の保険料率をかけると算出できます。
参考:令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省
関連記事:社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説
関連記事:厚生年金保険料とは?保険料率や計算方法などわかりやすく解説
2-4. 住民税・所得税の計算
毎月支払う給与からは、住民税と所得税も控除する必要があります。住民税は都道府県と市区町村に、所得税は国に納める税金です。
住民税を給与から天引きする場合、毎年5~6月ごろ従業員が居住する自治体から送られてくる「決定通知書」に記載されている額を差し引きます。
関連記事:給与計算における住民税とは – 住民税の計算方法・納付・注意点について解説
次に給与から天引きする所得税を計算します。
まず給与総額から社会保険料や非課税手当を差し引き、その額を基に「給与所得の源泉徴収税額表」と照らし合わせて源泉所得税額を算出します。なお「扶養控除等(異動)申告書」の提出の有無や、扶養親族の人数によっても源泉所得税額は変わってくるので、慎重に計算しましょう。
所得税の計算方法はこちらで解説しています。
関連記事:給与計算における所得税の計算方法とは?源泉徴収の仕組みも解説
2-5. 差引支給額の計算
最初に計算した給与の「総支給額」から「各種社会保険料と住民税・所得税」を差し引くと「差引支給額」が算出されます。算出された額が従業員の「手取り」となります。
【総支給額】-【保険料・税金などの控除額】=【差引給与額(手取り)】
2-6. 台帳作成などの事務処理・給与の振込手配
差引支給額(手取り)まで計算できたら、賃金台帳への記入や給与明細の作成などの事務処理と、各従業員への支払い手続きをおこないます。
賃金台帳は、原則最後に記入した日から5年間(当面の間は3年)保管が必要です。
給与明細書は、所得税法において従業員への交付が義務付けられています。作成して給与支払い時に交付しましょう。
関連記事:給与明細とは?保管期間や注意点、記載項目までくわしく解説
2-7. 各種社会保険料・税金の納付
事務処理や振込手配が終わったら、各種社会保険料や所得税、住民税を納付します。
社会保険料は、各役所から送られる「納入通知書」を基に月末までに納付をおこないます。また、所得税や住民税などの税金は、翌月10日までに税務署や各市区町村への納付が必要です。
3. 給与計算業務は何が難しい?やりがいは?


その一方で、責任が重いからこそ専門性を高めやすく、達成感や成長を実感しやすい点も特徴です。ここでは、給与計算業務が「難しい」と言われる理由と、そこから生まれるやりがいについて解説します。
3-1. ミスが許されない業務ならではの大きなプレッシャー
給与計算業務が難しいとされる最大の理由のひとつは、ミスが許されない点にあります。給与は全従業員にとって重要な収入であり、正確に支給されることが当然と考えられています。たとえ1円の誤りであっても、不信感を招いたり、労使トラブルへ発展したりするおそれがあります。
注意すべきなのは支給額だけではありません。社会保険料や税金などの控除額、各種手当の計算、さらには支給日の厳守まで含めて、細部にわたる正確性が求められます。また、給与計算は毎月必ず発生する業務であり、締切を延ばすことができない点も大きなプレッシャーです。繁忙期や急な人事異動が生じた場合でも、期限どおりに正確な処理をおこなう必要があります。
3-2. 法令対応やイレギュラー処理への深い理解が必要
給与計算業務では、労働基準法をはじめ、社会保険や税法など、複数の法令を横断的に理解することが求められます。これらの法令は改正が頻繁におこなわれるため、常に最新の情報を把握し、実務へ正確に反映させなければなりません。
また、残業代や割増賃金の計算、遅刻・早退や欠勤に伴う控除、賃金の端数処理など、マニュアル通りにはいかない例外的な対応も少なくありません。処理の根拠を十分に理解していないと、誤った判断を招くリスクがある点も、給与計算業務の難しさといえるでしょう。
3-3. 責任の重さが達成感につながり専門スキルを磨ける
給与計算業務は責任が重い分、無事に支給日を迎えられたときの「やりがい」は大きなものです。ミスやトラブルなく業務を完遂できれば、社内からの信頼も高まり、「会社を支える重要な役割を担っている」という実感を得られるでしょう。
さらに、日々の実務を通じて労務管理や税務に関する知識を体系的に習得できるため、専門性を高めやすい点も魅力です。経験を重ねることで、給与計算にとどまらず、人事・労務全体を支える幅広いスキルへとつなげられます。
