労働基準法とは?法律の要点や雇用者側の実務上のルールをわかりやすく解説
企業として事業を発展させるためには、雇用者として人材に様々な条件を求めるのは当然でしょう。しかし、雇用者は従業員よりも圧倒的に強い立場にあります。雇用者の希望をすべて満たす勤務条件にしてしまうと、場合によっては適切でない労働環境で働かせることになる可能性もないとはいいきれません。
そこで従業員の健全な働き方を維持するために、雇用者が守らなければならない法律が「労働基準法」です。 本記事では、労働基準法の大まかな基礎知識について解説していきます。
目次
労働基準法総まとめBOOK
1.労働基準法とは、使用者が最低限守るべき雇用における規則
労働基準法とは、国籍や身分などに関わらず、全労働者の適切な雇用を守る法律です(一部の国家公務員等を除く)。
労働基準法は大きく分けて、労働契約・賃金・労働時間と休暇・安全衛生・年少者や妊産婦の扱い・技能者養成・災害補償・就業規則・寄宿舎・監督機関、といった項目で各規定を制定しています。
なお、労働基準法は雇用者が守るべき最低限のルールであり、現状で規定以上の勤務条件を設けているのであれば、基本的にはそこから低下させないことも原則としています。
1-1. 労働基準法の目的
労働基準法の目的としては性別などによる差別や強制労働を防ぐとともに、あくまで労働者の人としての生活を満たすものでなければならないとされています。とくに雇用契約の実情として、雇用側である企業にとって有利になる内容で締結されているケースが多いため、労働基準法を定め、労働者が保護されています。
1-2. 労働契約法との違い
労働基準法と労働契約法は、労働環境を規定する法律として企業と労働者双方に重要な役割を果たしていますが、それぞれの目的や内容には大きな違いがあります。
労働契約法は、企業と労働者間の関係を安定させるために設けられた法律です。労働契約の成立や変更、継続、終了に関する民事的なルールを体系化しており、具体的な内容として「労働契約がどのような条件で成立するか」「契約内容がいつ、どのように変更されるか」などが明確に定められています。労働者の生活安定と企業の経営安定を図るための基本ルールを整備しています。
対して、労働基準法は労働者の生活保障と権利保護を目的としており、企業との間で最低限守るべき労働条件を定めています。この法律は、労働者が人間らしい生活を送れるようにと、賃金、労働時間、時間外・休日労働、有給休暇など、労働者の基本的権利を確保するための最低基準を具体的に規定しています。そのため、労働基準法は労働者の生存権の保障に基づいた内容となっており、企業がこれを遵守することが求められます。
要するに、労働契約法が労働契約の民事的側面を規定しているのに対し、労働基準法は労働条件についての最低基準を定めるものと位置づけられます。この違いを理解することで、労働者の権利保護と企業の適正な労務管理を実現する助けとなるでしょう。
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2. 労働基準法で保護されるべき対象の労働者
労働基準法の対象者となる労働者は労働基準法第9条にて、次のように定義されています。
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。 引用:労働基準法|e-Gov法令検索
そのため、正社員であってもアルバイトであっても、雇用形態に問わず労働者は保護されているのです。
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2-1. 労働基準法の対象外になるケース
しかしながら一部のケースで、労働基準法の適応において対象外となる以下のような労働者も存在します。
- 一部の船員
- 家族経営の事業で働く親族
- 家事使用人
- 一部の公務員
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
条件に該当する一部の船員
一部の船員は労働基準法の対象外となります。原則として、労働基準法の規定は船員にも適用されますが、一部の条件を満たす船舶(例えば、5トン未満の船舶や漁業に使用される船舶など)の船員には、労働契約や労働時間に関する重要な規定が除外される場合があります。ただし、これらの除外された船員については、船員法が適用されるため、保護が全くなくなるわけではありません。船員法は船員の労働条件を規定し、労働者の保護を行う役割を果たしています。
家族経営事業で働く親族
