年末調整とは?【令和7年最新】確定申告との違いや必要書類、計算の流れをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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年末調整とは?【令和7年最新】確定申告との違いや必要書類、計算の流れをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

年末調整とは?【令和7年最新】確定申告との違いや必要書類、計算の流れをわかりやすく解説

コイン

年末調整とは、その年の源泉徴収税額の合計額と納付すべき所得税額(年税額)を比較して、過不足額を精算する手続きです。年末調整は従業員を雇用する使用者の義務です。

正しく手続きしなければ、従業員が自分で確定申告しなければならなくなるだけでなく、会社側が法令に基づき罰則を受ける可能性もあります。この記事では、年末調整とは何か、対象者や必要書類、スケジュール、確定申告との違いなどを踏まえてわかりやすく解説します。

関連記事:【従業員向け】年末調整はいつまでにおこなう?期限と提出書類の種類を紹介

年末調整の基本から令和7年分の変更点まで この1冊で安心、完全網羅!

令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。

  • 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
  • 「アルバイトやパート、退職者に年末調整は必要?」
  • 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」

このような疑問をお持ちの方に向けて、令和7年分の年末調整に必要な書類から対象者、計算の流れまで、年末調整に関する基本的な業務を図解でわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。

業務の進め方に不安のある方や、抜け漏れなく対応したい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 年末調整とは?

年末調整をする人事労務担当者

そもそも、毎年恒例となっている年末調整はどのような目的でおこなわれているのでしょうか。まずは、年末調整の基本知識を身につけていきましょう。

1-1. 年末調整は、源泉徴収税の過不足を調整する手続き

年末調整は、企業が従業員に対して支払った給料から徴収される「所得税」の過不足金を調整するための手続きです。

従業員の給与や賞与から所得税を徴収することを「源泉徴収」といいます。「実際に徴収した源泉徴収額」と、その年の年収から再計算した「本来の所得税の総額」を比較することが年末調整でおこなわれている主な手続きです。「源泉徴収として前払いしていた所得税の過不足を調節する」と考えるとわかりやすいかもしれません。

年末調整で計算した額よりも実際の源泉徴収税額が高ければ従業員に差額を還付し、実際の源泉徴収税額が低い場合は追加で徴収をおこなうことになります。

関連記事:年末調整とは?その必要性や基本的な書き方について解説
関連記事:年末調整の電子化とは?やり方、企業におけるメリット・デメリットを解説

1-2. 年末調整で過不足金が発生する理由

なぜ年末に所得税額を再計算する必要があるのでしょうか。その理由は、毎月の源泉徴収税額はあくまで概算であり、12月に年末調整がおこなわれるまで金額が確定しないからです。

また従業員においては、年末までの1年間でさまざまな変化が生じる可能性があるでしょう。昇給や転職、扶養家族の変更で収入額や家庭環境などに変更があれば、控除額が変わってくるため源泉徴収税額に変動が発生します。このような要素をその都度源泉徴収税に反映することは難しいため、毎月の計算を概算にしておき、年末にまとめて調整していくのです。

関連記事:所得税とは?所得税の計算方法や納付方法、納付期限を解説

1-3. 年末調整をしないとどうなる?

年末調整は所得税の納付額を確定するために必要な手続きです。もし年末調整をおこなわずに所得税を期日までに納付できなかった場合、延滞税を支払う必要があります。

もし、故意に申告をおこわなかった場合や所得税を納付しなかった場合、脱税と見なされる恐れがあるため注意しましょう。所得税法において、事業者には「1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金」、悪質な場合は「10年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金」といった罰則が科されることが定められています。

また、年末調整をおこなわないと従業員が各自で確定申告をしなければなりません。従業員の負担を増やすことにも繋がるため、期日までに適切に年末調整を完了するようにしましょう。

関連記事:年末調整しないことによる罰則内容を詳しく紹介

2. 2025年(令和7年)年末調整の主要な改正ポイント

ポイント

2025年度(令和7年度)税制改正により、2025年分の年末調整から所得控除の適用の仕組みなどが一部変わります。ここでは、令和7年度税制改正による年末調整の主要な改正ポイントを紹介します。