4. 給与計算業務で押さえるべき法令知識


給与計算を正しくおこなうためには、「労働基準法」や「所得税法」など、多くの法律に関する知識が必要です。
ここでは必ず押さえておくべき知識を紹介します。
関連記事:給与計算の初心者がこれだけは押さえるべき3つのポイント
4-1. 賃金支払い5原則
「賃金支払いの5原則」とは、労働基準法第24条で定められた給与(賃金)の支払いに関する法律です。次の5つの原則が法で定められています。5原則に違反した場合は、企業側に罰則が課される場合もあるため気を付けましょう。
| 原則 | 概要 | 例外 |
| 通貨払い | 通貨で支払う | 労働協約で定めがある手当
従業員の同意を経て口座振込にする場合など |
| 直接払い | 本人へ直接支払う | 使者(妻子など)に渡す |
| 全額払い | 全額を支払う | 所得税、社会保険料などの源泉控除
労使協定で定められているもの |
| 毎月1回以上払い | 毎月1回以上支払う | 臨時に支払われる給与、賞与
1ヵ月を超える期間を基準に支給される手当 |
| 一定期日払い | 決まった期日に支払う |
関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について
4-2. 時間外、休日、深夜労働の割増賃金(手当)
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働をさせる場合や、法定休日(週1日もしくは4週4回以上)に労働をさせる場合、通常の給与に割増率を乗じた割増賃金(手当)を支給する必要があります。
また、深夜労働(22時~翌5時の労働)をさせる場合も、割増賃金の支払いが必要です。
割増賃金率の一覧
| 区分 | 割増率 |
| 時間外労働:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働 | 25%以上 |
| 休日労働:法定休日の労働 | 35%以上 |
| 深夜労働:22時から翌5時までの労働 | 25%以上 |
| 1ヵ月60時間を超える時間外労働 | 50%以上 |
組み合わせ可能な割増賃金率
| 組み合わせ | 割増率 |
| 時間外労働+深夜労働 | 50%(25%+25%)以上 |
| 休日労働+深夜労働 | 60%(35%+25%)以上 |
| 1ヵ月60時間を超える時間外労働+深夜労働 | 75%(50%+25%)以上 |
割増賃金は、次の計算式で算出します。
【対象となる時間数】×【基礎賃金(時給)】×【割増率】
時間外労働手当などの計算を誤ると、従業員から未払い賃金の請求を受けるだけでなく、労働基準法に基づき罰則が適用されるおそれもあるため気を付けましょう。
関連記事:労働基準法第37条とは?割増賃金の計算方法や注意点を解説
4-3. 端数処理のルール
給与計算では、時間外労働手当や社会保険料などの計算で、端数が発生する場合も少なくありません。端数処理のルールは、法律や厚生労働省の通達で定められており、間違いやすいため注意が必要です。
割増賃金の計算においては、労働時間と賃金額それぞれの端数処理に注意する必要があります。まず労働時間は分単位で計算しなければなりません。例えば、時間外労働が2時間5分の場合、分単位を切り捨てて2時間として計算すると、賃金全額払いの原則に反することになります。
ただし、1ヵ月の時間外労働などの合計時間に1時間未満の端数が生じた場合、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる扱いは認められています。
賃金の計算においても、端数は原則として切り上げなければなりません。例外として、1時間あたりの賃金額や1ヵ月単位の時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金総額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることが可能です。
また、1ヵ月の賃金支払額に100円未満の端数がある場合は、50円未満を切り捨て、50円以上を100円に切り上げる処理も認められています。さらに、1ヵ月の賃金額のうち1,000円未満の端数を翌月に繰り越す処理も可能です。なお、1ヵ⽉の賃⾦⽀払額における端数処理を採用する場合には、就業規則に明記したうえで運用することが望ましいとされています。
関連記事:給与計算の端数処理で気をつけるべきポイントを徹底解説!