家族経営事業で働く親族も、労働基準法の適用外となるケースがあります。具体的には、労働者が同居親族のみで構成される場合、労働基準法は適用されません。しかし、同居親族ではない他の労働者を雇用する場合は、労働基準法の適用対象となります。「同居」とは、住居と生計を一にすることを指し、「親族」とは民法上の親族(6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族)を意味します。家族間での働き方に対する法律的な枠組みを明確にし、企業は適正な労務管理を行う必要があります。
家事使用人
家事使用人も労働基準法の対象外に分類されます。家事使用人とは、いわゆるお手伝いさんのように家庭内で家事全般に従事する人のことを指します。雇用主が一般の個人である場合、家事使用人は労働基準法の適用外となり、社会保険などの保障を受けることができません。ただし、家事サービス代行会社などに雇われる場合は、労働基準法が適用されるため、労働条件や賃金などの最低基準が守られることになります。
条件に該当する一部の公務員
公務員も労働基準法の対象外になるケースが存在します。一般的に、国家公務員には労働基準法が原則適用されません。ただし、一般職の国家公務員には労働基準法が適用されます。特別職とされる地方公務員(知事や市町村長、議員など)は、地方公務員法第58条に基づき労働基準法の適用対象となるため、注意が必要です。これにより、公務員の働き方においても労働環境の保護が図られています。
3. 労働基準法で押さえておくべき法律の要点
ここからは、労働基準法で押さえておくべき法律の要点として労働基準法の一部を抜粋し、従業員を雇用する上で特に気をつけておきたいポイントについて見ていきます。
3-1. 労働契約に関する内容(労働基準法第15条)
まず労働契約を結ぶ上で押さえておきたいのが、契約期間・就業場所・賃金・勤務体系・退職といった各種条件について、事前に書面にて明示しなければならない点です。場合によってはメールなどによる送付も認められていますが、必ず印刷できるものでなければなりません。
そのほかにも、有期雇用の期間上限は3年(一部例外を除く)・賠償予定や前借金相殺の禁止・労働者の貯蓄金管理の不可など、適切な契約を結ぶための規定が設けられています。
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法に則って明示すべき労働条件
労働基準法第15条に基づき、企業は労働者と締結する労働契約において、一定の労働条件を明示しなければなりません。
- 労働契約の期間
- 契約更新の基準
- 就業場所と業務内容
- 始業・終業時刻
- 休憩時間、休日、休暇、および賃金
このような内容に関する事項が含まれます。
特に、賃金については決定方法、計算方法、支払い方法、締切り時期、支払い時期、そして昇給に関する詳細を明示する必要があります。さらに、退職に関する事項(解雇の事由を含む)も具体的に記載することが求められます。
一方で、退職手当、臨時に支払われる賃金、最低賃金額、食費や作業用品の負担、安全及び衛生、職業訓練、災害補償、表彰や制裁、そして休職に関する事項については、事業所内に該当する定めがない場合には明示が不要です。
2024年の法改正で追加された明示事項
2024年4月1日をもって、労働基準法第15条における明示事項に関する法改正が実施されます。この法改正により、企業はすべての労働者に対して、就業場所および業務内容の雇用後の変更範囲を明確に示さなければならなくなります。配置転換や業務変更の際に労働者が混乱や不満を抱かないよう、これらの詳細を契約書に明記することが求められます。
さらに、有期契約労働者に対しては、更新上限の有無とその具体的な内容を明示しなければなりません。更新回数や契約期間の上限を設定することで雇用者と労働者の間で認識のずれが発生しないようにする狙いがあります。また、有期労働者には無期転換申込機会と無期転換後の労働条件についても説明する義務があります。これにより、有期労働者が無期限契約に移行する際の安心感を高めることが期待されます。この法改正を踏まえて、企業は労働契約書の内容を見直し、法的要件を適切に反映させることが重要です。
3-2. 解雇に関する内容(労働基準法第20条)
解雇についても労働契約の一部ではありますが、従業員の雇用を維持する意味では非常に重要なポイントです。
従業員を解雇する際は、解雇予告としての30日前までに予告する必要があり、これより短くなる場合には、不足日数に応じた「解雇予告手当」を支払わなければなりません。
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解雇予告における注意点