2-1. 基礎控除の引き上げ

2025年分から基礎控除が引き上げられます。基礎控除とは、一定額を所得から差し引くことができる控除制度です。合計所得金額2,500万円以下であれば、すべての人に適用されるのが特徴です(合計所得金額2,400万円を超えると段階的に控除額が減少)。基礎控除の改正内容は次の表の通りです。

合計所得金額

基礎控除額

改正後

改正前

132万円以下

95万円

48万円

132万円超え336万円以下

88万円(令和9年分以後58万円)

132万円超え489万円以下

68万円(令和9年分以後58万円)

489万円超え655万円以下

63万円(令和9年分以後58万円)

655万円超え2350万円以下

58万円

基礎控除の見直しにより、従来よりも控除額が大きくなり、所得税が発生する基準が高くなります。

参考:No.1199 基礎控除|国税庁

2-2. 給与所得控除の引き上げ

2025年分から給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられます。給与所得控除とは、給与所得を計算する際に収入から差し引ける控除を指します。給与所得控除の改正内容は、次の表の通りです。

給与収入

給与所得控除額

改正後

改正前

162万5,000円以下

65万円

55万円

162万5,000円超え180万円以下

収入金額 × 40% – 10万円

180万超え190万円以下

収入金額 × 30% + 8万円

新たな基礎控除と給与所得控除の適用により、会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者の場合、年収160万円を超えなければ所得税は発生しないことになります。

参考:No.1410 給与所得控除|国税庁

関連記事:所得税は年収いくらから?年収103万を超える場合や年末調整・確定申告の義務も解説!

2-3. 特定親族特別控除の新設

2025年分より特定親族特別控除が新設されます。従来は特定扶養親族(19歳以上23歳未満の者)の合計所得金額48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)であることが、63万円の扶養控除(特定扶養控除)を適用するための条件の一つでした。

しかし、特定親族特別控除が新設されたことで、合計所得金額48万円(改正後:58万円)を超えても合計所得金額85万円以下(給与収入のみの場合は150万円以下)で、そのほかの条件も満たしていれば、特定親族特別控除として63万円の控除の適用が可能です。

また、合計所得金額85万円を超える場合も、合計所得金額が123万円以下(給与収入のみの場合は188万円以下)であれば、控除額は段階的に減りますが、特定親族特別控除を適用できます。このように、令和7年度税制改正によって、年末調整で扶養控除が適用できなくとも、特定親族特別控除を適用できる従業員が出てくる可能性が考えられます。

参考:No.1180 扶養控除|国税庁

2-4. 扶養控除等の所得要件の見直し

令和7年度税制改正では、基礎控除の見直しに伴い、扶養控除等の所得要件の改正もおこなわれます。具体的な改正内容は次の通りです。

  • 扶養親族および同一生計配偶者の所得要件が「58万円以下(改正前:48万円以下)」に緩和
  • ひとり親の⽣計を⼀にする⼦の所得要件が「58万円以下(改正前:48万円以下)」に緩和
  • 勤労学生の所得要件が「85万円以下(改正前:75万円以下)」に緩和

これにより、配偶者控除やひとり親控除、勤労学生控除などの所得控除の適用要件も変わってくるので注意が必要です。また、令和8年(2026年)からは源泉徴収税額表も切り替わり、従来の源泉徴収のやり方から変更が必要になるので留意しておきましょう。

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁

3. 年末調整と確定申告の違い

違い

年末調整は確定申告としばしば混同されることがあります。どちらも所得税に関連する手続きですが、全く異なるものです。それぞれの手続きをする際や、従業員から質問があった際に答えられるように、しっかりと区別しておきましょう。

 

年末調整

確定申告

目的

徴収済みの源泉徴収税と実際の所得税との差分を計算し、過不足を調整する。

所得税を確定させ、過不足を還付や徴収して正確な納税をする。

受けられる控除

基礎控除・扶養控除・配偶者(特別)控除・ひとり親控除・寡婦控除・勤労学生控除・社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・障害者控除・住宅ローン控除(2年目以降)など

年末調整で受けられる控除に加えて以下の控除

雑損控除・医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除(初年度)など

期限

翌年の1月31日

翌年の3月15日

手続きをする人

会社

個人(従業員)

基本的に、会社員であれば年末調整をしておけば確定申告をする必要はありません。ただし、給与収入が2,000万円を超える場合などは、年末調整の対象者から除かれるため確定申告が必要です。