関連記事:15分単位の勤怠管理や切り捨ては違法?残業代は原則1分単位で正しく計算しよう
4-4. 減給・減額
懲戒処分などで従業員の給与を減額する場合も注意が必要です。賃金を減額する場合、次のとおり限度額が定められています。
- 減給1回の金額:平均賃金(※)の1日分の半額
- 1ヵ月分の減給の総額がその月の給与支払額の10分の1
なお、この基準は労働の実績があるにもかかわらず、制裁として減給する場合に適用されます。欠勤や遅刻・早退で労務の提供がなかった分の控除は対象となりません。
減給の限度額については、次の関連記事で詳しく説明しています。
関連記事:労働基準法第91条に規定された「減給の限度額」とは?法律上の意味や計算方法
4-5. 社会保険料の改定
社会保険料の改定にも注意しましょう。
毎月の給与の額をベースに計算する雇用保険料や所得税と異なり、健康保険や厚生年金の保険料は一人ひとりの標準報酬月額をベースに計算します。
7月に提出が必要となる算定基礎届や、固定的賃金が変動したときに手続きをおこなう月額変更届により標準報酬月額が変わると、社会保険料も変動します。
特に月額変更届(随時改定)は従業員ごとに対象の有無を確認する必要があるため、処理漏れが発生しやすい手続きです。月額変更届の処理が漏れると社会保険料が正しく算出できず、将来的に年金事務所から是正指導が入る可能性もあるので注意しましょう。
随時改定については、次の関連記事もご覧ください。
関連記事:社会保険の随時改定とは?標準報酬月額を改定する条件やタイミング、手続き方法を解説
4-6. 通勤手当の非課税限度額
通勤手当は原則として非課税ですが、一定額を超える部分は課税対象となります。通勤手段や距離ごとの非課税限度額は次のとおりです。
| 通勤距離(片道) | 1ヵ月あたりの非課税限度額
(令和7年4月1日〜) |
1ヵ月あたりの非課税限度額
(〜令和7年3月31日) |
| 2㎞未満 | 全額非課税 | 全額非課税 |
| 2㎞~10㎞未満 | 4,200円 | 4,200円 |
| 10㎞~15㎞未満 | 7,300円 | 7,100円 |
| 15㎞~25㎞未満 | 13,500円 | 12,900円 |
| 25㎞~35㎞未満 | 19,700円 | 18,700円 |
| 35㎞~45㎞未満 | 25,900円 | 24,400円 |
| 45㎞~55㎞未満 | 32,300円 | 28,000円 |
| 55㎞以上 | 38,700円 | 31,600円 |
所得税法施行令の一部改正により、令和7年4月1日以降の通勤手当の非課税限度額が引き上げられているので注意しましょう。
5. 給与計算で実際に起こりやすい具体的な課題と防止策


給与計算でミスが発生すると、担当者の業務負担が増え、残業コストの上昇につながります。また、未払い賃金が生じる場合には、従業員とのトラブルや企業への不信感にもつながりかねません。
さらに、労働基準法や所得税法などでは、拘禁刑や罰金といった刑事罰が定められています。ミスがあったからといって直ちに罰則が適用されるわけではありませんが、行政指導の対象となる可能性もあります。
そのため、給与計算でよく起こるミスを把握し、あらかじめ対策を講じておくことが重要です。ここでは、実際に起こりやすい課題とその防止策について具体的に紹介します。
5-1. 打刻・申請漏れによる勤怠データの誤集計
正確な給与計算をおこなうには、勤怠データの正確性が欠かせません。例えば、従業員によるタイムカードの打刻漏れや休暇・残業申請の未提出があると、実際の労働時間が正しく反映されず、時間外労働や欠勤控除の計算に誤りが生じてしまいます。また、勤怠集計の段階でミスがあると、その後の給与計算にも影響が出ます。
このようなミスを防ぐためには、従業員が正しく打刻・申請できるように、ルールや手順を周知徹底することが重要です。加えて、勤怠管理システムを導入して集計作業を自動化すれば、人的ミスを減らし、勤怠データの正確性をより確実に担保できます。
5-2. 各種手当・控除の適用ミスによる計算誤り