さらに解雇予告を行う際は、以下のケースに該当する場合、解雇は無効とみなされることがありますので、注意が必要です。
そもそも雇用者は、自由な権限で労働者を辞めさせることはできず、客観的にみて合理的であり、かつ、社会通念上相当である場合でなければ、労働者を解雇することはできません。
解雇制限
さらに、産前産後休業の取得や、育児・介護休業の申し出、労災療養などを理由にした解雇も当然ながら認められません。そのほか、いわゆるリストラである整理解雇も、厳正な基準に則っていなければ不可とされています。
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3-3. 賃金に関する内容(労働基準法第24条)
労働者に支払う給与については、毎月1回以上、必ず期日を決めて支払う必要があります。また、給与額も最低賃金(都道府県により異なる)を満たしていなければならず、基本的には現物支給も認められていません。
なお、仮に一部通貨以外の支払や特別な控除がある際には、別途労使協定や労働協約を結ぶことが求められます。毎月の給与は、全額を直接本人に支払うのが原則です。代理人や親権者などとのやり取りもできません。
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賃金支払い5原則
労働基準法第24条において、労働者に対する賃金の支払いとルールに関して明記されています。条文において、「賃金支払い5原則」と呼ばれる5つのルールを定めております。5つの項目は以下の通りです。[注1]
- 通貨支払いの原則 ・直接払いの原則 ・全額払いの原則 ・全月1回以上の原則 ・一定期日払いの原則
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男女同一賃金
労働基準法第4条において、「使用者は、労働者が女性であることを理由に、賃金を男性と差別的扱いをしてはいけない」と明記されています。また、性別が女性であること以外にも、女性労働者の平均勤続年数が短いことや生計維持者ではないことを理由に賃金格差を設けてはいけません。[注1]
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3-4. 手当・補償に関する内容(労働基準法第26条)
手当や補償は、従業員が労働災害に見舞われた際のあらゆる費用の工面や通勤時にかかる費用の工面など、従業員が安心して働くのをサポートするための制度になります。
とくに労働基準法第26条では、会社側の都合により労働者を休業させた場合、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければならないことが定められています。
休業手当と休業補償の違い
なかでも休業手当と休業補償は間違えやすいので注意が必要です。これらの違いは、「休業手当は原則として企業に支払い義務があり、休業補償は労災保険によって支給されますが、企業が休業補償を支払う場合もある」となっています。
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3-5. 労働時間に関する内容(労働基準法第32条)
労働基準法第32条は、労働時間に関する基本的なルールを定めています。具体的には、使用者は労働者に対して1週間について40時間を超え、1日について8時間を超えて労働させてはならないと規定しています。
労働基準法では、アルバイトも労働者と認められており、労働時間や休憩時間などが定められております。[注1]法定労働時間に関しては、18歳未満の労働者は原則として深夜労働が禁止されているように、年齢によって異なります。また、割増賃金や休憩時間の規定に関しては、正社員と同じ扱いになります。
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しかし、現代の多様な働き方を反映し、労働基準法第32条にはいくつかの例外も設けられています。これらの制度を適切に導入し運用することで、企業は労働基準法を遵守しつつ、効率的で柔軟な働き方を実現することができますので詳しく見ていきましょう。
変形労働制