また、副業所得が20万円を超える場合などは、年末調整を受けても、正しい所得税を確定させるため確定申告が必要になります。加えて、医療費控除や寄付金控除(ふるさと納税のワンストップ特例を除く)を従業員が受けたい際は、確定申告を従業員本人がしなくてはいけません。

3-1. 年末調整を忘れたら確定申告での対応が必要

従業員が年末調整を忘れていて必要書類を期限までに提出しなかった場合も、従業員自身で確定申告が必要です。ただし、会社が定める期限を過ぎただけで、税務署などに提出する期限(翌年1月31日)までに間に合うのであれば、年末調整で対応できます。

なお、会社側が年末調整を忘れていた場合、所得税法第190条「年末調整」などの法令に基づく義務を怠ったことになる可能性があります。この場合、拘禁刑や罰金などの罰則が課せられる恐れもあるので、あらためて年末調整の重要性を再認識しておきましょう。

参考:所得税法第190条|e-Gov法令検索

関連記事:年末調整の再調整は可能!方法やポイントをわかりやすく解説

4. 年末調整の対象者

書類の山

年末調整の対象者は、原則として勤務先に12月31日時点で在籍し、「扶養控除等申告書」を提出しているすべての給与所得者です。通常の会社員だけでなく、学生やパート・アルバイトなども対象に含まれるので注意しましょう。

関連記事:年末調整の対象者とは?必要な書類や確定申告との関係も解説

4-1. 年の途中でも年末調整が必要なこともある

年の途中に退職した人などでも、次に該当する場合、年末調整が必要になる可能性があります。

  • 病気などにより退職し、復職の見込みがない人
  • 海外転勤により非居住者になった人
  • 死亡によって退職した人
  • パートタイマーなど給与総額が123万円以下で退職した人(退職後に他の勤務先から給与を受け取る見込みのある人を除く)
  • 12月に支給される給与を受け取って退職した人

参考:No.2665 年末調整の対象となる人|国税庁
参考:Ⅱ 年末調整とは|国税庁

4-2. 年末調整が不要な人

以下のような条件に当てはまる従業員は、年末調整が不要です。

  • 給与収入額が2,000万円を超えている
  • 災害減免法による所得税の徴収猶予または還付を受けた人
  • 非居住者
  • 2ヵ所以上で給与の支払いを受けていて他の勤務先(主たる給与の支払者)に「扶養控除等(異動)申告書」を提出している人
  • 年の中途に退職した場合で年末調整が必要なケースにあてはまらない人

年末調整の対象外となる人には、確定申告が必要になる可能性について周知してあげるとよいでしょう。このように、年末調整をおこなう際は、まず従業員が年末調整の対象かどうかを確認する必要があります。

当サイトでは、年末調整の対象者を「はい」「いいえ」形式で簡単に確認することができる資料を無料でお配りしています。そのほかにも、必要書類や年末調整の計算方法まで図解で網羅的にわかりやすく解説しています。年末調整業務の理解に不安のある方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、不明点がある場合にご活用ください。

関連記事:年末調整を2箇所でしてしまったら?ダブルワークの注意点と正しい対処方法を解説
関連記事:死亡退職した従業員の年末調整はどうする?手順や注意点
関連記事:所得税のための年末調整とは?基礎知識や対象になる人・ならない人を解説

5. 年末調整に必要な書類

年末調整控除により、税金が減る

年末調整で従業員に提出してもらう書類には主に下記の4種類です。

  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 保険料控除申告書
  • 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)

それぞれの申告書の役割について解説していきます。各書類の詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:年末調整に必要な書類は?種類や入手方法を解説

5-1. 扶養控除等(異動)申告書

「扶養控除等(異動)申告書」とは、扶養控除などの控除を受けるために必要になる書類です。扶養している家族の人数や年齢などによって適用できる控除は変わってきます。そのため、扶養親族等の氏名や生年月日、所得見込み額などを記載して申告をおこないます。

独身などで扶養親族等がいない場合には、個人の記入欄のみ記載します。扶養控除等(異動)申告書の提出期限は、その年の最初に給与の支払いをする日(中途就職の場合は、就職後最初の給与の支払いをする日)の前日までとされているので注意しましょう。