企業が独自に導入する各種手当(通勤手当や住宅手当など)や控除制度(社宅・寮費など)は、各社によって取り扱いが異なる部分もあります。これらの手当や控除は、残業代や割増賃金の計算、さらには社会保険料や所得税の算定に影響を及ぼすことがあるので、給与計算の正確性を確保するうえで特に注意が必要です。
そのため、各種手当や控除に関しては、就業規則などの社内ルールで取り扱いを明確に定めることが重要です。加えて、給与計算ソフトの設定にはこれらのルールを正確に反映させ、定期的に更新・確認をおこなうことで、計算ミスや法令違反のリスクを最小限に抑えられます。
5-3. 年末調整の処理間違い
給与計算業務には、毎月の賃金計算に加え、年末調整業務も含まれます。年末調整では、その年の源泉徴収税額と実際の年税額を照合し、年末の給与で過不足を精算する必要があります。
年末調整でよくあるミスには、従業員の申告内容の誤りや、企業担当者による控除情報の反映漏れがあります。控除が正しく反映されないまま年末調整を実施すると、所得税額に誤差が生じ、再計算が必要になることもあります。
このようなトラブルを防ぐには、早めに年末調整のスケジュールを立て、計画的に業務を進めることが重要です。また、従業員に申告間違いの事例を事前に周知しておくと、申告ミスの防止につながります。さらに、システムで対応できる業務は積極的に自動化し、手入力によるミスを極力減らすことが効果的です。
関連記事:年末調整はいつが期限?具体的なスケジュールや提出書類を解説
5-4. 給与改定(昇給・降給)や人事異動の反映漏れ
昇給やベースアップなどで基本給が変わる月は、給与計算に特に注意が必要です。昇給後の基本給を当月給与に反映するのはもちろんですが、時間外手当などが翌月払いの場合、時間外手当の計算はあくまで対象月の基本給(昇給前の額)をベースにおこなう必要があります。
昇給後の額で計算すると過払いが発生し、翌月に調整が必要となるため余計な業務が増えます。例えば、4月が昇給月で3月分の時間外手当を4月給与で支給する場合は次のとおりです。
- 基本給:4月の昇給後の額を支給
- 時間外手当:3月分の昇給前の基本給をベースに計算
また、部署や職種ごとに手当が定められている場合は、人事異動による変更でミスが起きやすくなるので注意が必要です。
給与改定や人事異動の情報をスムーズに給与計算に反映させるため、システムで情報を一元管理することが望ましいでしょう。加えて、企業独自のルールがある場合もあるので、給与計算時には必ず就業規則を確認することが重要です。
5-5. 社保・税制改正の見落としによる計算ルールの未対応
社会保険制度や税制は、毎年のように改正がおこなわれています。例えば、令和7年度の雇用保険料率は、令和6年度から引き下げられました。
さらに、令和8年1月からは、令和7年度税制改正による基礎控除や給与所得控除の引き上げなどに伴い、所得税の計算に使用する源泉徴収税額表も変更されます。加えて、今後は労働基準法の大幅な改正も予想されています。
最新の法改正を給与計算に反映させなければ、社会保険料や所得税の控除額を誤って計算してしまい、結果として従業員への給与に誤りが生じるおそれがあるのです。そのため、あらかじめ法改正情報の入手ルートを確保し、社内で確実に対応できる体制を整えておくことが重要です。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
参考:「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します|厚生労働省
関連記事:2025年(令和7年)の年末調整の変更点!手続きのポイントもわかりやすく解説
6. 給与計算の業務効率を上げる方法


給与計算は毎月処理が必要な上にミスが許されず、人事担当者としては負担の大きい業務です。給与計算の処理を効率化できれば作業時間を減らせ、ほかの業務にも専念できるでしょう。
ここでは給与計算の業務効率を上げる具体的な方法を紹介します。
6-1. 給与計算担当者へのスキル研修を充実させる