変形労働時間制は、労働基準法32条に基づき設けられた制度で、繁忙期と閑散期の労働時間を調整するために利用されます。この制度では、月や年単位で労働時間を調整し、繁忙期における時間外労働の扱いを回避することができます。一方で、法定労働時間を超えて働いた場合には残業代を支払わなければなりません。この仕組みは特に教職員のように長期休暇がある職種での適用が検討されています。企業の人事担当者や管理職の皆様にとって、この制度の活用により、業務の効率化と従業員のワークライフバランスの向上を実現することが可能です。したがって、労働基準法に関する知識を基に、企業に適した労働時間の設計を行うことが重要です。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は、労働基準法32条にもとづいて導入された制度で、企業の人事担当者や管理職にとって効果的かつフレキシブルな労働時間管理手法となります。この制度を利用することで、従業員は一定期間内に総労働時間を満たす限り、日々の勤務時間や始業・終業時刻を自由に選択できるようになります。これにより、業務効率の向上や従業員のワークライフバランスの実現が期待されます。また、フレックスタイム制を導入する際は、適切な労働時間管理と明確なルール設定が不可欠です。これにより、法的要件を遵守しつつ、社員のモチベーション向上にも繋がります。
みなし労働時間制
みなし労働時間制は、労働基準法第38条に基づいて定められた制度で、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ決められた労働時間を働いたものとみなします。特に労働時間の管理が難しい業務や、営業職、高度な専門性が求められる職種に適用されることが一般的です。この制度は、労働時間を柔軟に管理することで、パフォーマンス向上を目指しています。また、裁量労働制もみなし労働時間制の一部であり、業務の自由度が高く、結果を重視する職種に適しています。労働基準法に準拠しつつ、有効に活用することで、企業は効率的な労務管理を実現できます。
3-6. 休日に関する内容(労働基準法第35条)
休日については、週に1回・4週を通じて4回は最低でも確保するのが基本です。週1回の休日は「法定休日」と呼び、もし業務上の都合で出勤が必要になった場合には、「休日手当」を支払わなければなりません。
なお、休日の定義は「午前0時~午後12時」の連続した24時間を指します。そのため、例え1時間でも勤務した際には、その日は休日にはならないので注意しましょう。
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3-7. 時間外及び休日の労働に関する内容(労働基準法第36条)
時間外労働や休日労働をさせる予定のある使用者は、労働基準法第36条に明記されている36協定と呼ばれる労使協定を、事前に締結させ、行政官庁に届け出る必要があります。36協定の届け出なしで、労働者に対して法定外残業や休日労働を命じることはできないので注意しましょう。[注1]とくに労働基準法を超過した勤務となる場合には、別途労使協定(36協定)を結んでいることが大前提とされています。
当然ながら、時間外労働についても制限があり、36協定があるからといって長時間勤務させることはできません。基本的には月45時間・年360時間が原則で、何か臨時の特別な事情がある場合のみ、特別条項を制定して上限を超えられます。ただし、この際にも月100時間未満・年720時間以内といった上限のほか、各種条件を満たしていなければなりません。また、時間外労働や深夜労働になる場合には、基本給に加えて割増賃金の支払いも発生するので、注意が必要です。
さらに、勤務中の休憩についても、一定の実働時間を超える際には、必ず確保することが求められます。具体的には6時間を超える労働であれば45分、8時間を超える労働であれば1時間が最低ラインです。
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3-8. 時間外、休日および深夜の割増賃金に関する内容(労働基準法第37条)
使用者が労働者に対して、法定時間外労働や休日労働、深夜労働を命じた場合、割増賃金を支払う必要があります。それぞれ割増賃金率が異なります。
具体的な割増賃金率は以下の通りです。
- 法定時間外労働(一般的な残業)は、1時間当たりの賃金 × 1.25 ・休日労働は、1時間当たりの賃金 × 1.35
- 深夜労働は、1時間当たりの賃金 × 1.25
その他にも、時間外労働かつ深夜労働など、複数のパターンが考えられますが、細かい計算方法までを確認したい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:労働基準法第37条における割増賃金規定の正しい計算方法|jinjerBlog
1カ月の法定時間外労働が60時間を超えるケースに注意