参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁

関連記事:扶養控除等(異動)申告書の書き方や提出時期について解説
関連記事:年末調整の障害者控除とは?対象範囲やいくら戻るのか、書類の書き方を解説
関連記事:年末調整における「ひとり親控除」の対象や寡婦控除の違い

5-2. 保険料控除申告書

「保険料控除申告書」とは、生命保険料控除や地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除を申告するための書類です。従業員が控除の対象となる保険に加入していない場合、保険料控除申告書の提出は不要です。

なお、勤務先が給与から天引きする社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)は、会社側で把握できるため申告してもらわなくても問題ありません。ただし、年の中途に入社し、それまでに支払っていた国民健康保険料などは申告してもらわなければ把握できないので注意が必要です。

参考:A2-3 給与所得者の保険料控除の申告|国税庁

関連記事:年末調整の申告書の書き方を見本を用いながらわかりやすく解説

5-3. 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書

「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」とは、「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」「特定親族特別控除申告書」「所得金額調整控除申告書」が一つにまとめられた書類を指します。各欄の概要については以下のとおりです。

参考:A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告|国税庁

関連記事:年末調整は結婚したら何が変わる?書類の書き方のポイント

基礎控除申告書

「基礎控除申告書」は、基礎控除が受けられるか判断するためのものです。従業員にその年の合計所得金額を見積り計算してもらったうえで、基礎控除が適用できるのか、その控除額はいくらになるのか記載してもらいましょう。

配偶者控除等申告書

「配偶者控除等申告書」は、配偶者控除または配偶者特別控除が受けられるか判断するためのものです。配偶者の有無やその年齢、合計所得金額(見積額)といった情報を収集してもらい、適切に記載してもらいましょう。

特定親族特別控除申告書

「特定親族特別控除申告書」とは、令和7年度税制改正によって特定親族特別控除が創設されたことで生まれたものです。従業員が特定親族を有する場合、1人につき最大63万円の控除が受けられます。なお、特定親族とは、納税者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族で合計所得金額が58万円を超え123万円以下の人です(里子など一定の人を含み、配偶者や⻘⾊事業専従者などの一定の人を除く)。

特定親族の合計所得金額によって「扶養控除」と「特定親族特別控除」のどちらが適用されるか変わってきます。また、合計所得金額が85万円を超えると、特定親族特別控除の控除額は段階的に下がる点に注意が必要です。

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁

このように、2024年分までにおいて扶養控除が適用できなかった従業員でも、2025年分の年末調整や確定申告からは特定親族特別控除を適用できる可能性があります。申告漏れが生じないよう従業員に正しく控除の内容について周知しましょう。

所得金額調整控除申告書

「所得金額調整控除申告書」とは、所得金額調整控除を適用するために申告してもらうためのものです。

所得金額調整控除には「特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」と「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」の2種類があり、年末調整で申告できるのは前者の方です。

給与収入が850万円を超える従業員に対しては、所得金額調整控除を適用できる可能性があることを周知してあげるとよいでしょう。

参考:所得金額調整控除|国税庁

5-4. 住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)

「住宅借入金等特別控除申告書」は、年末調整のときに住宅ローン控除の適用を受けたい従業員が提出する書類です。そのため、すべての従業員ではなく、該当者にのみに提出してもらうものになります。初年度は年末調整で住宅ローン控除を適用できないため、従業員自身で確定申告をしてもらわなければならないので注意しましょう。

参考:住宅ローン控除を受ける方へ|国税庁

6. 年末調整のやり方は?いつまでに、何をすれば良いのかを6ステップで解説

ステップ

ここからは、実際の年末調整の流れを6ステップでお伝えしていきます。年末調整は11月頃から始めて、翌年の1月末には完了しなければなりません。
さっそく、手続きの手順を詳しくみていきましょう。

関連記事:年末調整のやり方とは?総務初心者でもわかりやすい手順をマニュアル形式で解説

6-1. 【11月上旬】源泉徴収票を回収する

年末調整において、最初におこなうのは、転職者に対する源泉徴収票の回収作業です。前職の給与を正しく把握するために必要な書類であるため、必ず提出してもらわなくてはなりません。

源泉徴収票は原則、退職から1ヵ月以内に発行されることになっています。しかし、紛失してしまった場合は再発行に時間がかかるため、それを見越して早めに用意をよびかけておくことが大切です。11月を待たず、発行されたらすぐに提出するようにしても良いでしょう。