給与計算担当者には、労働基準法や社会保険制度、所得税の仕組みなど、法律や制度を正確に理解することが求められます。担当者の知識やスキルを向上させれば、給与計算のミスを減らし、業務をより効率的に進められるでしょう。
そのため、定期的な研修や勉強会の実施が推奨されます。最近ではeラーニングなどのオンライン研修も充実しており、企業の状況や従業員のニーズに応じて、最適な研修方法を取り入れることが大切です。
6-2. 従業員へのルール・必要情報の周知を徹底する
給与計算の正確性は、従業員から提供される情報に大きく依存します。どれだけ給与計算担当者が高い知識やスキルを持っていても、従業員の申請内容や提出情報に誤りがあれば、計算結果にも影響が出てしまいます。特に、残業や休暇の申請、扶養親族の情報、各種手当の申告内容などは、給与額の算出に直結する重要データです。
そのため、従業員には情報提供のルールや提出期限を明確に示し、社内メールやマニュアル、イントラネットなどを活用して周知徹底することが不可欠です。加えて、定期的な注意喚起や提出内容の確認、自己申告ミスを防ぐチェックリストの活用などを組み合わせることで、給与計算ミスのリスクを大幅に低減できます。
6-3. ミス防止のためのダブルチェック体制を整備する
ダブルチェック体制は、給与計算のミスを防ぐうえで欠かせません。給与計算にミスがあった場合、次のような業務が追加で発生します。
- 従業員への説明と謝罪
- 翌月の給与での支給調整
- 社会保険料や税金の納付額の修正
ミスにより作業が増えるだけでなく、ほかの従業員や上司からの信頼が損なわれる可能性もあるでしょう。
ダブルチェックは単純な計算ミスを見つけやすく、法改正の抜け漏れや就業規則の確認不足によるミスの防止にも有効です。複数の目で計算結果を確認し、ミスが起こりにくい仕組みを作りましょう。
関連記事:給与計算のミスを防止する5つの施策を原因別に解説
関連記事:給与計算ミスに気づいた時のお詫びの方法や注意点を文例とともに解説
6-4. システムを導入して処理を自動化する
表計算ソフトによる給与計算に限界を感じる場合、給与計算システムの導入がおすすめです。給与計算システムには次のメリットがあります。
- 給与計算の自動化
- 勤怠管理システムとの連携
- 法改正への自動対応
ただし、給与計算システムの導入や運用にはコストがかかります。また、システムの操作に慣れないうちは、むしろ業務負担が増えるおそれもあるでしょう。
そのため、給与計算システムを選ぶ際は、費用や機能、使いやすさ、サポート体制などを比較し、自社のニーズに合ったツールを選ぶことが重要です。また、導入フローとしては、次のようなステップを意識するとスムーズです。
- 現状業務の棚卸し:給与計算の流れや課題を整理する
- 要件の整理:必要な機能や連携したいシステムを明確にする
- 候補ツールの比較・選定:費用や操作性、サポート体制を確認する
- 導入計画の策定:データ移行や操作研修のスケジュールを立てる
- テスト運用:一部従業員で試験運用し、不具合や操作性を確認する
- 本運用開始:全従業員の給与計算に適用し、必要に応じて運用ルールを調整する
このように、選定から導入までのフローを踏まえることで、システム導入による業務効率化の効果を最大化できます。
関連記事:給与計算を自動化するメリット・デメリット、具体的な方法や手順も紹介
6-5. 専門家・外部パートナーの活用を検討する
給与計算は、社労士など外部の専門家に業務委託(BPO)もできます。
給与計算業務は複雑で、法改正にも対応が必要です。外部へ業務委託すれば、専門知識を持つプロフェッショナルが計算処理をおこない、ミスなく正確に給与計算された結果が納品されるでしょう。人事担当者が自ら計算処理をおこなう手間も大幅に減らせます。
一方で業務委託には費用がかかり、担当者とのコミュニケーションも必要です。
また、給与計算に必要な従業員の勤怠情報などを、早めかつ厳密なスケジュールに則って取りまとめ、提出しなければなりません。
業務委託した場合も、企業の窓口としての対応が必要な点には注意しましょう。
関連記事:給与計算の代行・アウトソーシングのメリット・デメリットと料金相場を紹介!