残業代を計算する際の重要なポイントとして、労働基準法に基づき、1カ月の法定時間外労働が60時間を超える場合、割増賃金は、通常の25%増しではなく、50%増しで支払う必要があります。このルールを適切に遵守することは、企業の法定義務を満たすだけでなく、従業員の働き方改革や労働環境の改善に寄与する要素でもあります。従業員の働き方管理において、法定時間外労働の把握と正確な割増賃金の計算は、トラブルを防ぎ、健全な職場環境を維持するために必須です。
3-9. 有給休暇に関する内容(労働基準法第39条)
年次有給休暇は労働者の権利であり、一定基準以上の従業員に対しては、雇用形態に関係なく必ず与えなければなりません。さらに、1年に10日以上の有給休暇が付与される従業員には、年間で5日は必ず消化させることが義務化されています。また、パートタイム労働者やアルバイトといった週の労働時間が短い労働者に対しても、基準を満たせば有休が付与されるので、忘れずに与えるようにしましょう。
関連記事:労働基準法におけるパート・アルバイトの有給休暇の条件と計算方法|jinjerBlog
3-10. 年少者に関する内容(労働基準法第56条)
第56条 使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。 引用:労働基準法 | e-Gov法令検索
労働基準法第56条において、15歳以上に達していたとしても、中学校の義務教育を修了していない児童は労働者として使用できないと明記されています。
しかし、映画・演劇の子役や非工業的事業にかかわる場合など、年少者でも働けるケースもあります。その他にも細かい決まりが労働基準法にて定められていますので、気になる方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:労働基準法に規定された年齢制限とは?気をつけるべきこと|jinjerBlog
3-11. 女性の労働環境に関する内容(労働基準法第65条)
労働基準法第65条に基づき、女性労働者の妊娠および出産に関する母性保護措置が具体的に制定されています。これにより、女性労働者が安心して働ける環境を整えることが可能となり、企業全体の労働生産性向上にも寄与します。従って、労働基準法の詳細な理解と適正な運用が求められるのです。
妊娠・出産に関して
従業員が妊娠や出産する際に関係する代表的な制度としては以下のものがあります。
- 産前・産後休業 ・育児休業 ・育児時間
これらのことに違反すると、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。これらの制度は男性が取得するケースも増えてきているため、自社の就業規則を確認し、適切な対応をするようにしましょう。
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休暇に関して
生理休暇は女性従業員特有の制度であり、各個人で症状もさまざまであるため、柔軟な対応が求められる難しい制度の1つです。
労働基準法においては、生理休暇については暦日でなくても問題ないとされています。そのため、もし従業員側から、半日や時間単位での取得の申し出があった場合は、それに応じた生理休暇を認めることが必要です。[注1]
関連記事:労働基準法で規定されている生理休暇の期間と賃金の考え方|jinjerBlog
3-12. 就業規則に関する内容(労働基準法第89条)
常時10名以上の従業員を雇用している場合には、就業規則の作成、および所轄の労働基準監督署への提出が求められます。勤務条件・賃金・退職に関する項目は必ず設定し、そのほかにも退職手当や賞与など、労働者に関連する各種規則を設定している場合には明記しなければなりません。
なお、提出には労働者代表の意見書も必須です。さらに、就業規則に変更があった場合には、その届出も漏れなく行う必要があります。
関連記事:労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務|jinjerBlog
3-13. 制裁規定に関する内容(労働基準法第91条)
労働基準法第91条では、企業が就業規則において減給の制裁規定を設ける場合の条件が厳格に定められています。具体的には「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」という規定を遵守しなければなりません。これにより、従業員の生活を著しく圧迫するような過度な減給が防止されることを目的としています。さらに、制裁規定には減給の他にも出勤停止や譴責、懲戒解雇などの手段が存在します。ただし、減給以外の制裁内容については、労働基準法による具体的な制限は設けられておらず、各企業が自らの判断で規定することができます。