関連記事:年末調整で前職の源泉徴収票の提出が必要な理由とは?未提出時の対処法も解説

6-2. 【11月下旬~12月】従業員が申告書類を作成する

11月下旬になったら、前章で解説した年末調整に必要な書類を従業員に渡して必要事項を記入してもらいます。

なお、生命保険や地震保険などに加入している場合は、年末に各保険会社から郵送されてくる控除証明書の提出が必要になります。従業員には証明書類をなくさずに保管しておくように案内をしておくとスムーズです。書類の重要性を理解しておらず、紛失してしまう人は少なくありません。年末調整の書類とともに提出できるように用意してもらいましょう。

関連記事:年末調整の必要書類一覧|記載する内容や書類の入手方法を徹底解説

6-3. 【12月】年末調整の計算

従業員から必要な書類が提出されたら、会社では所得税の計算と納付手続きに入っていきましょう。

まずは給与の総額を計算し、そのあと各種控除を適用して正しい所得税額を算出します。結婚して配偶者が配偶者控除の対象になった場合や、生命保険や地震保険に加入している場合などは、年末調整で還付金が発生する可能性が高くなります。

年末調整の計算方法に決まりはなく、電卓を使ってもExcelを使っても問題ありません。ただし全ての従業員の分を手計算するのは手間がかかるうえに、計算ミスをする可能性もあるため、給与計算ソフトなどを利用して自動化することをおすすめします。

関連記事:年末調整の代行サービスとは?気になる費用とその内容を紹介

6-4. 【12月下旬~1月下旬】過不足金額の還付・徴収

すべての従業員分の年末調整が終わったら、発生した過不足金の還付と徴収をおこなっていきます。ほとんどの企業では、12月分の給与に上乗せして還付または給与から天引きして徴収する手段が取られています。

ただし、急に給与からお金が天引きされれば、従業員が不信感を持つかもしれません。源泉徴収税と年末調整の関係や、改めて徴収する理由などをあらかじめ説明しておくとよいでしょう。

特に追加で徴収する場合は、従業員が受け取る給与が減ることになります。予定していたよりも収入が低いと困る可能性があるため、早めに告知しておくと親切です。

関連記事:年末調整での還付金(返金)の仕組みやいつもらえるかを解説

6-5. 【報酬の支払い月の翌月10日まで】所得税徴収高計算書の作成

還付や徴収によって正しい金額で所得税を徴収できたら、納付していきます。その際に必要となるのが「所得税徴収高計算書」という書類です。所得税徴収高計算書と納付書は複写式で一体になっています。

通常、厳選書徴収をしている場合事業主あてに郵送されてきますが、届かない場合は税務署への問い合わせまたはe-taxの利用で入手することが可能です。

e-taxを利用する場合は、すべての手続きがオンラインで完了します。税務署に赴いたり、郵送したりする手間がなく、非常に効率的に年末調整の業務を進めることが可能です。

利用には事前準備が必要ですが、電子化が推進されている点も考慮し、まだe-taxが利用できない場合は環境を整えておくようにしましょう。

参考:税額の納付と所得税徴収高計算書(納付書)の記載|国税庁

関連記事:年末調整の提出先は?意外と知らない書類の行方について解説
関連記事:年末調整の納付書とは?書き方や提出方法を詳しく紹介

6-6. 【1月末まで】提出書類の作成

計算と従業員への還付・徴収、納付が完了したら、各所に提出する書類を作成していきます。作成する必要のある書類は、主に以下の4つです。

源泉徴収票

源泉徴収票は、年間の給与額や控除額をまとめて記載した書類です。原則、従業員1人につき「従業員用1部」「税務署提出用1部(提出対象となる場合)」「市区町村提出用2部(給与支払報告書)」の合計4部を作成する必要があります。

従業員へは12月の最終給料を支払う際に交付します。源泉徴収票は、住宅ローンの審査時などに収入を証明する書類としても使われるため、大切に保管してもらうようにしましょう。