関連記事:給与計算は誰に頼む?税理士と社労士の違いや費用相場を解説!
7. 給与計算業務のよくある質問


最後に給与計算業務に関するよくある質問とその回答を紹介します。
7-1. 給与計算業務に資格は必要?
給与計算業務に資格は必要ありません。ただし、労働基準法や社会保険の仕組み、所得税、住民税などの知識が必要です。最初は難しく感じるかもしれませんが、勉強しながら少しずつ慣れていくとよいでしょう。
なお、給与計算に役立つ資格はいくつかあります。最も役立つのは社会保険労務士や税理士などの士業ですが、国家資格で難易度が高く、給与計算のためだけに取得を目指すのはハードルが高い場合もあるでしょう。
「士業は無理でも専門的な知識を身につけたい」という方は、民間資格がおすすめです。例えば「給与計算実務能力検定試験」は給与計算業務に必要な知識が体系的に学べる実務担当者向けの資格です。
関連記事:給与計算業務に資格は必要?代行する場合の資格の必要性についても詳しく解説
7-2. 給与計算業務に向いている人は?
給与計算業務に向いている人の特徴をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
| 特徴 | 理由 |
| 細かい作業が得意 | 給与計算では、勤怠情報や各種手当・控除の正確な確認・処理が必要です。1つでも誤りがあると支給額に影響するため、細かい作業を丁寧にこなせる人に向いています。 |
| 法令に詳しい | 労働基準法、税法、社会保険制度など、給与計算に関わる法律知識は不可欠です。法改正への対応や、システムや外部委託の計算結果の確認にも知識が必要なため、法令に詳しい人は適任です。 |
| コミュニケーション能力・調整能力が高い | 給与計算では、従業員や上司への確認、外部専門家とのやり取りなど、多くの人と接する機会があります。情報の不明点を正確に確認し、円滑に調整できる人は給与計算業務に向いています。 |
また、給与計算に関わる法律は、時代や社会の変化に応じて頻繁に改正されます。そのため、常に最新の知識やスキルを学ぶ意欲がある人も、給与計算業務に向いているといえるでしょう。
8. 給与計算業務の流れを押さえて効率よく処理しよう!


給与計算の業務内容は、毎月おこなう月間業務だけでなく、年間業務も含めるとかなりの数に上ります。
一つひとつの計算はさほど難しくありませんが、正確にデータを入力・管理したり、法改正や税制改正の情報をしっかりキャッチして逐一アップデートしたりすることは容易ではありません。
より正確かつスムーズな給与計算のために、専用の給与計算システムやソフトなどを活用して業務効率のアップを目指しましょう。
関連記事:給与計算ソフトとは?メリットや選定ポイント7選を一挙ご紹介
初めての給与計算業務、何から手をつければ良いかわからないとお悩みではありませんか?
「複雑な法律や税金の話についていけるだろうか」
「毎月の締め日や支払い日に間に合わせられるか心配」
「計算ミスなく、正確に処理できる自信がない」
そのような不安をお持ちの方に向けて、当サイトでは「給与計算パーフェクトマニュアル」を無料で配布しています。給与計算に必要な法律や税金の基本知識から、給与計算の毎月の流れ、新任担当者が押さえておきたい重要ポイントまで網羅的に解説しました。
この1冊で、正確な給与計算をおこなうための基礎知識を身につけ、業務への不安を解消する第一歩を踏み出せるでしょう。
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