3-14. 周知義務に関する内容(労働基準法第106条)
労働基準法第106条では、使用者に対して労働者への周知義務が明記されています。この周知義務には「労働基準法」や「就業規則」の内容などが含まれ、労働者がこれらを常に確認できる状態を維持することが求められます。具体的な方法としては、各作業場の見やすい場所に提示する、書面を公布する、または厚生労働省令に基づいた方法(例えば、磁気テープや磁気ディスクを利用しての周知)などが挙げられます。これらの方法を適切に実行することで、労働者は自らの権利や義務を理解でき、適法な労働環境が保たれます。
3-15. 労働者名簿の内容(労働基準法第107条)
労働基準法第107条に基づき、労働者名簿は労働者に関する情報をまとめた重要な記録です。この名簿は、日雇い労働者を除く全ての労働者について、各事業場ごとに調製し、保存する義務があります。具体的には、労働者の氏名、生年月日、住所などの基本情報に加え、採用日や退職日も含まれます。これにより、企業は労働者の管理を適切に行うことができ、労働関係のトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。また、労働者が死亡、退職、または解雇された場合、その日から3年間は名簿を保存することが求められています。労働基準法に従い、これを遵守することが企業の法的責任の一部であり、適切な労務管理の基盤となります。
3-16. 賃金台帳作成の内容(労働基準法第108条)
賃金台帳の作成は労働基準法第108条に従い、企業の人事担当者や管理職にとって不可欠です。賃金台帳には、氏名や性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、早出労働時間数、深夜労働時間数といった個別の労働条件を詳細に記載する必要があります。また、基本給や手当の額、控除項目とその控除額も明確に記載しなければなりません。企業は事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金を支払うたびに遅滞なく内容を更新することが求められます。
3-17. 重要書類に関する内容(労働基準法第109条)
労働基準法の定めに従って、企業は法定三帳簿と呼ばれる3つの書類を作成しなければなりません。法定三帳簿とは、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つのことを指します。[注1]
この3つの帳簿は、労働基準監督署の立ち入り調査で確認されることが多いため、従業員が1人でもいる場合は必ず作成するようにしましょ
関連記事:労働基準法第109条規定の労働者名簿の正しい取り扱い方|jinjerBlog
4. 労働基準法において実務上で間違えやすいルール
労働基準法で定められている労働時間や休日、休憩時間は原則すべての従業員(アルバイト・パートを含む)に適応されると解説してきましたが、中には例外として労働基準法の適用対象外となるケースや時間外労働をさせることができるケースがあるので、本章ではそれらについて解説します。
4-1. 労働基準法が適用されないケース
労働基準法第41条において、労働時間・休憩・休日が適用されない職業として、農業や林業など植物関連の職業や畜産業や水産業など動物の飼育や養殖の事業などが明記されています。[注1]
その他には、公務員は国家公務員法が適用されるため、労働基準法の対象から省かれたり、労働基準法第41条第2号において管理監督者も労働時間、休憩、休日の適用が除外されます。
詳しく確認したい方は以下の記事をご確認ください。
関連記事:労働基準法第41条第2号に規定された管理監督者について詳しく解説|jinjerBlog 関連記事:労働基準法第41条に基づく適用除外の項目と該当者について解説|jinjerBlog 関連記事:労働基準法の適用除外となる人や勤務状況を分かりやすく解説|jinjerBlog
4-2. 明確な理由がある場合は例外的に時間外労働を行わせられる
労働基準法第33条には、「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない」と規定されています。[注1]
労働時間に関しては、36協定によって上限が設けられていますが、災害に見舞われた緊急事態下においては、36協定のルールを超えて業務にあたることも可能です。
関連記事:労働基準法第33条による「災害時の時間外労働等」の基礎知識|jinjerBlog
4-3. 金品の請求があった場合は7日以内に返還する
労働基準法第23条において、「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない」と金品の返還について明記されています。[注1]