法定調書合計表

法定調書合計表は、企業が1年間に支払った給与や報酬などの合計金額がまとめられた書類です。1月末までに税務署へ提出することが義務付けられています。

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書は、弁護士や税理士などの専門家や外注のフリーランスなどに対して、一定金額以上の報酬を支払ったときに作成しておく資料です。支払われた側がしっかりと申告しているかどうかを照会するときに使用されます。

給与支払報告書

給与支払報告書は、企業が市区町村に給与の支払状況を報告するための書類を指します。市区町村はこの書類をもとに住民税を計算するため、1月末までに必ず提出しなくてはなりません。

ちなみに、書かれている内容は源泉徴収票とほとんど同じです。従業員に渡すものを「源泉徴収票」、市区町村に提出するものは「給与支払報告書」とよぶと考えておけば、問題ありません。

参考:法定調書関係|国税庁

6-7. 年末調整の申告内容に不備があった場合の対応

従業員から回収した年末調整の書類に申告漏れや記入ミスが見つかることもあるかもしれません。このような場合、該当する従業員に差し戻す必要があります。年末調整の期限である1月31日までに間に合うようであれば、再提出してもらうことで申告内容を修正できます。

しかし、期限を過ぎてしまった場合には、該当する従業員に個人で確定申告をおこなってもらい、申告内容を訂正する必要があります。このような事態を招かないためにも、年末調整の必要書類の書き方を周知徹底し、早めに書類の回収をおこないましょう。

関連記事:年末調整のやり直しを税務署から通知されたときの対処法
関連記事:年末調整の書類で間違いに気づいたときの正しい訂正方法

6-8. 年末調整を効率化する方法

前述のとおり、年末調整には多くの工程があり、こまめに従業員とやり取りしなければなりません。従業員が書類の書き方を理解しきれずに記入漏れ・ミスが発生する、文字がわかりにくいなどの理由で差し戻しが多くなると、その分年末調整の作業も滞ります。

年末調整に対応した給与システムや人事システムであれば、年末調整の煩雑な計算も自動で処理できるためミスを軽減させることが可能です。また、システム上から年末調整の入力ができれば、回収する作業がなくなるだけでなく、差し戻しもスムーズにおこなうことができます。

特に従業員数が多い事業所においては、システムを導入することで年末調整の大きな工数削減が期待できるでしょう。

関連記事:年末調整のペーパーレス化とは?その背景や課題を詳しく解説
関連記事:年末調整をDX化するには?デジタル化するメリットや手順を詳しく解説

7. 年末調整の還付金はいつ受け取れる?

カレンダー

年末調整によって、源泉徴収税を多く支払い過ぎていたことがわかった場合は、還付金として払いすぎた分を従業員に返金する必要があります。

還付金を支払う時期は、通常は12月の給与と同時です。給与に上乗せする形で支給するため、12月の給与計算は通常よりも複雑になりやすいです。

参考:No.2675 年末調整の過不足額の精算|国税庁

7-1. 年末調整がマイナスになるとは?

年末調整をおこなった結果、その年の源泉徴収税額の合計額が年税額を下回る可能性もあります。その場合、給与明細にマイナス表記をしたうえで、追加徴収をおこなわなければなりません。

これはその年に「給与に大幅な変動が生じた」「扶養親族の人数が減少した」などの理由により生じます。そのため、年末調整がマイナスになること自体に問題はありません。しかし、年末調整の計算に間違いがあることにより、マイナスの結果になる可能性もあるので注意しましょう。

関連記事:年末調整でマイナスになる主な理由と対処方法を詳しく解説

7-2. 確定申告を忘れても還付申告ができるケースもある

「年の中途で退職したことで年末調整を受けておらず源泉所得税を納め過ぎている」「年末調整で控除の申告が漏れていた」といった場合、従業員は確定申告をすることで、還付金がもらえます。

しかし、翌年の年末調整になってから気づくなど、確定申告の期限に間に合わなかったという場合もあるかもしれません。還付金がもらえるケースでは、その年の翌年1月1日から5年間までに限り還付申告書の提出が可能です。そのため、確定申告に間に合わなかった場合でも、還付申告できる可能性があることを押さえておきましょう。

参考:No.2030 還付申告|国税庁

8. 年末調整でおこなう計算

計算

年末調整ではどのような計算がおこなおこなわれているのか、その詳しい内容についてお伝えしていきます。

8-1. 1年間に支払った給与と源泉徴収税額を計算

まずは、年末調整の対象となる従業員の1年間の給与や賞与の合計額と、源泉徴収した総額を計算します。年度の途中で転職してきた従業員がいる場合、前の職場で支払われていた給与も合算して年末調整するため、源泉徴収票を集めておきましょう。