条文に書かれているように、賃金・積立金・保証金・貯蓄金以外にも、労働者に権利が発生する金品は全て、7日以内に対応しなければならないので、該当の事象が起きたらすぐ対応するようにしましょう。
関連記事:労働基準法23条に定められた「金品の返還」の意味を詳しく紹介|jinjerBlog
4-4. 減給する際には限度額を超えてはならない
制裁規定の制限という項目が労働基準法第91条にあり、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」と規定されています。[注1]
そのため、1回問題行動を行うごとに、1回の賃金の支払いの10分の1を超えてはなりません。つまり、会社に数千万円という莫大な損害を生じさせた場合においても、減給処分は上記の規定を守らなければなりません。
関連記事:労働基準法第91条に規定された「減給の限度額」の意味や計算方法|jinjerBlog
4-5. 退職に関しては民法が優先される
退職に関する内容は労働基準法では記載されておらず、民法において、2週間前に会社に対して退職の申し出をすれば、自由にやめることができると規定されています。
雇用期間の有無によって扱いが異なるため、 ・無期雇用の場合 ・有期雇用の場合 ・有期雇用かつ1年以上雇用期間が経過している場合 の3種類の扱いを理解する必要があります。
上記のように、退職は労働基準法で規定されていないため、就業規則ではなく民法が優先されるということを覚えておきましょう。
関連記事:労働基準法における退職の定義と手続き方法を分かりやすく解説|jinjerBlog
5. よくある労働基準法に違反しているケース
ここからは前述の内容も踏まえつつ、労働基準法の違反例についてもご紹介します。 次に取り上げるのはあくまで一例で、当然ながら上記にそぐわない労働条件を設けている場合にはすべて違反です。
5-1. 国籍や性別を差別すること(労働基準法第3条、4条)
国籍や性別による差別は、労働基準法において明確に禁止されています。具体的には、労働基準法第3条は国籍による差別を、そして第4条は性別による差別を禁じています。例えば、特定の国籍を理由に社員を採用しない、あるいは昇進を見送るといった行為は法律違反です。また、女性であることを理由に男性よりも低賃金を設定することも同様に違法です。企業の人事担当者や管理職はこれらの規定を守ることで、公平な労働環境を提供し、法的リスクを回避することが求められます。このような差別行為は企業の信頼性を損ない、場合によっては法的措置を招くことになるため、慎重に対応することが重要です。
5-2. 従業員への強制労働(労働基準法第5条)
労働基準法第5条において、労働者を身体的または精神的に拘束し、意思のない労働をさせてはならないという「強制労働の禁止」に関して定められています。[注1]
違反すると1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科されますが、労働基準法のなかでは、最も重い罰則となるため注意が必要です。
関連記事:労働基準法5条による「強制労働の禁止」の意味や違反の罰則|jinjerBlog
5-3.不適切な労働契約の締結(労働基準法第13条)
労働基準法にそぐわない労働契約を結んだり、提示した労働条件と異なる環境で勤務させたりするのは当然ながら違法です。そのほかにも、例えば労働契約に従わなかった場合の具体的な罰金の額や賠償額をあらかじめ設定しておくのも、労働基準法では違反になります。
労働契約を結ぶ際にも、きちんと労働基準法に則って各項目を設定することが必要です。
5-4. 違約金による労働者の足止め(労働基準法第16条)
労働基準法において、契約の不履行による違約金や損害に対する賠償金の規定を労使間で定めてはいけないとされており、これを「賠償予定の禁止」といいます。
労働者に対して「退職の自由」が与えられており、違約金による足止めは退職の自由を奪うことにつながるため法律違反に該当します。
5-5. 限度を超えた長時間労働(労働基準法第36条)
労働基準監督署の調べによると、平成30年時点で最も高い割合を占めた違反事例です。
よくあるのは、36協定を締結しないまま時間外労働をさせているケースですが、36協定を結んでいても、基準を超過した時間外労働は違法です。
従業員の心身の健康にも影響が大きいため、できるだけ限度を超えた長時間労働は避けるべきでしょう。
5-6. 割増賃金の未払い(労働基準法第119条)
こちらも前項目と同じ調査にて、比較的高い割合を占めています。先ほども出てきたように、時間外・深夜・休日の労働には割増賃金が追加となるので、注意が必要です。
また、割増賃金の計算方法も細かく決まっているので、きちんと適正な金額を算出しないと違反になってしまいます。十分に規定を把握した上で、正しく給与を支払わなければなりません。
5-7. 休暇取得に対する不当な扱い(労働基準法附則第136条)
休日数が労働基準法を満たさないのはもちろん、例えば有給休暇を希望どおりに取らせないなどの行為も違法です。
さらに、産休・育休や有給休暇の取得によって、賞与などの査定を下げるといったペナルティを科すのも認められません。
いずれも労働者の権利であり、適切な休暇を取っているのであれば、不利益を与えてはならないのが労働基準法のルールです。
6. 労働基準法に違反をした場合の企業リスクと罰則
人事担当者や管理職として、こうした罰則が企業の経営や社会的信用に及ぼす影響は極めて深刻です。法令違反が明るみに出ることで、不信感が広がり、従業員の士気が低下するだけでなく、企業のイメージダウンや訴訟リスクも高まります。
したがって、労働基準法を遵守することは、単に法的対策としてだけでなく、企業全体の信頼向上と持続可能な発展のためにも不可欠です。
7. 労働基準法の主な法改正の内容
2018年に公布された「働き方改革関連法」は、労働基準法の一部改正を含んでおり、企業の人事担当者や管理職にとって重要なポイントが多岐にわたり変更されています。詳しく見ていきましょう。
7-1. 年次有給休暇の取得義務化
2019年4月から、労働基準法における重要な改正が実施され、「年次有給休暇の取得義務化」が導入されました。これにより、10日以上の有給休暇を付与される全ての労働者に対して、最低5日間の有給休暇を取得させることが企業に義務付けられています。対象となる労働者は、正規社員や非正規社員、無期雇用や有期雇用の全てに該当し、一様にこの規定の下で保護されています。この改正は、労働者の健康維持やストレス軽減を目的としており、企業は管理職レベルでの有効な制度運用が求められます。適切な有給休暇の取得を確保するためには、社内の就業規則や勤怠管理システムの見直しが必要となり、年次有給休暇の取得状況を定期的に確認することが不可欠です。この改正により、企業は労働者の生活の質を向上させ、職場の生産性向上にも寄与することが期待されています。
7-2. 時間外労働の法定割増賃金率の引き上げ
労働基準法の主な法改正の一環として、2019年4月から時間外労働の法定割増賃金率が引き上げられました。これにより、月60時間以内の時間外労働については25%以上、月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増賃金が必要となります。さらに、深夜の時間外労働には追加で25%の割増賃金が加算されるため、深夜の長時間労働には特に注意が必要です。この改正は大企業、中小企業のいずれも対象とされており、所定休日に勤務した場合も時間外労働として扱われます。企業の人事担当者や管理職は、この法改正に準拠した給与計算を行うことが求められます。法的要点を抑え、労働者の権利を守るためにも、正確かつ適時に対応することが重要です。
7-3. 建設業における時間外労働の上限規制適応
労働基準法の主な法改正の一環として、建設業における時間外労働の上限規制が適用されました。長時間労働が常態化している建設業界では、労働時間を原則として月45時間以内、年360時間以内に制限することが求められます。特別な事情がない限り、この上限を遵守しなければなりません。
大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月からこの規制が適用されていますが、5年間の猶予が設けられていました。そのため、2024年6月1日から、この猶予は撤廃されることになります。これにより、全ての建設業界の企業が、時間外労働の上限規制を厳守する必要があります。
8.労働基準法を守って快適な労働環境に
労働基準法では、従業員を雇用する上で、労働環境における最低水準を示しています。ただ守っていれば良いというわけではなく、労働基準法をもとに、より快適に働ける環境を作ることは雇用者の義務です。
労働基準法に違反すると、場合によっては社名が公表されたり罰金が科せられたりします。そのほか、さらに厳しい罰則が課せられることもあります。
従業員も自社も守るためにも、まずはしっかりと労働基準法を把握しておくことが大切です。
[注1]労働基準法|e-Gov法令検索
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