この計算が間違っているとこの後の計算すべてが狂ってしまいます。パートやアルバイト従業員がいる場合は、月給制の正社員よりも計算が複雑になりやすいため、十分に注意してミスの内容に計算しましょう。

なお、給与管理システムやソフトを導入している場合は自動的に計算できるため、こうした計算の必要はありません。

8-2. 給与所得控除後の金額を計算

次に、給与所得控除後の金額を計算します。給与所得控除は会社員などの給与所得者に適用されるもので、1年間の収入額に応じて差し引かれるものです。通勤費用や交際費など、会社員にとっての経費をひとつひとつ計算する代わりにまとめて控除するお金だと考えておくと、非常にわかりやすいでしょう。

給与所得控除の金額は、年収によって計算式が異なります。詳しくは、税務署から配布される「年末調整のしかた」や国税庁のホームページで確認できます。計算の際はしっかりと最新版に更新した上で、参考しておきましょう。

参考:No.1410 給与所得控除|国税庁

8-3. 各種所得控除の合計金額を計算

次に、従業員から提出してもらった書類を元に所得控除の金額を算出していきます。扶養控除や配偶者控除、社会保険料、生命保険や地震保険の控除の計算はここでおこないましょう。

控除をおこなう際は、必ず「保険料控除証明書」などといった証拠となる書類と照らし合わせていきます。

ここで証拠となる書類の提出がされていないと、その従業員の年末調整が進まなくなります。期日までに年末調整ができない場合は、従業員が個別に確定申告をすることになるため、この点をしっかりと説明したうえで証拠書類の提出を早めにしてもらえるようにアナウンスしましょう。

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8-4. 課税給与所得金額を計算

給与所得控除後の金額から各種所得控除の金額を差し引き、所得税の課税対象となる金額を算出していきます。この金額を「課税所得金額」といいます。計算するときは、1,000円未満の端数を切り捨てておきましょう。

一人ひとりの計算が必要で複雑な部分ですが、手動で計算をする場合はくれぐれも間違えないように処理しましょう。

8-5. 算出所得税額の計算

課税所得金額が出たら、国税庁の「算出所得税額の速算表」より、所得税を計算します。所得金額と対応する税率をかけ合わせたものが、納付する所得税になります。

所得税率の改正がおこなわれる可能性もあるため、計算をする際は変動がないとわかっている場合でも、必ず国税庁の情報を確認してからにしましょう。

参考:所得税の税率|国税庁

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8-6. 住宅ローン控除と年調年額の計算

住宅ローン控除の適用がある従業員の場合のみ、ここまでで算出した所得税の金額から住宅ローンの控除額を差し引いてください。

住宅ローンの有無は従業員本人からの申告でしかわからない部分です。年末調整の業務が進んでから申告されたり、年末調整が終わってから申し出があったりすると、対応しきれない場合があります。その場合は従業員が確定申告で処理する必要があるため、早めに正確な情報を提出するように求めましょう。

ここまでで算出された金額に102.1%をかけると、「年調年税額」が算出されます。この金額が源泉徴収税額の総額よりも多ければ差額を還付し、少なければ徴収して調整していきます。

関連記事:年末調整の計算方法5ステップや注意点を分かりやすく解説

9. 年末調整を正しくおこなって所得税を正しく納めよう

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年末調整は、1年間の給与から天引きされた源泉徴収税の金額を再計算し、正しい納税金額を確定する役割を果たす大切な手続きです。場合によっては還付や徴収をおこなって正しい税額に調整しなくてはいけないため、一部の方を除いた全ての給与所得者が年末調整をおこなう必要があります。

必要書類の提出や細々とした計算作業がある年末調整は、従業員にとっても企業の担当者にとっても負担が大きくて大変な業務です。年末調整業務の効率化や作業負担軽減を目指すなら、年末調整の計算や給与計算への反映を自動でおこなってくれる、給与計算システムの導入を検討してもよいかもしれません。

関連記事:年末調整に必要な領収書の種類や紛失時の対処法を解説

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